注文住宅を建てるとき、屋外用の水栓(水道蛇口)をどうするかというのは、意外と後回しにしがちな点かもしれません。しかし、水栓を付けるか付けないか、立水栓にするか散水栓にするかが実際の暮らしやすさに影響することも。そこで、トーシンコーポレーションのIさんに立水栓のメリット・デメリットや設置のポイントなどについて聞きました。
目次
立水栓(立ち上がり水栓)とは?散水栓との違いも紹介
立水栓(立ち上がり水栓)とは、どのような水栓のことなのか、また何と読むのかについてなど、まずは基本的な概要について見ていきましょう。
立水栓とは?読み方は「りっすいせん」
立水栓の読み方は「りっすいせん」となります。屋外用の水栓の一種で、水栓柱、立ち上がり水栓とも呼ばれており、柱状になっているのが特徴です。
散水栓との比較
屋外用の水栓には、立水栓のほかに、地面の中に埋め込む散水栓があります。
「散水栓には、狭いスペースでも設置できるなどのメリットがありますが、蛇口の位置が低いため、立水栓と比較して使いづらいというデメリットがあります」(Iさん、以下同)
立水栓には、ほかにも散水栓と比較してさまざまなメリット・デメリットがありますが、後ほど詳しく紹介します。
立水栓の寿命は?
屋外に設置する立水栓は、設置場所によっては雨風にさらされることもあるため、寿命がどのくらいなのか、気になるところではないでしょうか。
立水栓の素材や周囲の環境、使い方によっても異なりますが、防腐処理された木製タイプであれば10年程度、金属製や陶器製のタイプは30年程度といわれています。
しかし海に近いエリアでは、塩分が含まれた潮風の影響で錆びやすく、他の地域に比べて劣化が早まる傾向があります。
海の近くではないとしても、錆びた状態を放置してしまうと、寿命は短くなる可能性があります。ほかにもガタつきや蛇口部分からの水漏れなど、気になることがあれば専門業者に相談し、早めのメンテナンスを心がけましょう。
立水栓のメリットは?
立水栓にはどのようなメリットがあるのでしょうか。代表的なものについて紹介します。
気軽に使える、水を使うときのストレスが少ない
「散水栓は、しゃがみ込んで、地面のフタを開けてから蛇口をひねる必要がありますが、立水栓の場合は、少しかがんで蛇口をひねれば水が出るため、気軽に使えるというメリットがあります」
手を洗いやすい
散水栓だと下から水が噴き上がる形になるため、手を洗うのに向いていませんが、立水栓は上から下へ水が流れるため、手を洗いやすいというメリットがあります。
「玄関の横に立水栓を設置して、家の中に入る前に手洗いができるようにしている住宅も見かけます」
温水も使える
散水栓でお湯が出るものは見かけませんが、立水栓にはお湯が出るものもあります。
「サーフィンが趣味の方など、海から帰って家の外で温水シャワーを浴びるという使い方ができて便利です。また、ペットを洗うときにもお湯の出る立水栓があると重宝します。
ただし、立水栓でお湯を出すためには、ガスをひいたり、耐熱性の高い配管を使用したりする必要があります」
カバーなどを利用してデザイン性を楽しめる
「以前は、目立たないところに設置することが多かったので、あまりデザイン性の高い立水栓はありませんでした。しかし、最近は家の前面に設置するなど、目に触れる機会が多いため、デザイン性の高いおしゃれな立水栓が増えています」
また、ホームセンターや通販サイトには、既存の立水栓の上から被せる、木目調やレンガ調などのデザインがされたカバーも販売されています。そういったものを利用して気軽にDIYでデザイン性を楽しめるのもメリットの一つです。
立水栓のデメリットは?
立水栓にはメリットがある一方、デメリットもあります。そこで、特に気になるデメリットについて紹介します。
スペースが必要
散水栓は地面の下にあるため、スペース的な心配はほとんどありませんが、立水栓には柱と蛇口、場合によっては水受け(パン)のスペースも必要になります。
「スペース的に厳しいけれど、地面より高い位置に屋外用の水栓がほしいという場合、住宅の外壁の中に配管を通して、壁から蛇口を出すこともできます。これも広い意味での立水栓と言えるでしょう」
冬場は凍結の恐れがある
立水栓は、柱の部分に溜まった水が冬場に凍結する心配があります。ただし、このデメリットは予防することが可能です。
「まず、前提として寒冷地には不凍水栓が用いられるため、初めから基本的な対策はされています。問題なのは、寒冷地以外の地域で、たまに冷え込むケースです。
予防法としては、不凍対応の蛇口にする方法があります。この蛇口にすれば、凍りそうな気温になると水が自動で少量ずつ流れて、凍結を防げます。
また、水抜きバルブを設置して、柱に水が溜まらないようにする方法もあります」
散水栓よりコストがかかる
部材と工事費を合わせると、立水栓は散水栓よりもコストがかかります。
「あくまで目安ですが、工事費込みで、散水栓を1とすれば、一般的な立水栓で2倍、デザイン性の高い立水栓だと3倍くらいです」
散水栓のメリットは?
先述のとおり、散水栓は狭いスペースでも設置できるのが特徴です。しかしメリットはそれだけではありません。
立水栓と散水栓のどちらを採用しようか迷っている方のために、散水栓のメリットを紹介します。立水栓と比較検討できるように、散水栓のメリットも押さえておきましょう。
見た目がすっきりするので景観を損ねない
散水栓は、フタ付きのボックスを地面の下に埋め込んで設置するので、見えるのはボックスのフタの部分のみです。見た目がすっきりしているので、家や庭の景観を損ねることもありません。シンプルなデザインを好む方におすすめです。
散水栓を収めるボックスのフタは、地面とほぼフラットになります。スペースをほとんど消費せずに設置でき、たとえば駐車場に設置したとしても、車をぶつけてしまう心配がほとんどないので安心です。
また手荷物を持って歩くような通路部分に設けても邪魔になることがなく、どこにでも設置しやすいのがメリットです。
耐久性が高い
散水栓は、配管にほぼ直結するように蛇口が付いたシンプルなつくりです。また雨風にさらされることがないため、デザインを重視した木製の立水栓などに比べて劣化しにくいのが特徴です。
散水栓は、地面の下に水栓を収めるボックスを設置して使用します。立水栓のように、凍結により破裂することはほとんどありません。外的な要因によって壊れてしまうことも少ないでしょう。
散水栓のデメリットは?
散水栓にはメリットだけではなく、デメリットもあります。散水栓を設置してから後悔しないためにも、デメリットも把握しておきましょう。
ここでは、2つの注意すべきポイントを紹介しますので、ぜひ採用を検討する際に参考にしてください。
土や水が入り込む
散水栓は、地面よりも低いところに蛇口を設置することになるので、フタを閉めていても土や水が入り込みやすいことがデメリットです。手を洗おうと思って蛇口をひねったのに、閉める際に汚してしまうことにもなりかねません。
また水と一緒に枯れ葉やゴミも流入しやすく、ボックス内に雑草が生えてしまうこともあります。
敷地内の中でも低い場所や水はけが悪い箇所に設置すると、どうしても水がたまりやすくなります。設置場所や施工に注意し、定期的に清掃することを心がけましょう。
使用や片付けに手間がかかる
散水栓は地面の下に蛇口があるため、使用するときや片付ける際は、かならずしゃがまなければなりません。水を利用するたびに、面倒だと感じる方も少なくないでしょう。
最近では散水栓にホースを繋いだままフタを開閉できるタイプもありますが、従来のタイプは、使うたびにしゃがんでホースを取り付け、使い終わったらホースを取り外して片付ける必要があります。
散水栓は特に足腰に不安がある方には、利用のたびに負担を感じる可能性があります。デメリットも理解したうえで採用しましょう。
【立水栓の利用シーン別】設置位置と設置のポイントは?
立水栓はさまざまなシーンで使われます。ここでは代表的な利用シーン別に設置場所と設置のポイントを紹介します。
ガーデニング
ガーデニングの水やりなどに利用するのであれば、庭の隅など植栽の近くにある方が便利です。
「ガーデニングの場合、ホースにシャワーヘッドを付けて使うことが多いでしょう。その場合、ホースをつないだまま使える2口タイプの立水栓がおすすめです。1口はホースをつないだまま、もう1口は手洗いや水汲み用に使えます」
洗車
洗車に利用する場合、立水栓が遠い場所にあるとホースの取り回しが面倒です。やはり、駐車場やカーポートなど、車のそばに設置するのが基本です。
「洗車もガーデニング同様、2口タイプの立水栓だと、1口をホース専用にしてつないだままにしておけるのでおすすめです」
レジャー(水遊びやBBQなど)
レジャーで使う水遊びの道具やBBQ用品などを洗うときにも、屋外にある立水栓が重宝します。自宅の庭で楽しむ場合は、庭の一画に設置してあると便利です。
「商品にもよりますが、一般的な立水栓の高さは60cm~120cm前後です。立水栓をレジャー用品を洗うために使うのであれば、ある程度高さのあるものを選ぶといいでしょう。高さがあれば、大きなものもホースを使わずに洗えます。
また、シンクと組み合わせて簡易的な流し台として使える立水栓もあります」
ペットのシャンプー
散歩から帰った室内犬の足を洗ったり、シャンプーをしたりするときにも立水栓が活躍します。
「シャンプー用なら、温水が出る方がいいでしょう。また、水受け(パン)の大きさも重要です。ペットの大きさに応じて、洗いやすい水受けを選んでください。水受けは、既製品以外に、レンガやブロックで造作する方法もあります」
エクステリアの掃除
住宅の外壁や擁壁、アプローチなどを高圧洗浄機で掃除するときにも立水栓は便利です。
「ほとんどの高圧洗浄機は散水栓にも対応していますが、蛇口のスペースが狭い場合はアタッチメントが必要です。それに比べて、立水栓の方が取り付けが楽です」
また、高圧洗浄機は電源も必要なため、立水栓の近くに屋外電源があると、より作業がしやすいでしょう。
立水栓の設置方法は?自分で設置できる?
立水栓をガーデニングの一部として、DIYで設置しようとする方もいるかもしれません。
しかし、水道管から配管を延長して蛇口を付ける工程や、凍結防止用の保温材を巻く作業には経験や工夫が必要です。
想像以上にハードルが高い工事になるため、できれば住宅メーカーや建築会社へ依頼することをおすすめします。
工事の依頼先
「勘違いしやすいのですが、一戸建て住宅において、立水栓の設置は外構工事ではなく住宅工事の一部です。そのため、依頼先は住宅メーカーや建築会社、または建築士になります」
工事依頼のタイミング
「温水にしたい場合などは特に、設計前の段階で希望を伝えておくといいでしょう。住宅メーカーによっては、仕様を決めるプレゼンがあると思うので、立水栓のデザインについてはそのタイミングで好みのものに変更してもらうといいですね。
希望のデザインは外構工事の直前に言えばいいと思っていると、既に標準の立水栓が設置されているケースがあるので注意が必要です」
適切な立水栓の選び方とは?
注文住宅に立水栓を設置する場合、住宅メーカーや建築会社に任せておけば安心、というわけではありません。
「住まいづくりの中で後回しにされがちな設備なので、こだわりのある人は、きちんと希望を伝える必要があります」
好みのデザインイメージを固める
「自分の中でデザインイメージなどがある人は、事前にネットやカタログなどで自分好みのデザインを調べておくといいでしょう。何も言わなければ、あまりデザイン性の高くない立水栓が設置されるかもしれません」
好みや予算等に合わせて立水栓の材質を選ぶ
立水栓の設置を検討するのであれば、好みや予算に合わせて立水栓の材質を選ぶところから始めましょう。
耐久性やスタイリッシュなデザインを重視する方には、ステンレスやアルミなど金属のタイプがおすすめです。錆びに強く、腐食しにくいのが魅力です。
比較的リーズナブルで使いやすいのは、FRP(繊維強化プラスチック)やアルミ製のタイプです。
あたたかみのある雰囲気や重厚感が欲しい方は、石や陶器のタイプを検討してみましょう。適度に存在感は出ますが、お花や植栽となじみやすく、庭のアクセントにもなります。
既製品で好みのものが見つからない場合は、レンガや木材で造作してもらう方法もあります。ただし完成形がイメージしにくいため、施工例などを見せてもらうようにしましょう。
用途に合わせて高さを選ぶ
使いやすい立水栓にするには、用途に合わせた高さにすることが重要です。立水栓の用途や場所に合わせて、高さを決めましょう。
立水栓の一般的な高さは、90cmもしくは120㎝です。90㎝はホースをつなげて使ったり、じょうろを置いて水を汲むことを想定した高さです。一方で120㎝は立ったまま使うことを想定しており、しゃがまずに使えます。
座って使うことが多いのか、それとも立ったまま使うのか、どちらが便利か考えたうえで決めるとよいでしょう。
ガーデンパンの有無を決める
立水栓の高さを決めたら、ガーデンパンを設置するかどうか検討します。ガーデンパンとは、立水栓の下に設置する水受けのことです。
立水栓から流れる水をそのまま自然排水する場合は、ガーデンパンは必要ありません。しかし水ハネや泥ハネが気になる場合や、水を溜めて使いたい場合は、ガーデンパンの採用を検討しましょう。
ガーデンパンは、金属製や陶器製のボールのほか、タイルやレンガを使ってつくることも可能です。立水栓のデザインや好みに合わせてコーディネートを楽しみましょう。
不凍水栓柱にすべきか否か判断する
寒冷地では冬に水道管が破裂する可能性があるため、基本的には寒冷地仕様の立水栓や不凍水栓柱を採用します。水抜きハンドルが付いているため、凍結する可能性がある時期は、水を抜くことができる仕組みになっています。
しかし近年異常気象により大寒波に見舞われ、寒冷地以外でも寒冷地並みに冷え込むことがあり、立水栓が凍結するケースもあります。
蛇口から少しずつ水を出し続けることで、水道管の凍結を防ぐことも可能ですが、気温によっては万全とはいえません。心配な方は、不凍水栓柱の採用を検討しましょう。
注文住宅で立水栓を取り入れた先輩の実例を紹介
注文住宅を建てる際に、家族でBBQや水遊びを楽しむことを想定し、庭におしゃれな立水栓を取り入れた先輩の実例を紹介します。
おしゃれな金色蛇口の立水栓を設置
第一子が誕生したタイミングで、家を新築する決心をしたというFさん夫婦。
家づくりに本腰を入れようと思い、相談したのがスーモカウンターでした。
会社選びと同時に土地探しも相談できたことで、最初はピンと来ていなかった旗竿地にもメリットを感じることができたといいます。
Fさんのお宅の庭にある立水栓は、黒と金色がスタイリッシュなデザイン。子どもとBBQや水遊びを気軽に楽しめるように設置し、道路から庭が見えにくい旗竿地のメリットを活かせるスペースになりました。蛇口が2つあるタイプを採用し、見た目だけでなく使い勝手のよさも重視しました。
この実例をもっと詳しく→
初期投資が高くなっても、長い目で見るとコストパフォーマンス抜群の家
立水栓を設置するときのポイントは?
最後にあらためてIさんに、立水栓を設置するときのポイントについて聞きました。
「立水栓は住まいづくりの中で後回しにされがちな設備ですが、住まいに立水栓を取り入れることによって、ガーデニングやお庭でのBBQなど、趣味がより楽しめて、より充実した暮らしになります。これまで紹介してきたメリット・デメリットや設置のポイントを参考に、家族の暮らしを充実させるためのアイテムとして、役立ててください」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「立水栓の設置にもアドバイスをしてくれる建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望をかなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
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イラスト/宮野耕治