ファミリーロッカーは家族がそれぞれの持ち物をしまうことができ、片付けやすい家にしたいときにもぴったりな収納です。注文住宅の新築時にファミリーロッカーを取り入れるときのポイントやメリット・デメリット、サイズやデザインの決め方などについて高橋開発の高橋竜太さんに話を伺いました。
ファミリーロッカーとは?
まずは、ファミリーロッカーがどのようなものであるのかを解説します。ファミリーロッカーの特徴とファミリークローゼットとの違いについて、以下で詳しく見ていきましょう。
ファミリーロッカーの特徴
ファミリーロッカーとはその名の通り、家族のための収納のことです。1人ずつ専用の収納スペースが設けられ、個々の持ち物をしまうことができます。
「ファミリーロッカーに建築上の明確な定義は存在しません。当社で手掛けているファミリーロッカーは、子育て中のお母さんたちの意見を参考にして開発したものです。父、母、子とそれぞれの持ち物を収納できるロッカーがリビングや廊下にあったら便利だろうという発想をもとに生まれました。ファミリーロッカーの設置場所は建築会社によりさまざまですが、高橋開発では家族が毎日行き来するリビングや玄関付近の廊下に設置するケースがほとんどです」(高橋さん、以下同)
ファミリークローゼットとの違い
ファミリーロッカーと似た収納に「ファミリークローゼット」があります。ファミリークローゼットとは、家族の衣類や荷物などをまとめて収納することができる大型のクローゼットのことであり、個々の収納スペースを設けたファミリーロッカーとは異なる構造の収納と考えてよいでしょう。
ファミリークローゼットについてもっと詳しく
ファミリークローゼットのメリット・デメリットと、取り入れる際のポイントを紹介!
ファミリーロッカーを設置するメリット
ファミローロッカーを設置するメリットとして、次の3つが挙げられます。
- 部屋を綺麗な状態に保つことができる
- 家族のコミュニケーションが生まれる
- 子どもが持ち物の管理について学ぶことができる
具体的にどのようなメリットなのかを以下で見ていきましょう。
部屋を綺麗な状態に保つことができる
1人ひとりの持ち物をしまえる収納があることで、部屋が散らかることなく綺麗な状態に保つことができます。
「学校から帰ってきた子どもがランドセルをソファの上に置きっ放しにしたり、リビングで遊んでいる子どものおもちゃがそのまま床に散らかったりというのは、子育て中の家庭でよくある光景だと思います。そんなとき、リビングの一角にランドセルやおもちゃをしまうためのファミリーロッカーに収納先が決められていれば、部屋が散らかるのを防ぎ綺麗な状態を保つことができます」
家族のコミュニケーションが生まれる
ファミリーロッカーを介して家族のコミュニケーションが生まれるというよさもあります。
「自分専用の収納があれば必ずそこに足を運びます。ランドセルや通勤かばん、趣味のアイテムなどを出し入れするときに、家族がファミリーロッカーのある場所に集まるようになるでしょう。そこで自然と顔を合わせるようになり、何気ない会話が生まれます。
しかし、リビングとは遠い場所、例えば2階の寝室やそれぞれの居室に収納があると、このようなコミュニケーションは生まれづらくなるでしょう」
子どもが持ち物の管理について学ぶことができる
子ども専用の収納スペースを用意することにより、小さな頃から持ち物の管理や整理整頓について学ぶことができます。
「ランドセルや教科書、おもちゃなど自分の持ち物を入れておける場所があると、物を置きっ放しにせず、子どもが自ら持ち物を管理できます」
趣味の道具も収納できる
ファミリーロッカーの魅力の1つに、趣味の道具の収納スペースにもなるという点があります。本やゲーム、ゴルフ用品、工具類、メイク道具など自分の好きなアイテムをしまっておくことが可能です。
「ウォークインクローゼットのように仕切りのない大型の収納だと、生活用品が収納スペースを占めてしまい、自分のアイテムをしまう場所がなくなってしまう可能性があります。ファミリーロッカーの場合、自分のためのスペースが必ず確保できているので他の家族に気兼ねすることなく好きな物を置けるよさがあります」
ファミリーロッカーを設置するデメリット
ファミリーロッカーには多くのメリットがある一方、次のようなデメリットもあります。
- スペースが必要となる
- 建築コストがかかる
- デッドスペースになってしまう可能性がある
- 動線を工夫する必要がある
設置後に後悔しないためにも、デメリットについても理解を深めておきましょう。
スペースが必要となる
ファミリーロッカーを設置するにはスペースが必要になるため、限られた面積の中で家づくりを進める場合は、本当に必要かどうかも視野に入れて家族内でよく相談したほうがよいでしょう。家族の人数やロッカーの構造にもよりますが、コンパクトなものでも最低1畳ほどは面積が必要になります。
「リビングに設置する場合は、空間のノイズとなってしまう可能性もあります。開放的なリビングを希望する場合は、間取り決めの際によく検討してみましょう」
建築コストがかかる
規模にもよりますが、収納を増やすことで数十万円ほどコストがかかります。また、家族がより使いやすくするために造作収納のファミリーロッカーにするという方法もありますが、造作の場合は建築費用が高めになるので打ち合わせ時によく確認してみましょう。
デッドスペースになってしまう可能性も
設置する場所や使い方によっては残念ながらデッドスペースとなってしまう可能性もあります。せっかく導入したファミリーロッカーを有効活用するためにも、家族全員が使いやすい場所や棚の数などを検討しましょう。
動線を工夫する必要がある
リビングや玄関付近、廊下などに設置する場合、人が通行できる幅や生活動線を考える必要があります。
「リビングの中央にファミリーロッカーを設置したら邪魔になってしまった」というような後悔をしないように注意しましょう」
ファミリーロッカーの設置におすすめの場所は?
ファミリーロッカーの設置におすすめの場所として、次の3つが挙げられます。
- リビング
- 玄関近くの廊下
- 階段下のスペース
それぞれ、ファミリーロッカーの設置場所としておすすめする理由を以下で解説します。
リビング
リビングは家族が最も集まりやすい場所です。子どもが宿題をしたり、両親が趣味を楽しんだりすることもあるでしょう。
「ファミリーロッカーがリビングにあることで、宿題で使う参考書や趣味のアイテムをすぐにしまうことができて便利です。集まりやすい場所に使いやすい収納があることで、家族みんなが足を運びたくなるリビングになるでしょう」
玄関近くの廊下
「リビングの開放感を保ちたい場合、廊下にファミリーロッカーを設置することもおすすめです。玄関とリビングの間の廊下にロッカーを設置し、各々がそこに自分の持ち物や衣類をしまえるようにすると動線も便利です」
階段下のスペース
リビング階段の下のスペースなどを有効活用し、ファミリーロッカーを設置するという選択肢もあります。階段下の空間を使うことで生活動線の邪魔にならず、なおかつ家族が使いやすい場所であるという利点があります。
ファミリーロッカーのサイズや設置のポイントは?
ここでは、ファミリーロッカーのサイズの決め方と設置する際のポイントを解説します。
ファミリーロッカーを使い勝手のよいものにするために、参考にしてみてください。
サイズの決め方
「ファミリーロッカーに限らず、収納のサイズはそこに何をしまうかを前提に決めることがポイントです。誰が何をしまうのかをよく考えたうえで、幅や高さ、内側の棚の数などを決定しましょう」
一般的な1人用のロッカーのサイズは、横幅約30cm、奥行き約50cm、高さ約180cmとされています。ファミリーロッカーの場合、収納するものや家族の人数に合わせて大きさを決定することでより使いやすい収納になります。
扉の有無の決め方
ファミリーロッカーには、扉がないオープンタイプと、扉付きのタイプがあります。
「ファミリーロッカーに扉を付けることで、生活感を隠すことができ、収納物を汚れから守ることができるなどのメリットがあります。一方、物の出し入れをしやすく、見せる収納にしたい場合には、扉を設けないタイプを選ぶとよいでしょう。扉がないことで建築費用のコストダウンも見込めます」
場所の決め方
「どのスペースを誰が使うのかも使いやすさの決め手となります。上下に分かれているファミリーロッカーであれば、上段は背の高い大人、下段は背の低い子どもが使うとよいでしょう」
横並びのロッカーの場合も同様に、物を出し入れする機会の多い人は外側を使うなど、家族内でそれぞれが使いやすい場所を相談してみましょう。
ファミリーロッカーを作るうえで知っておきたいこと
ファミリーロッカーを作るうえで知っておきたいこととして、次の3つが挙げられます。
- デッドスペースにしないための工夫
- 内装と統一感のあるデザイン
- 必要に応じて家電収納と組み合わせる
それぞれの点について、以下で解説します。
デッドスペースにしないための工夫
「デッドスペースにならないように、家族が使いやすい場所にファミリーロッカーを設置することが大切です。極端な話ですが、2階の奥まった部屋にファミリーロッカーを設けると、そこまで荷物を持ち運ぶこと自体が大変なのでデッドスペースになってしまうでしょう。そういった意味でも、どこにファミリーロッカーを置くかは重要なポイントとなります」
また、子どもが巣立った後の活用法について高橋さんはこのように考えます。
「子どもが家を出て行った後には両親の趣味のアイテムを収納したり、生活雑貨をしまう場所にしたりと用途を変えて使用してみてはいかがでしょうか」
内装と統一感のあるデザイン
ファミリークローゼットが空間のノイズになってしまってはもったいないため、壁紙や床材と統一感のある素材・色を選ぶことをおすすめします。
「白い壁紙を使用しているリビングならば、ファミリーロッカーも同系色にまとめると見た目がスッキリします。それでも気になってしまう場合は、廊下などデザインを邪魔しにくい場所に設置するとよいと思います」
必要に応じて家電収納と組み合わせる
ファミリーロッカーのプラスアルファの使い方として、家電収納と組み合わせるという選択肢もあります。
「例えばロッカーの下の部分に空間をつくり、ロボット掃除機の収納場所にします。内部にコンセントを設けると収納しながら充電もできて便利です」
同じように、Wi-Fiのルーターやオーディオなどをファミリーロッカーの一部に収納することができます。リビングで家電の収納場所に困った場合に検討してみてはいかがでしょうか。
ファミリーロッカーを設置した注文住宅の間取り例を紹介
ここでは、ファミリーロッカーを設置した注文住宅の間取り例を紹介します。
実際の例を見ることで、ファミリーロッカーを設置する際の参考になるでしょう。
ママ目線のアイデアを詰め込んだ家
こちらは高橋開発が子育て中のお母さんたちの意見を参考にしてつくった間取りのプランです。子どもたちを見守りやすい動線や半屋外空間「ロジア」とつながるリビングが特徴的。LDKの壁面には上下2段のファミリーロッカーを設置して、家族1人ひとりが自分の持ち物を収納できるようにしました。上の棚には通帳や印鑑など子どもたちに触られたくないものを、下の棚には子どもたちのおもちゃやランドセルを収納しています。壁に埋め込むタイプの収納なのでリビングの開放感を邪魔することなく、扉を閉めればスッキリとした見た目です。
家族が集まりやすいLDKのある家
こちらはLDKのダイニング部分にファミリーロッカーを設けた間取りの例です。LDKの中にはファミリーロッカーのほか、子どもたちが勉強で使うためのカウンターを設置。家族が集まりやすい工夫がされています。
ファミリーロッカーを注文住宅に取り入れるときのポイント
最後にまとめとして、ファミリーロッカーを注文住宅に取り入れるときのポイントについて高橋さんに伺いました。
「ファミリーロッカーの設置を検討する際はサイズやデザインを考えることも大切ですが、まずは『誰とどんなシーンでどのように使いたいか』をイメージしてみてください。家族とどんな暮らしをしたいか考えると、それに合った収納がはっきりと見えてくるはずです。ファミリーロッカーは選択肢の一つとして、家族のライフスタイルや価値観に合う収納を考えてみましょう」
スーモカウンターに相談してみよう
おしゃれで便利なファミリーロッカーを注文住宅に取り入れたいと検討している人は、ぜひスーモカウンターに相談してみてください。スーモカウンターではアドバイザーがお客様の家づくりを全面サポート。理想に合った建築会社を複数紹介することも可能です。注文住宅を建てたいけど何から始めたらいいの?という方も大歓迎。家づくりのヒントからお金のことまで親身になって相談に乗ります。
イラスト/高村あゆみ
取材・執筆/佐藤愛美(りんかく)、SUUMO編集部