自然が好きな人の中には、ログハウスに憧れる人もいるでしょう。実際にログハウスはどれくらいの価格で建てられるのか、メリット・デメリットや設備選びのポイントなどについて、日本のログハウスブランドBESSの亀川田達郎さん(BESS仙台)に話を聞き、実例とともに紹介します。
ログハウスとは?
ログハウスとはどのような住まいなのか、ログハウスの意味や構造、寿命など基礎知識について紹介します。
ログとは
ログハウスの「ログ」とは丸太のことですが、実は「ログハウス」は和製英語で、海外ではログキャビンやログホームと呼ばれています。
ログハウスの意味・構造
ログハウスとは、一般的に丸太を積み重ねた壁によって構成される建物のことです。丸太を重ねた強い壁で建物を支えるため、大きな空間をつくることが可能で、間仕切り壁を自由に配置しやすいという特徴があります。
「丸太はスプルースや北米パインなど北米産の木材のほか、杉などの国産材が使用されます。BESSでは安定供給の観点から、国産の杉を使用しています」(亀川田さん、以下同)
ログハウスの耐用年数は? 何年住める?
「奈良の正倉院宝庫は日本最古のログハウスといわれています。その長い歴史からわかるように、ログハウスはきちんとメンテナンスさえすれば、100年でも200年でも維持することが可能です」
ログハウスのメリットは?
ログハウスには、ほかの木造住宅と比べてさまざまなメリットがあります。どのようなメリットがあるのでしょうか。
断熱材が不要
木の熱伝導率(熱の伝わりやすさ)は、コンクリートの約12分の1だといわれています。
「さらにログハウスの場合、丸太の厚みが100mm以上もあるので外部の熱が伝わりにくく、内部の熱が逃げにくい天然の断熱材となっています。そのため、壁面の断熱材は不要です。
ただし、床下や屋根などはログではないため、断熱材を使用しています」
地震に強い
「耐震性が高い点もメリットのひとつです。ログハウスは、地震で揺れると丸太同士が摩擦を起こし、その摩擦力で揺れを吸収します。なお、BESSのログハウスは耐震等級の最高レベル、耐震等級3で建てることができます」
火に強い
「意外に聞こえるかもしれませんが、ログハウスは準防火建築物として認められるほど火に強いという特徴があります」


天然木に包まれたワイルドな雰囲気
「ログハウスの室内は、壁、床、天井が全て天然木で、ほかの住宅にはない独特でワイルドな空間になります。この雰囲気が好きでログハウスを選ぶ人も多いですね」
住みながら手を加えていける
「天然木に囲まれているため、DIYで釘を打ったり、棚を付けたり、自由に手を加えていける点も魅力のひとつでしょう」
木のリラックス効果が得られる
樹木から発せられる『フィトンチッド』という香り成分にはリラックス効果もあるといわれています。
「ログハウスは、天然木をふんだんに使用していることから、このフィトンチッドのリラックス効果が高いといえます」
ログハウスのデメリットは?
さまざまなメリットのあるログハウスですが、デメリットはあるのでしょうか。
定期的なメンテナンスが必要
「外壁は専用の塗料で塗装しますが、10年に1回くらいの周期で塗り直すことをおすすめしています。建物に付属するデッキなどは、毎年または2年に1回程度の周期で塗り直すといいでしょう。
また、建てた後に丸太の外壁が乾燥で縮んでいく『セトリング』対策のためのメンテナンスも必要です。BESSの場合、セトリングによって建物に影響が出ないように、ログハウスの柱にあらかじめスクリュージャッキという高さを調整する部材を組み込んでおり、半年点検、1年点検などの定期点検時に高さを調整しています」
メンテナンス費用
「あくまで目安ですが、BESSの場合、10年周期で行う外壁のメンテナンスは、足場の費用も含めて、約50万円です」
ログハウスを建てるには?
ログハウスに興味を持って、実際に建てようと思ったときはどうすればいいのでしょうか。
新築する際の依頼先
インターネットなどで検索して、各地域のログハウスを専門で扱う会社に依頼するといいでしょう。
「ログハウス専門ではない建築会社や工務店では、メンテナンスのノウハウが乏しいと思いますので、専門の会社に依頼することをおすすめします」
購入方法
「一般の住宅を購入する場合と変わりません。インターネットなどで専門の会社を見つけたら、資料請求をしたり、展示場が近くにある場合は展示場へ赴いてスタッフに相談するといいでしょう」
ログハウスの展示場
「ログハウスメーカーの多くは展示場を持っているので、展示場へ行けば、実際のログハウスを体験できます。展示場によっては、ログハウス1棟を数時間貸し出すサービスも行っています」
ログハウスの価格・費用は?
ログハウスは、国内では限られた会社しか扱っていないため、ほかの住宅に比べて高いというイメージを持つ人もいるでしょう。実際の価格・費用はどうなのでしょうか。
ログハウスの家は、他の住宅に比べて安い? 高い?
「BESSの提供するログハウスを一般的な木造住宅と比較すると、価格はローコスト系メーカーの住宅と大手ハウスメーカーの住宅の中間くらいです。
目安ですが、本体工事・付帯工事合わせて坪単価100万円くらいで提供しています」
20坪のログハウスの価格
「BESSでは20坪(約66㎡)のモデルで、本体価格約1500万円〜でご提供可能です」(2022年9月現在)
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ログハウスの固定資産税
家屋の固定資産税には用途(種類)や構造、資材などの詳細な評価基準があり、その基準に基づいて、一戸ずつ固定資産税評価額が決められます。
「ログハウスの固定資産税は、丸太組構法建物の評価基準を基に評価されますが、そこに載っている基準ですと、ログハウスは一般的な木造軸組工法よりも1割くらい高く設定されています」
ログハウスの広さは?
ログハウスにはどのような広さのログハウスがあるのでしょうか。
平屋の小さいログハウス(6畳~10畳程度)
6畳~10畳の1部屋だけのログハウスは、ハウスというよりは小屋といった方が相応しいかもしれません。
「ログハウスメーカーによって、平屋の小さいログハウスをラインアップしているケースがあります。BESSでは、約6畳タイプの小さなログハウス(ログ小屋)として、『IMAGO R/A』を提供しています。
用途としては、既存の住まいのある敷地内に建てて、趣味のスペースや作業場として利用されることが多いようです。中には店舗として利用されているケースもあります」
家族向け住宅としてのログハウスの広さ
「ログハウスの広さは、ほかの一般的な住宅の広さと変わりません。BESSでは、20坪(66㎡)~40坪(132㎡)くらいまでの規格プランを用意しています」
ログハウスの仕様や設備選びのポイントは?
ログハウスに使用する内装や設備は、どのようなものが適しているのか、選ぶときのポイントを紹介します。
玄関ドア・室内ドア
「玄関ドアや室内のドアは、木製のものがログハウスの雰囲気に合うのでおすすめです」
窓
「窓のサッシは、雰囲気を重視するなら木製サッシですが、必ずしも木製サッシでなければいけないというわけではありません。一般的なアルミサッシや樹脂サッシを採用するケースも多くあります。その場合、サッシの外側の枠の色を変えることで、雰囲気を損なわないようにすることは可能です。
また、建物の断熱性を活かすためにも、窓ガラスは複層ガラスやトリプルガラスなどの断熱性の高い窓ガラスがおすすめです」
床・天井
「床材は無垢(むく)のフローリングにすることが多いですね。BESSではパイン材をおすすめしています。若干傷は付きやすいのですが、触ったときの温もりや長く使ったときの色に味わいがあります。
壁が天然木なので、床だけ複合材のフローリングだと、違和感があるでしょう。
天井も無垢(むく)材を張ることが多く、BESSでは床材同様にパイン材をおすすめしています」
暖炉
「他のログハウスメーカーではレンガや石積みで暖炉をつくるケースもあるようですが、工事費用が高くなる、暖炉は薪ストーブより燃費が悪いなどの理由から、BESSでは薪ストーブをおすすめしています」
薪ストーブ
「薪ストーブにはさまざまな機種・タイプがあります。機種によって暖かさや、調理器具としての機能性などが異なるので、使用する地域や用途によって選ぶといいでしょう。
寒冷地の場合は、やはり熱量の大きい薪ストーブがおすすめです。寒冷地以外だとインテリアとして炎を楽しむというケースも多いので、そういった場合は炎が綺麗に見えるタイプを選ぶといいでしょう」
サウナ
「サウナは設備として販売されているので、サウナメーカーのラインアップから希望の機種を選ぶといいでしょう。ログハウス内に設置スペースを確保しておいて、選んだサウナを組み込んで使います。イメージとしてはユニットバスと同じです」
風呂
「雰囲気を重視するのであれば、ハーフユニットと呼ばれる腰の高さまではユニットバスと同じ素材、腰から上は木材というタイプのお風呂が選択肢に挙がりますが、メンテナンス性などを考えれば、普通のユニットバスの方が使いやすいですね」
ビルトインガレージ
「BESSではビルトインガレージ付きの製品はないのですが、ガレージを付ける場合は、居住スペースの脇に増築するような形でガレージを設けることになります」
ログハウスの実例を紹介!
BESSが提供するログハウスの実例を紹介します。
【実例1】平屋のログハウス
「平屋のニーズは高く、お客さまから平屋のログハウスはないの? という声をいただいて、BESSでも最近、平屋と小屋を掛け合わせた『栖(すみか)ログ』というログハウスの提供を始めました。
家の中のどこからでも数歩ほど歩けばもう外、という、屋外をより身近に感じられる設計にできるところが平屋の魅力でしょう」
【実例2】ロフト(グルニエ)のあるログハウス
「BESSでは2階のオープンスペースをロフトと呼んでいます。ただし、一般的なロフトのイメージは、BESSで『グルニエ』と呼んでいるものになるでしょう。
子ども部屋や収納として便利に活用できます」
【実例3】2階建てのログハウス
「2階建てのログハウスは一般的です。例えば、BESSの『COUNTRY LOG』のカラマスというモデルでは、のびやかに暮らせるよう、リビング・ダイニングやロフトを広々と設計。大きな吹き抜けが2階のロフトスペースへとつながり、豊かな開放感を生みだしています」


【実例4】外壁に色を塗装したログハウス
「他社のものでは外壁にクリアタイプの保護剤を塗ったログハウスもありますが、BESSの場合は色の付いた塗料で塗装しています。色は白やオレンジ、グリーンなどからお好みに応じて選んでいただけます」
【実例5】部屋の内装がおしゃれなログハウス
「ログハウスの内壁は、基本は天然木ですが、壁の一部だけ色を変えてアクセントクロスのようにして、おしゃれにすることもできます」
ログハウスを建てるときのポイントは?
最後に亀川田さんに、ログハウスを検討している人に向けて、ログハウスを建てるときのポイントを聞きました。
「ログハウスは、メンテナンスを伴う建物なので、建てた後も相談できる会社選びが重要です。
また、地域によっても気を付けなければいけない点が変わるので、地域特有の気候なども踏まえて施工のできる会社を選ぶといいでしょう」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「ログハウスを専門で扱っている会社を紹介してほしい」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望を叶えてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
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取材協力/BESS仙台
取材・文/福富大介(りんかく) イラスト/タイマタカシ