ホテルライクと聞くと、シンプルでスタイリッシュな家を連想しがちです。そのため、簡単に理想の住まいを実現できると思う方も少なくありません。しかし、シンプルでスタイリッシュなデザインだからこそ、失敗しやすい面もあります。ホテルライクな家づくりを成功させるには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。
そこで今回は、クラシスホームのインテリアコーディネーターである林百合子さんに、ホテルライクな家づくりのコツについてお話を伺いました。リビングや寝室など、家の一部をホテルライクにしたいと考えている方も、ぜひ参考にしてみてください。実例を交えながら、おしゃれで落ち着いた空間をつくるためのヒントをご紹介します。
ホテルライクな家の特徴
まずはじめに、ホテルライクな家とはどのような家なのかを解説します。
「ホテルライクとは言葉のとおり『ホテルのような』という意味です。ホテルライクな家といってもさまざまなテイストがありますが、内装の統一感はホテルらしさを出す上で欠かせないポイントです。また、できるだけ生活感を排除し、非日常な雰囲気を味わうことができるのもホテルライクな家の特徴といえます」(林さん、以下同)
デザイン性を重視したホテルライクな家はインテリアもおしゃれ。家具や照明などにもこだわることで、よりホテルらしい空間に近づけることができます。
建築段階から考えたい、ホテルライクな家づくりのポイント
ホテルのような家を建てるためには、内装や設備など、建築の初期段階からしっかりと計画することが重要です。建築が終わってからホテル風の雰囲気を追求しようとすると、十分な開放感やアクセントが得られず物足りなさを感じてしまう可能性もあります。そこでここからは、ホテルライクな家づくりを成功させるための重要なポイントをご紹介します。
余裕のある広々とした空間にする
「できるだけ余裕のある間取りにして、ゆったりと過ごせるような空間づくりをしましょう。限られた面積の中で間取りを計画するため、すべての部屋にゆとりをもたせるのは現実的ではありません。リビングや寝室、浴室など、ここだけは広くしたいという空間を決めてホテルライクに仕上げるのがおすすめです。また、天井を高めにして開放感のある空間にするのも効果的です」
特にリビングや浴室はホテルライクな雰囲気を演出しやすい空間。打ち合わせの段階で、施工会社に広さや天井の高さについて希望を伝えましょう。
折り上げ天井で空間にアクセントを
「LDKや寝室に折り上げ天井を取り入れるのも人気の手法です。天井のアクセントとなり、空間にも上下の広がりが生まれます」
天井に凹凸がある折り上げ天井は、空間を広く見せたいときにぴったりです。折り上げ部分に間接照明を埋め込むこともでき、よりムードを演出できます。
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色の統一感を意識する
「空間の色に統一感をもたせるのは大切なポイントです。さまざまな色を使ってカラフルな空間にするよりは、同系色の色味を意識して壁や床の素材、インテリアなどを選んだほうがホテルライクな空間になります。空間のカラーバランスは、ベースとメイン、アクセントの対比が決め手です。施工会社にインテリアコーディネーターやカラーコーディネーターがいる場合は、ぜひ相談してみましょう」
さらに、壁や床と合わせて家具や小物、カーテン、ラグなどインテリアの色味を統一すると上質な雰囲気になります。
生活感を出さないように設備を工夫する
「生活感が出ると雑然とした雰囲気になり、ホテルライクな空間から遠ざかってしまいます。そういったことを避けるためにも、できるだけ生活感を隠す工夫が必要です。例えば、収納部分には扉を設けて中が見えないようにし、見せる収納を設置する場合はものを置きすぎないようにするなど使い方にも気をつけましょう」
ファミリークローゼットなど大型の収納空間を家の中につくり、生活雑貨や衣類、季節家電などをまとめて収納しておくことで、ほかの部屋をスッキリとした見た目に保つことも効果的です。
高級感のある素材を選ぶ
「大理石や塗り壁など、高級感のある素材を使うとホテルライクな空間になります。また、壁にクロスを張る場合は海外製の個性的な柄をアクセントクロスにすると非日常感が強まります」
素材選びは家づくりの楽しみの1つ。いろいろな素材を比較して、好みの空間をつくりましょう。
外壁や外構といった外装もホテルライクなイメージに近づける
ホテルライクな家づくりを目指すには、外壁や外構にも工夫が欠かせません。色の統一感を意識し、高級感のある素材を選ぶことはもちろん、生活感を隠すことも大切です。
特に、外装に使用する色数を抑えたホテルライクな家づくりでは、窓をアクセントとして活用するのがおすすめです。どの家にも使われている窓だからこそ、違和感のないアクセントとして活用できるでしょう。形状や配置によって上品さやおしゃれさがアップするので、窓選びにもこだわってみてください。
また、家の周りにはエアコンの室外機や配管、メーターなどの設備が設置されますが、見えにくい場所に設置することで生活感を隠すことができます。
ホテルライクな部屋におすすめのインテリア
ホテルライクな空間にするためには、適切なインテリアを選ぶことも重要です。
照明
「従来の日本の住宅では一部屋一灯が一般的でしたが、ホテルのようなおしゃれな空間にするのであれば、間接照明や埋め込み式のダウンライト、壁を照らすスポットライトなどを組み合わせることが効果的です。明るさをやや落とすことで、しっとりとした雰囲気になります」
ソファの横にフロアスタンドを置いたり、キャンドル型のペンダントライトを空間のアクセントにしたり、複数の照明を使うと空間に陰影をつけることができます。
家具
「建具や壁紙のデザイン、色と調和する家具を選ぶのがおすすめです。ゆったりと座ることができるL型のソファや毛足の長いラグなどは高級感があります。収納家具を置く場合は飾り棚を兼用するキャビネットや、背の低いスタイリッシュなものがホテルライクな空間にマッチします」
家具の置きすぎには注意が必要です。空間の面積のうち半分程度は家具を置かずに空けておくと、開放感のある印象になります。また、家具の配置によっても空間の雰囲気は変わるため、レイアウトで悩んでいる場合は建築段階で相談してみましょう。
小物
「床置きの間接照明や観葉植物、壁に飾るアートなどは空間のアクセントになります。家具と同様に、建具や壁紙との調和を意識して選ぶとホテルライクな雰囲気に近づきます」
観葉植物は大きなものや左右のバランスがとれた美しい見た目のものを選ぶのがおすすめです。上品ながらもインパクトを取り入れることができます。
ホテルライクにするためのヒントを空間ごとに解説&実例紹介
ホテルのような空間づくりを目指すためには、各部屋のポイントを押さえることが重要です。以下では、リビング、寝室、トイレ、浴室、キッチン・ダイニング、玄関、屋外設備、そして外観において、ホテルライクなインテリアを実現するための具体的なアイデアと実例を紹介します。
リビング
「リビングは家族がいちばん長く過ごす場所です。家の中心ともいえる空間なので、素材やインテリアにこだわり、特別感を出したいと考える方は多いです。また、よく使う場所だからこそ、家電などの生活用品を見える場所に置きすぎないこと、生活感が出ないように計画的に収納を設けることなどが大切です」
寝室
「シーツやベッドカバー、枕、クッションなど、アイテムの色やデザインを統一すること、間接照明を用いてリラックスできる雰囲気をつくることがホテルライクな寝室づくりのポイントです」
トイレ
「トイレは壁紙や照明などを工夫することでホテルライクにしやすい空間です。面積に余裕があれば手洗い場を設けるのもおすすめです」
浴室
「システムバスではなくデザイン性の高いバスタブを選んだり、扉をガラス張りにしたりすると海外のホテル風になります。床面をタイルにするなど素材によって高級感を出すこともできます」
キッチン・ダイニング
「ホテルライクな家では、キッチンやダイニングもインテリアの一部のような存在です。見せることを意識して、デザインにこだわりましょう。生活感が出やすい場所ですが、収納計画をしっかりと行い、綺麗な見た目に保つことが大切です」
玄関
「玄関ホールを広めに設計し、アート作品や観葉植物を飾ることができるスペースを設けるとホテルのような雰囲気になります。壁にニッチを設け、飾り棚として活用する手法も人気です」
屋外設備
「バルコニーや中庭などに家具を置いて第二のリビングとして活用する方法も人気です。天気のよい日は外の風を感じながら食事をしたり、人を招いてBBQなどアウトドアな趣味を楽しんだりすれば、生活の質が高まります」
外観
ホテルライクな家を目指す場合、屋外と屋内のつながりを意識して外観も決めるとよいでしょう。タイルやレンガ、石などの素材を大胆に使った非日常的な外観もおすすめです」
ホテルライクな注文住宅の実例を紹介
ここからは、ホテルライクな家づくりに成功した先輩たちのマイホームを紹介します。ぜひおしゃれな家づくりのヒントにしてください。
【case1】モダンでスタイリッシュなデザインにこだわった二世帯住宅
妻の母と兄と同居するために注文住宅を計画したFさん。6人家族が快適に暮らせるおしゃれな家づくりに成功しました。黒を効かせたモダンで開放的なLDKでは家族全員が交流を楽しんでいます。また、リビングにつながる扉をガラスの引き戸にしたり、廊下の壁に天然石を張って印象的に仕上げたり、家の随所にこだわりが詰まっています。デザイン性だけでなく家事動線にも配慮したスタイリッシュな二世帯住宅になりました。
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お互いの生活音を気にせず、6人が快適に暮らす二世帯住宅
【case2】各空間に個性を演出したホテルライクな住まい
結婚を機に妻の実家の隣の土地に家を新築したSさん。個性あふれるデザインの家を目指し、空間ごとにデザインテイストを変えました。1階のリビングやキッチン、洗面室はホテルライクでシックな空間に設え、2階にはシャンデリアをつけたフレンチテイストの寝室、和モダンな床の間を設けた和室など各部屋に個性を演出。住宅完成後のインテリア探しも楽しんでいるそうです。
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洗練されたホテルライクな空間で、ゆったりくつろげる至福の空間
【case3】アクセントウォールを設えたおしゃれな寝室
子どもが生まれたことをきっかけに、注文住宅を建てることにしたSさん。便利な収納スペースをたっぷり設けながら、スタイリッシュにコーディネートされた理想の住まいが出来上がりました。好きなドラマの寝室をイメージしたという主寝室は、アクセントウォールを設えたホテルライクなデザインに。モザイクタイルや間接照明を効果的に使い、上品な空間に仕上げました。
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家事動線◎!収納たっぷりでスッキリと片付き、居心地のいい空間
【case4】デザインにこだわったホテルライクな水まわり
築40年の夫の実家で暮らしていたSさんは、台風による雨漏りを機に建て替えを決意。家族それぞれが心地よく暮らせる二世帯住宅をつくりました。トイレや洗面所では間接照明を効果的に使い、ホテルライクな仕上がりに。水が流れてくる様子が見えるおしゃれな洗面ボウルは妻のお気に入り。毎日使う場所に特別感を取り入れることにより、暮らしが楽しくなります。
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夫妻の世界観が詰まった、オフィス兼二世帯住宅
【case5】天井高やハイドアでホテルライクな家を演出
実家の敷地内にスペースができたことから、新築を考え始めたYさん。ホテルのようなシンプルモダンな家を望んでおり、その理想を見事に実現しました。
Yさん邸の特徴の1つは、リビングの天井高が270cmで、さらに吹き抜けを取り入れることでホテルのような開放感を演出していることです。また、高級感を引き立てるハイドアを採用し、よりスタイリッシュな仕上がりになっています。
インテリアは黒やグレーを基調としており、モダンな雰囲気を醸し出していますが、その一方で和風の要素も取り入れているという点にも注目です。玄関ホールに設けた3.75畳のタタミコーナーは、お子さんの遊び場として活用されていて、遊び心あふれるスペースが家全体に調和をもたらしています。このような多彩なスペースが一体となって、ホテルライクな魅力を生み出しています。
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天井高と吹き抜けが自慢の、ホテルライクな住まい
【case6】アメリカンテイストでホテルライクな平屋風2階建て
Yさん夫妻は、フラットな空間での暮らしを理想とし、大手ハウスメーカーで憧れのアメリカンテイストを取り入れたホテルライクな平屋風の住まいを手に入れました。勾配天井と吹き抜けがつながり、開放感を生み出しています。また、色や素材に統一感をもたせることで、ラグジュアリーな雰囲気も感じられる住宅です。
高額になりがちな設備は施主支給を活用することで、費用を抑えつつホテルライクなイメージを保つことに成功しています。外観も内装に合わせたホワイトを基調としたデザインに統一されており、そのバランスが高級感をさらに引き立てているのが特徴です。
リビングからつながるカバードポーチでは、休日にホテルのような気分でモーニングやランチを楽しむことができるそうです。
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憧れのアメリカンテイストを取り入れた開放感のある平屋風2階建ての暮らし
【case7】ブラックに統一されたホテルライクなバスルーム
モデルハウスの見学をきっかけに、Sさん夫婦はマイホーム購入を考え始めました。どこにいても家族とつながれる、そんな安心感を追求した間取りとなっていて、デザインはもちろん、性能も妥協せず、こだわりぬかれた新居の住み心地は抜群なようです。
特に目を引くのが、ブラックに統一されたホテルのようなバスルームです。高級感を演出しているのは大理石調の床で、バスルームの壁とも見事に調和しています。生活感が出がちなバスルームをホテルのようにすることで、日常感を抑えられる好例といえるでしょう。住まい全体をホテルライクにするのではなく、一部分だけをホテルライクにしたいと考えている人は参考にしてみてください。
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将来をイメージしてつくり上げた、仕切りのない28畳のLDKが魅力の家
【case8】吹き抜けでリゾートホテルのような開放感を
海外赴任の経験からリゾートホテルのような住まいを望んでいたKさんファミリー。世田谷区を気に入っていましたが、土地の価格が高いため、一度は諦めかけたこともありました。しかし、既存のインテリアに合わせて設計することで、費用を抑えながらも統一感のあるリゾートホテル風の家を実現しています。
リビングには大きな吹き抜けがあり、フローリングとつながるバルコニーがリゾートホテルのような開放感を演出しています。このバルコニーは、もう1つのリビングとして活用しているようです。
さらに、タイのホテルをイメージし、洗面室とトイレを一緒にしたヨーロピアンセパレートを採用しています。この設計により、通常よりも広々とした空間を確保し、よりリゾートホテルらしい雰囲気を楽しむことができます。
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理想の住まいが快適なおうち時間にフィット、家族それぞれが楽しい空間
ホテルライクな家を建てるときに注意すべきことは?
最後に、ホテルライクな家を建てるときの注意点について林さんに聞きました。
「住宅完成後におしゃれな空間を維持できるかどうかや、設備を使いこなすことができるかといった点も無視できないポイントです。デザイン性にこだわりすぎたあまり、生活しにくい家になってしまっては本末転倒。毎日生活する場所であることを意識し、デザインにこだわる場所と機能性を重視したい場所を分けて設計することもおすすめです」
理想の家づくりを成功させるためには、建築段階でよくイメージを膨らませておくことが大切です。ホテルのような居心地のよいおしゃれな家になるように、丁寧に計画していきましょう。
スーモカウンターに相談してみよう
ホテルライクな家を建てたいと検討している人は、ぜひスーモカウンターに相談してみてください。アドバイザーがお客様の家づくりを全面サポートします。注文住宅を建てたいけど何から始めたらいいの?という方も大歓迎。家づくりのヒントからお金のことまで親身になって相談に乗ります。
監修/SUUMO編集部(外壁や外構といった外装もホテルライクなイメージに近づける)