仏間は家の中のどこに取り入れたらよいのでしょうか。仏間のある間取りにする際に気をつけたい方位や仏壇の配置、部屋の条件などを昭和建設の前田幸喜さんのお話をもとに徹底解説します。現代の暮らしに合ったおしゃれでモダンな仏間をつくりたいと考えている人も、ぜひヒントにしてください。
仏間とはどういう部屋?
まず最初に、仏間の定義や床の間との違いについて解説します。
定義|仏壇を置く部屋
仏間とは、仏壇を置く部屋のことを指します。仏壇や位牌を安置し、先祖の供養やお参りをする神聖な場所として住まいの中に取り入れられてきました。
伝統的な日本の家屋において仏間は独立した空間でしたが、近年は昔に比べて家がコンパクトになったこともあり、仏壇を置くスペースのみを指して「仏間」と、間取りに表記することが多くなりました。
「実家から仏壇を受け継ぐ予定の方や、二世帯住宅を建てる方などは住まいに仏間を取り入れることが多いです。仏間は和室の一角に設けることが一般的ですが、マンションなど限られた面積の中に仏間を設ける場合はリビングに併設することもあります」(前田さん、以下同)
床の間との違い
仏間の隣に設けることが多い床の間。同じ空間に配置されるため仏間と床の間は混同されやすいのですが、それぞれ異なります。床の間とは、和室に設けられる床を一段高くしたスペースのことを指します。
「仏間と床の間は、本来まったく役割が違うものです。仏間は仏壇を置く場所、床の間は季節人形や掛け軸などを飾る場所として機能しています。床の間は飾り棚のような存在です」
例外として、将来的に床の間を仏間に転用するというケースもあります。このように伝統にとらわれない床の間の使い方も増えています。
床の間についてもっと詳しく
仏間の位置は間取りのどこに置くべき? 方角や間取り上の配置を解説
注文住宅に仏間をつくる場合、どのような部屋に仏間を設けるのが適切でしょうか。方角や間取り上の配置、部屋の条件について詳しく解説します。
方角|仏壇はどちら向きに置くべき?
「仏間をつくるときに気をつけなければいけないのが方角です。仏壇の正面が北を向くのはタブーとされています。そのため、家を建てる際は仏壇の正面が南・西・東のいずれかを向くように仏間をつくります」
北向きに仏壇を置くのがよくないとされる理由は、中国の習わしに由来します。位の低い人は北を、釈迦など位の高い人物は南を向いて座る風習があったため、仏壇の配置もこれに習い、先祖を敬う意味で正面が南の方位を向くのがよいといわれています。
また、極楽浄土がある西向きや、日が昇る方位の東向きを縁起がよいとする考え方もあります。宗派によって仏壇の配置が決められていることもあるため、仏間をつくる前に確認しておいたほうがよいでしょう。
宗教上の考え方以外にも、建築上の観点からも北向きの仏壇を避ける理由があります。仏壇を北向きに設置するということは、部屋の南側の壁に仏壇の背をつけて置くことになります。そのため部屋の南側に開口部をつくることができず採光や通風が難しくなってしまいます。
間取り上の配置
「来客がお参りすることを考慮し、仏間は1階の玄関に近い場所につくるのが昔から一般的でした。床の間や押入れを併設する場合は、屋外側から床の間、仏間、押入れの順番で並べるのが伝統的な配置です」
仏間をつくる際にやってはいけない配置もあるので注意が必要です。
「仏間は神聖な場所であるため、上階で仏間の上を人が歩くことは避けるべきとされています。平屋の場合は心配いりませんが、2階建て以上になる場合は仏間の上に居室や廊下を配置しない間取りを考えたほうがよいでしょう。仏間の上にはクローゼットや納戸など収納を設けることが多いです」
不浄を避ける意味で、キッチンやトイレなど水回りと仏間を離したほうがよいという考えもあります。
仏間と神棚との位置関係
また、仏間と神棚の位置関係にも決まりがあります。従来は、神棚は居室、仏壇は仏間に置くことが通例でしたが、近年は間取りの都合により同じ部屋に仏壇と神棚を置くこともあります。その場合、神棚と仏壇を向かい合わせや上下に配置するのはよくないといわれています。
仏壇を置くのに適した部屋の条件
仏間の床は仏壇の重量に耐えられる仕様にする必要があります。仏壇の重さは素材や大きさによって異なりますが、コンパクトなもので15kgほど、一般的なもので50〜70kg、大型の100kg以上の仏壇もあります。床が仏壇の重量に耐えられないと、床が凹んでしまったり仏壇が破損する恐れがあります。重量のある大きな仏壇を置く場合は、建築前の打ち合わせで伝え、その仏壇に適した仏間をつくってもらうようにしましょう。
また、仏壇の多くは木製のため、部屋の温湿度管理も重要になります。ジメジメした空間ではカビが発生する可能性も。また、直射日光も仏壇にダメージを与えるので注意しましょう。
仏間の間取りを考える際のポイント
新築住宅に仏間を設ける場合、どのようなことに配慮して間取りを考えたらよいのでしょうか。
この章では、仏間のレイアウトや設置方法を考えるうえで、とくに注意したいポイントを紹介します。
仏壇のサイズを把握して設計する
「安置する仏壇がもう決まっている場合は高さや横幅、奥行きを正確に測り、建築会社に共有しましょう。近年は昔と比べてコンパクトな仏壇も普及しています」
仏間の平均的な寸法は横幅が約90cm、鴨居から框(かまち)までの高さが約170cmです。
また、お参りのしやすさを考慮し、奥行きは90cmほど確保できるとよいとされています。
ちょうどふすま1枚分の幅が90cmであることから、このサイズの仏間は「三尺(半間)仏間」と呼ばれています。昔はこれよりも大規模な、ふすま2枚分の幅(180cm)をもつ六尺(一間)仏間も珍しくありませんでしたが、近年の住宅ではあまり見られなくなりました。
ご本尊を見下ろさない高さに設計する
仏間をつくる際は、お参りのときにご本尊を見下ろさないように設計します。ご本尊を上から見下ろす形になると、ご先祖様に対して失礼にあたると考えられているためです。
コンパクトな仏壇の場合は、仏間の下に小上がりや収納を設けて高さを出す手法もあります。
コンセントを設ける
仏壇の電気配線のためのコンセントは、できるだけコードが目立たない高い位置を選ぶとよいでしょう。しかし、手が届かないほど高すぎたり奥まった位置にあるとコンセントの抜き差しが困難になるため、使いやすさにも留意して位置を決めるのが無難です。
仏壇を置く前は収納として活用
「将来的には仏壇を置く予定はあるけれどまだ仏壇がない場合など、空きスペースとなった仏間を収納としても活用できます。この際、中の収納物を隠すために仏間に扉を取りつけるケースもあります。このように、ライフスタイルや使い方を考慮して仏間を設計することをおすすめします」
また、扉をつけない場合は生け花や小物などを仏間に飾って楽しむこともできます。
シンプルなレイアウトが基本
「仏間は仏壇を置く目的でつくられる場所なので、レイアウトやデザインはシンプルにするのが基本です」
和室の装飾性にこだわりたい場合は、仏間の隣に床の間をつくり、アクセントクロスや間接照明を取り入れるとおしゃれで和モダンな空間になります。
お参りのしやすさも考慮する
仏間は仏壇や位牌を安置する部屋ですが、先祖の供養やお参りをする場所でもあります。日常的にお参りがしやすい間取りにするだけでなく、掃除のしやすい仏壇にして、お手入れを欠かさないようにしたいものです。
訪問者がお参りすることも考慮すると、玄関から比較的近い場所に配置するのがよいでしょう。しかし仏間は、ご先祖様と向き合うための神聖な場所です。騒がしすぎる空間は避け、落ち着いて対話できる部屋になるように配慮しましょう。
仏間のある家の間取り図例
これから建てる新築住宅に仏間をつくる計画をしている方のために、仏間のある家の間取り図例を2つ紹介します。どちらも玄関からの動線が短く、随所に工夫がみられるプランです。
土地の形状や、道路の向きによって条件は異なりますが、ぜひ参考にしてみてください。
平屋のモダンな和室に設けた仏間
平屋の和室に仏間を設けた間取りです。リビングに隣接する和室には、床の間と仏間、押入れが並びます。開口部は南東向きで日当たりがよく、部屋全体が明るい雰囲気になっています。
親戚の集まりで重宝。独立した和室の中の仏間
2階建ての住まいの和室に仏間を設けた間取りです。玄関から入ってすぐの場所に和室を設えました。ほかの居室に親戚の集まりなど来客があることを想定し、ほかの居室から独立させているのがポイントです。
仏間を間取りに取り入れた家を実現した先輩の実例を紹介!
ここからは、スーモカウンターを訪れて家を建てた先輩の実例を紹介します。仏間のあるおしゃれな家づくりのヒントにしてください。
大きな仏壇を安置するための広い仏間
夫の実家がある敷地内に注文住宅を建てることにしたDさん夫妻。「おしゃれな平屋に住みたい」と希望し、初回に提案された間取りからセンスのよさを感じた建築会社に依頼しました。実家から大きな仏壇を受け継ぐ予定のあるDさんは、和室に広めの仏間を設けました。窓から美しい山脈の風景を楽しむことができる居心地のよい和室は、夫婦のお気に入りの空間です。
この実例をもっと詳しく→
自慢のインナーガレージ付き!外観にもこだわった、三角屋根が連なる平屋の家
仏間・仏壇に関するよくある質問
仏間や仏壇が身近にある生活をしていたとしても、新しい家に仏壇を用意しようとするときは、疑問や心配ごとが尽きないものです。
最後に、仏間や仏壇に関するよくある質問を編集部がまとめてQ&A形式で紹介します。
仏壇を寝室に置いてもよいですか?
仏壇を寝室に置く方もいらっしゃいます。ご先祖様と静かに向き合うことができる寝室は、とくに和室がない家では適した部屋といえるかもしれません。一日の終わりに手を合わせる時間を確保しやすく、また仏壇のお手入れをするタイミングもつくりやすいでしょう。
寝室に仏壇を置く場合は、ベッドとのレイアウトに注意します。仏壇へ足を向けて寝ることは、ご先祖様に対して失礼になります。くれぐれも、仏壇へ足を向けるような配置にならないように注意してください。
ちなみに、最近では棚やたんすの上などに置けるコンパクトなタイプや、インテリアに馴染むモダンな仏壇もあります。新しい暮らしに合わせて、仏壇を選びましょう。
仏壇の上に物を飾ってもいいですか?
仏壇の上に物を置くことは、ご先祖様の頭の上に物を置くのと同じことを意味し、失礼な行為だと考えられています。生前の写真などであっても、仏壇の上には飾らないようにしましょう。
また2階建ての1階に仏間を設ける場合は、ご先祖様の頭上を歩くことになります。仏壇の上には2階をつくらない、もしくはクローゼットをレイアウトするなどして、仏壇の上を歩かないように配慮しましょう。
仏間の特徴を押さえて家づくりをしよう
最後に、仏間のある家づくりのポイントを前田さんに伺いました。
「仏間を設けるときには、方角や配置など気をつけるべきポイントがいくつかあります。この記事で紹介した内容を参考に、仏間の特性を押さえて家づくりを進めてください。また、時代の流れとともに仏壇の様式も変化し、最近はコンパクトなタイプも増えています。家族の暮らしに合った仏間をつくるために、建築会社に希望を伝えて間取りを決めるとよいのではないでしょうか」
仏間と聞くと格式高いイメージがありますが、時代の流れとともにそのあり方も変化しているようです。新築の注文住宅に仏間を検討している場合は、ライフスタイルや和室の活用方法なども考慮して仏間のレイアウトや間取りを決めましょう。
スーモカウンターに相談してみよう
「仏間のある注文住宅を予算内で建てられる?」、「おしゃれな和室が得意な建築会社はどこ?」など、住まいづくりについて疑問や悩みがある人は、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客様のご希望を伺ったうえで、かなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
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イラスト/石山好宏
監修/SUUMO編集部(お参りのしやすさも考慮する/仏間・仏壇に関するよくある質問)