浴室の隣にちょっとした空間があって、外に出られるようになっているものをバスコートと呼びます。バスコートがあれば、優雅なバスタイムを過ごせそうと、憧れる人も多いのではないでしょうか。そこで、バスコートのメリット・デメリットや計画するときのポイントについて、バスコートのある住宅を数多く設計してきたスタジオ・ノアの森信人さんに話を聞きました。
バスコートとは?
まず、どのようなものを「バスコート」と呼んでいるのでしょうか?
「厳密な定義はありませんが、浴室の隣に設けた庭のような空間をバスコートと呼んでいます」(森さん、以下同)
浴室の隣にあって、浴室から屋外を眺めたり、出入りしたりできる空間が「バスコート」ということです。浴室から裸で出入りすることもあるため、周りからのぞかれないようになっています。
バスコートのメリットは?
自宅で露天風呂のような気分が味わえる
「バスコートがあると、露天風呂のような気分が味わえます。どこからものぞかれることのない開放的な空間で、ゆっくりくつろげるというのが大きなメリットです」
物干し場としても活用できる
森さんによれば「バスコートは、物干し場としても活用できる」と言います。バスコートは、一般的に周りからのぞかれないようになっているため、ご近所の目を気にすることなく布団や洗濯物を干せる点もメリットといえるでしょう。
間取りによって多目的な使い方ができる
「周囲を壁で囲んだバルコニーやデッキ、テラスなどの横に浴室を設け、その浴室からも出入りできるようにすれば、そこはバスコートでもあり、アウトドアリビングでもありと、多目的に活用できます」
バスコートのデメリットは?
周囲からの視線を遮る工夫が必要
浴室から裸で出入りすることを前提としているため、周囲の視線を遮る工夫は必要です。
「バスコートの周りは壁で囲って視線を遮ります。その際には、もちろん斜線規制に引っかからないように、かつ周囲の建物の高さなども考慮して設計します。住宅によって立地条件は千差万別のため、その都度、どこに浴室やバスコートを配置するか、目隠しの方法についても考える必要があります」
ユニットバスは選択肢が限られる
一面がガラス張りになった浴室からバスコートを眺められるというのは、醍醐味の一つですが、そういった仕様に対応できるユニットバスは限られています。デザインや機能が気に入ったユニットバスがある場合は、対応していないケースもあるので注意が必要です。
「私が設計したバスコートのある家は、全てユニットバスではない在来浴室です。それでも防水をしっかりすればユニットバスと遜色ありません」
バスコートのメンテナンス・お手入れ方法
森さんによると、バスコートのメンテナンスやお手入れ方法は、基本的にバルコニーのメンテナンスやお手入れ方法と変わらないと言います。
「日々のお手入れは、排水溝の詰まりを注意してこまめに取り除くことです。中長期的なメンテナンスとしては、防水やデッキ材の劣化に注意して、劣化があれば施工会社などに連絡して補修を行ってください」
バスコートを計画するときに気を付けることは?
魅力的なバスコートですが、バスコートを計画するときに気を付けることはあるのでしょうか?
広さは?
「広さは、狭くても広くても問題ありません。小さければ小さいなりに、椅子一つあればお風呂に入りながら夕涼みができます。敷地面積が狭く、コンパクトな住宅こそ、開放感を得るためにバスコートは有効です。また、バーベキューができるような10畳以上のルーフバルコニーの横に浴室を配置すれば、より開放的なバスコートになります」
何階がいい?
「周辺環境や家全体の間取りの中で決まるので、特に1階がいい、2階がいいということはありません」
近くにあるといい部屋は?
「近くにあるといい部屋は、バスコートを入浴時以外にどのように活用したいかによります。寝室の近くにあれば、布団を干すのに便利ですし、リビングの近くにあればセカンドリビングとして活用できます」
方角は?
「どの方角がいいというのはありません。それぞれの住宅のロケーションによって、視線を遮るのに都合のよい場所に配置します。むしろ、屋根がなく空からの日差しがダイレクトに得られるので、方角を気にする必要はありません」
コストは?
バスコートは、人によっては少し贅沢なもののように感じるかもしれません。実際にコスト面ではどうなのでしょうか?
「特に、バスコートをつくるとコストが跳ね上がることはありません。バスコートを設けることを前提にプランニングすることが重要です。例えば、バルコニーを設けるときに、その横に浴室を配置して出入りできるようにする。それだけで、バスコートは実現できます」
もちろん、素材や広さ、目隠しの仕様などによってはコスト高になるケースもあるので、計画時には担当の建築士や建築会社とよく相談した方がいいでしょう。
防水には気を付ける
バスコートには屋根がないため、雨をそのまま受けることになります。特にルーフバルコニーのように1階の屋根にあたる部分をバスコートにする場合には、雨漏りしないよう防水施工をしっかりと行う必要があります。
「施工する会社によって、防水施工の巧拙があります。できれば防水施工の実績が豊富な会社に依頼するといいでしょう」
バスコートの実例紹介
実際にバスコートとはどのようなものなのか、どのようなバスコートが可能なのか、森さんが設計した住宅のバスコートを紹介します。
【実例1】2階の寝室に面したバスコート
建物の2階にある広さ約3畳のバスコートです。隣にある寝室からもアプローチできるため、布団を干すのにも活用されています。ガラスブロック越しに植栽の緑を感じたり、夜には星空を見たりすることができます。
【実例2】独立したコンパクトなバスコート
建物の1階にある広さ1.6畳のコンパクトなバスコートです。この浴室専用の独立したバスコートですが、手前にある寝室にも窓が設けられており、寝室から浴室、バスコートを通してガラスブロック越しの植栽が眺められるつくりになっています。
【実例3】アウトドアリビングと兼用のバスコート
2階のリビングから半階上がったところにある13.2畳のルーフバルコニーに、浴室からも出入りできるようにしてある「アウトドアリビング兼バスコート」です。周囲を壁で囲ってあるため、他人の目を気にすることなくプライベートスカイを楽しめます。
【実例4】屋上バルコニーのバスコート
2階建ての最上階に浴室とバルコニーを設け、バスコートとしても活用している住宅です。浴室は、バルコニー側の壁一面がガラス張りになっており、洗面脱衣所経由でバスコートに出られます。
【実例5】物干し場としても機能するバスコート
3階建ての3階に配置したバルコニーをバスコートとしても活用しています。広さは4.2畳で、バスコートに面した浴室の壁一面がガラス張りになっています。洗面脱衣所を経由してバルコニーに出る動線となっており、物干し場としても機能しています。中庭的な多目的空間として魅力的なスペースです。
バスコートを計画する際のポイント
最後にあらためて森さんに、バスコートを計画する際のポイントを聞きました。
「家の中にわくわくする空間があると、暮らしが豊かになります。そういう意味で、バスコートはオススメの空間です。これまで見てきたメリット・デメリットを踏まえて、風や日差しを感じられる外部空間をなるべく取り入れることを意識してプランニングするといいでしょう」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「バスコートの設計・施工が得意な建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望をかなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
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イラスト/上坂じゅりこ
株式会社スタジオ・ノア 代表、建築家