アメリカ・ニューヨーク州の区の一つ、ブルックリンが発祥の地とされるブルックリンスタイル。工場や倉庫をイメージした無骨な雰囲気のなかに、ヴィンテージ感が漂うブルックリンスタイルは、「かっこいいのに温かい」印象を与えることから人気のインテリアスタイルです。今回はブルックリンスタイルのおしゃれな家を建てるときにできる外壁などの外観や間取り・内装にできる工夫をハウステックスの佐藤義明さんに伺い解説します。玄関や寝室、トイレなど部屋別のポイントもあわせて紹介します。
ブルックリンスタイルとは? インダストリアルとはどう違うの?
まずは、ブルックリンスタイルとはどのようなものなのか、よく似たインダストリアルスタイルとはどう違うのかを、佐藤さんに伺いました。
ブルックリンスタイルとは?
「ブルックリンスタイルは、ニューヨーク州内のブルックリンと呼ばれる地区が発祥とされるデザインを指します。ニューヨークというとマンハッタンを思い浮かべますが、高級エリアのマンハッタンとは異なり、ブルックリンは倉庫や工場が立ち並ぶ工業地帯です。ブルックリンスタイルでは、古くなった工場や倉庫のダークな雰囲気・トーンを活かし、重厚感と無骨さを演出します」(佐藤さん/以下同)
インダストリアルとの違いは?
「インダストリアルスタイルとブルックリンスタイルの違いをあえて挙げるなら、インダストリアルスタイルはブルックリンスタイルよりもクールでより実用的な雰囲気があると思います。
ブルックリンスタイルでは装飾性が高いレンガやタイル、温かみのある木材を多用するのに対し、インダストリアルスタイルではむき出しのコンクリートでモノトーンにすることが多く、より無機質で工業的なイメージです」
外壁はどうする? ブルックリンスタイルの家にする【外観】の工夫は?
外壁はレンガやアイアンを用いてダークカラーでまとめる
「外観をブルックリンスタイルにしたいときには、ダークカラーでまとめるのがポイントです。定番は、ダークなグレーやネイビーのラップサイディング(細長い板状の壁材を1枚ずつ重ね張りして仕上げる工法)とレンガ調のタイル。そこにアイアンを組み合わせると、一気にブルックリンスタイルの外観に近づきます」
「レンガ調タイルは角が欠けているようなアンティーク調、アイアンはエイジング加工されたものを選びました。レトロな雰囲気を出すと、古いものを大切にするブルックリンスタイルらしくなります」
ブルックリンスタイルのおしゃれな家にする【間取り】の工夫は?
広い空間を確保する
「工場や倉庫をイメージするブルックリンスタイルは、広い空間にすることを意識します。部屋は細かく区切らず広くとり、さらに天井は吹抜けにするなど、縦にも横にも空間を広げるイメージです。間仕切る場合も天井まで壁をつくらず、上部は空間がつながるようにすることもあります」
見せる収納と見せない収納を使い分ける
「ブルックリンスタイルでアメリカンな雰囲気を出すには、ディスプレイも重要です。そのため収納についてはオープンにして『見せる収納』と『見せない収納』を検討します。
収納に使う素材も無垢(むく)材やアイアンを選び、扉を付ける場合はレトロなガラスを入れるとおしゃれです」
かっこいいブルックリンスタイルの家にする【内装】の工夫は?
レンガやタイル、アイアンに加え無垢材を取り入れる
「内装をブルックリンスタイルにしたいときには、外装と同様にレンガやタイル、アイアンを用いると効果的です。壁の一部にアンティーク調のレンガを取り入れる、水まわりにはサブウェイタイル(ニューヨークの地下鉄の駅で使われているタイルの一種)を張る、階段はアイアンの手すりにするなど工夫すれば雰囲気が出ます。内装ではさらに無垢材をプラスし、温かみを加えます」
床材はラフな質感のあるタイプを選ぶ
「床材も無垢材、または木質感が強いタイプを選びます。デザイン性を高めたい場合は、ヘリンボーン張り(床材をV字になるように張る方法)にしてもよいでしょう。
弊社ではあえてラフな雰囲気を出す目的で、フローリング材ではなく足場板(建設現場で作業員が高所作業するために組む足場に用いる板)を使うこともあります」
建具はヴィンテージ感のある素材を選ぶ
「ドアなどの建具はダークな色合いで、ヴィンテージ感のある木材を選ぶことが多いです。あまりキッチリつくらずに、あえてラフに、無骨に仕上げるようにしています」
建具のドアノブもピカピカしたものよりも、マットな質感のものを選ぶとレトロな雰囲気が出ます。
ブルックリンスタイルが似合う家にする【インテリア】の工夫は?
アンティークな家具を置く
「ブルックリンスタイルでは、『古くていいもの』を『長く大切に使う』ことも特徴です。そのため家具は新しいものを買うのではなくアンティークなものを選び、そして一度選んだ家具は、たとえ傷ついたり汚れたりしても愛おしんで使い続けます」
無骨な質感のインテリアを選ぶ
「ブルックリンスタイルは、『無骨で男前』なイメージもあります。インテリアのなかでも目立つソファは無骨なデザインで重厚感あるタイプ、少しくたびれた革でつくられたものを選ぶと、部屋全体の雰囲気が決まります」
照明はペンダントライトも併用する
「近年住宅を建てる際には、照明はダウンライトを採用するのが主流ですが、ブルックリンスタイルにしたい場合はペンダントライトを併用するのがおすすめです。電球を使うようなレトロなデザインは特にブルックリンスタイルにマッチします」
アメリカを思わせる雑貨を置く
「ブルックリンスタイルを演出するには、古きよきアメリカの雰囲気が出る小物を配置すると効果的です。とくに絵画やポスターを飾るとぐっと雰囲気が出ます」
観葉植物を配置し重厚感を和らげる
「ダークカラーとレンガなど重厚感のあるものだけでまとめてしまうと、雰囲気が重々しくなってしまいます。そのようなときには、観葉植物を配置すると雰囲気を和らげられます」
大鉢の観葉植物を置くと空間のアクセントになります。見せる収納棚に小ぶりのグリーンやエアプランツを置いたり、ハンギングしたりして立体感を出すのもよいでしょう。
玄関・寝室・トイレなどをブルックリンスタイルにするには?
玄関や寝室、トイレなどの細部までブルックリンスタイルで決めたいときには、どのようなポイントを押さえればよいのでしょうか?
玄関
「玄関の壁をダークにしてしまうと、全体の雰囲気が暗くなってしまうため、グレー、あるいはグレーを混ぜたスモーキートーン(くすみカラー)を選ぶとよいでしょう。ドアはダークな色合いのドアにすると、玄関の雰囲気が引き締まり、ブルックリンスタイルらしい重厚感が出ます。
玄関土間はきれいにタイルを張るよりも、コンクリートのままで仕上げるとラフな印象に仕上がるのでおすすめです。コンクリートは乾燥時にヒビが入りやすいのですが、それを味わいとして楽しめるのもブルックリンスタイルだと思います」
寝室
「寝室についても、壁の一部だけでもレンガ調タイルを取り入れると雰囲気が出ます。寝室に設ける収納も、無垢材とアイアンなど、素材にこだわるとよいでしょう」
なお、ベッドは背が低いタイプを選ぶと天井を高く見せられます。
キッチン
「キッチン本体はステンレスを選び、壁にサブウェイタイルを張るとブルックリン風になります。棚には無垢材とアイアン。キッチンカウンターには、足場板のようなラフな素材を使うのもおすすめです」
トイレ
「トイレもキッチンと同じ水まわりなので、サブウェイタイルを使います。もしくはダークな色合いのモザイクタイルを白目地で張ってもよいでしょう。
タイルは全面ではなく一面だけ、あるいは上または下半分だけ張り、残りはダークな色の壁紙をあしらうとブルックリンスタイルを演出できます」
洗面所
「洗面所はアイアンのスタンドに無垢材の板を渡した無骨なカウンターに、ベッセルタイプの洗面ボウルを据えるのがブルックリンスタイルにはマッチします。洗面ボウルはどっしりとした、スクエア型の大ぶりなものを選ぶのがおすすめです。さらに立ち上がり部分など、一部にサブウェイタイルを使うとよいでしょう」
目に見える範囲は中途半端にしない! 徹底的にこだわろう
最後にあらためて佐藤さんに、ブルックリンスタイルの家を建てたい人に向けてアドバイスを伺いました。
「ブルックリンスタイルが好きな人でも、家全体をブルックリンスタイルにすることは正直あまり多くありません。家は家族で住むものであり、それぞれの好みが反映されるためです。ただ、一つの空間にいろいろなテイストが混ざるのは好ましくありません。『LDKはブルックリンスタイルでいく』と決めたなら、目に見える範囲はすべてブルックリンスタイルにこだわることが、かっこよく決めるポイントです。
またブルックリンスタイルに知見がある工務店を選ぶと、素材選びから相談できますし、積極的な提案も期待できます。話し合って進められる工務店を見つけ、理想の家づくりをしてください」
スーモカウンターに相談してみよう
「ブルックリンスタイルの家が得意な工務店はどう見つけるの?」「ブルックリンスタイルの家の実績がある建築会社を知りたい」など、住まいづくりについて疑問や悩みがある人は、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご希望を伺ったうえで、かなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりの段取りや会社選びのポイントなどを学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合わせください。
取材協力/佐藤義明さん
取材・文/佐藤カイ(りんかく) イラスト/鈴木暢男