住まいづくりを進めるに当たり、通風や採光を担う「窓」について検討することは、非常に重要です。しかし、住宅用の窓だけでも沢山の種類があり、どの場所にどんな窓を設ければいいのか迷ってしまうかもしれません。そこで、窓の種類と特徴について、一級建築士の佐川旭さんに聞きました。
窓の定義や役割とは?
住宅を構成する重要な要素の一つ「窓」。窓は、家の内側にも外側にも接しており、目に触れる機会も多い部分ですが、そもそも窓とはどういうもので、どのような役割があるのでしょうか。
窓の定義
「住まいの出入口または開口部などの開いている箇所にはめる『建具』のうち、採光や通風のために設けられるものが『窓』と呼ばれています」(佐川さん、以下同)
窓の役割
「窓の役割は大きく3つです。まず光を通すという役割、次に風を通すという役割、そして視線を通すという役割です。また、建物の外観デザインでも重要な役割を果たします」
設置場所で分類した窓の種類と特徴
窓には非常に数多くの種類がありますが、まず設置場所で分類した場合の主な窓の種類と、それぞれの特徴を紹介します。
天窓(トップライト)
「天窓は、建物の屋根に設けた窓のことで、トップライトなどとも言います。通常天窓は、遮るもののない空に向かって開いているため、日光をダイレクトに取り入れることができます。ただし、天窓からは光と一緒に熱も入ってくるため、夏場などは暑くなり過ぎることがあります」
天窓について、もっと詳しく→
天窓(トップライト)のメリット・デメリット 高窓(ハイサイドライト)との違いは?
高窓(ハイサイドライト)
「高窓は、ハイサイドライトとも呼ばれます。一般的な窓の位置よりも天井に近い高い位置に設けられた窓のことです。高い位置にあるため、周辺の障害物に邪魔されることなく光を取り入れることができます」
高窓について、もっと詳しく→
高窓(ハイサイドライト)とは?トップライトとの違いは?明るい空間をつくるポイントを押さえよう
地窓
「床面に近い低い場所に設けた窓のことです。透明ガラスの地窓の場合、座った状態で視線を外まで飛ばすことができるため、庭を眺めるのに最適です。また、開閉できる地窓なら、夏場、下に落ちた冷たい空気が室内を抜ける効果も期待できます。トイレなどに設けた地窓は、においがこもらないようにする効果もあります」
出窓
「建物の壁より外に張り出した窓のことです。壁から45cmくらい外に出っ張るため、室内が広く感じられる効果があります。外の風景を切り取って、絵画のように楽しめるピクチャーウィンドウとしての役割も期待できます」
掃き出し窓
「床から壁の高い位置まで開口がある背の高い窓(高さの目安は2m前後)で、気軽に外へ出られるのが特徴です。そもそも室内のホコリやチリを外へ掃き出す窓であることから『掃き出し窓』と呼ばれるようになりました。テラスや濡れ縁を設けて室内の延長として使う際に便利な窓です」
この実例をもっと詳しく→
「掃き出し窓」のメリットとデメリットを解説!
全開口窓(フルオープン窓)
「開口部の幅いっぱいにフルオープンできる窓です。高さは床から人の背丈以上あるものがほとんど。全開口にするため、窓を折り畳むタイプと、壁に引き込むタイプがあります。掃き出し窓よりも、さらにダイナミックに室内と外とをつなげることができます」
腰高窓
「人の腰の高さに設ける窓です。床から90cmくらいの位置にあるのが一般的でしょう。基本的に人の出入りには使われません。机や本棚など、窓の下に物を置いてスペースを有効活用することができます」
肘掛け窓
「座ったときに肘を掛けられる高さにある窓のことです。和室に設けることが多い窓ですが、小さい子どもがいると落ちてケガをしやすいなどの理由から、最近はあまり見かけません」
コーナー窓
「建物の角に設けた窓のことです。透明ガラスにすれば、室内が広く感じられ、外の景色を取り込むのにも適しています。しかし、構造上重要な役割を担う家の隅を開口してしまうため、耐震性を得るのが難しいというデメリットがあります」
スリット窓
「細長い窓のことです。タテに長いタイプと横に長いタイプがあります。スリット窓は、複数並べて外観にリズムを出すといったデザイン的な理由で使われることも多い窓です」
開き方で分類した窓の種類と特徴
窓の種類は、開き方で分けることもできます。開き方で分類した場合の主な窓の種類と、それぞれの特徴を紹介します。
引き違い窓
横すべり出し窓
「窓の下側を押して外側にすべり出させて開ける窓です。窓のガラス面が庇代わりになるため、通風を得ながら、雨が室内に吹き込むのを防ぐことができます」
縦すべり出し窓
「上下にある溝に沿って窓を押し、外側にすべり出させて開ける窓です。すりガラスにすれば、視線を遮りながら風を呼び込めます。幅や高さのバリエーションが豊富なので、外観のアクセントとして用いられることの多い窓です」
片開き窓
「窓枠の左右どちらかを軸として開閉する窓です。外開きと内開きがあります。強風で窓が全開し、窓ガラスが割れて飛び散らないようにストッパーが付いたタイプもあります。幅や高さのバリエーションが豊富なので、外観のアクセントとして用いられることが多い窓です」
両開き扉
「2枚の窓が、窓枠の左右を軸として開閉するタイプのもの。窓ガラスが割れて飛び散らないようにストッパーがついたタイプもあります。幅や高さのバリエーションが豊富なので、外観のアクセントとして用いられることが多い窓です」
引込み窓
「窓枠の片側の壁に戸袋が設けられており、開けた窓をそこに収納して隠すことができます。見た目がすっきりして、開放感が得られますが、コストが高いのが難点です」
突き出し窓
「窓枠の上部を軸として下側を押し、外側に突き出して開ける窓のことです。窓のガラス面が庇代わりになるため、通風を得ながら、雨が室内に吹き込むのを防ぐことができます。一定の角度以上に開かないようストッパーをつけて、防犯性を高めたものもあります」
内倒し窓
「窓の下部を軸として、窓の上部を内側に倒して開けます。トイレや浴室などの採光・換気用として用いられるケースが多い窓です。一定の角度以上に開かないようストッパーをつけて、防犯性を高めたものもあります。高い位置にある場合は専用のフック棒で開閉します」
外倒し窓
「窓枠の下部を軸として、窓の上部を外側に倒して開けます。換気用として用いられるケースが多い窓です。一定の角度以上に開かないようストッパーをつけて、防犯性を高めたものもあります。高い位置にある場合は専用のフック棒で開閉します」
ルーバー窓(ジャロジー窓)
「細長いガラス板をブラインドみたいに少しずつ重なるように並べ、その角度を変えることで通風を調整します。浴室や洗面室、トイレなどに設置されることが多い窓です。ただし、重ねたガラス板に隙間が生まれるため、気密性や断熱性はあまりよくありません」
オーニング窓
「サッシがついた複数の小窓で構成された窓です。ハンドル操作で同時に開閉します。角度を変えることで通風を調整できる点はルーバー窓と一緒ですが、気密性・防犯性が高いのが特徴です」
上げ下げ窓
「上下にスライドして開閉します。上下2枚とも動くダブルハングと、片方だけ動くシングルハングがあります。限られたスペースにも設置できて採光や通風が得られますが、開閉しづらく、窓を持ち上げるのに力が必要です」
FIX窓(はめ殺し窓)
「窓枠に固定されていて開閉できない窓です。通風の機能はないため、採光や眺望が主な目的となります。丸型や正方形、長方形などさまざまな形状の商品があるため、デザインのアクセントとしても重宝されます」
回転窓
「窓枠の中央を軸にして、回転して開閉します。回転角度によって通風を調節できる、掃除がしやすいなどの特徴があります」
ツーアクション窓
「レバー操作によってタテの軸とヨコの軸を起点に二方向に開閉します。気密性・防犯性が高い窓です。構造が複雑なのでコストも高くなります」
最適な窓を選ぶポイント
最後にあらためて佐川さんに、最適な窓を選ぶにあたってのポイントを聞きました。
「採光や通風といった基本の機能はもちろんですが、高齢者にとって開けやすいかどうか、網戸は設置できるのかなど、利用シーンごとに最適な窓を選ぶ必要があります。形や開き方以外に、樹脂サッシや複層ガラスなど、素材やその使い方によっても機能性は変わります。
また、窓は外観デザインにおいて大きな役割を担っています。外から見たときに窓の配置のバランスはいいか、壁の面積に対して窓が大き過ぎないか、熱損失と熱の浸入はどうか、外壁材と窓枠の色はマッチしているかなど、検討すべきポイントは非常に多くあります。最適な窓を選ぶためには、取り付ける場所での役割を明確にして選択していくことです」
スーモカウンターに相談してみよう
窓の種類を決めるときに「外観と窓のデザインが調和した素敵な家に住みたい」「通風や採光を意識した快適な家づくりがしたい」と思ったら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望をかなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりのダンドリや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合せください。
取材協力/佐川旭さん
佐川旭建築研究所代表。一級建築士、インテリアプランナー。間取り博士とよばれるベテラン建築家で、住宅だけでなく、国内外問わず公共建築や街づくりまで手がける
取材・文/福富大介(スパルタデザイン) イラスト/杉崎アチャ