玄関はもちろん、その玄関へと続くアプローチも、住まいを印象づけるという意味でとても重要です。そんな玄関アプローチはどのように計画すればいいのでしょうか? 素材やレイアウトなど、気になるポイントについて、グランハウス一級建築士事務所の建築士 桐山卓也さんに聞きました。
玄関アプローチとは?
「玄関アプローチとは、家の門から玄関に入るまでの通路、動線のことです。室内における廊下と同じ役割を果たすとともに、住まいの第一印象を決める部分でもあります。玄関を含むアプローチまでが、その家の顔にあたると言ってもいいでしょう」(桐山さん、以下同)
玄関アプローチに人気の素材とは?
「玄関アプローチは家の顔にあたるので、その家全体の雰囲気を表すものにしたいところです。素材に関しても、全体が和テイストの家なら和テイストの素材を使ったアプローチ、家が洋風ならアプローチの素材も洋風にと、家全体とのバランスで素材を選ぶことが大事ですね」
それでは、玄関アプローチに使用される人気の素材と、それぞれの特徴について、具体的に紹介します。
敷石
「敷石は、高級感が出るのが特徴です。使用する石や張り方によりますが、和でも洋でも、どちらのテイストでも合います」
レンガ
「レンガは、洋テイストの住まいで多く使われます。以前はリゾート感漂うプロヴァンススタイルの家にレンガが多く用いられていて、かわいい雰囲気を演出していましたが、最近は無骨で男性的なインダストリアルスタイルやブルックリンスタイルのカッコイイ雰囲気を表現する際にも使われています。経年変化しますが、その変化具合も味になります」
枕木
「玄関アプローチに枕木を使うと、かわいいイメージを演出することができます。安価で使いやすい素材ですが、安価な割にデザインにこだわった印象になります。経年変化しますが、それも個性になる素材です。
メンテナンスとして、数年に一度防腐塗料を塗る必要があります。また、枕木を模したコンクリート枕木や樹脂枕木など、メンテナンスフリーの枕木系材料もあります」
タイル
「タイルを使った玄関アプローチは、高級感が出ます。経年変化が少なく、メンテナンスが楽な素材です。ただし、枕木やコンクリートと比べるとコストは高めになります」
コンクリート
「あまり外構にこだわらない方、シンプルなものがお好みの方には、コンクリートが無難な選択になります。いくつかに分割したコンクリートとコンクリートの間に芝を植えるなどしてデザインすることもできます。
汚れは、高圧洗浄機で掃除するときれいになりますが、同じところばかり歩くとムラが出てしまうので注意が必要です」
インターロッキング
インターロッキングは、コンクリートブロックをレンガのようにかみ合わせた舗装のことです。
「主に公共施設や、門から家まで車で行けるような大きな住宅のアプローチで使われています。テイストとしては洋風の住宅向きです」
ブロックとブロックの隙間から雑草が生えてくることがあるため、除草のメンテナンスは必要です。
砂利
「少し粗目の砂利は、オーガニックな雰囲気の家のアクセントとして、玄関アプローチによく用いられます。形状が不規則で、直角や水平なラインがないので自然な雰囲気を演出できます。石の色や種類も豊富で、いろいろなテイストに対応できるのも特徴。そして、何より安価です。
砂利が減ったら補充するか、減るのを抑えるために石を固める樹脂のスプレーや砂利舗装材を用いればメンテナンスが楽になります」
洗い出し
小石を混ぜたモルタルの表面を、完全に固まる前に水で洗い出して、小石の頭を見せるようにした仕上げを洗い出しといいます。
「洗い出しの玄関アプローチは、和テイストの住まいによく合います。また、石の大きさや色で雰囲気を変えることができます。大きい砂利、または黒い砂利や白い砂利の場合は和風になり、砂利を3分(約10mm)程度に細かく、量を少なくするとモダンな感じになります。
劣化がわかりづらいので、あまりメンテナンスに気を遣う必要がありません」
計画のポイントは?
玄関アプローチを計画するときには、どのような点に気をつければいいのでしょうか。ポイントごとに紹介します。
幅
「玄関アプローチに適した幅というのは特にありません。あまりアプローチのためだけの面積を割くことができない場合も多く、駐車場の脇のスペースがアプローチに当たる、というケースは多々あります。幅は、敷地面積との兼ね合いで決まることが多いですね」
段差やスロープ
「通常は、高低差があれば段差を設けます。もちろん、施主の方からの要望があればスロープにも対応しますが、その場合、最初の設計段階から綿密に計画しなければなりません。スロープの距離が取れないと、勾配がきつくなって上りづらくなってしまうため、玄関の位置や向きを変えるなど、距離を取る工夫をする場合もあります。玄関にスロープを導入したい場合は、設計の前に相談するのがよいでしょう」
曲線やクランクの利用
「玄関アプローチは、敷地面積の都合から直線になってしまうことが多いですが、あえて曲線を用いて、植栽の間を抜けるようなアプローチにすると、かわいいイメージを演出できます。一方、直角に折れ曲がるクランクのアプローチにすると、都会的なイメージになります」
色の選択
「建物や他の外構とのバランスがいい色を選ぶといいでしょう。オススメは、玄関ポーチに合わせて外構から玄関ポーチまでつながっているイメージにすること。アプローチだけを際立たせるような使い方は、バランスが悪くなるのでおすすめしません」
ライティング(照明)
「玄関アプローチをライティングするというよりも、アプローチ脇の植栽をライトアップすることで、結果的にアプローチに明かりが落ち、誘導灯の役割もするというケースが多いですね。
防犯目的で、暗くなると点灯する明かりセンサーや、人が近づくと点灯する人感センサー付きの照明を設置するケースもあります」
植栽
「植栽は、玄関に至るまでのワクワク感を演出するために大事な役割を担います。シンボルツリーなら、アオダモ、トネリコ、枝ぶりの細いモミジなどが人気です」
防犯対策
「防犯上はしっかりとした門扉を設けて、そこから玄関アプローチに入る方がいいのですが、最近はオープンな外構が人気です。取り組みやすい防犯対策としては、玄関アプローチや家の周りに砂利を敷くこと。踏みしめた際に音が出るので、防犯対策になります。また、人感センサー付きの照明をつけるのも効果的です」
玄関ポーチのポイントは?
外部から入って、玄関アプローチを通った先には、玄関ポーチがあります。この玄関ポーチとはどのようなものなのでしょうか?
玄関ポーチとは
「玄関ポーチは玄関に入る一歩手前のスペースのことです。このスペースで、荷物を置いて鍵を出すことが多いため、雨にぬれないように屋根を設けたり、2階部分よりも少し下がった位置にしたりするなど、配慮することが多いですね」
玄関ポーチを計画するときのポイント
「小さいお子さんのいる家庭では、子どもを抱きながら玄関に入るケースも考えられるので、少し荷物を置いて休憩できるくらいのスペースは欲しいですね。
デザイン的には、外部に玄関を見せるか、隠すかで雰囲気が変わります。玄関を見せる場合はかわいくなり、玄関を隠すとカッコイイ雰囲気になります」
玄関アプローチの実例を紹介!
ここでは、実際にグランハウス一級建築士事務所が手掛けた住宅の玄関アプローチを実例として紹介します。
【実例1】曲線を用いたアプローチ
「なだらかな曲線のアプローチです。素材はコンクリートでシンプルですが、脇に植栽を植えてワクワク感を演出しています」
【実例2】前面道路から直角に曲がったアプローチ
「駐車場の横、前面道路からは直角に曲がって玄関に至るコンクリートのシンプルなアプロ―チです。植栽の間を通り抜けるような配置になっています」
【実例3】素材を変えて区切った駐車場兼用の玄関アプローチ
「駐車場兼用の玄関アプローチです。玄関と外部をつなぐ直線の素材をタイルにして、他と見た目を区別することで、アプローチであることを明示しています。ただし、段差がないのでアプローチ部分にも駐車することができます」
【実例4】緑が続くナチュラルな印象の玄関アプローチ
「細い敷石の間に天然芝を植えてナチュラルに演出した玄関アプローチです。外から門扉を抜け、玄関までをつないでいます。その一方で、駐車場には砂利を敷き、素材を変えてアプローチと駐車場を区切っています」
【実例5】砂利とコンクリートの玄関アプローチ
「砂利とコンクリートを組み合わせたアプローチです。脇には照明も設け、夜になると植栽とアプローチを照らします」
【実例6】緩やかな階段を設けた玄関アプローチ
「植栽をたっぷりとあしらった玄関アプローチです。モミジをシンボルツリーにして、アオダモやキンモクセイ、ベリーなどさまざまな種類の樹木を植えました。高低差のある家なので、アプローチには緩やかな段差が設けてあります」
玄関アプローチが素敵な住まいを建てた先輩たちの事例を紹介!
スーモカウンターで、玄関アプローチが素敵な住まいを建てた先輩たちの事例を紹介します。その人たちが、どんな点にこだわり、どんな住まいを実現したのか、実例を参考に学んでいきましょう。
【case1】柔らかい雰囲気の玄関アプローチがおしゃれな家
当初、建売住宅を検討していたKさんは、CMで見かけたスーモカウンターに相談しに行き、自分たちにも建てられそうだと、注文住宅を検討することに。住みたいエリアや予算のイメージ、好みのデザインテイストなどを伝え、6社の建築会社を紹介してもらい、そのうち3社と面談。希望エリアの土地を見つけてくれた1社に依頼先を決定し、「限られた土地でものんびりくつろげて、居心地のいい家」をテーマにした家づくりをスタートしました。
完成した住まいは、エクステリアにもこだわった点がポイントです。玄関アプローチにはピンクの色みが入った砂利を敷き、枕木風コンクリートで柔らかい雰囲気を出しました。
この実例をもっと詳しく→
限られたスペースを最大活用し、駐車スペースも2台確保!のんびりくつろげる居心地のいい家
【case2】シンボルツリーが帰宅を出迎えてくれる玄関アプローチ
アパート住まいの手狭さや、収納の少なさを不満に思い、「自分たちの好みに合うような、シンプルモダンの家をつくりたい」と考えるようになったOさん夫妻は、商業施設内にあるスーモカウンターを訪れました。そこで「スタイリッシュでモダンな家」という希望を伝えると、予算内でスタイリッシュなデザインの家づくりがかないそうな3社を紹介され、最終的にモデルハウスが印象的だった1社と契約することに。
完成した新居の玄関アプローチは、外壁でアクセントをつけました。暗くなってから帰宅すると、ライトアップされたシンボルツリーが出迎えてくれます。
この実例をもっと詳しく→
室内からもシンボルツリーが楽しめるスタイリッシュな家
【case3】シンプル和モダンな家に来客を誘う光る敷石のアプローチ
築20年のアパート暮らしの不便さと消費税増税をきっかけに住まいづくりをスタートしたIさん夫妻。夫の祖母が住んでいた土地を譲り受け、最寄りのスーモカウンターで紹介された施工会社に建築を依頼しました。スーモカウンターでは計3社を紹介され、その中から予算に収まる見積もりを出してきた地元密着型の施工会社を選択。
希望したのは、「木のぬくもりを感じられるシンプルな和モダン」の家。玄関アプローチには敷石を採用しました。ピカピカ光る石は外構施工時に現場で割って張ったものです。
この実例をもっと詳しく→
理想だった「木のぬくもりと和モダン」を備えた家が狭山緑地と同化する暮らし
【case4】枕木でカーブをつけたかわいい印象のアプローチ
マンション暮らしより、注文住宅を建ててローンを払ったほうが安くなるのではと、最寄りのスーモカウンターを訪れたSさん夫妻。そこで3社の建築会社を紹介されましたが、最終的には「静岡県内で数多くの建築実績がある」という理由で1社に決定。家を建てるに当たって、たくさんのこだわりがありましたが、建築会社の細やかなフォローによってすべて実現したそうです。
芝生の庭と玄関アプローチについては夫の友人の庭師に依頼したそう。「イメージだけを伝えたら、枕木を使った理想通りのアプローチが完成した」と大満足です。
この実例をもっと詳しく→
子育ても楽しく!随所に夫婦のこだわりがつまった住まい
玄関アプローチを計画するときのポイント
最後にあらためて桐山さんに、玄関アプローチを計画するときのポイントを聞きました。
「家の間取りを設計する段階でアプローチについてもきちんと考えることが大事です。間取りが完成した後で外構を考えるのでは、使いづらく、デザイン的にもいま一つのものになってしまいがちです。
玄関をどこにつけるか、つまりどう暮らすかによっても最適なアプローチは変わるので、計画の段階で、どのような暮らし方をしたいかも含め、よく考えておくといいでしょう」
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スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「玄関アプローチのプランニングが上手な建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりに当たって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望をかなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりのダンドリや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合わせください。
取材協力/株式会社グランハウス一級建築士事務所
取材・文/福富大介(スパルタデザイン)