40坪の土地があれば、限られた条件の下で工夫を凝らしたさまざまな間取りの家を建てることが可能でしょう。例えば、吹抜けのある家・アイランドキッチンのある開放的なLDKなど、イメージをふくらませる際に参考になるのが、プロが設計した家の間取りです。
そこで、シグマ建設の山田綾華さんとオガワホームASの今井文雄さん、長美津雄さんに40坪台の土地に建てる家について間取りのアイデアを伺いました。40坪の土地に家を建てる際の費用相場もお伝えします。
「40坪」ってどれくらいの広さ?
まず、40坪の土地はどれくらいの広さなのでしょうか?
1坪 は 約 3.31 ㎡の広さなので、40坪は、㎡数に変換すると132.4㎡の土地になります。数字でイメージしづらい場合は、バスケットボールのコート面積の3分の1がだいたい40坪になりますので、それくらいの広さをイメージするとよいでしょう。
また、1坪 は畳の広さで換算すると約2.04畳にあたるため、40坪の土地の全面に畳を敷いた場合は、だいたい80畳分くらいの広さになります。
この広さの敷地に家を建てるわけですが、建物を敷地面積いっぱいに建てられるわけではありません。「建ぺい率」や「容積率」によって、土地の広さに対して建てられる建物の規模は制約されます。
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40坪台の土地なら「アイランドキッチン」「吹抜け」「車2台」も
それでは40坪の土地に家を建てる場合、どのような間取りが可能なのかを山田さんと今井さん、長さんに聞いてみましょう。
「40坪台の土地があると、車を2台置けるようになるので、屋外に駐車場を2台分確保したいというご要望は多いですね。屋内については、こだわりのある場所についてはスペースをしっかり確保する、という考え方がいいかもしれません。例えば、LDKにゆとりを持たせ、アイランドキッチンと吹抜けで明るく、開放的なLDKにするなども可能です」(山田さん)
吹抜けは勾配天井でおしゃれに設計
「明るく開放的なLDKには吹抜けが欠かせないといえるかもしれません。この場合、空間的な広がりを取り入れるために、屋根の形なりに天井を設け、容積を広げると効果的です。
なお、天井裏がなく空気の層をつくれないので断熱管理には気を使う必要があります。また、冷暖房効率も悪くなりますので、工夫が必要です」(長さん)
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リフォームを想定した設計
また今井さんは吹抜けをつくる際はリフォームを想定して設計することもポイントといいます。
「たしかに40坪台の土地に建てるなら、空間を広く使って吹抜けをつくりたいというニーズが多いですね。とはいえ、吹抜けをつくるとその分だけ使えるスペースが狭くなります。そこで、当初から将来のリフォームを想定して設計するのも一つの考え方です。子どもが小さいうちは、広い明るい吹抜けのある1階のリビングで伸び伸び暮らし、大きくなったら上階に床を張り、吹抜けをふさいで部屋にしてしまうのです。ただし、容積率等の制約には考慮する必要があります」(今井さん)
家具の大きさに気をつける
「20坪以下の狭小住宅の場合、スペースが限られるため家具や家電の購入の際には事前に寸法を測るなど細心の注意を払います。ところが40坪台のお宅を建てた場合、広さがある分、大きめの物を買ってしまって失敗するケースが意外とあります。
設計する側としては、新築時にどんな家具や家電を入れたいかは事前に知っておきたいですね。搬入が大変な大型家具が事前にわかれば、例えば内装前に入れてもらうとか、階段の手すりは家具が全てそろってから設置する、といった対策が取れますので」(長さん)
40坪台の土地にオススメの間取り
実際に車2台の駐車スペースを確保した間取りのプランを2つ、山田さんに紹介してもらいました。
駐車場やアプローチなど、屋外にゆとりを持たせたプラン
「これは約48坪の土地に住宅を建てる場合のプランです。4LDKの間取りに、庭と車2台分の駐車場を確保しています。居住空間は比較的コンパクトにして、庭や駐車場、玄関までのアプローチなど、屋外部分にゆとりを持たせています」(山田さん)
吹抜けとアイランドキッチンで明るく開放的なLDKを実現
もう一つは、屋外よりも屋内に面積を取り、明るく開放感のあるLDKを設けた事例です。
「屋外は車2台が停められるスペースを確保したほかは、和室の東側に小庭、アプローチは短くコンパクトにしています。その代わり屋内はLDKを広くとり、明るく開放感のあるものにするために、アイランドキッチンにして東側に吹抜けも設けました。敷地面積は先ほど紹介したものよりも狭い約40坪の土地ですが、4LDKに納戸とウォークイン・クロゼットを確保したプランです」
吹抜けの階段付近に書斎やロフトを設けたプラン
次は今井さんと長さんが紹介する、吹抜けのある広い階段の途中に憩いの書斎が設けられ、収納スペースもたっぷり備えた事例です。
「敷地面積40坪強の土地に建坪17坪の家を建てるプランです。1階リビングからの踊り場のある階段部分は勾配天井を活かした広い吹抜け構造で、途中にくつろぎの書斎が設けられています。1階にLDK、主寝室のある2階にはウォークインクロゼットを設け収納スペースを大きく確保。小屋裏にはロフトをつくっています」(今井さん)
リフォームで将来部屋にすることも可能な吹抜け
次は、同じく広い吹抜けを備えた事例です。広く伸びやかな空間を設けていますが、将来的にリフォームを前提にしたつくりになっています。
「約40坪の土地に建坪16坪の家を建てるプランです。1階のリビングから見上げれば2階を突き抜け屋根まで広がる吹抜け空間。2階の部屋のうち洋室Bは、現在はオープンスペースで、吹抜けを活かした回廊に。将来はリフォームで部屋を設ける前提で設計されています」(長さん)
編集部提案!40坪の間取りなら広々した平屋も建てられる
40坪であれば広々とした平屋も建てられます。中央に広いLDKを設ければ、家族で団らんを楽しむ機会も多くなるでしょう。家にお客さんを招くのが好きな方にも向いています。
また子どもからすると、ある程度成長したときに自分の部屋を持ちたいと思うかもしれません。40坪の間取りであれば、兄弟がいても一人ひとりに部屋を与えられるくらいのスペースを確保できます。
あえて平屋を建てるメリットとして、高所から転落する事故を防ぎやすいといった要素が挙げられます。2階の窓から転落したり、階段から落ちたりする心配もないため、乳幼児や高齢者と暮らす家庭にとっても安心です。開放的な家に住んでみたい方は、平屋を建てることも検討してみてください。
40坪の土地に家を建てる際のポイントを編集部が紹介
40坪の土地に家を建てる場合には、さまざまな利便性を考えたうえで設計することが大切です。イメージに合った家で暮らすためにも、編集部が考える「これだけは押さえておきたいポイント」を紹介します。設計を依頼するときの参考にしてください。
生活や家事を効率良く行える動線にする
間取りによっては無駄な移動が増えることもあります。また、よく使うものが点在していると家事効率が悪くなることもあるでしょう。例えば、部屋全体を掃除している様子をイメージしてみましょう。効率良く掃除を行うためにも、あらかじめ動線を考えなければなりません。
まずはLDKや洗面所、脱衣所などの配置を図に描いてみてください。実際に掃除や洗濯している様子を思い浮かべてみると、自分の理想とする室内のイメージも見えてきます。
また各部屋の配置を決める際には、家族の生活リズムを考慮することも大切です。大人数で暮らしている家庭であれば、脱衣所と洗面所を一緒にすると朝などに混み合う可能性もあります。この場合は脱衣所と洗面所を分けることで、一人ひとりがゆとりを持って利用できるようになります。
以上の点を踏まえたうえで、動線を考えてみてください。
収納スペースを工夫する
広い部屋のある家を建てる際には、収納スペースづくりも工夫しましょう。一緒に暮らす人数が多いと、どうしても荷物が多くなってしまいます。家族の持ち物をあらかじめ把握し、それに合わせた過不足のない収納計画を立てるようにしましょう。
例えば玄関には、シューズクロークを取り入れた間取りにすると効率よく収納スペースを確保できます。下駄箱の設置とは異なり、ベビーカーやゴルフセットといったサイズの大きい用品も収納できる点が強みです。スペースにパイプを設置して、外出用のアウターをまとめて掛けることもできます。
他にも、階段下のデッドスペースに収納をつくるなど、無駄のない収納設計を心がけましょう。
開放感を意識する
広い土地に家屋を建てたとしても、開放感がないとその魅力は薄れてしまいます。広々とした空間を満喫するためにも、開放感を意識してデザインを考えてみてください。
例えば、リビングを「コの字型」の間取りにするといった方法があります。複数の大きな窓を設置することで、さまざまな場所から外を眺められ、開放感を感じられます。
開放感のある室内を実現するには、勾配天井を設けるのも方法の一つ。天井を傾斜させることで視線が縦に抜け、開放的な空間をつくり出せます。メリハリのある空間をつくりたいのであれば、リビング・ダイニング・キッチンのそれぞれで天井の高さが異なるデザインもおすすめです。
断熱性・気密性を高くする
家を建てる際には、断熱性や気密性にも着目しましょう。断熱性とは、外気温を室内に取り入れないようにする仕組みのこと。気密性は外気の出入りの状態を指しており、気密性が高くなるほど外気が入り込む隙間が狭い建物であることを示しています。
開放感のある家のデメリットは、冷暖房が室内に届くまで時間がかかる点です。もし断熱性や気密性が低ければ、風や熱が外に逃げてしまいます。夏場や冬場が特に過ごしにくく、一日中冷暖房を使うようになれば光熱費も上がってしまうでしょう。
断熱性を高めるには、屋根や壁に断熱材を取り入れるといった方法があります。一方で気密性を高くする方法としては、窓枠に樹脂製サッシを採用することなどが挙げられます。断熱性や気密性についても、建築会社に相談してみてください。
約40坪の新築間取りの実例を紹介
SUUMOカウンターを通して約40坪の土地に注文住宅を建てた事例を紹介します。
【Case1】実家を建て替えた3階建ての二世帯住宅は家事動線抜群!
約40坪の土地に立つ実家を建て替え、二世帯住宅にすることを検討したNさん夫妻。限られた土地に二世帯住宅を建てるために3階建てにして、それぞれ2LDKの間取りを確保しました。収納の少なさは、3階を小屋裏収納にすることでカバーしています。また、スペースを有効活用するため家事動線を工夫した間取りにしました。
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【Case2】窓はすべて三重サッシ!吹抜けのリビングは暖房なしでも暖か
約40坪の土地を購入し、延べ床面積約30坪の2階建ての実例です。個室はすべて2階に配置し、1階は上部が吹抜けとなった開放的なLDKと水回りのみの、ゆとりある空間設計となっています。吹抜けを設けると冬に寒くなりがちですが、窓をすべて三重サッシにして断熱性と気密性を高めたおかげで真冬でも暖房なしで過ごせます。
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【Case3】約40坪の土地に建てた、回遊性が高い4LDKの2階建ての家
Kさんファミリーは、育ち盛りの子どもたちがのびのびと暮らせるよう、住宅ローンが残るマンションを売却して庭付きの注文住宅を建てました。モデルハウスへの宿泊体験を通して気に入った、ダイニングとキッチンを回遊できる間取りを採用。収納は「隠す収納」をメインに多めに設けたことで、すっきりした家になりました。
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【Case4】将来の間仕切りリフォームを考慮!2階の寝室にはドアを 2つ配置
約40坪の土地を購入し、2階建ての注文住宅を建てたIさん夫妻。寝室には2カ所ドアを設置して、将来2人の子どもがそれぞれ個室を持てる間取りにしました。階段室やロフト(小屋裏収納)など随所にゆとりをもたせているので、家族の成長に合わせてカスタマイズしていけます。
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40坪の土地に家を建てる際の費用相場
40坪の土地に家を建てる際、費用相場はいくらくらいになるのでしょうか。「建てたい家の延床面積」に「坪単価(家を建てるときの1坪あたりの建築費)」をかけて概算します。
住宅金融支援機構が公表している「2022年度 【フラット35】利用者調査」によると、注文住宅の住宅面積を建設費の全国平均で割り出した坪単価は約99万9000円です。40坪の土地に延床面積40坪(約132㎡)の家を建てるとした場合、建築費は約99万9000円×40坪で約3996万円が費用相場と考えます。
とはいえ坪単価は建てる家のグレードや、建築を依頼する会社によって大きく異なります。まずは家にかけられる予算を明らかにしたうえで、予算内で希望の広さの家を建ててくれる建築会社を探しましょう。
土地と家の費用バランスに注意しよう
土地もあわせて購入する場合は、土地と家の費用バランスに注意が必要です。立地ばかりを重視して土地の価格が高くなってしまうと、家にかける予算が減り理想の家を実現しにくくなります。反対に家のグレードを上げて費用が高くなると、希望の場所に住めなくなるかもしれません。
先ほどと同じ「2022年度 【フラット35】利用者調査」で確認すると、土地付き注文住宅の場合は土地取得費の1坪あたりの全国平均は約24万5000円となっています。これを地域別に見ると、首都圏では約50万4000円と全国平均の倍以上となる一方、近畿圏では37万8000円、東海圏では20万円と首都圏より金額が低くなり、その他の地域に至っては約12万5000円です。
地域 | 土地付き注文住宅の土地取得費(平均) |
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全国 | 約24万5000円/坪 |
首都圏 | 約50万4000円/坪 |
近畿圏 | 約37万8000円/坪 |
東海圏 | 約20万円/坪 |
その他の地域 | 約12万5000円/坪 |
※「2022年度 フラット35利用者調査」を参考に土地取得費を敷地面積で割り算出
同じ40坪の土地で考えた場合、首都圏、近畿圏、東海圏に含まれないその他の地域では約500万円で購入できますが、首都圏では約2016万円とエリアによって開きがあります。
そのため土地の購入と併せて注文住宅を考えるときには、土地代も含めて予算を立て、購入する土地の広さや家のグレード・仕様などを考えることが重要です。土地探しからサポートしてくれる建築会社を選べば、土地と家の費用バランスをとりながら家づくりを進めてくれるので検討してみるとよいでしょう。
ハウスメーカーや工務店に土地探しを依頼するポイントなどについて詳しくは→
土地探しは、工務店やハウスメーカーに依頼できる?依頼時のポイントやメリット・デメリットを解説!
スーモカウンターでできること
これまで見てきたように、40坪の土地があれば、間取りを考える際にも家族のニーズに応じた選択肢が出てきます。土地もあわせて購入するときには、予算内で土地も家もできるだけ理想に近づける提案をしてくれる建築会社に依頼するとよいでしょう。
注文住宅の新築・建て替えをサポートしているスーモカウンターでは、間取りの相談はもちろん、家づくりの不安を解決できる無料講座や、アドバイザーに悩みを相談できる無料の個別相談などを実施しています。個別相談では予算や希望条件の整理、建築会社の紹介など、注文住宅を建てる際のあらゆる不安について、知識と経験のある専任アドバイザーに無料で何度でも相談できます。
40坪の土地に家を建てる際に、どのような間取りが家族のニーズに合うか迷っている人は、スーモカウンターを活用して、家づくりの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
監修/SUUMO編集部(編集部提案!40坪の間取りなら広々した平屋も建てられる/40坪の土地に家を建てる際のポイントを編集部が紹介)
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