ひょんなことから住居の隣の土地を購入し、家を建てようとした横浜市のMさん。しかし、土地の面積が約60㎡と狭小だったため、建築確認を取るのにひと苦労。しかし、そんな苦労を乗り越えて完成した家はご夫婦の夢が詰まった「第二の新居」となった。
空き家で荒れ放題だった隣家を更地にして土地を購入
隣家には住人がいたが、引っ越しによって空き家になる。そして、2年ほど前に空き家の持ち主から「もう住まないから買ってくれないか」と相談を受けた。持ち主は「更地にしてくれるのなら」という条件を承諾し、ご夫婦にとっての「第二の新居」が建つことになる。
爽やかな風が吹き抜ける2階のリビングで夫が言う。
「正直、そういう話がこないかなとは思っていました。隣家は空き家になって荒れ放題で、野良猫のすみかになっていたからです。あと、その家のために八景島の花火が見えなくて、隣家の土地を購入して新居に屋上を作れば遮るものがなくなり、花火も見えるようになるのではと思っていました」
幅は狭いがL字型にしたため、海につながる湾を始め、さまざまな景色が楽しめる。
それまで一緒に住んでいた次男はつい最近転勤で県外に移り住んだが、帰ってきたらもともと住んでいる家を譲ってご夫婦が新居に住めばいいという思惑もあった。
現在は主に元から住んでいる家で暮らし、こちらの新居はサブ。ご夫婦の遊び場のような存在となっている。
夫が大切にしているコレクションを飾るスペースも確保
新居を建てたことで、それまでほこりをかぶっていた“おもちゃ”を飾るスペースも作ることができた。おもちゃというのは、ミニチュアのフィギュアやおみくじなどだ。
「おみくじを集め始めたきっかけは、秩父宝登山神社で引いたら『大大吉』が出たこと。もともと御朱印帳は集めていましたが、それからおみくじコレクションも加わりました」
妻の希望は「本格的な茶室を作りたい」
一方、妻は母親の影響で結婚前から茶道を始めている。そのため、新しい家にはぜひ本格的な茶室を作りたいという夢があった。
「今もお茶の先生に習っていて、稽古仲間を招いて茶事を開くこともあります。本格的にやりたかったので、軸や花は季節ごとに変えるんです」
キッチンは2階にあるが、茶室用に1階にも簡易キッチンを作った。
屋上を作るには鉄筋コンクリート造じゃないとと思い込んでいた
Mさんがスーモカウンターを訪れたのは、隣に家を建てると決めてすぐの時期。同時進行で住宅展示場のモデルハウスにも通っていたが、いまひとつピンとこなかったからだ。
夫によれば「価格の割に自由度が少なく、希望をかなえるのが難しそうだった」という。最終的に選んだのは、たまたま訪れてみたスーモカウンターで紹介された建築会社だった。
「屋上を作ると3階建てに近くなるから、建築費を安く抑えられる木造ではなく鉄筋コンクリート造じゃないといけないと思い込んでいました。だから、大手の鉄筋コンクリート住宅を検討していたんです。でも、スーモカウンターで『木造でも大丈夫ですよ』と教えてもらい目からウロコでした」
妻も言う。
「アドバイザーさんは『アイデアにあふれた突飛な家』という私たちのイメージを聞いて会社を紹介してくれたんです。1時間以上たっぷりと話し込みましたが、希望に合った会社をセレクトするセンスがいいなと思って」
3社を紹介されて、内1社はデザインがうまく、1社には腕がいい大工がいた。しかし、提示された建築費はそれぞれ2200万円と2000万円。残りの1社は1600万円だった。
「400万円以上の差となると、やっぱり考えちゃいますよね。一番安かった建築会社に依頼して、結果的に理想の家が建ちました」
自ら資料を揃え、役所に直談判に行くなど奔走
さて、冒頭にも書いたように、ここに至るまでにはさまざまな苦労があった。土地の面積は約60㎡。セットバックがあるので、実質的には50㎡に満たない。市の条例では、土地の面積が100㎡以下だと建物を建ててはいけないということだった。
「家が建っていたという証拠を求められましたが、そんな書類もありませんでした。そもそも、前の家はそこに住んでいたおじいちゃんがDIYで勝手に建てたらしく、登記もしていなかったんです」
しかし、今さら後には引けない。ご夫婦は必死で対策を考えつつ、役所に直談判するなど奔走した。最終的には役所が建築確認を委託している業者を何社か紹介してくれて、その中の1社からOKが出た。
「区役所から固定資産税の資料を取り寄せ、家屋として納税していることをアピール。30年ほど前、隣の家に移り住んだときに家の前で子どもの写真を撮っていて、そこにDIYの家が写り込んでいたんです。それも証拠のひとつになりました」
2階の浴室は最新のデザイン。いろんなモデルルームを見てきたが、壁面に貼られた木目調の防水クロスも含めて、これが一番人気とのことだった。
トイレは1階と2階で壁面を変えた。建築会社の担当者もデザインにこだわってくれたという。
こだわりが詰まった家だが、「ただ、失敗もありました」と夫が笑う。
「この家用に大型の冷蔵庫を買ったんですが、いざ運び込んでもらう段になって階段を上がれない。自分で手すりを外すなどして工夫してみましたが、どうしてもダメ。結局、小さい冷蔵庫に買い替えて、大きいのは隣の家で使っています」
珪藻土の壁にムク材の床、換気口で健康にも配慮
2階は珪藻土の壁とムク材の床を使用している。珪藻土は湿気を吸うし、アレルギー対策への効果も期待できるといわれている。ムク材は傷付きやすいが、触れたときに温かみがある。これらをオプションではなく標準価格で入れてくれたという。冷蔵庫の前には24時間稼働する換気口も設置した。
戸や仕切りは極力排除したことで、三方に遮るものがない上に窓が多いため、常に心地よい風が吹く。階段に下げられた風鈴の音色も涼しげだ。
最後に夫が言った。
「屋上といい、茶室といい、家のすぐ隣に私たちの趣味が詰まった新居を建てることができたと思います。追求したのは生活感がない楽しさ。遊び半分で住むんだから、これでいいんです」
取材・文/石原たきび 写真/片山貴博
- DATA
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土地面積 約70㎡ 延床面積 約64㎡ 建築費 約1600万円以内 間取り 1LDKK 世帯構成 夫(63歳)、妻(69歳)
- スーモカウンターで受けたサービス
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カウンター店舗 スーモカウンター上大岡店 紹介された建築会社数 3社 受けたサービス 個別相談