注文住宅を建てる際、外階段を導入すると上階へのアクセスルートや外観デザインのバリエーションが広がります。この記事では、新築時に外階段がおすすめのケースや、設置のメリット・デメリット、おしゃれな外階段にするポイントなどを、高橋開発の津村篤さんに伺いました。
外階段とは? どんなケースでおすすめ?
まずはそもそも外階段とはどのようなものなのか、おすすめのケースとあわせて紹介します。
外階段とは
外階段(そとかいだん)とはその名のとおり「建物の外部にある階段」を指す言葉で、建物内部にある「内階段(うちかいだん)」と対比して用いられます。外階段はマンションやアパート、ビルなどで多くみられますが、一戸建て住宅で採用されることもあります。
外階段がおすすめのケース
外階段は、どのようなケースで採用するとよいのでしょうか?
上階のテラスや屋上を活用したいとき
「外階段は、上階のテラスを存分に活用したい住宅におすすめです。
上階に広いテラスがあっても、外階段がなければ家の中からしかアプローチできません。しかし外階段があれば、庭と一体化した立体的な使い方ができるようになります。
例えば2階に広いテラスがある場合、庭でバーベキューを楽しみながら、子どもは2階のテラスに置いたビニールプールと行き来しつつ遊ぶことも可能です」(津村さん/以下同)
テラスだけでなく、陸屋根の住宅で屋上を有効活用したいときにも外階段はおすすめです。
完全分離型の二世帯住宅にしたいとき
玄関を共有せず完全に世帯を独立させる二世帯住宅にしたいときには、2階に玄関を設けて外階段でアプローチできるようにし、1階と2階で世帯を分けるケースもあります。二世帯住宅にはいろいろな種類がありますが、フロアで世帯を分ける「上下分離型」の二世帯住宅は、もっともお互いのプライバシーを守れるプランです。
「ただし外階段を設けるにはそれだけの敷地面積が必要となり、相応のコストがかかります。また屋内で1階と2階を往来できる仕様になっていなければ、アパート等の扱いになる可能性がある点は留意しておきましょう」
外階段のメリットは?
これから注文住宅を建てるときに、外階段を設けることにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
上階へのアクセス方法が増える
「外階段のメリットは、上階へのアクセス方法が増えることです。通常上階に行くには、家の中を通っていくしかありません。例えば庭でなにかをしているときに、2階テラスに用事があれば、家の中に入って内階段を上がる必要があります。すぐ目の前にあるにもかかわらず、階段の位置によってはぐるっと遠回りしなければなりません。
しかし外階段があれば、屋外からの直接アプローチが可能です。上階への経路が増え、短い動線を選べるようになるのは大きなメリットだと思います」
外観のおしゃれなアクセントになる
「外階段があるとちょっとしたアクセントになり、外観がおしゃれになります」
住宅は基本的に、壁で囲まれた平面で構成されていますが、そこに外階段が加わることで凹凸ができアクセントになります。外階段は既製品がありますが、造作も可能です。外観デザインにマッチさせれば、家全体のおしゃれ度を上げることができます。
外階段のデメリットは?
外階段の設置を検討するときには、デメリットも理解しておきましょう。
屋根がないと天候の影響を受けやすい
「外階段は屋外にあるので、屋根がない場合は天候の影響を受けやすくなります。例えば雨の日には傘をさして上り下りしなければならず不便です。また雨で階段が濡れると滑りやすくなるため注意も必要です」
外階段に屋根がない場合、雨の日には内階段を使えば問題ありません。しかし上下分離型の二世帯住宅にして外階段を設けるケースでは、雨の日には2階の玄関まで傘をさす必要があります。
雨の日だけでなく、秋に落ち葉が積もったり冬に凍結したりしたときに、足元が滑りやすくなってしまう点もデメリットです。
なお建築基準法では、高さ1m以上の階段は手すりの設置が義務づけられているので、万一滑ったときにはつかむことができます。また製品として売られている外階段には、滑り止め加工がされているのが一般的です。外階段を造作してもらう場合は、ノンスリップタイルなど滑りにくい素材を選ぶとよいでしょう。
防犯面で不安がある
外階段があると、通常は難しい上階へのアプローチがしやすくなるので、防犯面に不安を感じやすいのもデメリットです。外階段を設けるときには、あわせて防犯対策を検討することが重要です。
「弊社の外階段のあるプランでは、庭を2m程度の外壁で囲っています。これは防犯対策だけでなく、プライバシーに配慮し外からの視線を防ぐことも目的です。
さらに外階段からアプローチできる2階テラスに面する窓には、防犯シャッターを取り付けています。このように、不安なく暮らせるような対策を設計者に依頼するとよいでしょう」
建築面積や延床面積に影響する場合がある
外階段を設けると、建築面積や延床面積に影響し、屋内空間が狭くなる場合があるため注意が必要です。
建築面積とは建物の水平投影面積(真上から見た面積)を、延床面積とは各階の床面積の合計を指します。家の建築面積や延床面積は、土地ごとに決められた建蔽率(建ぺい率=敷地面積に対する建築面積の割合)と容積率(敷地面積に対する延床面積の割合)を守る必要があります。
例えば50坪の土地の建蔽率が50%、容積率が60%だとすると、建築面積は25坪、延床面積は30坪以下にしなければなりません。つまり建築面積や延床面積いっぱいに家を建てる場合、外階段を設けるとそれだけ居住面積が狭くなる可能性があるのです。
「外階段は建築面積に算入されますが、延床面積に含まれ容積率に影響するかどうかは外階段の要件(一定面積が外気に触れているなど)を満たしているかによって決まります。狭い敷地で建蔽率や容積率いっぱいに家を建てたい場合には、外階段の影響を最低限に抑えられる方法を設計者に考えてもらいましょう」
おしゃれな外階段の事例を紹介!
「リビングとつながる中庭にウッドデッキを敷き詰め、同じくウッドデッキを敷いた2階テラスへアクセスできるよう外階段を設けました。
1階ではバーベキューやお外カフェ、2階ではテントを張ってキャンプ気分を楽しむなど、たくさん人が集まったときでも1階と2階を外階段で行き来しながら存分に遊べます」
「外階段は既製品を採用しましたが、外壁の色とマッチするものを選んでいるので悪目立ちせず違和感がありません。小窓には侵入が困難な上げ下げ窓を採用し、掃き出し窓には防犯シャッターを設置するなど防犯にも十分配慮しています」
おしゃれな外階段にするポイント
「せっかく外階段を設けるならおしゃれに仕上げたい」と考えたときには、どのような工夫ができるのでしょうか? 津村さんにポイントを伺いました。
外観にあった色やデザインを選ぶ
「外階段をおしゃれに仕上げたい場合は、外観にあった色やデザインを選ぶことが大切です」
例えば紹介した事例のように、外観と同系色を選べばデザインに溶け込みすっきりして見えます。反対にまったく別の素材や色を選べば、外観のアクセントになります。また直線階段やらせん階段では与える印象も異なるので、外観デザインとマッチするタイプを選びましょう。
階段の素材にこだわる
外階段は、素材によっても印象が異なります。金属製の製品を選んだりコンクリートで造作したりすればモダンな雰囲気を、タイルを張れば高級感を演出できます。ナチュラル感を出したいなら、木材で造作してもらってもよいでしょう。
「外階段は屋外にあるため、水に弱い木材を使うときにはしっかりとした防水・防腐対策が必要です。さらに定期的なメンテナンスをおこなうようにしてください」
照明は外構や中庭全体でプランニングする
「外階段の照明を検討するときには、階段を上り下りする際の安全性の確保を最優先に考えます。そのうえで、外階段がある空間全体のおしゃれ度を高める照明計画を立てましょう。
例えばスケルトンタイプの外階段であれば、フットライトを付けなくても足元に光が届きます。階段下にガーデンライトを置く、遠くからスポットを当てるなどでも、足元の安全を確保しつつおしゃれな雰囲気を演出できます」
外階段を設置するときの注意点
外階段を設置するときの注意点を伺いました。
設計段階から計画する
「おしゃれな外階段にしたい場合は、設計段階から計画することが何よりも大切です。建築面積や延床面積に影響する可能性があるのはもちろん、すでにできあがった家に外階段を後付けするのはとても難しいことが理由です。
『今は予算がないから後付けしよう』と考えた場合、テラスの手すり壁の一部を撤去するなど、余計な手間と費用がかかります。またそもそも設置を前提に設計されていなければ、全体のデザインバランスも悪くなってしまうでしょう」
おしゃれさよりも安全を優先する
「おしゃれ度を重視するあまり、安全性をおろそかにしないことも重要です」
例えば使いたい素材がある場合でも、雨に濡れたときに滑りやすければ危険です。工夫することで滑りにくくできるのか、できない場合別の素材で同じような仕上がりイメージにできないか、設計者に相談してみるとよいでしょう。
外階段を設置して、住宅をより立体的に活用しよう!
最後に改めて津村さんに、外階段のある住宅を建てる方へのメッセージをいただきました。
「住宅に外階段を設けると上階へのアクセス方法が増え、住居をより立体的に活用できるのがメリットです。おうち時間をより楽しめるようになるので、安全性や防犯性に配慮した設計をしてくれる建築会社を見つけ、ぜひ外階段のある住宅を検討してみてください」
スーモカウンターに相談してみよう
「外階段のある家の実績がある建築会社を知りたい」「予算内で上下分離型の二世帯住宅を建てたい」など、住まいづくりについて疑問や悩みがある人は、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご希望を伺ったうえで、かなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
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イラスト/村林タカノブ