「少し大きなものを手洗いしたい」「外で使うものを室内に入れるときに泥を流したい」、そんなときに重宝するのがスロップシンクです。そもそもスロップシンクとはどのようなもので、どう活用すればいいのでしょうか? 一級建築士のYuuさんに話を伺いました。
スロップシンクとは?
まず、「スロップシンク」とは、一体どのようなものなのでしょうか?
「『スロップ』は『泥水』という意味。つまり、泥汚れなどを落とすときに使われる流しが『スロップシンク』です。メーカーによっては、『マルチシンク』や『多目的流し』などと呼んでいます。基本的な構造としては、詰まり防止用の目皿や水ため用のゴム栓などが付いていて、泥汚れやつけ置き洗いに対応しやすくなっているのが特徴です」(Yuuさん、以下同)
スロップシンクの活用方法は?
スロップシンクは、洗面台やキッチンの流しでは洗いにくいもの、洗うのを躊躇してしまうものを洗うのに適しています。具体的にどのような活用方法があるのでしょうか?
靴や衣類のつけ置き洗い
「汚れのひどいスニーカーや衣類を洗面台で洗うのに抵抗がある人も多いでしょう。また、長時間のつけ置き洗いをする場合は、洗面台を自由に使うためにも、スロップシンクがあると便利です」
ガスコンロの五徳やレンジフードのお手入れ
「油で汚れたガスコンロの五徳やレンジフードをつけ置き洗いする際に、キッチンの流しでつけ置き洗いをすると邪魔なので、スロップシンクがあると便利です」
泥付き野菜の水洗い
「家庭菜園で採れた野菜や、人からもらったり買ったりした泥付き野菜を洗うときにも重宝します。キッチンの流しで洗うと、泥が飛び散ってキッチンが汚れるため抵抗がありますが、スロップシンクなら思い切り洗えます」
ペットのシャンプー
「散歩帰りのペットの足を洗ったり、身体全体をシャンプーしたりするときにも、広くて深いスロップシンクだと洗いやすいですね」
絵や習字の道具を洗う
「絵の具や墨汁のついた筆などを洗うと、周囲が汚れてシミになることがあります。おしゃれな洗面台で洗うのには抵抗がありますが、スロップシンクなら気にせず洗えます」
DIYで汚れた手や道具を洗う
「スロップシンクはDIYをする人にもオススメ。ペンキで汚れた手を洗ったり、道具を洗ったりするときに重宝します」
アウトドア用品を洗う
「釣りが趣味だと、釣ってきた魚を入れるクーラーボックスなどの道具をどこで洗うか迷うこともあるでしょう。洗面台で洗うには大きいですし、キッチンや風呂場で洗うと臭いやウロコなどの飛び散りも気になりますよね。そういうときこそ、スロップシンクの出番です。外で使ったバーベキューコンロやボウルなどを洗うのにも適しています」
スロップシンクはどこに設置する?
Yuuさんによると、スロップシンクは、設置する場所が悪いと使わなくなると言います。そして、スロップシンクを設置する場所は、使う目的によって変わってくるそうです。具体的に見てみましょう。
ユーティリティーに設置する
ユーティリティーとは、「家事室」ともいい、家事作業をまとめて行えるように洗濯機などが置かれたスペースのことです。
「窓ガラスを洗うときに使う『ウォッシャー』や、床掃除用のモップなど、掃除用具を洗うのに使うなら、ユーティリティーに設置するのがいいでしょう。勝手口からユーティリティー、キッチンへとつながる間取りにして、ユーティリティーにスロップシンクを設置すれば、遊び道具の泥汚れを落とすのにも、衣類のつけ置き洗いにも、キッチンへ運ぶ前に泥付き野菜を洗うのにも便利です」
庭・テラス・バルコニーに設置する
今は、庭やテラス、バルコニーなど、自宅の屋外をアウトドアリビングとして使う人が増えているため、そういった場所にスロップシンクを設置するのもオススメだと言います。
「庭などで使用する椅子やバーベキューコンロなどのアウトドアグッズを洗うときに重宝します。当然、ガーデニングの水やりにも使えます」
勝手口の近くに設置する
「外で使ったものを室内に入れるときにスロップシンクで洗うというシーンを想定すると、出入口付近に設置すると便利でしょう。しかし玄関の横や土間に設置する場合は、配置を工夫しないと見た目の印象がいまひとつになりかねません。使い勝手がよく、インテリアを邪魔しない場所としては、勝手口の近くに設置するのがオススメです」
ガレージの中に設置する
「クルマやバイクが趣味の人が作業をするときに、ガレージ内にスロップシンクがあると、油で汚れた手や衣類を洗うのに便利です」
スロップシンクを設置するときに気を付けることは?
これまで見てきた設置場所や活用方法を踏まえて、スロップシンクを設置するときには、どのようなことに気を付ければいいのでしょうか?
「何の目的で設置するのか」を明確に
「設置にはコストがかかりますが、目的や活用のイメージがないままに設置すると、使わなくなって放置され、無駄になっているケースも見られます。しかも、使わずに放置したスロップシンクは、排水のトラップが蒸発して下水の臭いが上がってきてしまうことも。どのように使いたいのか、目的や利用シーンを明確にしてから設置を検討しましょう」
お湯が出るようにするか?
「冬場に使うときなど、『お湯が出るようにすればよかった』という声をよく聞きます。できるだけお湯は出るようにしておいた方がいいでしょう。ただし、コストもかかりますし、植栽の水やりに使うだけなら必要ありません」
広さや深さをどう選ぶ?
「目的に合わせて選ぶのがいいですね。大きなものをザブザブ洗いたいなら、広さも深さも必要です。ただし、既製品のバリエーションはあまり豊富ではありません。幅は45cm~50cmくらいのものがほとんどです。それよりも大きいものが欲しい場合は、造作することもできます」
周囲への水ハネ対策は?
「水ハネ対策はとても重要です。水だけでなく、使い道によっては泥や魚の血、墨汁なども飛びます。スロップシンクの周りは水に強くて掃除しやすいタイルやパネルなどの素材を使うことをオススメします」
屋外設置時の冬季の凍結対策は?
「スロップシンクに限りませんが、屋外に水栓を設置するときには、設備会社や建築会社に相談して、凍結対策をしておきましょう」
シンクにこだわりのある住まいを建てた先輩たちの事例を紹介!
スーモカウンターでシンクにこだわりのある住まいを建てた先輩たちの事例を紹介します。その人たちが、どんな点にこだわり、どんな住まいを実現したのか、実例を参考に学んでいきましょう。
【case1】洗面には、スロップシンク風の幅の広い実験用シンクを採用
妻の両親との同居も視野に入れて住まい探しを始めたOさんは、遊びに出かけた場所で見つけたスーモカウンターを訪れ、相談することにしました。Oさんのこだわりは、アメリカンハウスをイメージした平屋です。その場で依頼先候補を5~6社紹介してもらい、最終的には予算内でこだわりを理解してくれた1社に絞りました。
完成した家の洗面室には、いつでもアイロンがかけられるように工夫したランドリーコーナーを設けて、家事に集中できるようになっています。また、洗面にはスロップシンク的な使い方もできる幅の広い実験用のシンクを採用しました。
この実例をもっと詳しく→
「平屋の家で二世帯住宅」をかなえるために、DIYを採り入れて上手にコストダウン
スロップシンクを設置する際のポイントは?
最後にあらためてYuuさんに、スロップシンクを設置する際のポイントを聞きました。
「まずは、何に使うのか目的を明確にすること、それによって設置する場所も変わります。動線計画も重要です。また、意外と場所を取るので、スペースの確保も忘れずに。狭小住宅など、スペース的に設置が難しい場合は、大きなボウルが付いた洗面台を選んで、スロップシンクとの兼用を検討するといいでしょう」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望をかなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりのダンドリや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合わせください。
取材協力/Yuu(本名:尾間紫)さん
一級建築士。長年、リフォームの現場で培った経験から、住宅リフォームコンサルタントとして幸せなリフォームを実現するためのノウハウを発信。セミナー講演や執筆活動、人材育成研修などを通し、消費者と事業者の間をつなぐかけ橋となるべく奔走している。毎日新聞での連載やwebサイト「リフォームのホント・裏話」で最新情報を発信中
取材・文/福富大介(スパルタデザイン) イラスト/杉崎アチャ