家づくりの過程で外壁材を検討していると目にすることのある「ALC」。ALCとは、一体何なのでしょうか? ALCの紹介と、ALC外壁を採用した木造住宅を手がける原田工務店の大井正史さんの話を基に、その特徴やメリット、デメリットについて紹介します。
ALCとは
ALCは、「Autoclaved Lightweight aerated Concrete」の略で、高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリートを意味します。このALCを板状に成型したものがALCパネルで、建築物の外壁などに使われています。1930年頃に北欧で発明され、日本で生産が開始されたのは1963年です。
ALCの原料は?
ALCは、珪石、セメント、生石灰、発泡剤のアルミ粉末を主原料としています。ALCには、アスベストはもちろん、トルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物(VOC)は一切含まれていません。
ALCパネルの種類は?
このALCを板状に成型したALCパネルには、大きく分けて厚さが75mm以上の厚形パネルと、厚さが35mm以上75mm未満の薄形パネルがあります。外壁材として使われる場合、厚形パネルは主に高さが31m以下のビルや倉庫・工場などに、薄形パネルは主に軽量鉄骨造の住宅や木造の住宅などに用いられています。
厚形パネル、薄形パネルともに、平らな板状の平パネル、表面に凹凸のパターンを施した意匠パネル、コーナー用のコーナーパネルがあります。
ALC外壁にはどんなメリットがある?
ALCパネルが住宅の外壁材として使われる場合、どのようなメリットがあるのか紹介します。
軽い
ALCパネルには、無数の細かい気泡があり、非常に軽いのがメリットの一つです。重さは普通コンクリートの約4分の1。ALC外壁にすることで建物全体も軽量化でき、地震時の揺れや構造体にかかる負担を軽くできます。
火に強い
ALCパネルは不燃材料で、火に強いのが大きなメリットの一つです。また、無機質の原料からつくられるため、万一の火災にも有毒なガスや煙を出すことはありません。
断熱性が高い
ALCパネル全体に広がる無数の細かい気泡が優れた断熱性を発揮します。その性能は普通コンクリートの約10倍。空調のランニングコストを抑え、結露の防止など住み心地の向上に貢献します。
遮音性が高い
耐久性が高い
ALCパネルの内部には、補強材として特殊防錆処理を施した鉄筋マットやメタルラス(スチール製の金網) が組み込まれています。これによって、使用上十分な強度を発揮します。
また、使用条件や仕上げ材のグレード、適切なメンテナンスの有無により異なりますが、適切な使用条件のもとに、定期的なメンテナンスを施した場合、50年を超える長期使用も可能です。
地震に強い
外壁パネルは、通常ロッキング構法で取り付けられます。ロッキング構法は、地震時に躯体(鉄骨)が変形してもパネルが回転(ロッキング)することで変形による損傷を小さくすることが可能な構法です。
鉄骨などの構造体に複数のALCパネルを取り付けるのですが、地震などの外からの力が加わったときには、パネルが1枚毎に微小に回転することによって、並んでいるALCが全体的に少しずつ傾いて収まる形になります。
過去の大地震においても、躯体が限界を超えて変形・破壊された場合を除いて、ロッキング構法で取り付けられた外壁パネルは、ほとんど損傷を受けませんでした。
デザインの自由度が高い
ALCパネルには表面にデザイン加工を施した意匠パネルがあり、各メーカーではさまざまなデザインの意匠パネルをラインアップしています。また、現場塗装によってさまざまな色にカラーリングが可能で、デザインの幅が広がります。
ALC外壁のデメリットとは?
ALC外壁にはさまざまなメリットがある半面、デメリットもあります。どのようなデメリットがあるのか、またそのデメリットを回避するにはどうしたらいいのかを確認しましょう。
水を吸いやすい
ALCパネル自体には防水性はなく、水を吸いやすい性質であるため、表面に吸水、吸湿対策を施す必要があります。特に外壁材として使用する場合には、防水性の高い仕上げが必要です。
寒冷地の場合には、雨水、融雪水、結露水、水蒸気などの水分が、直接あるいは間接的に凍害の原因となることがあります。その土地の風土に合わせた適切な仕上げ材で、適切な施工を行うことが必須となります。
なお、仕上げ材や目地シーリング材の防水性能が低下すると、漏水事故が起きる可能性があるため、外装のメンテナンスは劣化や傷み具合に応じて定期的に実施することが重要です。
施工の工程が多い
木造住宅などの外壁をALCで仕上げる場合、最もポピュラーな窯業系サイディングに比べて施工の工程が多くなります。
「窯業系サイディングは工場出荷時に防水塗装されているものがほとんどですが、ALCは現場での塗装が基本です。そのため、施工にあたっては塗装の工程が必要になります」(大井さん)
左官仕上げや石張りには適さない
ALCパネルの上からモルタルなどの左官仕上げをすると、剥離・漏水する恐れがあるため、左官仕上げには適しません。また、ALCパネルは、表面強度が普通コンクリートに比べて小さいため、重量のある石材や大型タイルなどを直張りすることはできません。
初期コストが高い
「ALCは、一般的な窯業系サイディングと比べると、初期コストは高くなります。ただし、窯業系サイディングより長持ちするため、適切な塗料を使用すれば、ランニングコストは抑えることができます」(大井さん)
ALC外壁を採用した住宅の実例を紹介
外壁にALCを採用した住宅の実例を紹介します。外壁を検討する際の参考にしてください。
シンプルでナチュラルな家
タイル調の意匠パネルをホワイトの塗装で仕上げた外壁。シンプルでナチュラルな外観になっています。
シックでおしゃれな家
ライン柄のALCパネルをタテ張りにし、ダークブラウンの塗装で仕上げた外観です。玄関まわりもALCですが、継ぎ目を隠す仕様にしてホワイトで仕上げ、ウッド調の玄関引戸を引き立てています。
ホワイトとブラウンで塗り分けた家
家のALC外壁はホワイト、バルコニーは木目調の意匠パネルをブラウンで仕上げて塗り分けました。隣のガレージの外観も、ALCをブラウンに塗装して仕上げたものです。
ALCとサイディングが共存する家
家の外壁には横ラインのALCパネルを採用し、深いグリーンで塗装しました。バルコニー部分は明るい木目調のサイディングを張って、外観上のアクセントとしています。
ローズ系で仕上げたかわいらしい家
外壁のALCはレンガ調の意匠パネルを採用しました。ローズ系の淡いピンクの塗装で仕上げたかわいらしい印象の外観です。
ダーク系の色でまとめた重厚感のある家
外壁のALCはレンガ調の意匠パネルをダークブラウンの塗装で仕上げました。黒いサッシと濃い色の木目で仕上げた玄関扉やバルコニーとの組み合わせで、全体的に重厚感のある外観になっています。
ALC外壁を採用するにあたってのポイント
最後にあらためて、大井さんにALC外壁を採用するにあたってのポイントを聞きました。
「ALC自体は耐火性・耐久性に優れた優秀な建材です。ただ、外壁として使用する際には塗装が重要になります。塗料もメーカー推奨の耐久性の高いものを採用するなど、多少コストをかけても妥協しない方がいいでしょう。また、ALCはサイディングとは異なる特徴があるため、施工にあってはALC外壁の施工実績が豊富な会社へ依頼することをおすすめします」(大井さん)
スーモカウンターに相談してみよう
ALCの外壁を採用する時に「どうやって進めたらいいのかわからない」「建築会社はどうやって選べばいいの?」と思ったら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望を叶えてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
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イラスト/つぼいひろき