部屋の内装を検討するとき、意外と重要なのが、巾木(はばき)や廻り縁(まわりぶち)です。そもそも、巾木や廻り縁とはどのようなもので、どのような種類があるのか、部屋をおしゃれに見せるためには、どうやって選べばいいのかなど、一級建築士でインテリアプランナーの佐川旭さんに聞きました。
巾木とは? 廻り縁とは?
そもそも住宅の内装で用いられる巾木や廻り縁とは、どのようなものなのでしょうか。
巾木とは
「地震のときなど、住宅の床は揺れます。その際、床と壁が密着していると、壁へも影響が出てしまうため、床と壁の間にはすき間があります。
そのすき間から風が入ったり、ゴミがたまったりするのを防ぎ、見た目もきれいに仕上げるために設けるのが巾木です。
なお、掃除機で壁を傷つけないように巾木があるという意見もありますが、それは後付けの役割ですね」(佐川さん、以下同)
廻り縁とは
「天井は一見まっすぐなようですが、実際は水平から2mm~3mmのゆがみが生じやすく、このすき間を隠し納まりをすっきり見せる役割が廻り縁です」
その他の内装の名称と特徴
住宅の内部造作は、巾木と廻り縁以外にも、さまざまな部材で構成されていて、ここでは、代表的なものを紹介します。
・窓枠:窓の周りの枠
・ドア枠:ドアの周りの枠
・腰壁(腰板):壁の下部に木の板などを張ったもの
・腰見切り:腰壁の上下の境目をきれいに見せるために設ける部材
巾木や廻り縁の種類は?
巾木や廻り縁にはどのようなものがあるのでしょうか。素材や形、色などの種類を紹介します。
巾木や廻り縁の素材の種類と特徴
「巾木には、大きく分けて木製の『木巾木』と、樹脂製の『ソフト巾木』があります。廻り縁も素材としては、巾木と同様です」
木製の巾木や廻り縁の特徴
「木製の巾木や廻り縁には、天然木を使ったものと、表面に化粧シートを張ったMDF(粉状にした木材チップを樹脂で混ぜ固めた中密度繊維板)のものがあります。厚さ10mm~15mmくらいで、住宅の巾木や廻り縁としては一般的です」
樹脂製の巾木や廻り縁の特徴
「塩化ビニール製で、厚さ2mm~3mmと薄いのが特徴です。店舗やオフィスなどで使われることが多く、住宅ではトイレや洗面所で使われることもあります」
その他の素材
木や塩化ビニール以外に、巾木では石やタイルなどが使われることもあります。これらの素材は、主に玄関やインナーテラスなどで、床材と素材の統一感を出すために用いられます。
また、後述する「隠し廻り縁」では、アルミ素材(アルミアングル)が使われることもあります。
巾木や廻り縁の種類と特徴
巾木の形の種類と特徴
「巾木の形は大きく3つに分けられます。『出巾木(ではばき)』『同面巾木(どうづらはばき)』『入巾木(いりはばき)』の3つです」
・出巾木:巾木の厚みが壁面の外に出た最も一般的な巾木。出っ張った厚みの上面にほこりがたまりやすい。
・同面巾木:出っ張りがないよう、壁面と面(つら)をそろえた巾木。すっきりした印象になる上、巾木の上にほこりもたまらない。ただし、施工が難しい。
・入巾木:壁面から引っ込んだ形の巾木。一見、壁が浮いたように見えて、軽やかな印象になる。浮いた壁のすき間に綿ぼこりがたまりやすいことも。
廻り縁の形の種類と特徴
「廻り縁の形の種類としては、通常の廻り縁のほかに『二重廻り縁』や『隠し廻り縁』などがあります」
・二重廻り縁:出っ張りが2段になっていて、広めの和室で使うと部屋の格式が高く見える。
・隠し廻り縁:廻り縁を表に出さず、外からは見えないように隠して仕上げた(納めた)もの。部屋がすっきりとした印象に見える。
巾木や廻り縁の色の種類と特徴
「巾木なら床材や壁の色、廻り縁なら壁や天井の色に近いものを使うことが多く、住宅用ではそれ以外の色はあまり使われません。
黒など濃い色の巾木や廻り縁は、カフェなどの店舗では見かけますが、住宅だと空間が分断され狭く感じられてしまうからです」
部屋をおしゃれに見せる巾木や廻り縁の選び方
部屋をおしゃれに見せるには、どのような点に注意して巾木や廻り縁を選べばいいのでしょうか。
床の色と合わせる
「巾木は床の色と合わせることが多く、床がフローリングの場合は、その床の木の色に近い色を使うと、包まれているような印象になります」
壁の色と合わせる
「巾木や廻り縁を壁の色と合わせると、壁面が広く感じられ、天井が高く感じます」
天井の色と合わせる
「6畳以下など比較的狭い部屋の場合は、廻り縁を天井の色と合わせると部屋が広く感じられます。逆に広い部屋では、天井の色と合わせず廻り縁をはっきり見せた方が、空間に安定感が出ます。広さに合わせて決めるのがおすすめです」
家全体のデザインテイストに合わせる
「巾木や廻り縁は、家全体のテイストに合わせるのがおすすめです。
例えば、ヨーロッパ調の家では、豪華にデコレーションされた、ボリュームのある巾木や廻り縁が似合います。
一方、シンプルモダンな家の場合、巾木や廻り縁をあまり目立たせない方が良いでしょう」
サイズ(高さ・厚み)で選ぶ
「メーカー製の巾木の高さは、40mm、60mm、75mm、100mmが規格としてありますが、一番多く使われているのは60mmと75mmです。木巾木の厚みは10mm~15mmが多いですね。
また、巾木の上にほこりがたまるのを避けたい場合は、一般的なものに比べて厚さが薄く、上面が曲面になっている『薄型巾木』を使うといいでしょう。
なお、欧風住宅向けのデコレーションされた巾木や廻り縁はモールディングとも呼ばれ、高さも厚みも、より大きいサイズのものが使われます。これは、欧風住宅の天井高が2700mm~2800mmと高く、モールディングで豪華さを演出しても部屋が狭く感じないためです。しかし、日本の一般的な天井高(2400mm前後)で同様のサイズのものを使うと、圧迫感を感じます」
巾木や廻り縁をなしにする
「巾木や廻り縁をなくしてすっきり見せたい場合は、本当になくすのではなく、ないように見える入巾木や隠し廻り縁にするといいでしょう」
ダサい巾木や廻り縁の後悔・失敗例と対策
巾木や廻り縁選びに失敗して、後悔したという例を紹介します。反面教師にしてダサくならないように気をつけましょう。
気づいたら勝手に色や素材が決まっていた
「家づくりは決めなければいけないことが多いため、多くの人は巾木や廻り縁にまで気がまわりません。施工する側も、一般的に床や壁に合わせておけば間違いはなく、高さもおおよそ決まっているので、施主に細かく確認しないケースもあり得ます。
もし、巾木や廻り縁にこだわりがある場合は、事前に打ち合わせで希望を伝えておいた方がいいでしょう」
デザイン的に主張し過ぎる
「巾木や廻り縁で部屋をおしゃれにしようと、床や壁の色と全く異なる色を使うと失敗しやすいです。巾木や廻り縁は部屋全体をぐるりと囲んでいて、意外と目につくため、デザイン的に主張し過ぎると落ち着かない空間になってしまいます」
巾木や廻り縁にこだわって理想の住まいを実現した先輩たちの実例を紹介!
スーモカウンターを利用して、巾木や廻り縁にこだわった住まいを実現した先輩たちの実例を紹介します。その人たちが、どのような点にこだわり、どのような住まいを実現したのか、実例を参考に学んでいきましょう。
【実例1】ブルーグレーの壁に調和したスタイリッシュなアルミ巾木
注文住宅を建てることを考え始めたAさんは、スーモカウンターを訪れました。希望したのは、無垢材を内装にほどよく取り入れた広く感じられるデザインの家。そこで紹介された5社の中から、デザインへのこだわりと住宅性能の高さで1社に決定。
内装デザインも細部にまでこだわり、自然由来のブルーグレーの塗料で自分たちで塗った壁の足元には、アルミ製の巾木を採用して、スタイリッシュな仕上がりになりました。
この実例をもっと詳しく→
デザインのセンスが光る会社と出会って何度もプランを練り直したこだわりのわが家
【実例2】床材や巾木など、自分たちで細かく決めて、納得のわが家が完成!
マイホームを建てようと思ったものの何から始めていいのかわからず、たまたま見つけたスーモカウンターで話を聞いてみることにしたKさん。
住みたいエリアや予算を伝えたところ、3社を紹介され、面談を経て土地探しから提案してくれた会社に依頼。
家づくりの過程では、床材や巾木など細かな部分の素材や色決めなど、思った以上に決めることが多く、驚いたそうです。その分、自分たちの思いやこだわりの詰まった新居が完成しました。
この実例をもっと詳しく→
子どもが元気に駆けまわる!リビングを真ん中に据えた、家族が笑顔で暮らせるわが家
巾木や廻り縁を選ぶときのポイントは?
最後にあらためて佐川さんに、巾木や廻り縁を選ぶときのポイントについて聞きました。
「巾木や廻り縁は、床や壁、天井の境目といった素材が転換するところに用いられます。素材の異なる面をつなぐ巾木や廻り縁を活かすのか、それとも隠すのか、まずはそこから検討しましょう。
日本では、目立たせずすっきり見せるのが主流です。しかし、ヨーロッパなどでは、あえて目立たせて豪華さを演出することもあります。
どのような雰囲気にしたいのか、建築士や建築会社のインテリアコーディネーターなどに希望を伝えて、相談するといいでしょう」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「どのような巾木や廻り縁を選んだらいいのかわからない」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望を叶えてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりの段取りや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合わせください。
イラスト/村林タカノブ
佐川旭建築研究所代表。一級建築士、インテリアプランナー。間取り博士とよばれるベテラン建築家で、住宅だけでなく、国内外問わず公共建築や街づくりまで手がける