憧れのテラスのある庭付きの家。しかし、漠然とテラスといっても、どのようなものがテラスと呼ばれるのか、どんな種類があるのか知っている人は少ないのではないでしょうか。そこで一級建築士の加藤幸彦さんに話を聞きながら、用途や費用について実例を交えて紹介します。
テラスとは
テラスとは、諸説ありますが、建物の外部に設けた、地盤面よりも一段高くなったスペースのことをいいます。雨が降ったりして汚れても、水で流して掃除できるので、土の庭よりも使い勝手が良いのが特徴です。屋根が付いているかいないかは、テラスの定義には関係ありません。
バルコニーやベランダとの違い
テラスと似たような言葉でバルコニーやベランダがあります。厳密にいうと、建物外部にある、人が出入りできるスペースの中でも、設置されている場所によって名称が異なるそうです。2階以上で屋外に張り出した屋根が付いていないスペースをバルコニー、屋根や庇(ひさし)が付いているものをベランダと呼びます。
テラスにはどんな種類がある?
一口にテラスといっても、素材や、つくる場所によっても呼び方が異なります。素材の違いは見た目の印象だけでなく、設置費用やメンテナンスの手間にも関係します。また、どこにテラスをつくるかによって、その役割や開放感も変わってくるので、それぞれの特徴を知っておくと良いでしょう。
ウッドテラス
ウッドテラスは、木の温もりを感じられるナチュラルな質感が魅力です。加工がしやすいため、曲線的なデザインも楽しめます。
一方で耐久性が低いのがデメリットで、防腐剤を塗り直すなどの定期的なメンテナンスが必要です。タイルテラスに比べ、比較的安価で設置できることが多いようですが、木材によっては高価な場合があります。
タイルテラス
タイルテラスは、さまざまな色彩を楽しめ、モダンな雰囲気に仕上げることができます。メンテナンスにおいては、劣化しづらく、普段のお手入れが楽なのもメリットです。
ただし、費用はウッドテラスと比べると高め。設置にかかる日数もウッドテラスより長くなります。日当たりが良すぎて夏場は輻射熱がキツくなり、足を火傷したり、熱中症になったりする恐れがあるのもデメリットでしょう。また、雨が降った後など濡れている場合は滑りやすくなることがあります。
ルーフテラス
階下の屋根の上にスペースをつくったテラスをルーフテラスやルーフバルコニーと呼ぶことがあります。一般的なテラスやバルコニーよりも広く取ることができ、開放的な空間を楽しめるでしょう。
一方で、適切な防水処理や表面仕上げを行わなければ、雨漏りの原因となる恐れがあります。
玄関テラス
玄関テラスとは、玄関から外廊までの間につくられた空間のことです。玄関扉とつながった空間があると、玄関へのアプローチに広がりができ、デザイン的にもポイントになります。
テラスに屋根を付ける
テラスと屋根を組み合わせることで、一味違った外観や用途で利用することができます。
テラス屋根・オーニング・シェード
テラス屋根は、テラスに取り付けられた、雨よけや日よけを目的とした屋根のことです。オーニングは、布製で、可動式で折りたたんで収納することができます。シェードはロールカーテンを家の外に付けるようなイメージで、オーニングをさらに簡易的にした日よけです。
テラス屋根
オーニング
シェード
テラスの後付けはできる?
最近増えているのは、テラスをリフォームでつくるケースです。後付けできるテラスのサイズや費用は、どのタイプのテラスをどこにつくるのかによっても、考え方は変わってきます。
サイズ
建ぺい率など、制限については気になるところですが、1階にテラスをつくる場合、地面から1m以内の高さであれば、どれだけ広いテラスをつくっても建ぺい率には影響しません。
費用
「一番安くできるのは、地面(土など)に木材をそのまま打ち付ける方法です。6畳くらいの広さを想定して考えると、表面塗装を自分たちでやれば、材料費と施工代のみで数十万円程度で済むでしょう。ただし、木は劣化しやすいのがデメリットです。
腐食を防ぐために土台にコンクリートを流し込み、その上に木を乗せていく方法の場合、コンクリートを流すだけで10万〜20万円くらいはアップするでしょう。また、自然の雰囲気を残しながら、腐りにくい素材として人工木を選ぶのも一つです。
費用の上限はキリがありません。高価な材料を使えば、数百万円になることもあります」(加藤さん、以下同)
テラスを有効活用する方法は?
せっかくのスペースですから、ライフスタイルに合わせてテラスを有効活用したいものですね。どのような使い方があるのか、代表的なものを挙げてみました。
ガーデニング
広い庭がなくてもテラスにプランターや鉢植えを置いて、ガーデニングを楽しむことができます。棚を置いて植物に高さを出すなど、本格的な庭づくりを楽しむのも良いでしょう。
リビングの延長
アウトドアリビングという言葉があるほど、テラスはリビングの延長として有効に活用できます。テラスにテーブルや椅子などを置き、くつろぎの空間にするのも良いでしょう。家族や友人とホームパーティー、バーベキューなどを楽しんでも良いですね。
物干し
洗濯物を干す場所としてテラスを利用する人もいます。たくさんの洗濯物を一度に干したいときや、大きな布団を干すにもテラスは便利。さらに、テラスに屋根やオーニングがあれば、多少の雨でも安心です。
子どもの遊び場として
テラスは室内とつながっているので目が届きやすく、小さな子どもやペットの遊び場としても最適です。ただしタイルテラスの場合は、夏場は日差しが強く差し込むと、床温度が高くなりすぎることがあるので注意しましょう。
テラスを取り入れた実例を紹介!
次に、加藤さんが手がけたテラス付き住宅を、実例としていくつか紹介します。
部屋をつなぐウッドテラス
母家と離れをウッドテラスでつなぎました。離れの1階はガレージで、上の階には2人の娘さんの部屋があります。
「キャンプが好きなご家族だったので、テントを張ったり、バーベキューを楽しむこともできるアウトドアリビングとしてのテラスです。また、娘さんと両親の独立性は保ちながらも、ご家族が共有できる空間として役立っています」
桜を借景するテラス
隣家の大きな桜の木が借景として緑を添えているウッドテラスです。
「借景は都内の限られた土地に視覚的な広がりをもたらす一つの手法です。都会では少ない緑をできる限り活かしていきたいという思いで、この位置にテラスをつくりました」
狭小住宅におけるテラス
「1フロア20数㎡しかない狭小住宅です。あえてテラスで抜け感を出すことで、面積の数字以上の広がりを感じられる効果を狙いました。ロフトや吹抜けといった低いところと高いところのメリハリを付けることでも広さを出せます。この家に来た方は、図面や面積などから想像するよりも広く感じるとビックリされますよ」
ルーフテラス(ルーフバルコニー)
2階の屋根の部分をルーフテラスとして利用しています。施主自らがDIYで人工芝を敷き、費用を抑えました。周りには落下防止のためのフェンスが設置されています。
「広さとしては12〜13畳くらいありますね。屋上スペースなら、都会では1階にテラスをつくるよりも広いスペースを確保しやすいでしょう。
小さな子どもたちの遊び場として、また、近くで花火大会が開催される際には、椅子を並べて花火を見られる特等席にもなります。家が隣接している場所でも、ルーフテラスなら眺望を望めるケースも多いです」
玄関テラス
タイル状の石を敷き詰めた玄関テラスです。
「この玄関テラスは中庭のように四方を部屋と壁に囲まれていて、玄関から入る以外にも、テラスに面した部屋に直接出入りができるつくりになっています。周りからの視線を気にせずに済む、プライベートな空間です。石を敷き詰めているのでウッドテラスと比べると費用は高くなりますが、高級感があり、耐久性も高く、メンテナンスの手間も少なく済みます」
おしゃれなテラス付きの家を建てた先輩たちの事例を紹介
テラスのタイプも、活用の仕方も、家によってさまざまです。スーモカウンターに相談して、おしゃれで実用的なテラス付きの家を建てた実例を紹介します。
機能性も考えて建てた、メンテナンスが楽なタイルテラスの家
結婚後しばらくは1DKのアパート暮らしだったというMさん夫妻。ゆったり落ち着いて暮らせる一戸建てを希望するものの、最初は理想の住まいのイメージも全くなく、思いつきでスーモカウンターへ。予算や希望について話をした後に紹介された数社から、家づくりの予算や性能へのこだわり、担当者との相性なども考えて依頼先を決定しました。
キッチンを中心に動線も考えて南向きの掃き出し窓の外に物干しを兼ねたテラスを設置。メンテンナンスのしやすさを重視して経年劣化の少ないタイルテラスをセレクト。使い勝手の良さと居心地の良さを兼ね備えた家を叶えました。
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日々のメンテナンスのしやすさにこだわった、長く心地よく過ごせる住まい
自分でつくった芝生の庭に面したテラスで朝食を
アパートの契約更新のタイミングで家族が増えることがわかり、家づくりを決めたMさん夫妻。Mさんはどうしても広いガレージと庭付きの一戸建てに住みたいと考えていました。たまたま通りかかったスーモカウンターに相談し、条件として、資金面と立地、耐震性の高い家をあげ、紹介された会社から価格とサービス内容で1社に絞って依頼を決めました。
間取りはウェブサイトなどを参考に自分たちで考え、庭もMさん自ら耕して芝生を植えるなど、こだわりの詰まった家が出来あがりました。
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布団も楽に干せるテラスで快適な暮らしを実現
子育てがしやすい環境を求めて家探しを始めた夫婦。買い物のついでに立ち寄ったスーモカウンターで数社を紹介されたものの、なかなか決断できないでいました。担当アドバイザーに背中を押されて土地を購入。その半年後には快適な家と暮らしを手に入れました。
洗濯機の後すぐ横にテラスを設置し、洗濯後はすぐに干せるようになりました。
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高い壁で外からの目線を遮り、子どもも安心して遊べるテラス
2年前に妻の父が亡くなり、妻の母と兄との同居を決めたFさん。CMやフリーマガジンで存在を知っていたスーモカウンターに相談したところ、強みの異なる5社を紹介され、担当者と価値観や好きなものが同じだと感じられた建築会社に依頼。
日当たりの良いテラスは、高い壁で外からの目線を遮り、2世帯6人家族が賑やかに暮らせる家を手に入れました。
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お互いの生活音を気にせず、6人が快適に暮らす二世帯住宅
家にテラスを設置しようと計画するときのポイント
「テラス」といっても、素材やつくる場所によっていろいろなタイプがあります。機能性・デザイン・素材・工法・費用など、それぞれのメリット・デメリットを把握して、テラスを設置しないと、後悔することになりかねません。
また、設置する際の費用だけでなく、将来、メンテナンスが必要になることも考えておく必要があります。
敷地の広さや、立地によっても選ぶべきテラスの種類は変わってくるでしょう。特に都会では、土地も限られているので、1階にテラスをつくるのであればサイズも考慮しなくてはなりません。
さらに、テラスは家の外観を左右するものでもあるので、外観とのバランスを見ながら素材やデザインを選ぶことも大事です。
テラスの使い方はあなた次第。テラススペースがあなたの暮らしにさらなる広がりを持たせるよう、活用してください。
スーモカウンターに相談してみよう
テラス付きの家を建てたいけれど「どのような家にするかイメージが固まらない」「費用が予算内に収まるか不安」といったお悩みがあるなら、ぜひ一度スーモカウンターへご相談を。スーモカウンターでは、ご要望を伺い、お客さま一人ひとりに合った依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、注文住宅の家づくりに役立つ無料講座も用意しています。ぜひお問い合わせください。
イラスト/村林タカノブ