代表的な木造建築の工法のひとつ「ツーバイフォー工法」とは、どのような工法で、他の工法と比べてどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。さらに、建材であるツーバイフォー材の特徴やDIYでの活用まで、ツーバイフォー工法で家づくりを行う古川工務店の駒井哲哉さんと大橋宏之さんに話を聞きました。
ツーバイフォー工法とは?
ツーバイフォー工法は、木造軸組工法と並ぶ代表的な木造住宅の工法で、カナダ、アメリカなど北米で普及してきた工法が日本に輸入され、普及したものです。
「アメリカでの正式名称は『Platform Method(プラットフォームメソッド)』、日本では木造枠組壁工法と呼ばれています。木造枠組壁工法には、6種類の規格材が使用されますが、そのうち約2インチ×約4インチ(2×4)材を主な構造材とするものを特にツーバイフォー工法と呼んでいます」(駒井さん)
ツーバーフォー工法の特徴
狭義のツーバイフォー工法では、主に約2インチ×約4インチの規格材が用いられますが、約2インチ×約6インチ(2×6)の規格材を用いるツーバイシックス工法も、ツーバイフォー工法と同様の工法であるため、広い意味で「ツーバイフォー」として語られることがあります。どちらも同じ木造枠組壁工法であり、特徴もほぼ同じです。
「ツーバイフォー工法の家は、床・壁・天井の各面を枠組パネルで構成し、それぞれを固く結合した6面体で建物を支える構造になっています。6面体構造は、箱のような一体構造となるため、地震の際には高い耐震性を発揮します。さらに、6つの面を隙間なく接合することで気密性も高まります」(駒井さん)
他の工法と比較したときのメリット・デメリットは?
日本で普及している住宅はツーバイフォー工法のほかに、木造軸組工法、鉄骨造、RC造などがあります。それらの工法と比較した場合、ツーバイフォー工法のメリット・デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
木造軸組工法との比較
木造軸組工法は基礎に土台を乗せた上に柱と梁を組み合わせ、筋交いを入れて揺れに対抗する工法です。
「木造軸組工法と比較したときのツーバイフォー工法のメリットは、工期が短く済むこと、建材が規格化されているため品質にバラつきが少ないことなどが挙げられます。また、ツーバイフォー工法は『ファイヤーストップ構造』という火が回りにくい構造が採用されているため、耐火性が高い点もメリットの一つです。
最近では木造軸組工法の耐震性も上がってきましたが、ツーバイフォー工法は阪神・淡路大震災や東日本大震災での倒壊被害が少なかったという実績があり(一般社団法人 日本ツーバイフォー建築協会の調査結果より)、耐震性の高さが大きなメリットと言えます。
一方で、間取りの自由度では木造軸組工法に劣るため、そこはデメリットと言えるかも知れません」(駒井さん)
鉄骨造との比較
鉄骨造は、鉄骨を構造材料としてつくる工法・構造のことです。現在は柱に角型鋼管、梁にH型鋼を使う鉄骨ラーメン構造が主流となっています。
「鉄骨造と比較したときのツーバイフォー工法のメリットは、コストを低く抑えられることです。また、木は表面が炭化することによって燃えにくくなるという特徴があり、鉄よりも耐火性が高いと言われています。
一方、鉄骨造は柱と梁からなるシンプルな構造で、開放的な空間や大きな窓を設けることができるため、その点においては、ツーバイフォー工法より優れていると言えるかも知れません」(駒井さん)
RC造との比較
RC造(鉄筋コンクリート造)は、現場で鉄筋を組み、型枠をはめてコンクリートを流し込み、養生して躯体をつくる工法です。圧縮力には強いがもろいコンクリートを、引張力に強い鉄筋で補強した構造になっています。
「RC造はコストが高く、工期が長い点がデメリットです。つまり、RC造と比較したとき、ツーバイフォー工法はコストや工期の面でメリットがあると言えます。ただし、耐火性や耐久性、間取りも含めたデザインの自由度などはRC造に軍配が上がります」(駒井さん)
ツーバイフォー工法の施工実例を紹介!
「ツーバイフォー工法と他の工法で建てられた住宅を外観だけで見分けるのは難しい」と駒井さんは言います。しかし、ツーバイフォー工法は北米生まれの工法なので、デザインに欧米風のテイストを取り入れているケースが多く見られます。そこで、ツーバイフォー工法の住宅にはどのようなものがあるのか、施工実例をいくつかご紹介します。
ツーバイフォー材ってどんなもの?
ツーバイフォー工法で用いられる建材は規格化されており、主に約2インチ×約4インチのツーバイフォー材が使われています。
1インチは25.4mmなので、2インチ×4インチは50.8mm×101.6mmですが、乾燥や仕上げ加工を経て、実際に規格材として使われているツーバイフォー材は、38mm×89mmです。
ツーバイフォー材の樹種
樹種としては、SPF材が多く用いられています。
「SPFというのは、スプルース(Spruce、米トウヒ)、パイン(Pine、マツ類)、ファー(Fir、モミ類)などの常緑針葉樹の総称です。以前はダグラス・ファー(米松)なども使っていましたが、施工時に割れることがあるため、あまり使わなくなりました」(駒井さん)
建材としての特徴
「SPF材は、反りや曲がりが比較的少ないのが特徴で、特にツーバイフォー住宅の建材としてはJASの基準をクリアしたものだけが使われています」(駒井さん)
ツーバイフォー材の規格
「ツーバイフォー工法で使われる建材の規格としては、ツーバイフォー材の他に、ツーバイシックス材、ツーバイエイト材、ツーバイテン材、ツーバイトゥエルブ材、フォーバイフォー材があり、全部で6種類です」(駒井さん)
住宅建材以外の用途
ツーバイフォー材は住宅建材以外にも、DIY用としてホームセンターなどで売られています。また、同じ木材でツーバイ材の半分の薄さのワンバイ材というものもあり、梱包用資材などに使われています。
ツーバイフォー材でDIYするには?
ツーバイフォー材は、軽くて加工しやすいため、DIYにも適しています。
「ただし、ホームセンターなどで手に入るツーバイフォー材は、住宅建材として使われるツーバイフォー材ほど厳しい審査をクリアしたわけではなく、全く同じものではありません」(駒井さん)
ツーバイフォー材の入手・加工
DIY用のツーバイフォー材は、一般的なホームセンターで入手できますし、ネット通販で買うこともできます。
ツーバイフォー材は柔らかいため、自分でノコギリを使って加工することもできますが、きれいに加工したい場合は、ホームセンターのカットサービスを利用するといいでしょう。通販サイトでも、カットサービスを提供しているところがありますので、自分でカットするのが不安な人は、そういったところで購入するのがオススメです。
アジャスターなどの利用
ツーバイフォー材は規格化されているため、どこで購入しても同じサイズのものが手に入ります。そのため、ツーバイフォー材と組み合わせて使うオプションパーツなども市販されており、DIYする際に重宝します。例えば、アジャスターというパーツを利用すれば、床や天井などを傷つけることなく簡単に突っ張り棚をつくることができます。
理想の家をツーバイフォー工法で実現した先輩たちの事例を紹介!
ツーバイフォー住宅の特徴や他の工法と比べた場合のメリット・デメリットがわかったところで、スーモカウンターで理想のツーバイフォー住宅を建てた先輩たちが、どんな点にこだわり、どんな住まいを実現したのか、実例を参考に学んでいきましょう。
【case1】地震に強く断熱性の理想の家をツーバイフォー工法で実現
もともとは新築の建売住宅に住んでいたNさんは、阪神・淡路大震災で大きな揺れを経験して不安を感じるとともに、断熱性が低いことにも不満を抱いていました。いずれは空き家になっていた妻の実家を建て替えて引越そうと考えていたとき、何気なく入ったスーモカウンターで、新居づくりに向けて背中を押されました。
Nさんの希望は、「地震に強く、断熱性の高い家」。その条件にピッタリのツーバイフォー工法を指定して複数社から提案を受けた後、1社に絞って家づくりを進め、念願の新居が完成しました。地震に強い安心感と、冬場は暖かく夏場は涼しい快適さに、とても満足しています。
この実例をもっと詳しく→
耐震と断熱にこだわり、老後の将来を見据えた家
理想の家をツーバイフォー工法で実現するためのポイントとは?
最後にあらためて、ツーバイフォー工法で理想の住まいを実現するためのポイントを聞きました。
「ツーバイフォー工法は、規格化されているのが最大の特徴です。耐震性や耐熱性、気密性などは、この規格に準じているからこそ大きな効果を発揮します。他の工法に比べたデメリットもありますが、依頼先にお客様の要望をぶつけた上で、ツーバイフォー工法ならではのメリットを最大限に活かすプランを提案してもらうといいのではないでしょうか」(大橋さん)
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望をかなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりのダンドリや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合わせください。
取材協力/古川工務店
取材・文/福富 大介(スパルタデザイン) イラスト/平尾直子