寝室は1日の疲れを癒やす大切な空間。おしゃれで快適な寝室にするためにはどんなポイントに気をつけたら良いでしょうか。おすすめのレイアウトや設備について快眠セラピストの三橋美穂さんに聞きました。
目次
寝室づくり、和室・洋室の違いや配置のポイントは?
一言で「寝室」といっても、和室・洋室で雰囲気は大きく変わるもの。また、快適な睡眠のためには寝室の配置(間取り)をしっかり検討することが重要です。
では、寝室とは具体的にどのような場所を指すのでしょうか。和室・洋室の違いを知るとともに、寝室を配置するときのポイントについて確認しておきましょう。
寝室の定義や特徴
寝室とは、住宅において睡眠や休息をとるための部屋のことです。建築基準法では「居室」に分類されます。ライフスタイルによっては、子ども部屋やワークスペースなどを寝室と兼用する場合もあります。
「寝室は人が眠るための部屋なので、温湿度や明るさ、音などの条件が快眠できるように整っていることが理想的です」(三橋さん、以下同)
和室と洋室の違い
和室と洋室の寝室は、使用する寝具に違いがあります。和室では布団、洋室ではベッドを使うことが一般的です。
「昔の日本では畳の上に布団を敷いて眠り、昼間は布団を片付けて部屋を別の用途に使うことが当たり前でした。そのため独立した寝室という概念は近代になって欧米から流入してきたものであり、もともと日本にはない文化なのです。最近は日本でも独立した洋室の寝室が主流になっています」
洋室でベッドを使用するメリットはいくつかあります。寝具が床から浮いているため埃の影響を受けにくいことや、布団と異なり高さがあるため寝起きしやすく、高齢者や体が不自由な人への負担が少ないことです。
寝室の配置
住宅の南側にはリビングや子ども部屋などを設置することが多いため、寝室は北の方角につくられることが多くなっています。また、基本的に外から見えにくい位置にあることから着替えをするための場所としても利用しやすく、寝室の中、もしくは隣にクローゼットを設ける間取りも人気です。
「寝室の場所は防犯面では2階にあったほうが安心ですが、高齢者などの負担を考えると1階に設置する選択肢もあります。何を優先したいかは住む人のライフスタイルによって異なります」
寝室に最適な光とは?窓、照明、カーテン選び
寝室を居心地の良い場所にするためには、光にも注目しましょう。光とは照明のことだけでなく、朝日や月明かりなど、外部からの光も含みます。
ライフスタイルや好みによって、寝室に求める明るさは異なります。
しかし、寝室に最適な光がどのくらいなのか知っておけば、設備選びやカーテン選びの際に役立つでしょう。
窓
「寝室の換気ができるように窓はあったほうが良いでしょう。また、断熱性の高いガラスにしたり内窓を設置することで外の気温の影響を受けにくくなります」
東側から太陽が昇るため、窓の位置は寝室の東側がおすすめです。朝日を浴びると起床しやすくなります。
照明
時間帯や寝室の用途に合わせて明るさを変えることができる調色調光ライトを使うこともおすすめです。
「照明を設置する際には照明の光源が目に当たらないように、顔の真上を避けて設置しましょう」
カーテン
「完全に光を遮ることのない遮光等級2〜3級の遮光カーテンを使うと朝の自然な光で起床しやすくなります。子ども部屋の場合は生活リズムをつくるためにも非遮光カーテンを設置するのがおすすめです」
カーテンの開閉を自動コントロールできるスマートカーテンも発売されています。設定した時間にカーテンが自動で開くためスムーズに目覚めることができます。
完全遮光
1級遮光
2級遮光
3級遮光
寝室を過ごしやすい部屋にする設備とは?(収納、床材、コンセント)
寝室は「体や心を整える場所」でもあるため、物が溢れていたり、配線がごちゃごちゃしたりするのは避けたいところ。
過ごしやすい空間にするためには、収納やコンセントの配置など設備にこだわるのもおすすめです。ここでは、寝室を過ごしやすい部屋にするための設備について解説します。
収納
「ウォークインクローゼットなど、季節外の寝具をしまっておける収納が寝室の中や隣にあると便利です。そうすると、クローゼットから洋服を取り出して寝室内で着替えることもできます」
床
「森林総合研究所の調査によると、寝室に天然の木材を使用すると快適に眠ることができる可能性が示されています。そのため寝室の床などに無垢(むく)材を使用することで睡眠の質が高まると考えられます。木材率30%のとき心拍数が下がってリラックスし、45%のときは逆に心拍数が上がってワクワクすると報告されています。使いすぎには注意しましょう」
コンセント
「寝室にコンセントを設置する場合、ベッドサイドに一人ひとつずつあると便利です。各自のコンセントがあれば、寝ている相手を起こさずにライトを点けたり携帯電話を充電することができます」
【畳数別】寝室の広さごとのおすすめレイアウトは?
寝室の広さに合わせて、ベッドの大きさや、家具のレイアウトを考えましょう。
窓とベッドの位置は睡眠の質にも大きく関わるため、レイアウトの際は光の入り方に注意が必要です。
では、ベッドを置く位置のポイントや具体的なレイアウト例を見ていきましょう。
ベッドを置く位置
快適な眠りのためにはベッドを部屋のどこに置くかも大切なポイントです。
「出入りする場所と頭が近いと落ち着いて眠ることができません。寝ている人の頭がドアから遠い位置になるようにベッドを置きましょう。もしくはドアを開けたときに頭が見えにくいように配置してください」
そして、大切なポイントがもうひとつあります。それはベッドを壁にぴったりと付けないことです。
「ベッドを壁付けしてしまうとマットレスに湿気がこもり、カビが発生しやすくなります。そうならないために、ベッドは壁から10cm以上離して設置しましょう」
ベッドの壁付けは布団が片側にずり落ちる原因にもなります。壁との間に隙間を空けることで、布団がベッドの上に均等に掛かった状態を保ちやすくなります。
6畳のレイアウト例・シングルベッド
こちらは6畳の空間にシングルベッドを一台設置した一人用の寝室のレイアウト例です。頭の位置が扉から遠い場所になるようにベッドを配置します。
8畳のレイアウト例・クイーンベッド
こちらは8畳の空間にクイーンベッドを設置したレイアウトの例です。8畳あれば、シングルベッドやセミダブルベッドを2台並べて置くこともできます。
快適な寝室にするためのポイントは?
音
「寝ているときも聴覚は働いています。寝室の音は40デシベル以下になるよう工夫しましょう。これは図書館と同じくらいの静けさです」
家族と就寝時間が異なる場合は、寝室のドアを防音扉にしたり壁に防音材を取り付けることもおすすめです。
温湿度
「夏は28度以下、冬は18度以上の室温を保ちましょう。湿度は年間を通して40〜60%が快適とされています」
明るさ
「寝ているときの明るさは0.3ルクス以下が理想です。これは、ほぼ真っ暗な状態ですが目が次第に慣れてきます」
フットライトや間接照明を使用する場合は、目に光が入らないように設置しましょう。
換気
「就寝前と起床後に窓を開けて換気をしたり、窓を開けないで換気ができる全熱交換器を取り付けると良いでしょう。空間の二酸化炭素濃度が下がると睡眠の質が上がることが研究で分かっています」
断熱
「窓や壁の断熱をしっかり行うことで、季節を問わず快適に過ごせる寝室になります。窓のフレームはアルミ製だと熱伝導率が高いため、熱を通しにくい樹脂製に変えることがおすすめです。また、3層ガラスや内窓を取り入れるとエアコンをフル稼働させる必要がなくなり省エネにもなります」
動線
快適な寝室にするためには、ベッド周りの動線もポイントのひとつ。特にダブルやクイーンなど、ひとつのベッドを二人で使用する場合は、両サイドから出入りできるようスペースを確保することが大切です。
たとえば、左右どちらかを壁に寄せて配置すると、壁側の人は出入りがしにくくなってしまいます。夜中にトイレに行ったり、就寝時間がずれたりすることを考慮すると、ベッド周りにスペースを持たせたほうが生活動線はスムーズになるでしょう。
また、一人用のベッドを置く場合も、側面の壁からのスペースを設けることでベッドカバーの交換やシーツ替えがスムーズになります。さらに、部屋の通気性が向上するため、結露やカビ、湿気のリスクを減らすことができるでしょう。
寝室をおしゃれにする壁紙の選び方は?
「寝室には落ち着いた色の壁紙を使用するのがおすすめです。白い壁紙は空間に開放的な印象を生みますが、真っ白よりもオフホワイトやベージュなど少し色味があったほうが全体的に落ち着いた雰囲気になります」
また、寝室の壁にアクセントクロスを取り入れる際にもポイントがあります。
「ブルーやグレー、グリーンなどのアースカラーを選ぶと心が休まる空間になります。一方で、赤や黄色、オレンジなどの色は人の気持ちを興奮させる作用があるため寝室の壁紙にはあまり適していません」
おしゃれな寝室にするためのインテリアの選び方は?
寝室は、読書をしたり、音楽を聴いたり、家の中で最もプライベートな空間です。だからこそ、お気に入りのインテリアやリラックスできるアイテムで、自分らしい空間づくりを目指しましょう。
ここでは、おしゃれな寝室にするためのインテリアの選び方についてご紹介します。
落ち着いた色やデザインのアイテムを選ぶ
「サイドテーブルや本棚、時計、テレビ台など寝室に置くインテリアは暮らす人の好みに合わせて選ぶのが良いと思いますが、壁紙の選び方と同様に、心を落ち着けるアースカラーのアイテムを選ぶことをおすすめします」
壁紙やカーテン等とインテリアの風合いが調和しているか、部屋全体のバランスをチェックしながらコーディネートしていきましょう。
カーテンを空間のアクセントにする
「お気に入りの柄のカーテンを取り入れて空間のアクセントにする手法もあります」
寝室に入ったときに目に入りやすいカーテンは部屋の雰囲気の決め手にもなります。北欧、和モダン、ラグジュアリーなど寝室のテーマを決めてカーテンの柄を選んだり、寝具とカーテンの柄を合わせて統一感を出したりするのもおすすめです。
寝室に観葉植物を置いてリラックス
ポトスやアジアンタムなど観葉植物を置くことでリラックスできる寝室になり、空間にちょっとしたアクセントが生まれます。
「観葉植物も人気のインテリアですね。ただしひとつだけ注意点があります。それは受け皿に水を溜めないことです。寝室は北側に位置していることが多いため、観葉植物の水によって寝室にカビや虫が発生する可能性もあるので気をつけてください」
シーリングライトやペンダントライト、おしゃれな間接照明などを取り入れる
間接照明を取り入れることで、落ち付きがあっておしゃれな雰囲気を演出することができます。ただし、光が強すぎると睡眠へ影響が出る可能性も。
そのため、なるべく光の強弱が調整ができる間接照明を選ぶのがおすすめです。
シーリングライトや埋め込み式のダウンライト、ペンダントライトなど、寝室で使うことができる照明の種類は幅広く、それぞれの機能性やデザインを比較して選ぶと良いでしょう。
アロマグッズで心と体を癒やす
香りにこだわりのある方は、アロマディフューザーやアロマキャンドルを置くのもおすすめです。一日の疲れから解放され、心と体が癒やされることでしょう。
ただし、火を使うものには注意が必要。香りに癒やされながらそのまま寝てしまった場合、火事につながる恐れがあります。また、アロマディフューザーにもさまざまな種類があり、中には寝室での使用に適さない商品もあります。
駆動音やお手入れのしやすさなどを確認しながら、火事の心配がなく寝室でも安心して使用できるものを選びましょう。
おしゃれで快適な寝室を手に入れた先輩たちの実例を紹介
注文住宅を建てた先輩たちの寝室も家づくりのヒントにしてみましょう。寝室の使い方や壁紙のチョイスなど、工夫がたくさん詰め込まれた実例を紹介します。
【case1】ワークスペースのある寝室
夫婦でゆったりと落ち着いて暮らせる一戸建てに住みたいと家づくりをスタートしたMさん夫妻。主寝室には書斎スペースを設け、パソコンで作業をしたり本を読んだりできる空間にしました。入り口には扉を設けていませんが、寝室との間の壁が仕切りになっているためプライベート感も備えています。開口を斜めにして出入りがしやすくしたのもポイントです。眠るだけの空間ではない多機能な寝室になりました。
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日々のメンテナンスのしやすさにこだわった、長く心地よく過ごせる住まい
【case2】子ども部屋と主寝室を繋げて広々と活用
家族を守れる耐震性の高い一戸建てに住みたいと希望して家づくりに踏み切ったTさん夫妻。西海岸風のテイストが好きな夫とシンプルなデザインが好きな妻のリクエストを織り交ぜて、おしゃれなマイホームが完成しました。今はまだ子どもがいないTさん夫婦は、将来の子ども部屋と夫婦の寝室を繋げて広々とした主寝室として活用。いずれ子どもが成長したら間仕切りを入れて独立した子ども部屋にする予定だそうです。家族のライフステージに合わせて姿を変える、可変性が高い寝室です。
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耐震性、家事の時短、靴収納など夫婦のこだわりをすべて実現した家
【case3】漆喰とアクセントクロスでナチュラルな寝室に
妻の祖父の土地に新築の家を建てたSさん夫妻。ペットのハリネズミと暮らすSさんは、人間にも動物にも優しい自然素材を使用してこだわりのマイホームをつくりました。寝室の壁には漆喰を採用し、温かみのある雰囲気に。一面だけ取り入れたグレーのアクセントクロスが漆喰のナチュラルな素材感と調和してデザイン性の高いおしゃれな寝室になりました。
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むく床と漆喰仕上げの、自然素材が心地いい家
【case4】7.5畳の寝室に回遊動線をつなげたファミリークローゼットを設置
Oさん夫妻は、住宅ローン控除の基準が変わる前に家を建てようと、ほぼノープランの状態から家づくりをスタート。そんなOさんの家づくりの第一歩はスーモカウンターだったそう。年内完成という目標を定め、休日は家づくりに邁進。4カ月の施工期間を経て検討から1年未満という短期間でこだわりのマイホームを完成させました。
住宅性能と間取りにこだわったという住まいは、住宅密集地でものびのび暮らせる工夫が詰まっています。ファミリークローゼットとつなげた寝室は、ぐるっと回れる動線にしたことで移動しながら身支度ができる設計に。さらにUA値0.47の高い断熱性で、夏は涼しく冬は暖かい快適な寝室に仕上げました。
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短期間で妥協せず叶えたZEH仕様の長期優良住宅
【case5】プロジェクターのスクリーンになる壁紙を寝室に採用
築25年の中古マンションに住んでいたNさんは、管理費や修繕積立金の値上げ、妻の妊娠をきっかけに家づくりを決意。「次世代省エネ基準の家をつくりたい」という明確な目標を立て、スーモカウンターから紹介された5社と面談しました。住宅性能、コスパ、担当者の対応などを総合的に判断し1社と契約。こうして「冬も暖かく、光熱費が抑えられ、住みやすい」理想の注文住宅を完成させました。
共働きで忙しいNさんがこだわったのは、動きやすい回遊動線。玄関ホールからリビング・ダイニング、キッチン、そして洗面所から玄関ホールに円を描くように一周することができます。さらに、リビングや寝室の壁にはプロジェクター用のスクリーンになる壁紙を採用し、遊び心をプラス。壁紙に好きな動画などを映して、おうち映画館を満喫しているそうです。
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マンションを売却し、高断熱・ZEH基準の住宅に住み替えるまで
【case6】広々とした9畳のホテルライクで華やかな寝室
結婚後は賃貸で生活していたNさんでしたが、近くに理想的な土地が売り出されていたことから、思い切って家を建てることにしました。家づくりについて具体的なことは何も考えていなかったため、まずはスーモカウンターの個別相談へ。いろいろな会社を見たいと思い4社と面談し、最終的に選んだのは、比較的低コストで理想の住まいがかなうと実感した工務店でした。
Nさんが一番こだわったのは、大好きなテーマパークのオフィシャルホテルをイメージした寝室。まるでお城のような9畳の寝室は、折り上げ天井とモールディングを組み合わせることで華やかな雰囲気に。さらに、寝室にウォークインクローゼットを設け、快適さを追求しました。カーテンや照明、インテリアを部屋の雰囲気と合わせたことで、より華やかで統一感のある空間に仕上がりました。
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あこがれの空間をローコストで実現。家事ラク間取りもうれしい住まい
おしゃれで快適な寝室にするには?
最後に、おしゃれで快適な寝室にするためのポイントを三橋さんに聞きました。
「音や明るさ、温湿度に気をつけることは心地よい寝室づくりの基本です。人が快眠するための条件を揃えた環境を整えた上で、お気に入りのインテリアなどを取り入れて素敵な空間に仕上げましょう。インテリアや壁紙を選ぶときは、寝室に適したアースカラーなど目に優しい色やデザインを選ぶことがおすすめです」
リビングやキッチンなどと比べると寝室は外から見えにくいプライベートな空間。1日の疲れを癒やす大切な場所です。家族がリフレッシュできる寝室にするためにも、建築段階からしっかりと計画を立てて家づくりを進めていきましょう。
スーモカウンターに相談してみよう
新築一戸建てを建てるならオシャレな寝室にしたい! と思ったら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、依頼先を提案、紹介します。家づくりの基本からお金のことまで専門知識を持ったスタッフがアドバイスするので不安や疑問があれば何でも聞いてください。注文住宅に関する知識を深めるための無料の講座も開催中です。家族が暮らしやすい理想の家にするため、一緒に考えていきましょう。
イラスト/高村あゆみ