外壁によって家全体の印象が変わってしまうこともあるほど、住宅にとって外壁は重要です。また常に風雨に晒されるため、耐久性やメンテナンス性も気になるところ。そこで、一級建築士の佐川旭さんに、住宅でよく使われる外壁の種類とそれぞれの特徴について聞きました。
住宅における外壁の役割
住宅において、外壁は非常に重要な役割を担っています。
「住宅の本来的な目的は、外的な気象条件から住む人を守ることです。雨風や地震に耐えながら、夏の暑さや冬の寒さを和らげることが、外壁の大きな役割の一つです。
また、景観という観点でも外壁は重要です。外壁は、屋根とともに住まいの外観を最も印象付けます。そして、住宅の外観は街の景観にも影響を与えます」(佐川さん、以下同)
主な外壁の種類
住宅の外壁には、さまざま素材や工法が用いられていますが、工法という観点では、大きく「乾式工法」と「湿式工法」の2つに分けられます。
乾式工法と湿式工法の違い
「乾式工法とは、水を使わない工法、湿式工法とは水を使う工法です。昔は建築現場でセメントと水を練ってモルタルをつくり、そのモルタルを外壁の下地や仕上げに使う湿式工法が一般的でした。しかし、最近は工場で成型された板状の外壁用部材を建築現場に持ち込んで、現場ではその部材を組み立てるだけの乾式工法が主流になっています。
乾式工法には、職人の技量に左右されず、安定した品質のものが短い工期で完成するというメリットがあり、湿式工法には、職人の手仕事による独特の風合いが得られるというメリットがあります」
主な外壁の分類
主な外壁の種類を乾式工法、湿式工法で分類したものが次の表です。
乾式工法 | ・サイディング |
---|---|
・木製羽目板 | |
・ガルバリウム鋼鈑 | |
・ALC | |
・タイル※ | |
湿式工法 | |
・塗り壁 | |
・コンクリート打ち放し |
※下地に接着剤で張るタイプのタイルは乾式工法、モルタルを使って張るタイプのタイルは湿式工法
次に、上で挙げた主な外壁について、それぞれの特徴や、メリット・デメリットを紹介します。
サイディングの特徴とメリット・デメリット
サイディングの特徴
サイディングは、工場でつくられる板状の建材で、素材によって次の4つに分類されます。現在、住宅の外壁の大半にはサイディングが採用されています
窯業系サイディング | セメント質と繊維質を主原料とした混合原料を成型したもの |
---|---|
金属系サイディング | ガルバリウム鋼鈑などの金属を成型したもの |
木質系サイディング | 木材を板状に加工したもの |
樹脂系サイディング | 塩化ビニルを主原料とする樹脂を成型したもの |
サイディングのメリット
●窯業系サイディングのメリット
「耐震性と耐火性が高い点、デザインバリエーションが豊富な点、色あせやヒビ割れが少ない点がメリットです」
●金属系サイディングのメリット
「金属板に断熱材が裏打ちされているため、断熱性や遮音性が高く、軽量なので施工しやすい点、耐用年数が長くメンテナンスしやすい点もメリットです」
●木質系サイディングのメリット
「木の持つ素材感やぬくもりが感じられる点と、断熱性の高さがメリットです」
●樹脂系サイディングのメリット
「軽いため耐震性や施工性が高く、メンテナンス性や防水性が高い点もメリットです。また樹脂ならではの色調が楽しめます」
サイディングのデメリット
●窯業系サイディングのデメリット
「パネルとパネルのつなぎ目に使われるコーキングが劣化しやすいため、定期的なメンテナンスが必要です」
●金属系サイディングのデメリット
「サビが出ることがある点、衝撃が加わるとへこむことがある点はデメリットです。コストも平均的な窯業系サイディングよりは割高です」
●木質系サイディングのデメリット
「吸水性が高く汚れやすい点、こまめに表面塗装をメンテナンスする必要がある点はデメリットです。防火性能も劣ります」
●樹脂系サイディングのデメリット
「防火性や遮音性、断熱性は高くありません。コストも割高です」
サイディングの外壁について、もっと詳しく→
サイディングの外壁の特徴は? メリット・デメリットを紹介
木製羽目板の特徴とメリット・デメリット
木製羽目板の特徴
「木製羽目板は、板状にした天然木を壁に連続して張る仕上げのことです。張り方には、同一平面に張る羽目板張りと、羽重ね(はがさね)に張る下見板張りがあります。樹種は、レッドシダーや杉、檜などがよく使われます」
木製羽目板のメリット
「周りの景観に対して味わい深く、やさしい雰囲気を醸し出す点が大きなメリットです。張り替えが容易な点、質量が軽いため家への負担が軽い点などもメリット。断熱性や調湿性も高いですね」
木製羽目板のデメリット
「定期的なメンテナンスが必要です。5年に1回の頻度で塗り替えを行えば、長持ちしますが、その分コストはかかります。日差しによって木が収縮する、自然素材なので模様にバラつきがある、耐火性に劣るといった点もデメリットです」
ガルバリウム鋼鈑の特徴とメリット・デメリット
「ガルバリウム鋼板は、アルミニウム55%、亜鉛43%の合金でできた0.35mm~0.4mmの金属板です。金属板を職人が現場で加工して外壁を仕上げていきます」
ガルバリウム鋼鈑のメリット
「長尺で使用できてつなぎ目が出ないため、すっきりシャープな外観になります。軽量で耐久性が高く地震に強い点、施工しやすい点もメリットです。ヒビ割れすることもありません」
ガルバリウム鋼鈑のデメリット
「金属の中ではサビにくい素材ですが、サビることがあります。他の外壁材と比べると、その点はデメリットです。また、衝撃が加わると、へこんだり、傷が付いたりします。シンプルな仕上がりが好きな人にはいいのですが、窯業系サイディングほど豊富な柄や模様があるわけではなく、デザインが限られる点もデメリットです」
ガルバリウム鋼鈑の外壁について、もっと詳しく→
【実例付き】ガルバリウム鋼鈑の外壁や屋根のメリット・デメリットを解説
ALCの特徴とメリット・デメリット
ALCの特徴
ALCは、「Autoclaved Lightweight aerated Concrete」の略で、高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリートのことです。このALCのパネルが住宅の外壁にも用いられています。
ALCのメリット
「ALCはコンクリートよりも軽く、耐久性、断熱性、耐火性、遮音性が高いというメリットがあります」
ALCのデメリット
「窯業系サイディングと比べて、コストが高く、つなぎ目が多いというデメリットがあります。ALCだけでは防水性が低いため、必ず防水塗装をする必要がある点もデメリットです」
ALCの外壁について、もっと詳しく→
ALC外壁とは? その特徴やメリット・デメリットを解説
タイルの特徴とメリット・デメリット
タイルの特徴
タイルとは、土や石などの原料を高温で焼いた板状の陶磁器です。外壁には、水を吸いにくい「磁器質」のものか、磁器質よりはやや水を吸いやすい「せっ器質」のものが使われます。
タイルのメリット
「高級感のある外観に仕上げることができます。また、耐久性が高く、日々のお手入れや長期的なメンテナンスもラクです」
タイルのデメリット
「建築時のイニシャルコストが高い点はデメリットです。ただし、ランニングコストは低く抑えることができます。また、タイル自体が重く、施工が悪いと剥離する危険があります」
タイルの外壁について、もっと詳しく→
外壁をタイルで仕上げるメリットとは?デメリットについても解説
塗り壁の特徴とメリット・デメリット
塗り壁の特徴
「セメントや土を水で練ったものを使って仕上げる外壁です。表面の仕上げ方には、左官仕上げや吹付塗装仕上げ、ローラー塗装仕上げなどがあります。仕上げ材は、漆喰や珪藻土、モルタル吹付、ジョリパッドなどが多く用いられています」
塗り壁のメリット
「目地がないため、すっきりとした外観になります。また、建物全体に立体的な存在感が生まれます。塗り方によって外壁に表情をつけることもできます」
塗り壁のデメリット
「ヒビ割れしやすく、定期的なメンテナンスが必要です。職人の技量によって仕上がりに差が出ます」
コンクリート打ち放しの特徴とメリット・デメリット
コンクリート打ち放しの特徴
構造体であるコンクリートの壁をそのまま生かした外壁です。
コンクリート打ち放しのメリット
「耐震性が高く、長持ちします。また、無機質で都会的なデザインになります。耐火性、遮音性が高い点もメリットです」
コンクリート打ち放しのデメリット
「他の外壁に比べて圧倒的に工期が長く、コストが高い点がデメリットです。増改築しにくく、10~15年に一度、表面に撥水剤を塗装し直すメンテナンスが必要。施工の難易度も高いですね」
外壁を選ぶときのポイント
最後にあらためて佐川さんに、住まいの外壁を選ぶポイントを聞きました。
「耐候性、つまりさまざまな気象条件に耐えられるかどうかが最も重要。具体的には、耐水性、断熱性、遮熱性、耐火性、耐震性などが十分な外壁を選ぶことです。
また、住宅の第一印象を決めるのは外観なので、自分の思い描く外観に相応しい外壁かどうかも大事なポイント。外壁は、素材の質感や色で印象が大きく変わります。1階と2階で外壁の仕上げを変える場合は、デザイン的に違和感のない組み合わせかどうかも考えて、素材や色などを選ぶといいですね」
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取材協力/
佐川 旭さん
佐川旭建築研究所代表。一級建築士、インテリアプランナー。間取り博士とよばれるベテラン建築家で、住宅だけでなく、国内外問わず公共建築や街づくりまで手がける
取材・文/福富大介(スパルタデザイン) イラスト/タイマタカシ