家の中にちょっとした畳のスペースがあると、子どものお昼寝や、洗濯ものを畳んだりするときに活用できて便利です。畳スペースはリビングなどの床から1段高い小上がりになっていることも多くその場合は「小上がり和室」などと呼ばれます。この小上がり和室にはどのようなメリット・デメリットがあるのか、また小上がり和室を計画するときに押さえておきたいポイントはどこか、一級建築士の佐川旭さんに聞きました。
小上がり和室とは?
小上がりとは、部屋の床から一段高くなっている場所のことで、小上がりに畳を敷いた空間が「小上がり和室」です。部屋の一画にある畳のコーナーなので、「畳コーナー」と呼ばれることもあります。
小上がり和室の特徴
では、小上がり和室には、どのような特徴があるのでしょうか?
「リビングなどの一画に設けることが多く、多目的に使われます。小上がりの高さには特に決まりはありませんが、腰かけるのにちょうどいい40cmくらいの高さのものが多いのではないでしょうか」(佐川さん、以下同)
小上がり和室のメリットは?
段差を利用して収納できる
「小上がり和室は、段差によって生まれたスペースを収納として活用できます。季節物の衣類を入れたり、寝具を入れたり、普段あまり使わない物の収納場所に適しているほか、引き出しをつければ子どものおもちゃなど、よく使うものの収納場所としても便利です」
椅子代わりに使える
「ちょっとしたベンチ代わりにもなります。何人か並んで座ることができるので、来客が多いお宅などは、重宝するでしょう。また、高さを利用して掘りごたつをつくるケースもあります」
空間に変化が生まれる
「洋風リビングの一画に一段上がって和室があることで、空間のアクセントになりますし、花を飾ったりすれば、癒やしの空間になります」
家事・育児に重宝する
「洗濯物を畳んだり、アイロンをかけたり、小さい子どもを寝かしつけたり、ちょっとした家事や育児にも重宝します」
小上がり和室のデメリットは?
小さな子どもが落ちてけがをする?
「子どもの年齢にもよりますが、はいはいができるくらいの赤ちゃんだと、目を離したすきに段差から落ちてけがをする危険もあります。そのため、小さなお子さんがいる家庭は、段差を低くした方が安全です」
ロボット掃除機が使いづらい?
「リビングの一画に小上がり和室という間取りですと、ロボット掃除機でリビングと小上がり和室を一緒に掃除することはできません」
続きのリビングが狭く感じる?
「リビングと小上がり和室が空間としてはつながっていても、見た目の雰囲気が変わるため、実際よりは狭く感じるかも知れません。ただ、これも段差の高さによって感じ方が変わります。段差が40cmくらいだと別の空間という印象が強くなりますが、低くなればなるほどリビングとの一体感は生まれます」
小上がり和室を計画するときに検討したいポイントは?
小上がり和室のメリット・デメリットを踏まえて、計画するときにはどのような点に気をつけて検討すればいいのでしょうか?
広さ
「広さは、3畳~4.5畳くらいが一般的です。6畳以上になると、普通の和室にすることが多いでしょう。逆に狭すぎても用途が限られてしまい、使いづらくなってしまいます」
仕切りの有無
「小上がり和室に襖などの建具を設けて仕切れるようにすれば、個室になるので、親戚や友人が泊まりにきたときに、客間として使えます。さらに、建具を引込み戸にしたり、上からつるしたりすれば、開け放したときの開放感も維持できます」
設ける位置
「小上がり和室は、リビングの一画に設けることがほとんどです。個室の一画に設けるケースもありますが、ベッド代わりなど用途が限られてしまうでしょう。小上がり和室は多目的に使えることが大きなメリットなので、用途が限られてしまう使い方はもったいないと感じます」
畳の種類
「フチありの畳だと一目で何畳なのかわかりますが、フチなしの畳は直観的にそれがわかりづらいので、実際の広さよりも広く感じる効果が期待できます」
小上がり以外の収納
「小上がり和室は気をつけていないと、すぐに荷物置き場のようになってしまいがちです。そのため、小上がりの段差を収納として活用するのはもちろんですが、小上がり和室の横にも普段使いの収納があると便利です。すぐに物が片づけられるようにすることで、使いやすい空間になります」
小上がり和室のある住まいを建てた先輩たちの事例を紹介!
スーモカウンターで小上がり和室のある住まいを建てた先輩たちの事例を紹介します。その人たちが、どんな点にこだわり、どんな住まいを実現したのか、実例を参考に学んでいきましょう。
【case1】立体的な広がりを感じたいという希望を小上がり和室で解決!
住宅ローンの返済期間を考慮して、本格的なマイホーム計画に乗り出したHさん夫妻。家族で出かけたイオンモールでスーモカウンターを知り、立ち寄りました。立地、デザイン、素材などの希望を伝え、紹介された3社と後日スーモカウンターで面談。アドバイザーの助言を受け、地場不動産に強い建築会社をパートナーに選びました。
Hさん夫妻の要望は「かっこよくて、機能的な家」。共働きなので家事・育児をしやすいことを重視しました。「リビングは立体的な広がりを感じられる空間にするために床の高さに差をつけたい」という希望に、「小上がりの和室をつくれば空間に高低差もつくし、腰掛けられるし、下を収納としても利用できる」という建築士の提案を採用。完成した小上がりの和室は、今は子どもの遊び場として活躍しています。
住み心地は「120点」と高評価のHさん、家づくりは大成功と言えそうです。
この実例をもっと詳しく→
忙しい毎日に2WAY動線とファミリークロークが大活躍!
【case2】モデルハウスで見た畳ダイニングが気に入って新居にも採用
子どもが生まれたことをきっかけに、漠然と家を建てようと考え始めたNさん。しかし、家づくりについて何もわからず、まずはスーモカウンターを訪問しました。そこで、いろいろと相談するうちに、自分たちにも注文住宅を建てられることがわかり、建築会社を探すことに。スーモカンターで希望のプランをかなえてくれそうな会社を3社紹介してもらい、検討を始めました。そして、モデルハウスで見た屋上と畳のダイニングが気に入った会社に依頼先を決定。
「2人ともテーブルに椅子で食事をする習慣がなく、慣れ親しんだ床に座って食事をする生活をしたかった」というこだわりから、カウンターの前に小上がりの畳のダイニングをしつらえました。キッチンの壁とダイニングの間は 65cmと足を下ろせるスペースを設け、ダイニングに腰かけて、カウンターで軽食を取ることもできます。
この実例をもっと詳しく→
憧れの屋上となじみある畳と家族の笑顔がある家
【case3】妻の仕事部屋として、着付け用として、多目的に使える小上がりの和室
「もう少し広い家に」と隣地を購入し、建て替えることにしたSさん。依頼先で悩んでいたときにTVでスーモカウンターを知り、近くの店舗に訪問することに。そこでアドバイザーに伝えた希望を基に紹介してもらった依頼先候補の中から、土地勘のあるエリアの会社を3社選択。さらに全ての希望を反映したプランを提案してくれた1社に依頼することに決めました。
完成した家は、今までの家の住みやすさは残しつつ、LDKは大きく変えて広々と。新たに妻の仕事部屋や、着付けや客間など多目的に使える和室を設けました。和室は床の埃が舞いこまないよう小上がりに。古民家家具店で購入したドアをしつらえ、下部は妻の大きな道具もしまえる広々とした収納を設けました。大勢の来客時には椅子代わりにも使えます。
この実例をもっと詳しく→
住みやすさはそのままに、新たな希望をかなえた家
【case4】将来介護が必要になったときのことも考えて小上がり和室を設置
空き家になっていた妻の実家をいずれは建て替えようと考えていたNさん。ふらっと立ち寄ったスーモカウンターで相談したところ、親切な説明と対応が心地よく、気づけば次回の予約をしていました。
2回目の面談では、「地震に強く、断熱性の高い家を建てたい」という希望に応えて、条件にあった会社を6社紹介されました。そこから4社に絞りスーモカウンターで1社ずつ面談を実施、さらに3社に絞りました。最終的には、自分たちの要望に対して、率直に「その間取りでは動線が悪い」と、別のプランを用意してくれた会社に決定。
完成した家には、夫婦どちらかの介護が必要になったときにも生活しやすいようにと、1階リビング横に小上がり和室を設置しました。断熱性を高め、暑さや寒さでストレスを感じずに過ごせる新居に、大満足のNさんです。
この実例をもっと詳しく→
耐震と断熱にこだわり、老後の将来を見据えた家
【case5】狭く感じないと、家族からも好評の小上がり和室のある家
「いつかはマイホーム」と、資金を貯めていたKさん夫妻は、CMで見かけたスーモカウンターへ相談に行くことに。早速、住みたいエリアや予算、希望を伝えて6社の建築会社を紹介してもらい、そのうち3社と面談することにしました。
最終的には、営業担当の印象が良かった会社に依頼することに決定し、「限られた土地でものんびりくつろげて、居心地のいい家」をテーマに家づくりをスタート。
特にこだわったのは、開放感です。「和室は欲しいけど、一室仕切ってしまうと狭くなってしまうから」と、小上がり和室にしてリビング収納としても活用することにしました。ベンチ代わりとしても使える点がお気に入り。さらに、2色の畳を交互に入れておしゃれに演出。完成した新居は、遊びに来た家族にも「狭く感じない」と大好評です。
この実例をもっと詳しく→
限られたスペースを最大活用し、駐車スペースも2台確保!のんびりくつろげる居心地のいい家
理想の小上がり和室のある住まいを実現するためのポイント
最後にあらためて佐川さんに、理想の小上がり和室のある住まいを実現するためのポイントを聞きました。
「まず、リビングとの連続性を出すのか、やや独立性を持たせるのか、自分たちにとってどちらの方が使いやすいかを考えるといいでしょう。その際に、将来的な家族構成の変化や、ケガや病気になったときのことも考えておくと、より理想的な空間になるのではないでしょうか」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望をかなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりのダンドリや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合わせください。
取材協力/佐川 旭さん
佐川旭建築研究所代表。一級建築士、インテリアプランナー。間取り博士とよばれるベテラン建築家で、住宅だけでなく、国内外問わず公共建築や街づくりまで手がける
取材・文/福富大介(スパルタデザイン) イラスト/青山京子