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自宅にワークスペースがほしい!注文住宅の建築段階から押さえたいポイント

近年、多様な働き方が注目されるのに伴って、自宅内にワークスペースを設けたいと希望する人が増えています。新築の注文住宅に計画的にワークスペースをつくる場合、どのようなことに注意したらよいでしょうか?おしゃれなワークスペースにするためのレイアウトのヒントなどについてH.B.オフィスの一級建築士である岡﨑有佑さんに話を聞きました。

ワークスペースとは?

ワークスペースの特徴や広さ

「ワークスペースには明確な定義はありません。自宅内の個室をまるごとワークスペースにする人もいれば、ダイニングの一角や階段下などのスペースに作業台を置いてワークスペースにする人もいます。

仕事部屋といえば書斎でしたが、ワークスペースは書斎よりもオープンなイメージがあります。大人から子どもまで家族全員がフレキシブルに使うことのできるスペースです。やりたいワークの内容によって必要な設備や広さは異なるため、注文住宅に取り入れるのであれば施工会社とよく打ち合わせを行ったほうがよいでしょう」(岡﨑さん、以下同)

自宅内のワークスペースの広さは、作業台を設置することを考えて4.5〜6畳が一般的のようです。しかし、1畳ほどの空きスペースがあれば小さなカウンターを設置して作業をすることも可能なので「家が狭いからワークスペースがつくれない」という心配はいりません。

ワークスペースの写真

個人が使う仕事部屋という印象が強い書斎に対し、ワークスペースは家族みんなが使用できるオープンなスペースという印象がある(画像/PIXTA)

自宅にワークスペースは必要?ワークスペースのメリット・デメリットは?

注文住宅にワークスペースを取り入れる前に、メリットやデメリットも確認しておきましょう。

ワークスペースを設けることのメリット

「テレワークでオンライン会議などを行うときは、できれば静かな環境で行いたいものです。自宅の中に個室のワークスペースがあれば、家族の声や生活音など部屋の外の音に影響を受けにくく、会議の内容も家族や来客に知られず、作業に集中することもできます」

さまざまな活用の仕方が期待できるワークスペースですが、将来的には仕事以外の用途でも使う可能性があります。

「テレワークの期間が終了したり事業をやめたりして、仕事専用のスペースが必要なくなるときが来るかもしれません。そんなときに、趣味の空間や子供の宿題スペースとしてワークスペースを新たな用途で使い続けることも可能です。汎用性が高くさまざまな用途で活用できることも、自宅にワークスペースを設ける魅力かもしれませんね」

テレワークをしている人の写真

親のテレワークが終わった後に子どもの勉強スペースにするなど、汎用性が高いところもワークスペースの魅力(画像/PIXTA)

専用スペースにすることのデメリット

個室のワークスペースの場合、作業に集中できるというメリットがある一方で、部屋の外の音や家族の声が聞こえにくくなるなどのデメリットもあります。
「個室のワークスペースを設けなくてもダイニングテーブルを使って問題なく作業ができた、という人もいます。また、自宅よりも外で作業をしたほうが集中できるという人もいるため、ワークスペースのある家を建てるときは自分の暮らし方や働き方とマッチするかよく検討したほうが失敗がないでしょう」

また、仕事専用のスペースを自宅の中に取り入れるということは、それだけ面積が必要になり、場所を取られてしまうというデメリットもあります。

「本来はリビングを広く取ったり、プラスアルファの収納をつくることができたはずの場所に、ワークスペースを設けることになります。限られた面積の中での家づくりですから、本当に必要かどうかを家族と話し合って決めたほうがよいでしょう。ワークスペースがなくてもダイニングテーブルで十分だったというケースもあります」

カフェで仕事をする人の写真

自宅にワークスペースを設けずに、カフェやコワーキングスペースで作業をする選択肢もある(画像/PIXTA)

ワークスペースは自宅のどこに取り入れる?レイアウト例を紹介

L字型デスクを設置した個室タイプのワークスペース

落ち着いてテレワークに集中できる個室のワークスペース。小窓を設置し採光も確保しています。
「書類を並べたりモニターを2台置いたりできるL字のデスクは、テレワークをしている方たちに人気です」

アクセントクロスを張ったワーキングスペースの写真

壁の一面にアクセントクロスを張ったことで空間に個性を打ち出した(画像提供/H.B.オフィス)

階段の踊り場を有効活用したスタイリッシュなワークスペース

こちらは階段の踊り場というオープンな場所をワークスペースにした実例です。家族が行き来する場所のため、コミュニケーションを取りながら作業ができる良さがあります。

「階段の踊り場に作業台や収納を設置し、ワークスペースにしました。棚にはコレクションのアイテムを飾り、目で見ても楽しめる空間になっています」

階段の踊り場を有効活用したワークスペースの写真

広めに確保した階段の踊り場を有効活用し、作業ができるようにレイアウトした(画像提供/H.B.オフィス)

階段下のスペースを使ったオープンなワークスペース

階段下のスペースを活用し、家族全員が使用できるオープンなワークスペースにした実例です。横長のカウンターを壁に沿わせる形で設置して、落ち着いてデスクワークや書き物などができる場所としてレイアウト。日中は窓から日光が差し込む明るい空間です。

階段下を利用したワークスペースの写真

階段の風合いとも調和した、木の素材感を味わえるワークスペース(画像提供/H.B.オフィス)

本棚を設置した書斎風のワークスペース

個室タイプのワークスペースの実例です。本棚を設置し、書斎風のレイアウトにしています。子どもの声などを気にせず、落ち着いて作業に集中できる空間です。

書斎風のワークスペースの写真

扉付きのワークスペースだからミーティングや通話なども安心して行える(画像提供/H.B.オフィス)

LDKの一角に設けたワークスペース

家族で過ごすリビングの一角にワークスペースを設けるという選択肢もあります。仕事に限らずちょっとした作業をしたいときや、お子さんの宿題を見守るときにも便利です。目隠し用の間仕切りを設置すれば、家族の視線を気にせず作業に集中できます。

オープンタイプのワークスペースの写真

オープンタイプのワークスペースは家族全員が使いやすいというメリットがある(画像提供/PIXTA)

ガラスの仕切りを設けた開放感のあるワークスペース

階段横の空間を個室風のワークスペースに。仕切りをガラスにしたため閉塞感がなく、採光も確保できます。無垢材のカウンターや見せるタイプの収納などは、見た目もよくおしゃれなワークスペースをつくりたい場合におすすめです。

ガラスで仕切ったワークスペースの写真

ワークスペース内に設置した棚にはお気に入りの本やコレクションアイテムを並べることができる(画像提供/PIXTA)

ワークスペースの設備を決めるときの注意点は?

コンセントの数

ワークスペースでPCや家電を使用する際にはコンセントが必要です。使用する機器の数に合わせてコンセントの数も検討しましょう。また、足元やデスクの上など使用しやすい場所にコンセントがあると便利です。

参考記事
注文住宅のコンセント位置で失敗したくない! ポイントや部屋別レイアウトを紹介

パソコンと携帯電話の写真

パソコンや携帯電話を充電するコンセントはテレワークの際に必要となる(画像提供/PIXTA)

インターネット環境

テレワークをするときに欠かせないのがネット環境です。回線が不安定な状態では仕事に集中できません。また、オンライン会議や大容量のデータを送受信する際は通信速度も重要なポイントとなります。ワークスペースのインターネット環境が安定するように、ルーターの位置に注意したり必要に応じて有線LANを引き込むなど検討しましょう。

オンライン会議をしている人の写真

オンライン会議を自宅でスムーズに行うためにはネット環境が重要(画像提供/PIXTA)

参考記事
一戸建てへのWi-Fi導入のポイントは? ルーターの設置場所や注意点を紹介!

空調や換気口の有無

長時間過ごすことを考慮し、空調設備や換気口、もしくは換気できる窓を設置することを検討しましょう。窓があると採光も確保できます。
「調理をしたり火器を扱う作業を行うワークスペースは換気扇が必要になります。また、夏や冬に快適に過ごすためにもエアコンは設置したほうがよいでしょう」

換気口のあるワークスペースの写真

窓や換気口、空調設備があることでワークスペースが快適な空間になる(画像提供/PIXTA)

収納

ワークに必要なアイテムを収納する棚やキャビネットがあると便利です。作業の内容に合わせて小さな家電や趣味のアイテムなどを置くことができるように収納のサイズや位置も考えてみましょう。また、飾り棚を設置すると、空間のアクセントにもなります。ワークスペースのデザイン性を高めたい人におすすめです。

飾り棚と間接照明でおしゃれな雰囲気のワークスペースの写真

飾り棚と間接照明を組み合わせるとおしゃれな雰囲気になる(画像提供/PIXTA)

おしゃれで便利なワークスペースをつくるためのポイント

来客が多い場合は玄関の近くにワークスペースをつくる

「打ち合わせや接客などで家族以外の人がワークスペースに入る場合は、玄関の近くにワークスペースをつくるのがおすすめです。玄関からワークスペースまでの動線をなるべく短くしたほうが、自宅内のプライベートな空間を通らずに案内できるからです」

間取りの都合により玄関の近くにワークスペースをつくることが難しい場合は、来訪者がプライベートな空間を通らない動線を検討しましょう。

玄関のすぐ横にあるワークスペースのイラスト

玄関のすぐ横にワークスペースの入口を設けると、来客があったときにスムーズに案内できる(イラスト/タイマタカシ)

仕事に集中したい場合は防音対策をしっかり行う

「作業に集中したい人やオンライン会議などが多い人は、防音対策をしっかり行うことをおすすめします。防音材や入口に扉を付けることで対策できます」

防音環境を整えていないと仕事中にほかの家族の声が聞こえてしまったり、会議などの声で寝ている家族を起こしてしまったりする可能性もあります。

防音対策をした部屋のイラスト

防音対策をしっかりと行えば、家族の生活にも影響を与える心配が少なくなる(イラスト/タイマタカシ)

作業内容に合わせて床や壁面の素材を検討する

「業種によっては床や壁の素材をよく検討したほうがよいでしょう。調理をしたり塗料を使う作業をするならば、水や汚れに強く掃除がしやすい床材を、火を扱う場合は耐火性を考慮する必要があります」

自宅にワークスペースをつくる場合は、打ち合わせのときに詳しい用途まで施工会社に伝えたほうがよいでしょう。

床で絵を描く人の写真

作業中に床や壁が汚れる可能性がある場合は、素材の手入れのしやすさも重要(画像/PIXTA)

将来のライフスタイルを見据えて空間設計を行う

「将来的にもワークスペースを使用するのか?という視点はとても大切です。いずれ使用しなくなりデッドスペースになる可能性も十分に考えられます。せっかくの注文住宅なのに、それではもったいないですよね。将来の使い道まで新築時に考えられることが理想です。

例えば、テレワークのためにつくったワークスペースを、将来的には同居を考えている親御さんの部屋にするという選択肢もあります。そういった予測ができていれば、間取り決めの際にトイレの近くにワークスペースを配置したり、人が快適に過ごせるように大きめの窓を設けることも可能です。また、いつかリフォームすることを前提として壁に下地を入れてビスが止まるように施工しておくこともできます」

現在と将来の暮らしのイラスト

将来のことまで見通しを持ってワークスペースを計画するとよい(イラスト/タイマタカシ)

複数の用途で使えるレイアウトにする

「テレワークで使用していないときは子どもの宿題スペースにするなど、複数の用途で使うことを考慮したレイアウトにすると家族全員が使いやすくなります」

家族共用で使えるように机や椅子を用意したり、あえて鍵を付けないというのもポイントです。

ひとつのデスクで作業する親子の写真

親子で共用できるデスクを設置し、家族に開かれたワークスペースに(画像/PIXTA)

遊び心を取り入れるのもおすすめ

「ワークスペースに遊び心を持たせるのもおすすめです。本棚風の隠し扉や引き戸風の開き戸(だまし扉)、室内窓を付けたり、内装にアクセントクロスを取り入れたり、ワクワクする要素を取り入れると空間への愛着も深まります」

リビングや水回りとは異なり、日常生活とは少しだけ離れた空間だからこそ、遊び心を取り入れた設計にしたり、個性的なインテリアを取り入れやすいという良さがあります。

扉に仕掛けのあるワークスペースのイラスト

扉の仕掛けや内装のちょっとしたこだわりなどが、空間への愛着を深める(イラスト/タイマタカシ)

ワークスペースを自宅に取り入れた先輩たちの実例を紹介

ここからは自宅内にワークスペースをつくった先輩たちの実例を紹介します。間取りやレイアウトのヒントにして、ぜひ理想の家づくりにつなげましょう。

【case1】キッチンとリビングの間にある家族共用ワークスペース

第二子誕生を機に家づくりを始めたTさん一家。家族みんなが楽しく過ごせる家を目指し、楽器を演奏できる音楽部屋や、キッチンとリビングの間に共用のワークスペースをつくりました。ワークスペースの背後には本棚をつくり、夫婦の書類や子どもの絵本を収納。家族全員で使えるワークスペースが完成しました。

横長のカウンターの写真

横長のカウンターは作業に便利。書類を広げても余裕がある(撮影/アラキシン)

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忙しい共働きでも家族で趣味が楽しめる、「音楽部屋」のある家

【case2】読書やリモートワークで使えるコンパクトなワークスペース

お気に入りの住環境を見つけてマイホームを建てることを決めたKさん一家。目指したのは海外リゾート風の広々とした一軒家。リビングに吹抜けのある開放的なマイホームが完成しました。リビングの一角にはカウンターを設置してさまざまな用途で使えるようにしました。読書や勉強、夫のリモートワークなどに役立っています。

二人で使えるワークスペースの写真

二人並んで作業や読書をすることができるワークスペース。家族のコミュニケーションの場所になることも期待できる(撮影/一井りょう)

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【case3】三面採光の明るいワークスペース

子どもが増えて暮らしていたマンションが手狭になったことや、リモートワークの機会が多くなり会社の近くに住む必要がなくなったことをきっかけに注文住宅を建てたYさん。明るく開放的で、動線が便利な家が完成しました。リビングから続く夫の書斎は三面採光。明るく開放的で断熱性にもこだわった快適なワークスペースです。

三面採光のワークスペースの写真

造作カウンターを設けて空間をすっきり見せていることもポイント(撮影/上條泰山)

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家事動線と子どもを見守れる間取りにこだわった明るく開放的な家

【case4】壁一面にたっぷりと本を収納できる書庫兼ワークスペース

築60年以上たつ妻の実家に住んでいたOさん夫妻は、より安心して暮らせる家を求めて注文住宅の購入に踏み切りました。間取りで特にこだわったのは、本をたくさんしまうことができる書庫。壁一面を本棚にしたいというのは夫の希望です。プランニング中にリモートワークの必要性が出てきたため書庫から書斎へと使い道を変更し、収納力のある便利なワークスペースが完成しました。

書庫としても使えるワークスペースの写真

書庫としても仕事部屋としても使える便利な空間(撮影/上條泰山)

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年中どの部屋も快適な全館空調の家でかなえた猫との楽しい暮らし

自宅にワークスペースをつくるときのポイント

最後に、自宅にワークスペースをつくるときのポイントと注意点について岡﨑さんに聞きました。

「ワークスペースを設計する際に大切なことは、日頃の使い方や将来のライフスタイルまで細かくシミュレーションして考えることです。ワークといってもそこでやりたい作業は一人ひとり違います。本当に使いやすいワークスペースにするためには、個々の仕事やライフスタイルに合わせて設計する必要があるのです。そして、今だけでなく将来の暮らしも見据えて計画できるとなお良いと思います」

家族みんなが使える汎用性の高い場所だからこそ、上手に活用したいですよね。使い方を家族内で話し合い、より良い家づくりを進めていきましょう。

スーモカウンターに相談してみよう

自宅にワークスペースをつくることを検討している方は、ぜひスーモカウンターに相談してみませんか。スーモカウンターでは理想に合った会社探しをはじめ、アドバイザーがお客様の家づくりを全面サポートします。注文住宅を建てたいけど何から始めたらいいの?という方も大歓迎。家づくりのヒントからお金のことまで親身になって相談に乗ります。

イラスト/タイマタカシ

取材協力/岡﨑 有佑さん(H.B.HOMES(エイチビーホームズ) 一級建築士/デザイナー)
取材・執筆/佐藤愛美(りんかく)