一戸建ての家はマンションと比べて地面に近いため、窓や玄関から虫が入りやすくなります。場合によっては、建物や家具に悪影響を与える害虫が侵入することもあるでしょう。マンションなどに比べて虫が侵入しやすい一戸建てですが、きちんと対策を講じることで侵入リスクを回避できます。
そこで今回は、一戸建ての土地選びや設計、そして入居前後にできる虫対策についてご紹介します。さらに、実際に虫対策を行い、快適な住環境を実現した実例も合わせてご紹介しますので、家づくりの参考にしてみてください。
住まいと暮らしの敵「害虫」とは?
人間の生活に直接または間接的に害を与える虫のことを一般的に「害虫」と呼んでいます。害虫にはさまざまな種類があり、その影響も多様ですが、住まいとの関わりが深い害虫も数多くいます。まずは、主に住宅や暮らしへ影響を与える害虫と、その特徴について紹介します。
シロアリ
シロアリは、主に枯れた植物のセルロースを食物にする虫です。
「建築物、中でも特に木材を好むため、木造住宅の床下や柱など、住宅の構造を支える部材を食われたときの被害は甚大です。
また、実は木造以外の住宅にとっても、とても怖い害虫であることはあまり知られていません。エサとなる木材に至る途中のコンクリートや金属、プラスチック等も食いちぎられたり、壊されたりするためです」(藤原さん、以下同)
ゴキブリ
ゴキブリは、見た目が気持ち悪いだけでなく、菌やウイルスを運んで人の健康を害する「衛生害虫」です。
「ゴキブリは最もポピュラーな害虫の一種。暗く、暖かく、狭く、湿った環境を好みます。また、卵が孵化し始めるのは6月頃からですが、冬を越した成虫は3月頃から活動しはじめます」
コバエ
コバエというのは俗称で、キッチンやゴミ捨て場に群れて発生するのが主にショウジョウバエの仲間、浴室など水回りに発生するのが、主にチョウバエの仲間です。
「どちらのコバエも菌を運んでくるわけではありませんが、見た目がうっとうしい、気持ち悪いというのが主な害です」
ダニ
室温20~30度、湿度60~80%の環境を好み、寝具やクッション、ぬいぐるみ、絨毯などに潜んでいます。
「ダニもポピュラーな衛生害虫の一種です。主にアレルギーの原因として、またまれに人の血を吸ったり、皮膚を噛んだりするなど、炎症を起こすこともあります」
衣類を食べる虫(イガ、コイガ、カツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシ)
衣類を食べる虫で代表的なのは、イガ、コイガ、カツオブシムシ、ヒメマルカツオブシムシの4種類。どの種も幼虫が衣類を食べます。
「衣類を食べる虫は、たんぱく質を好む傾向があり、ウールやシルクなどの動物性たんぱく質系の繊維や、服に残された汗や食べこぼしなどのたんぱく汚れが狙われます」
また、これまで紹介した以外の害虫として、住環境によっては、ムカデ、ノミ、カメムシ、ハチなども人の暮らしに害を与えます。
一戸建てで虫が侵入してきやすい場所とは
一戸建ての中でも特に虫が侵入してきやすい場所は、以下の4箇所です。
- ベランダ・バルコニー・テラスなど
- 窓や網戸の隙間
- 換気扇・給排気口
- 室外機のホース
ベランダ・バルコニー・テラスなど
テラスやデッキが1階にある場合、地面とつながっているため害虫が侵入しやすい場所です。また、2階以上であっても洗濯物を干すために頻繁にベランダに出入りしていると、窓を開けている間に虫が入り込むことがあります。また、洗濯物を外干ししていると、干している間に服の中に虫が入り込むこともあるでしょう。
特にベランダで植物を育てていたり、排水溝が汚れていたりする場合は、さらに注意が必要です。植物を育てていると、花粉を求めてハチが入ってくることがありますし、汚れた排水溝は蚊やハエ、チョウバエなどが発生する原因となります。
窓や網戸の隙間
窓や網戸の立て付けが悪いと、閉めても隙間ができてしまうことがあります。新築の住宅ではそのようなケースは少ないかもしれませんが、施工の不備が原因で立て付けが悪くなることもあるでしょう。
換気のために窓を開ける際、網戸にしておけば虫の侵入を防げると思うかもしれません。しかし、引き違い窓の場合、網戸と窓のサッシがきちんと重なるように開けないと、網戸と窓の間に隙間ができてしまい、そこから虫が入り込んでしまいます。
また、トビムシのような非常に小さな虫も存在し、網目をすり抜けてしまうこともあります。虫の侵入を確実に防ぐためには、より細かい網目の網戸を選ぶと良いでしょう。
換気扇・給排気口
換気扇や給気口などの通気口からも虫が侵入する可能性があります。特に換気扇の通気口は大きいため、虫が入り込みやすいです。そのため、虫が入らないように事前に対策を講じる必要があります。
「換気扇は室内の空気を外に出すため、虫は入ってこられない」と考える方もいるかもしれません。しかし、換気扇がきちんと機能していないと無風に近い状態になってしまうため、小さな虫でも侵入できてしまいます。換気扇からムカデが侵入する可能性もあるため、事前に換気扇用のフィルターを購入して、家の中に侵入できないよう隙間をなくしておきましょう。
室外機のホース
エアコンの室外機から出ているホースは、冷房や除湿モードで使用する際に発生する水を外に排出するためのものです。エアコンが部屋の暖かい空気を吸い込み、熱交換器で冷やすと温度差によって結露が生じます。この結露水がドレンホースを通じて外に流れ出る仕組みです。
夏場はエアコンの使用頻度が高いため、水が流れ続けていることで虫の侵入は少ないですが、エアコンを使わない季節になると虫がホースから家の中に入り込む可能性が高まります。虫の侵入を防ぐためにも、ホースの先端に防虫キャップを取り付けましょう。
土地選びから設計時までにできる虫対策は?
一戸建てを新築することになったとき、設計時までにできる虫対策はあるのでしょうか?
虫の少ない立地を選定
藤原さんによると、虫の発生しやすい立地と発生しにくい立地があるといいます。
「虫は湿気を好みます。そのため、虫が気になる人は、川沿いなどの立地は避けた方がいいでしょう。一見して川とはわからない暗渠(あんきょ。地中に埋設された川や水路)なども同様です。
また、湿気は土の量に比例するため、都会よりは土の多い郊外の方が虫が出やすい傾向があります。虫を避けるなら、地方でも郊外ではなく街の中心部の方がおすすめです」
虫の付かない植栽を選定
「植栽を計画する際に、虫除け効果が期待できるハーブなどを植えるのは効果的です。例えば、ローズマリーは虫除け効果がある上に世話が簡単なので、取り入れやすいでしょう」
虫を寄せ付けない設備を計画
設備を計画するときにできる虫対策もあります。
「新築の住宅には必ず付けることになっていますが、24時間換気システムによって室内に虫が発生しにくい湿度を保ってください。スイッチを切らず、常に換気しましょう。
虫対策には網戸の設置も重要です。窓を開けるときには、必ず網戸をして開けるクセをつけてほしいですね。照明に集まる虫もいるので、虫が入りづらい照明の位置を建築会社に相談したり、虫を寄せ付けないLEDライトを使ったりするという方法もあります」
建築・施工時にできる虫対策は?
設計が終わり、実際に建築・施工の段階に入ってからできる虫対策にはどのようなものがあるのでしょうか?
構造に適したシロアリ対策を実施
「鉄骨造やRC造でもシロアリ被害があり得るとはいえ、やはり被害が大きいのは木造住宅です。木造住宅においては、土台近くの木材をシロアリの嫌うヒノキやヒバ、防蟻処理を行ったものにするという対策があります。
また、シロアリは暗くて空気がよどんだ、じめじめした環境を好みます。そのため、建物下部の土自体を薬剤やシートなどで処理しておく、建物床下の通風が滞らないよう基礎工事の際に工夫するなどの対策もあります。
ただし、新築の注文住宅ならば基本的にシロアリ対策を施すことが標準になっているはずです。気になる方は建築会社に確認しましょう」
木屑などのゴミ捨てを徹底する
「建築中に発生した木屑などのゴミを床下に放置すると、そこから虫が発生することがあります。気になる人は、建築会社の現場監督に相談したり、建築現場を見に行ってゴミの管理状況をチェックしたりしておくといいでしょう」
雨が溜まる窪地を排除する
「敷地内に窪地ができないようにすることも大事です。窪地に雨水が溜まり、そこから虫が発生します。ただし、どのような家の周りにも排水溝はあり、そこに水があれば対策はなかなか難しいというのが現実です」
入居前後にできる虫対策は?
藤原さんによると、入居前後の虫対策も非常に重要だといいます。どのような対策があるのでしょうか?
引っ越し時の段ボールは要注意
「新築なのにゴキブリが出たという場合、実は引っ越しの際に前の住居から自分で連れて来た可能性があります。またスーパーなどでもらった荷造り用の段ボールに卵を産み付けられていることがあるので、荷造り用の段ボールはできるだけ新品のものを使いましょう。また、新品でも使用した段ボールは速やかに処分した方がいいですね」
できれば寝具は新調する
「実は、人は日常的に億単位のダニと暮らしています。ダニが多く潜んでいるのが寝具です。まれに新居が前の住まいよりも湿気っぽい家だと、ダニが爆発的に増える可能性があります。
引っ越してから、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状がひどくなった場合、ダニの大量発生が疑われます。症状が出た際にはできれば、寝具を新調した方がいいでしょう」
室内に飾る花や観葉植物も要注意
「切り花に衣類を食べる虫がついてきてしまうことがあります。部屋の中に花を飾る習慣がある人は、飾る前に虫が付いていないかをチェックしてください。
観葉植物は、虫よりもカビの温床になりやすいのですが、カビも無視できません。カビをエサにしてチリダニが増え、チリダニが増えるとチリダニを食べるツメダニが増え、ツメダニが増えるとツメダニを食べるゴキブリが増えます。さらに、ゴキブリが増えるとそのフンなどがカビの温床になるという悪循環に。これを抑えるためには、次で紹介する湿気対策が重要です。
また、観葉植物自体や周りに生えるキノコを好んでキノコバエというコバエが発生することがあります。土自体に産卵されていると予防は難しいのですが、発生したときには土に挿して使用するタイプのコバエ取りで駆除しましょう」
湿気対策を徹底する
「例えば、近所なのにゴキブリが出る家と出ない家があります。ゴキブリも、より自分たちが暮らしやすい環境を選ぶからです。ゴキブリにとって暮らしやすい家とは、じめじめと湿気の多い家です。
ゴキブリだけではなく、多くの害虫は湿気の多いじめじめとした環境を好みます。基本的に新築の家は湿気が少なく虫が発生しにくい環境といえるので、常に換気を意識して、湿気がこもらないように注意してください」
こまめなゴミ捨て
「害虫対策として、こまめなゴミ捨ては必須です。特に生ゴミはコバエやゴキブリが発生する原因になります。生ゴミは放置せず、密封して処理しましょう。また、ビールの瓶や缶をよく洗わないで置いておくのもNG。ゴキブリはビールの残り汁も大好物です」
防虫スプレーを使用する
防虫スプレーは、虫が嫌がる成分が含まれており、スプレーした場所に虫が寄り付かなくなるアイテムです。スプレータイプは虫が入りやすい場所にピンポイントで噴射でき、手が届きにくい照明周りなどにも使うことができます。
防虫スプレーにはさまざまな種類があり、使用場所によって使い分けられているケースが多いです。窓や網戸に使えるタイプ、照明に使えるタイプ、クローゼットや衣装ケースに使えるタイプなどがあります。
ただし、防虫スプレーは吊り下げ型や置き型と比べて効果の持続期間が短いことが多いです。製品には持続期間が表示されているので、その期間に合わせて定期的に使用することが大切です。
照明も考慮する
夜になると、多くの虫が街灯に集まっているのを見たことがある人もいるでしょう。虫は紫外線を発する光に引き寄せられる習性があるため、白熱電球を使った照明には虫が集まりやすいのです。
一戸建ての外に照明を設置する場合は、LED照明をおすすめします。LED照明は白熱電球と違って紫外線の発生量が少ないため、虫が集まりにくいです。特に玄関灯や庭、エントランスなどの出入りが多い場所には、LED照明を設置することで虫の寄り付きにくい環境をつくることができます。
もし白熱電球からLED照明への取り替えが難しい場合は、照明に使える防虫スプレーを利用するのが良いでしょう。
洗濯物を干すタイミングにも気を付ける
洗濯物に虫が付いて家の中に入ってしまうこともあります。洗濯物からの侵入を防ぐためには、洗濯物を干すタイミングに注意することが大切です。
基本的に、洗濯物は朝や昼間に干し、夕方前には取り込みましょう。虫は夕方から夜にかけて活発になるため、その前に取り込むと虫が付きにくくなります。特に、夜間に洗濯物を干すと虫が卵を産み付ける可能性があるため、夜は干さないようにしてください。
さらに、白い洗濯物は虫が付きやすいので、色のある洗濯物で挟んで干すと良いでしょう。また、甘い香りの柔軟剤は虫を引き寄せるため、無臭やミント系の柔軟剤に変えるのもおすすめです。洗濯物保護カバーや吊るすタイプの防虫剤も効果的に使いましょう。
洗濯物を取り込む際には虫が付いていないか確認し、払ってから取り込むようにしましょう。
このような対策を実践することで、洗濯物に虫がつくのを防ぎやすくなります。
虫対策を実践して快適な住まいを実現した先輩の実例を紹介!
スーモカウンターで、虫対策を実践して快適な住まいを実現した先輩の実例を紹介します。先輩が、どのような点にこだわり、どのような住まいを実現したのか、実例を参考に学んでいきましょう。
【case1】庭木が生い茂っていた庭は、虫の付きにくい木だけを残してスッキリ広く
マンションから一戸建てへ引っ越すことにしたUさん夫妻。注文住宅と中古リノベーションで迷って、スーモカウンターへ電話で相談しました。そこで4社を紹介してもらい、そのうち2社との打ち合わせ。最終的には、建築事務所に勤務する身内のアドバイスと担当者の人柄が決め手となり、一戸建てのリノベーションが得意な会社と契約。候補物件もすぐに決まりました。
以前の庭には松の木など多くの木々が生い茂っていましたが、手入れがしやすく虫も付きにくいと教えてもらったモミジ、モチノキ、ツバキ以外はすべて伐採。スッキリとした広い庭に満足気です。
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【case2】日当たり良好で虫対策もバッチリな家
賃貸アパートから林の中の一軒家に引っ越したSさん夫妻は、日当たりが悪く、虫が大量に発生する環境に悩んでいました。このまま賃料を払い続けるのは無駄だと感じ、住宅展示場を訪れていた際に、友人からスーモカウンターを紹介されます。
スーモカウンターでSさん夫妻は、「建築費を抑えてローンの負担を軽くしたい」「親切で腕のある大工さんがいる会社」「地震に強い家」を希望として伝えました。その結果、3つの建設会社を紹介してもらい、そのうちの1社は契約前に土地の地盤状況や浄化槽の上に駐車できるかどうかを調査してくれたそうです。そのため、Sさん夫妻はその会社に施工を依頼しました。
最終的にすべての条件を満たし、日当たりが良く、虫がほとんど出ない快適な住まいを実現することができました。
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【case3】赤ちゃんのために虫対策を考えた家
Fさん夫妻は、これまで賃貸アパートで生活していましたが、第1子の誕生を機に新築の一戸建て住宅への引っ越しを考え始めました。住んでいたアパートは、周囲に畑や川があり、クモや蚊などの虫が頻繁に家に入ってくる環境だったそうです。特に、まだ自分で虫を追い払えない赤ちゃんへの影響が心配で、新築住宅の購入を真剣に検討することにしました。
しかし、夫妻には家づくりに関して相談できる人が少なかったため、友人に紹介されたスーモカウンターを訪れます。スーモカウンターで住まいの希望や予算をアドバイザーに伝えると、5社の建築会社を提案されました。そのうち3社との打ち合わせはスーモカウンターが手配してくれ、実際に話を聞くことに。
それでも建築会社選びに迷った夫妻は、再びスーモカウンターを訪れました。そこで新たに提案された建築会社とも話をし、最終的にその会社に決めました。Fさん夫妻は、「希望通りの家を建てることができました。自分たちだけで多くの建築会社を調べるのは大変だったので、スーモカウンターに相談できたことはとても助かりました」と話しています。
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初期投資が高くなっても、長い目で見るとコストパフォーマンス抜群の家
虫対策のポイントは?
最後にあらためて藤原さんに、虫対策のポイントを聞きました。
「害虫は、持ち込まない、増やさない。そのためには、何よりも換気・乾燥が大事です。つまりは、掃除をすること。
また最近は、寝具を干さなくなっている家庭も多いようで、カビやダニの発生が心配です。ベランダなどに布団を干すことができない場合、布団乾燥機の活用はマストです。
洗濯できるカバー、シーツなどを定期的に交換することも寝具の乾燥につながります。寝具の上は毎日6~8時間も過ごすところなので、できるだけ清潔にしてほしいですね」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「害虫対策に詳しい建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望を叶えてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりのダンドリや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合せください。
イラスト/てぶくろ星人
監修/SUUMO編集部(一戸建てで虫が侵入してきやすい場所とは、防虫スプレーを使用する、照明も考慮する、洗濯物を干すタイミングにも気を付ける)
住生活ジャーナリスト。大手住宅メーカー営業職を経て主に住まい、暮らしまわりの記事を専門に執筆する傍ら、監修、企画、広告、アドバイザリー等の業務に携わる。