木の素材感をダイレクトに感じることができる板張り天井。住まいに高級感をプラスしたいときに人気の手法です。エムズアソシエイツの佐野賢治さんにお話を伺い、板張り天井の特徴やメリット、デメリットをはじめ、木の種類ごとの特徴や建築時の注意点などを解説します。板張り天井を取り入れた注文住宅を建てたいと考えている人はぜひ参考にしてください。
板張り天井とは?
板張り天井とは、仕上げ材に板材を使用した天井のことです。無垢(むく)材や木質材由来の板材を使用し、住まいの中に効果的に木の素材感を取り入れることができます。
板張りの定義は幅広く、プリント合板や木目調のクロスを施工した天井を板張りと称している建築会社もありますが、一般的には本物の木の板材を使用した天井のことを意味します。
「使用する木の種類や色味、張り方などによって異なる雰囲気を演出できるところが板張り天井の魅力です」(佐野さん、以下同)
板張り天井の特徴は?
板張り天井に用いる代表的な建材の種類
板張り天井に用いる代表的な素材には、無垢材、集成材、天然木化粧合板の3種類があります。
無垢材
「切り出したそのままの木材のことを無垢材といいます。接着剤で張り合わせていないため本物の木の風合いが特徴で、建材として使うことで空間に高級感を演出できます」
集成材や合板素材と比べると価格は高めになりますが、100%自然素材のため調湿や消臭効果、蓄熱作用に優れ、快適に過ごせる空間をつくることができます。木の経年変化を楽しめるのも無垢材の特徴です。
集成材
複数の板を結合させてつくった木材のことを集成材といいます。人工的につくられた素材のため強度や品質が一定に保たれており、経年変化が少ないことが特徴です。無垢材よりもリーズナブルなため、建築コストを抑えることができます。
天然木化粧合板
天然木化粧合板とは、表面に薄くスライスした天然木薄板を張った合板のこと。リーズナブルでありながら、無垢材に劣らない天然木の風合いが魅力です。
張り方のバリエーション
天井全面に張る
天井全面を板張りにすると、木の風合いをより強く感じられる空間になります。床や壁も板張りで揃えたり、梁(はり)を現(あらわ)しにしたり、ほかの部位との調和を意識するとデザイン性の高い部屋になります。
天井の一部分に張る
天井の一部分にだけ板張りを取り入れることもできます。板張りの素材感を空間のアクセントとして活かすことができ、異素材との組み合わせにより天井のデザインに個性が生まれます。また、全面を板張り仕上げにするよりも費用を安く抑えることができます。
費用相場
板張り天井の費用は、使用する木材の種類や天井の面積などによって大きく異なります。一般的には、クロスや塗り壁材仕上げの天井よりも費用がかかります。建築会社によっても金額に幅があるため、見積もりの時点で確認してみるとよいでしょう。
人気のある木の素材
板張り天井にはさまざまな木材を使用することができます。耐久性が高く屋外の施工にも使われるレッドシダー、松の木を加工したリーズナブルなパイン、経年変化を楽しむことができるスギなどが人気です。
「当社でいちばん人気があるのはヘム材です。ヘム材は正目という繊維方向にまっすぐな木目が多く、大人しい木目のために主張が少ないのが人気のポイントです。色目も濃すぎず薄すぎないため和から洋風、北欧風などさまざまなテイストのデザインにマッチします。また価格も中程度のグレードのため採用することも多くなっています。また、天然化粧合板ではシナ合板が人気です。見た目が美しく高級感のある素材です」
板張り天井のメリットは?
高級感を演出できる
「天然素材特有の高級感を演出することができます。そのためリビングや玄関ホールなど、デザインにこだわりたい空間に板張り天井を採用する人が多いです」
自然素材の心地よさを感じられる
「木には調湿や防臭効果があるため、板張り天井によって心地よい空間をつくることができます。さらに見た目や香りもよく、日常的に木のぬくもりや素材感を感じられる点もメリットといえます」
光の反射が柔らかくなる
「クロスなど他の素材と比較すると、木には光の反射を柔らかくする効果があります。そのため屋外から差し込む日光や照明の光などをぼんやりと優しく感じることができます」
他の素材との相性がよい
木材は、塗り壁材やモルタル、タイル、クロスなど、異素材とも組み合わせやすい点が魅力です。天井の一部だけ板張りにする場合、異素材との組み合わせを楽しむことができます。
天井の形状に関係なく採用しやすい
「木は加工しやすい素材のため、曲線など幅広い形状の天井に対応できます」
勾配天井や折り上げ天井、吹抜けなど、天井の形状によっても空間の雰囲気は変わります。素材とともに、形状もよく検討してみましょう。
板張り天井のデメリットは?
クロス仕上げの天井より費用がかかる
一般的なクロスと比較すると、板張り天井は費用がかかる傾向にあります。限られた予算の中で板張り天井を取り入れたい場合は、全面ではなく一部分だけに取り入れるなど工夫が必要です。
工期が長くなる可能性がある
「板張り天井はクロス仕上げの天井と比較して施工に時間がかかります。そのため工期がやや長くなる可能性があります」
住まいの完成を急いでいる場合などは注意したほうがよいでしょう。
建築上の制限により採用できないこともある
「防火のための建築制限により3階部分の天井には木材がそのままでは使用できないなど、建築上の制限がある可能性も考えましょう」
また、建築基準法によるとガスコンロを使用するキッチンは火気使用室にあたります。そのため天井や壁などには燃えにくい素材を使用することが義務付けられています。キッチンや、キッチンと繋がるLDKに使用したい素材がある場合は、建築会社によく確認することが大切です。
【実例】板張り天井を取り入れる場所は?
リビング
家族が長い時間を過ごすリビングは、住まいの中でも特にデザインにこだわりたい空間です。板張り天井を採用するとナチュラルな雰囲気のリビングになり、自然素材のぬくもりを感じることができます。リビングの天井の一部のみ板張りにすると、木材が空間のアクセントになります。
玄関
玄関はゲストを迎える重要な場所。板張り天井を採用すると、高級感のある空間になります。玄関ホールの天井の一部にアクセントとして取り入れることも、玄関ホールから廊下まで連続した板張り天井にすることも可能です。
和室
客間としても使用する和室はデザインにこだわりたいところです。板張り天井は昔から和室の天井によく採用されてきました。畳、和紙、木など自然素材で構成される和室には、天然木を使った板張り天井がよく馴染みます。
寝室
1日の疲れを癒やす寝室。天然の木材には吸湿や防臭効果があるため、板張り天井を取り入れることで寝室がより心地よい空間になります。木の見た目や香りにも癒やされます。
子ども部屋
子どもが過ごす空間には、できるだけ健康に配慮した素材を使用したいと思う人も多いはず。無垢材の板張り天井は接着剤などを使用していないため健康に優しい素材です。勉強にも集中できる居心地のよい子ども部屋になるでしょう。
板張り天井を取り入れるときの注意点やポイントは?
1つの空間に使用する木材の面積比率は40〜60%が理想
「板張り天井をはじめ、空間の中に木を取り入れるときはその比率にも気をつけています。内装の大部分を木材で仕上げると山小屋やログハウス風のデザインに近くなります。モダンで洗練されたデザインにしたい場合、木材を使用する箇所は全体の40〜60%ほどにするのが理想です」
天井・壁・床を同じ板張りにすると奥行きを感じられる
「天井や壁、床を同じ板張りで仕上げると奥行きを感じられる空間になります」
また、風合いが異なる木材を組み合わせるとメリハリがついておしゃれです。天井以外の部分にも木材を使用する際は、上述した面積比率に留意しましょう。
照明器具は板張りのデザインを壊さないように設置する
「照明器具を天井に取り付ける際は、板張りのデザインを壊さないために、目立つ場所にダウンライトなどの穴を空けないように注意しています。天井ではなく壁にブラケットライトを設置するのもおすすめです」
素材感を合わせたインテリアを設ける
「ソファやダイニングテーブルなどインテリアにも木を取り入れると、天井のデザインと調和して意匠性の高い空間になります」
インテリアの中に木を取り入れる際は、天井に使用している木材の種類や色と同じものを選ぶと統一感が生まれ、まとまりのある空間になるでしょう。
建築上の制限を確認する
建築基準法や、防火地域・準防火地域の制限について事前に確認しましょう。建築上の制限によって、天井に木材を使用することが制限されている場合があります。建築上の制限については土地を購入する際に不動産会社に確認する、もしくは建築会社の担当者に聞いてみるとよいでしょう。
防火地域・準防火地域についてもっと詳しく→
板張り天井を取り入れた先輩のマイホームの実例
ここからは、おしゃれな板張り天井を住まいに取り入れた先輩の実例を紹介します。ぜひ家づくりの参考にしてください。
板張りの勾配天井によって、おしゃれで開放的なリビングに
6年ほど前に家を建てたAさんは、リビングの広さや性能に不満を感じ、2度目の家づくりを決意しました。第三者の立場からの意見を求め、スーモカウンターに相談。紹介された中から、自社施工の会社に依頼。勾配天井のリビングは板張りにして、梁を現しにすることで和モダンな雰囲気に仕上げ、照明計画にもこだわりました。太陽の日差しと木を感じられるリビングのある、理想のマイホームを手に入れることができました。
この実例をもっと詳しく→
2度目の家づくりで手に入れた家族みんなが笑顔になれる家
注文住宅に板張り天井を採用するときのコツ
最後に、注文住宅に板張り天井を取り入れるときのコツを佐野さんに伺いました。
「板張り天井を取り入れることで、空間の見た目が魅力的になり、木を使っているからこその心地よさを感じることができます。木の種類ごとに個性があるので、ぜひお気に入りの素材を見つけてください。この記事で解説したように、費用や工期、建築制限など設計前に確認しておいたほうがよいこともあります。理想の家づくり成功に向けて、計画的に準備を進めましょう」
スーモカウンターに相談してみよう
「木を使ったナチュラルな家づくりに強い建築会社は?」、「板張り天井を取り入れたおしゃれな家を建てたいけれど予算内で可能?」など、住まいづくりについて疑問や悩みがある人は、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご希望を伺ったうえで、かなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりの段取りや会社選びのポイントなどを学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合わせください。
イラスト/いぢちひろゆき