鉄筋コンクリート造(RC造)の家である鉄筋コンクリート住宅(RC住宅)を求める人が増えています。RC住宅は耐震性があり、デザインの自由度が高いことも人気です。一方、木造(W造)住宅に比べてコストが高いともいわれます。
RC住宅のメリット・デメリットも含めたその特性について、戸建住宅から店舗併用住宅、賃貸住宅など、RC住宅の建築を手掛ける関口裕氏さんと千田健二さんにお話を伺いました。
目次
「RC住宅」ってどんな住宅のこと?
「RC」とは鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete)の略で、強化されたコンクリートを指します。この鉄筋コンクリート(RC)で建物を造ることやその建物のことを「RC造」といい、「RC住宅」はRC造の住宅、という意味です。
一般的に住宅に採用される建築方法は大まかに以下の3つに分類されます。
- W造(Wood)……木造
- S造(Steel)…… 鉄骨造
- RC造(Reinforced Concrete)…… 鉄筋コンクリート造
中でもRC住宅は、地震に強い、デザイン性に富み高級感がある、などの理由で人気があります。
RC造と鉄骨造の基本的な仕組み
なお、S造の中には重量鉄骨造と軽量鉄骨造の2種類があり、一般的に住宅には軽量鉄骨造が用いられています。「耐用年数や耐震強度の観点から、最も優れているのはRC造だ」と関口さんと千田さんは言います。そのため、RC造はRC住宅のほか、主に中層・高層の建築物に用いられています。
RC造が特徴的なのは、引張力(引っ張る力)と圧縮力(押す力)に対して異なる性質を持つ2つの材料を組み合わせることで、強靭な住宅にできることです。
- 鉄筋……引張力には強いが、圧縮力に弱い
- コンクリート……圧縮力に強いが、引張力に弱い
RC造の工法には、「壁式構造(WRC造)」と「ラーメン構造」がありますが、RC住宅に利用されるのは壁式構造がメインとなります。壁式構造は、柱や梁や枠組みといった構造部材の代わりに壁で建物を支える工法です。
RC造の「壁式構造」と「ラーメン構造」の仕組み
「壁式構造というのは、基礎の上に箱を積み重ねるイメージです。2階建てなら1階分の箱を置いて、その上に2階分の箱を乗せていきます。一方のラーメン構造は柱と梁で建物を支え、主に中高層マンションで使われます。
W造やS造には柱や梁があって、その間に壁をはめて造るようなイメージであることに対し、壁式構造は壁そのものに柱や梁の役割が含まれています。
W造やS造に比べると隙間のない密閉した空間ができ、遮音性高くなりますし、堅固な壁と床全体で家を支えるため、耐震性も備えています」(関口さん)
RC住宅のメリット
それでは具体的にRC住宅のメリットについて見てみましょう。
比較的地震に強い
地震の力により伸び縮みする建物を鉄筋が持つ引張力とコンクリートが持つ圧縮力が支えることで、耐震性を発揮することができます。
遮音性がある
隙間がなく気密性の高いRC住宅は、外からも内からも音の透過が少なく、木造住宅に比べて高い遮音性を発揮します。
耐火性がある
コンクリートは不燃材なので、火事の際、外側の骨格が燃えて崩れるようなことはほとんどありません。万一、火災に見舞われた場合は、構造から建て替えするのではなくリフォームで済むことが多くなります。
メンテナンス性が高い
RC住宅はW造やS造の住宅に比べて、といわれます。経年劣化や地震でクラック(傷、ひびわれ)が入りますが、補修剤等を注入することで直すことが可能なためです。
デザインの自由度が高い
RC壁式構造は構造上、柱など空間を遮るものがないので、各部屋の間仕切りを自由に設置することができます。外観においても強度の規制などをクリアすれば、丸みを帯びた壁面など自由度の高い建物を造ることができます。
「RC住宅は、内装工事が始まるまでは、上から見ると一つの空間がぽっかり空いている状態で、後々リフォームする際にも間取りの変更が容易です。例えばお子さんが3人いる5人家族の場合、子どもが小さく、家にいる時間が長い時期には3部屋を子ども部屋にします。子どもたちが独立した後は、部屋間の壁を外して2部屋をつなげ、夫婦の趣味のスペースにするなど大胆なリフォームも可能です」(関口さん)
RC住宅のデメリット
このように、遮音性や耐震性を備えるRC住宅ですが、残念ながら、大きなデメリットがあります。それは、W造やS造に比べてコストが高いことです。
工期がかかる
RC住宅は木造住宅に比べて工期がかかるといわれています。
「木造住宅の工期がだいたい3カ月程度であることに対し、RC住宅は5カ月程度です。工期の違いは建築費だけでなく、仮住まい等が必要になる場合を始めとして、工事期間中の住まいを確保する費用にも影響します」(千田さん)
RC造では、型枠に流し込んだコンクリートが既定の強度に固まるまで一定期間かかります。これを養生(ようじょう)期間といい、支保工(しほこう)という支えをつくって型枠をせき板とサポートで押さえておかないといけません。もしこの期間を省くと、壁がたわんだり、強度が足りなくなったりします。つまり、工事のうち一定期間は「待つ」必要があるのです。そのかわり、一旦コンクリートが固まれば、内装作業は早く済みます。
地盤補強に出費がかかる場合がある
RC住宅は、W造やS造で建てる住宅より重量が重いため、土地の地盤に応じて基礎から下を地盤補強するコストが発生する場合があります。よく「RC住宅は木造住宅に比べて建てられる土地が限られる」と言われますが、これは誤解で、地盤補強をすれば、ほとんどの土地でRC住宅は建てられます。ただ、この地盤補強のコストが木造住宅に比べて大きくなりやすい、ということは言えるでしょう。
「地盤補強工事は地盤によって大きくコストが変わってきます。ケースバイケースで工法を検討することになります」(関口さん)
寒さや経済性など、RCには誤解が多い!?
そのほかにも、「RC住宅はコンクリート壁なので寒い」などと聞いたことはないでしょうか? 関口さんは、これを「100%誤解」だと言います。このようなRC住宅にまつわるいくつかの誤解を紹介します。
<誤解1>RC住宅は寒い
RC住宅が寒いというのは、高度成長時代の団地や古いコンクリート製のビルのイメージが定着しているからではないか、と千田さんは言います。
「よくRC住宅は寒い、と言われますが、これは間違いです。近年建てられるRC住宅ではほぼすべての住宅で断熱処理を行っています」(千田さん)
<誤解2>RC住宅はトータルコストも高い
前章でRC造はW造やS造に比べて建築コストが高いことを説明しました。
「確かにRC住宅の建設費は高いです。しかし、木造住宅に比べた耐久年数の長さやメンテナンスコストの低さを考えると、RC住宅は住宅のトータルコストとしては決して高くないと思います。
特に、最近は家を長く持たせて子どもや孫に引き継ぎたいと考える人も増えています。木造住宅の場合は、建て替えが必要になるケースが多いですが、RC住宅はそのまま次世代に引き継げます。住宅の耐用年数がW造では22年、RC造では47年と定められていることからもわかる通りです。そのため、家を手放さざるを得ない場合でも、W造に比べてRC造は建物の価値を高く評価されることが多いのです」(関口さん)
<法定耐用年数>
- 「木造」=22年
- 「鉄骨造」=19~34年
- 「鉄筋コンクリート造」=47年
<誤解3>RC住宅は結露ができやすい
RC住宅では「結露が発生しやすい」イメージがあります。しかし、千田さんはそれも誤解だと言います。これはRC造の特性である「気密性の高さ」に理解や配慮がないために、結果的に結露を発生させてしまっているのだそうです。
「結露は空気中の水分が冷たい部分に接触し、それが露点温度に達すると水滴ができて発生します。そのため、室内に寒暖差がある場所がある場合にこの現象は起きます。
例えば室内や台所でお湯を沸かしたときに、木造住宅の場合は建物に隙間があるので自然に出ていきますが、RC住宅は気密が高いため、そのままにしておくと屋内に水分が溜まってしまい、それが結露の原因になります。この特性を理解して、きちんと換気を行うことで防ぐことができます」(千田さん)
RC住宅のメンテナンスで気をつける点は?
RC住宅はメンテナンスが比較的容易で、寿命が長くもつことを説明しましたが、必要な対策やメンテナンスを施さなければ劣化してしまいます。
結露対策
現在の住宅では24時間換気が義務づけられていますが、寒さや電気代を理由にそのスイッチを切ってしまう人も多く、湿気が部屋にたまってしまいがちです。結露を生じさせないためには日々の意識的な換気が重要です。生活の中で換気扇や窓の開閉を心掛け、結露の発生を防ぐようにしましょう。
クラック(傷、ひびわれ)対策
クラックが生じると、そこから雨水などが入ったり、化学反応で劣化して汚れが定着してしまいます。また、雨水が浸透したまま放置すると鉄筋を侵食してしまう場合があります。
「クラックは小さいうちは浸水してもコンクリートの石灰質が自然に水を防いでくれますが、大きくなると鉄筋の腐食やコンクリートの爆裂を招きかねません。その対処方法としてし、傷口をふさぐ処理方法があります。また、錆がコンクリート表面に浮き出して赤黒く変色する兆候があれば、周りをピックではがし、鉄筋の錆びを取ってからコンクリートで埋める作業が必要です。建設当初からあらかじめクラックが入りそうな場所にスリットを入れておくこともクラック防止に有効な一つの対策です」(関口さん)
クラック(傷、ひびわれ)ができ、錆が浮き出してコンクリートが赤黒く変色した状態になった戸建住宅の基礎部分(画像提供/PIXTA)
建てる前に何でも相談できる関係づくりを
最後に、関口さんに快適に住むことができるRC住宅をなるべくリーズナブルに建てるにはどうしたらいいかを聞きました。
「残念ながら、RC住宅の建設費自体を大きく下げることは難しいのです。ですが、設計する建築士と建築する会社が密に連携し、例えば地盤補強はケースバイケースで最適な工法を選択するといった協議が十分にできていれば、場合によってはコストを下げることができるかもしれません。
そのためには設計段階から建築会社も巻き込んで、条件や希望にあわせて代替案などを提案してもらえる関係性ができているのが望ましいのではないでしょうか。設計する建築士だけでなく、構造・設備の技術者や建築会社との距離が近い、良いチームを選び、つくっていくというイメージです」(関口さん)
スーモカウンターでできること
このようにRC住宅のデザインやコストを検討する場合には、施工条件や地盤補強の必要性などを総合的に判断して設計する必要があります。そのため、細かいところまで相談できる窓口があれば心強いでしょう。
注文住宅の新築・建て替えをサポートしているスーモカウンターでは、土地購入や家づくりの不安を解決できる無料講座や、アドバイザーに悩みを相談できる無料の個別相談などを実施しています。個別相談では土地選び以外にも、予算や希望条件の整理、建築会社の紹介など、注文住宅を建てる際のあらゆる不安について、知識と経験のある専任アドバイザーに無料で何度でも相談できます。
RC住宅について疑問や不安のある人は、スーモカウンターを活用して、次世代に残せるRC造の家づくりの第一歩を踏み出してはみてはいかがでしょうか。
取材協力/株式会社カツキ
社長代理 一級建築士 関口裕氏さん、不動産部 部長 千田健二さん
取材・文/櫻井とおる(スパルタデザイン) イラスト/長岡伸行