近年、耐震性やデザインの自由度から、鉄筋コンクリート造であるRC住宅を求める人が増えています。
その一方で、木造住宅に比べると、コストが高いという声もあります。
RC住宅のメリット・デメリットや、特徴について戸建住宅から店舗併用住宅、賃貸住宅など、RC住宅の建築を手掛ける関口裕氏さんと千田健二さんにお話を聞きました。
目次
RC住宅とは?
RC住宅とは、鉄筋コンクリートを用いた住宅です。「RC」とは鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete)の略で、強化されたコンクリートを指します。一般的に、住宅では以下の建築方法が用いられます。
【建築方法で用いられる建築方法】
● 木造(W造)
● 鉄骨造(S造)
● 鉄筋コンクリート造(RC造)
なかでも、RC造は耐震性が高い点や、デザイン性に優れている点が人気の理由の一つです。また、RC造は鉄骨造と混同されやすいですが、基本的な仕組みが異なります。
なお、S造の中には重量鉄骨造と軽量鉄骨造の2種類があり、一般的に住宅には軽量鉄骨造が用いられています。
また、「耐用年数や耐震強度の観点から、最も優れているのはRC造だ」と関口さんと千田さんは言います。
RC造は、RC住宅としても用いられますが、耐久性の高さからマンションや商業施設などの、中層・高層の建築物に用いられることも多いです。
さらにRC造は、引張力(引っ張る力)と圧縮力(押す力)に対して異なる性質を持つ2つの材料を組み合わせることで、強靭な住宅にできるという特徴があります。鉄筋とコンクリートは、以下のような特徴があります。
【鉄筋とコンクリートの特徴】
● 鉄筋:引張力には強いが、圧縮力に弱い
● コンクリート:圧縮力に強いが、引張力に弱い
これらを組み合わせることで、耐久性・耐震性に優れた建築が可能です。
RC造の「壁式構造」と「ラーメン構造」の仕組み
RC造の工法は、以下の二つに分類されます。
【RC造の工法について】
● 壁式構造(WRC造)
● ラーメン構造
「壁式構造というのは、基礎の上に箱を積み重ねるイメージです。2階建てなら1階分の箱を置いて、その上に2階分の箱を乗せていきます。一方のラーメン構造は柱と梁で建物を支え、主に中高層マンションで使われます。
W造やS造には柱や梁があって、その間に壁をはめて造るようなイメージであることに対し、壁式構造は壁そのものに柱や梁の役割が含まれています。
W造やS造に比べると隙間のない密閉した空間ができ、遮音性が高くなりますし、堅固な壁と床全体で家を支えるため、耐震性も備えています」(関口さん)
RC住宅には、主に壁式構造が使用されます。壁式構造は、柱や梁や枠組みといった構造部材の代わりに壁で建物を支える工法です。
RC造とSRC造、鉄骨造、木造との違い
それぞれの概要や特徴
住宅建設にかかわらず、建物を建築する際はさまざまな方法が用いられます。土地の状態や建物の特性によって、用いられる建築方法が異なるので、それぞれの違いをご紹介します。
概要 | 特徴 | おもな建造物の例 | |
---|---|---|---|
RC造 | 鉄筋でできた型枠に コンクリートを流し込んで作る方法 |
耐震性・耐久性に優れている 遮音性に優れている |
住宅用建設・マンション建設など |
SRC造 | RC造の内部にさらに鉄骨を埋め込んで作る方法 | 耐震性・耐久性に優れている 高層階の建築に用いられる |
大型マンション・ビルの建築 高層の商業施設の建設など |
S造 | 柱や棟に鉄骨を使用して作る方法 (重量鉄骨と軽量鉄骨がある) |
強度・耐震性が高い | 一般住宅建設・小規模店舗の建設など |
木造 | 柱や棟に木材を用いて作る方法 | 調湿性・通気性・断熱性に優れている | 一般住宅建設 |
RC住宅の建築費用目安
RC住宅は、耐久性や耐震性の強さから非常に人気がある工法です。しかし、ほかの工法に比べると、建築費用が高額になります。それぞれの建築費用を、平均坪単価を例に紹介します。
工法 | 坪単価 |
---|---|
木造 | 約64万円 |
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 約107万円 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 約95万円 |
鉄骨造(S造) | 約80万円 |
木造住宅が64万円程度なのに対し、RC住宅の平均坪単価は約95万円。耐震強度の高さや、耐久性の高さなどメリットもありますが、他の工法に比べると坪単価は高くなる傾向があります。
RC住宅のメリット
RC住宅には、それぞれメリットがあります。
【RC住宅のメリット】
● 比較的地震に強い
● 高い遮音性・防音性がある
● 耐火性がある
● メンテナンス性が高い
● デザインの自由度が高い
● 耐用年数が長く、資産価値が目減りしにくい
比較的地震に強い
RC住宅は、耐久性と耐震性が高いため、地震に強いことが特徴としてあげられます。
RC造では、鉄筋とコンクリートを使用しますが、鉄筋が持つ引張力とコンクリートが持つ圧縮力によって住宅を支えることで、耐震性を発揮できます。また、鉄は酸化や熱に弱い特性がありますが、コンクリートで覆うことで、変形やサビの予防が可能です。
高い遮音性・防音性がある
コンクリートは気密性が非常に高く、遮音性や防音性があることも一つのメリットです。隙間がなく気密性の高いRC住宅は、外からも内からも音の透過が少なく、木造住宅に比べて高い遮音性を発揮します。
道路に隣接する場所に建築する場合や、自宅で楽器を演奏したい場合など、音が気になる場合はRC造の方がよいでしょう。
耐火性がある
コンクリートは不燃材なので、耐火性に優れています。万が一火事にあった場合、壁や柱がが燃えて崩れる可能性は低いです。構造が残るためリフォームで復旧できるケースが多いでしょう。
しかし、RC造は局部的な熱に強くなく、通常では耐えられる500度以下の熱でも、破損・ひび割れ原因になる箇所が発生することもあります。また、太陽光や紫外線でも劣化するケースがあり、ひび割れの原因になる可能性があります。
メンテナンス性が高い
RC造は、木造や鉄筋造に比べると、メンテナンス性が高いといわれています。総務省令の法定耐用年数をもとに比較すると、以下のとおりです。
【材質別の法定耐用年数】
● 鉄筋コンクリート造:47年
● 鉄骨造:34年
● 木造:22年
参考:総務省(償却資産の耐用年数)
法定耐用年数だけを見ると、木造の約2倍。ほかの材質よりも、RC住宅の耐久性が高いことがわかります。
また、耐用年数が長いと、資産価値が目減りしにくいというメリットもあります。
経年劣化による補修は必要ですが、木造建築に比べると、資産価値は非常に高いといえるでしょう。
マイホームは、次世代に受け継いでいくものでもあるため、資産価値や耐久性にはしっかり目を向けたいところ。RC住宅のように、法定耐用年数が長く、資産価値が目減りしにくい建物だと安心できます。
デザインの自由度が高い
RC壁式構造は構造上、柱など空間を遮るものがないので、各部屋の間仕切りを自由に設置することができます。外観においても強度の規制などをクリアすれば、丸みを帯びた壁面など自由度の高い建物を造ることができます。
「RC住宅は、内装工事が始まるまでは、上から見ると一つの空間がぽっかり空いている状態で、後々リフォームする際にも間取りの変更が容易です。例えばお子さんが3人いる5人家族の場合、子どもが小さく、家にいる時間が長い時期には3部屋を子ども部屋にします。子どもたちが独立した後は、部屋間の壁を外して2部屋をつなげ、夫婦の趣味のスペースにするなど大胆なリフォームも可能です」(関口さん)
そのため、注文住宅で外観にこだわりたい人や、内装でどうしても譲れないデザインがある人にとって、RC造はメリットになるでしょう。
RC住宅のデメリット
一方でRC住宅には、デメリットもあります。
【RC住宅のデメリット】
● 建築費用が高い
● 固定資産税が木造よりも高い
● 工期が長い
● 地盤補強に費用がかかる場合がある
● 増改築・取り壊し費用が高い
建築費用が高い
先述の通り、RC住宅は、木造建築や鉄筋造に比べると費用が高い傾向にあります。
RC造の平均坪単価は約100万円程度と高額で、SRC造になると約107万円します。木造住宅に比べると1.67倍ほど高くなるため、コストを重視する人にとってはデメリットと言えるでしょう。
固定資産税が木造よりも高い
固定資産税は、地方税法によって定められている税金で、固定資産税評価額に対し税率1.4%をかけて計算します。家屋の固定資産評価基準は、以下のとおりです。
【家屋の固定資産評価基準】
● 不動産の評価額:建築構造物の市場価値から判断する
● 構造や用途:住宅用や商業用などの用途によって判断する
RC造は木造住宅に比べると、法定耐用年数が長く最大47年と定められています。そのため、木造住宅に比べると、建造物としての価値の減り方が緩やかになり、固定資産税が高くなる可能性があるため、注意が必要です。
工期が長い
「木造住宅の工期がだいたい3カ月程度であることに対し、RC住宅は5カ月程度です。工期の違いは建築費だけでなく、仮住まい等が必要になる場合を始めとして、工事期間中の住まいを確保する費用にも影響します」(千田さん)
木造の場合は、建材を組み立てて建築しますが、RC造の場合は、型枠にコンクリートを流し込んで、既定の強度に固まるまで待たなければなりません。固まるまでの期間のことを養生(ようじょう)期間と呼び、支保工(しほこう)という支えをつくって型枠をせき板とサポートで押さえておく必要があります。
養生期間を省いてしまうと、コンクリートが十分に固まらずに、強度が足りなくなったり、壁がたわんだりするため、どうしても木造住宅に比べると工期が長引いてしまいます。
地盤補強に費用がかかる場合がある
RC住宅は、W造やS造で建てる住宅より重量が重いため、土地の地盤に応じて基礎から下を地盤補強するコストが発生する場合があります。よく「RC住宅は木造住宅に比べて建てられる土地が限られる」と言われますが、これは誤解で、地盤補強をすれば、ほとんどの土地でRC住宅は建てられます。ただ、この地盤補強のコストが木造住宅に比べて大きくなりやすい、ということは言えるでしょう。
「地盤補強工事は地盤によって大きくコストが変わってきます。ケースバイケースで工法を検討することになります」(関口さん)
RC住宅によくある誤解
RC住宅では、そのイメージから誤解されていることもあります。
【RC住宅によくある誤解】
● RC住宅は寒い
● RC住宅はトータルコストも高い
● RC住宅は結露ができやすい
RC住宅は寒い
RC住宅は、高度成長時代の団地や古いコンクリート製のビルのイメージなどから、寒いと思われがちです。先述の通り、コンクリートは天然木材に比べると、熱伝導率が高いため、断熱性の低さから「RC住宅=寒い」と誤解する人もいるかもしれません。
「よくRC住宅は寒い、と言われますが、これは間違いです。近年建てられるRC住宅ではほぼすべての住宅で断熱処理を行っています」(千田さん)
RC住宅では、主に以下の断熱処理が行われています。
【RC住宅で行われている断熱処理】
● 外断熱:住宅を包み込むように住宅の外側に断熱材を設置する方法
● 内断熱:鉄筋コンクリートの内部に断熱材を設置する方法
外断熱では、外気の影響を受けなるほか、結露を抑えられることがメリットです。一方で、外壁が断熱材の分、厚くなってしまうため、狭小地に建てる家の場合はデメリットになります。
内断熱は、RC造の内部に断熱材を設置する方法です。住宅では、狭小地やマンションなどで用いられます。内部で断熱する反面、外気の断熱ができないため、結露発生の原因になる可能性があります。
RC住宅はトータルコストも高い
「確かにRC住宅の建設費は高いです。しかし、木造住宅に比べた耐久年数の長さやメンテナンスコストの低さを考えると、RC住宅は住宅のトータルコストとしては決して高くないと思います。特に、最近は家を長く持たせて子どもや孫に引き継ぎたいと考える人も増えています。木造住宅の場合は、建て替えが必要になるケースが多いですが、RC住宅はそのまま次世代に引き継げます。住宅の耐用年数がW造では22年、RC造では47年と定められていることからもわかる通りです。そのため、家を手放さざるを得ない場合でも、W造に比べてRC造は建物の価値を高く評価されることが多いのです」(関口さん)
RC住宅は結露ができやすい
RC住宅では「結露が発生しやすい」イメージがあります。しかし、千田さんはそれも誤解だと言います。これはRC造の特性である「気密性の高さ」に理解や配慮がないために、結果的に結露を発生させてしまっているのだそうです。
「結露は空気中の水分が冷たい部分に接触し、それが露点温度に達すると水滴ができて発生します。そのため、室内に寒暖差がある場所がある場合にこの現象は起きます。
例えば室内や台所でお湯を沸かしたときに、木造住宅の場合は建物に隙間があるので自然に出ていきますが、RC住宅は気密が高いため、そのままにしておくと屋内に水分が溜まってしまい、それが結露の原因になります。この特性を理解して、きちんと換気を行うことで防ぐことができます」(千田さん)
RC住宅のメンテナンスで気をつける点は?
RC住宅をメンテナンスする際、いくつか気を付けることがあります。
【RC住宅のメンテナンスで気を付ける点】
● 結露対策
● クラック(傷・ひびわれ)対策
長く快適に暮らすため、あらかじめチェックしておきましょう。
結露対策
現在の住宅では24時間換気が義務づけられていますが、寒さや電気代を理由にそのスイッチを切ってしまう人も多く、湿気が部屋にたまってしまいがちです。結露を生じさせないためには日々の意識的な換気が重要です。
生活の中で換気扇や窓の開閉を心掛け、結露の発生を防ぐようにしましょう。
クラック(傷、ひびわれ)対策
クラックが生じると、そこから雨水などが入ったり、化学反応で劣化して汚れが定着してしまいます。また、雨水が浸透したまま放置すると鉄筋を侵食してしまう場合があります。
「クラックは小さいうちは浸水してもコンクリートの石灰質が自然に水を防いでくれますが、大きくなると鉄筋の腐食やコンクリートの爆裂を招きかねません。その対処方法としてし、傷口をふさぐ処理方法があります。また、錆がコンクリート表面に浮き出して赤黒く変色する兆候があれば、周りをピックではがし、鉄筋の錆びを取ってからコンクリートで埋める作業が必要です。建設当初からあらかじめクラックが入りそうな場所にスリットを入れておくこともクラック防止に有効な一つの対策です」(関口さん)
建てる前に何でも相談できる関係づくりを
最後に、関口さんに快適に住むことができるRC住宅をなるべくリーズナブルに建てるにはどうしたらいいかを聞きました。
「残念ながら、RC住宅の建設費自体を大きく下げることは難しいのです。ですが、設計する建築士と建築する会社が密に連携し、例えば地盤補強はケースバイケースで最適な工法を選択するといった協議が十分にできていれば、場合によってはコストを下げることができるかもしれません。
そのためには設計段階から建築会社も巻き込んで、条件や希望にあわせて代替案などを提案してもらえる関係性ができているのが望ましいのではないでしょうか。設計する建築士だけでなく、構造・設備の技術者や建築会社との距離が近い、良いチームを選び、つくっていくというイメージです」(関口さん)
スーモカウンターでできること
このようにRC住宅のデザインやコストを検討する場合には、施工条件や地盤補強の必要性などを総合的に判断して設計する必要があります。そのため、細かいところまで相談できる窓口があれば心強いでしょう。
注文住宅の新築・建て替えをサポートしているスーモカウンターでは、土地購入や家づくりの不安を解決できる無料講座や、アドバイザーに悩みを相談できる無料の個別相談などを実施しています。個別相談では土地選び以外にも、予算や希望条件の整理、建築会社の紹介など、注文住宅を建てる際のあらゆる不安について、知識と経験のある専任アドバイザーに無料で何度でも相談できます。
RC住宅について疑問や不安のある人は、スーモカウンターを活用して、次世代に残せるRC造の家づくりの第一歩を踏み出してはみてはいかがでしょうか。
イラスト/長岡伸行
監修/SUUMO編集部(RC造とSRC造、木造、軽量鉄骨との違い、RC住宅の建築費用目安、気密性と断熱性が高い、固定資産税が木造よりも高い)
社長代理 一級建築士 関口裕氏さん、不動産部 部長 千田健二さん