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一戸建ては住宅メンテナンスが重要? 必要な時期を知っておこう

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「家は一生の買い物」とよく言われますが、実際には購入して終わりではなく、年月の経過に合わせてさまざまなメンテナンスが必要になります。建築時に見落とされがちなメンテナンスの「いつ」「どこに」「いくらかかるのか」。見極めのポイントと住宅メンテナンスの重要性について、建築ジャーナリストの加藤純さんにお話を伺いました。

目次

見落としていませんか? 住宅メンテナンスの重要性

すてきな家を建てて快適な暮らしを始めよう――。でも、家は建てて終わりではありません。長い間、住み続けていきますので、雨風や日々の積み重ねによる経年劣化が発生します。何年、何十年と快適に住み続けていくために、家を建ててからもメンテナンスをしっかり行っていく必要があると言えます。

経年劣化とともにさまざまなメンテナンスが必要

経年劣化とともにさまざまなメンテナンスが必要(イラスト/ワタナベモトム)

マンションと比べて一戸建ての住宅メンテナンス費が見落とされやすいのは、マンションでは主に共用部分に対する購入後の管理費・修繕積立金等があるのに対して、一戸建ての場合、持ち主がメンテナンス費を用立てるほかに費用について考える機会がないことも一つの理由と考えられます。しかし、住宅関連のメンテナンスには思いのほか大きな出費が伴うため、本来はマンションの場合と同様に将来を見越して住宅メンテナンス費を積み立てておくのが望ましいものです。

そのためには、どんなタイミングでどのような支出があるのかを知っておくことが重要でしょう。自然災害など不測の出費を知ることはできませんが、経年劣化で家の外壁や水まわりなどの修理や取り換えがいつごろ必要になりそうか、それを予測して計画的に準備することは可能です。

加藤さんによると、メンテナンスは耐用性を引き上げてくれるものだそうです。

「家の耐用性は、新築時を100とした場合、年々下がり、一定期間に達したところでリフォームが必要になります。建て替えるのでなければ、リフォームで100までには戻せなくても耐用性の回復は十分に可能です」(加藤さん、以下同)

いつ何が必要なの? メンテナンスのタイミング

では、一戸建てはどれくらいの期間を目安にメンテナンスをすれば良いのでしょうか?

これには二つの考え方(指標)があります。それが「耐用性」と「耐久性」です。

加藤さんは用語としては次のような違いがあると言います。

「耐用性は、使っていて使いやすい状態であり続けることで、実際にはまだ利用できるが使いにくくなる、という点がポイントです。言い換えると、今も使えるけれど便利さやコスト、あるいは安全面などで使いにくくなり、利用がされなくなる時期までの期間を『耐用年数』と言います。

一方の耐久性は、機能として使い続けられなくなることです。例えば、家の外壁や内装のクロスが見た目では何も変わっていなくても、本来の機能が発揮できなくなってしまった状態。このようになるまでの期間を『耐久年数』と呼ぶこともあります」

なお、法定耐用年数は法的に定められた減価償却の目安の年数で、木造住宅の場合は22年とされています。一方の耐久年数は、各メーカーなどが独自のテストや判断において使用に問題がないと提示している期間がひとつの目安となります。

そして、この耐用年数や耐久年数はどちらが長い、どちらを目安に、というものではなく、設備や部材など部位によって異なり、使い方によっても劣化の具合は異なっていくものです。ここからは一つの参考として、木造住宅のメンテナンスを建築後「10年での対策」「20~30年での対策」「60年もたせるための対策」の3つのスパンで考えてみましょう。

築後10年での対策は?

経年劣化が気になり始めるのは家を建ててから10年ほどたったころと言われます。とはいえ、大掛かりにメンテナンスを施すまでには至らない状況です。このタイミングで考えたいメンテナンスには次のようなものがあります。

築後10年を目安に考えたいメンテナンスとおおよその金額

・外壁の塗装:約60万~80万円
・シーリングの打ち替え:約5万~20万円
・屋根の塗装:約60万~80万円
・足場代:約25万~40万円
・内装のクロス張り替え:約1万円〜/㎡

※延べ面積145㎡の2階建て住宅/勾配屋根120㎡スレート瓦・鋼板瓦の場合
※金額は住宅産業協議会「住まいと設備のメンテナンススケジュールガイド(住まいのメンテナンス)」を元に作成

築後10年というのは、例えば外壁であれば、取り換えではなく、塗装を再補強することで対応できる時期と言えます。塗装の見直しを10年としてメーカーが保証している場合も多いですし、塗装のグレード次第で塗り替え推奨を10年から15年へと延長していることもあります。

「外壁の多くはサイディングという資材が使われていて、これはパネル化した建材製品で窯業(ようぎょう)系といわれる、セメントに繊維質を混ぜたものや金属製のものがあります。窯業系のものでも雨水を防ぐために塗装を重ねてコーティングすることで耐久性が上がります。

また、塗料の違い(アクリルで5~7年、ウレタンで8~10年、シリコンで12~15年)で耐久性は上がりますが、耐久性の高いものは値段も高くなるのが一般的です。サイディングのパネルとパネルの継ぎ目に施すシーリングにも、10年ぐらいでひび割れが発生することがありますので、同じタイミングではがして打ち直す必要も出てくるでしょう」

屋根の雨漏りも10年を過ぎるころからメンテナンスが必要なタイミングです。屋根はその勾配の状況や瓦の有無、瓦の形状などにより必要な作業や工程が異なるため一概には言えませんが、外壁同様に張り替え(葺き替え)ではなく、塗装での対応が可能な時期です。

「一つ大切なのは、多少の時期が重なるメンテナンスは一緒にやってしまうほうが良いということです。外に足場を組んでの作業が必要な場合、それだけで数十万円のお金がかかりますので、外壁の塗り直しを検討するなら屋根も一緒にメンテナンスを考えるのが良いでしょう」

足場を組む必要があるような外壁や屋根、2階の窓まわりに関わるメンテナンスは、いくつかを同時に行うのがオススメ(画像/PIXTA)

足場を組む必要があるような外壁や屋根、2階の窓まわりに関わるメンテナンスは、いくつかを同時に行うのがオススメ(画像/PIXTA)

内装においても、主流となるクロスは黄ばみや汚れが目立ったり、傷んではがれたりすることが出てくる時期です。DIY感覚で比較的手軽に張り替えることもできますが、長くもたせるうえでは専門の会社に任せると安心です。

クロスの張り替え目安はおよそ10年と言われる(画像/PIXTA)

クロスの張り替え目安はおよそ10年と言われる(画像/PIXTA)

築後20~30年での対策は?

20年、30年とたつと、さすがに木造の家は劣化してきます。先の耐用年数で述べたとおり、減価償却費の計算に使用される木造建物の法定耐用年数は22年なので、一般的にもそれぐらいで建物部分の資産価値がなくなる、と考えて良いでしょう。30年がたつと、張り替えなどのある程度大きな対策が必要になってきます。次に示すのは築後20〜30年を目安に考えたいメンテナンスと参考金額です。

築後20〜30年を目安に考えたいメンテナンスとおおよその金額

・外壁の増し張りや張り替え:約30万~250万円
・屋根の増し張りや張り替え:約140万~180万円
・足場代:約25万~40万円
・内装のクロス張り替え:約1万円〜/㎡
・キッチン本体交換:約100万~300万円
・トイレ便器交換:約20万~40万円
・給排水器具交換:約5万~15万円
・給湯器交換約30万~70万円

※延べ面積145㎡の2階建て住宅/勾配屋根120㎡スレート瓦・鋼板瓦の場合
※金額は住宅産業協議会「住まいと設備のメンテナンススケジュールガイド(住まいのメンテナンス)」を元に作成

外壁では古いサイディングに新しいサイディングを重ねるサイディングの増し張りや張り替え、屋根においても増し張りや張り替え(葺き替え)が必要になってきます。最近の屋根材では古いスレート瓦全体に新しいスレート瓦を乗せる方法(カバー工法)が一般的です。

「昔からある瓦屋根の場合だと瓦自体の耐用年数は50~100年と長いのですが、部分的な割れや瓦を留める漆喰の崩れなどに対する部分的な保守が欠かせません。瓦と下地の両方が傷めば葺き替えが必要です。金属性の屋根なら10年ごとの塗装メンテナンスをすることで50年近くもつのではないでしょうか」

また、水まわりやトイレなどの住宅設備の交換の必要も出てきます。給湯器が故障したり、ひびが入ったり配管に不具合が生じてシンクが漏れるようになったり、風呂場のシャワーの使い勝手が悪くなったりと、耐久性、耐用性に限界に来てしまうこともありえます。

住宅を長くもたせるための対策

近年、家は長期にメンテナンスを続けて継続して住むものだという認識にだんだん変わってきています。現在、ハウスメーカーなどのメンテナンス保証の最長期間がおよそ60年ですから、今の家ではそのぐらい、あるいはそれ以上、長くもたせることを前提としている住宅も増えていることになります。

実際、木造住宅の寿命は、土台などの基礎・構造体(骨組み・軸組み)に使われている木材に腐食等の被害がなければ、80年以上とも言われます。基礎・構造体に腐食や傷みを生じさせないよう定期的に点検をし、10年、20〜30年のスパンで必要なメンテナンスを継続的に行うことで長くもたせることができる可能性が高まります。中でも木造住宅の場合は、シロアリに対する対策が重要です。

木造住宅を長くもたせるには木部の点検、特にシロアリ対策(防腐・防蟻)が重要(画像/PIXTA)

木造住宅を長くもたせるには木部の点検、特にシロアリ対策(防腐・防蟻)が重要(画像/PIXTA)

「高温多湿の日本では、湿気から住まいを守ることが重要です。じめじめしたところには木造住宅の天敵であるシロアリが繁殖しやすいので要注意です。およそ5~10年に1度の防蟻(ぼうぎ)処理をオススメします」

代表的な防蟻処理の方法

土壌処理:シロアリの侵入経路となる地面に薬剤を散布し防蟻層をつくる

ベイト工法:床下の基礎部分や庭などにシロアリが好む駆除剤入りの餌をまき、巣に帰らせてシロアリの繁殖を防止する

木材の処理:木材の表面に薬剤を塗る加工を施す(ただし、基礎から加工しないといけないのでメンテナンスとしては難しい)

シロアリは地面から基礎の木材に侵入してくるので、基礎部分のRC(鉄筋コンクリート)を高くつくってしまうこともシロアリを回避する一つの方法です。ただし、その分非常に割高になりますし、加藤さんからは「構造としては法律上、木造と認められないことも考えられますので十分な検討が必要でしょう」とのアドバイスをもらいました。

長く安心して住むための注文住宅を建てよう

日本では以前と比べて住宅を長期的にメンテナンスしながら長く住むようになってきましたが、そのきっかけになった一つは2006年に制定された住生活基本法にあると言われます。住生活基本法は日本の住宅の方向性および計画を規定したもので、2016年の基本計画で重視されているのは現在の超高齢化社会に対して住まいをどうするのかという視点です。

「中古住宅の流通促進が求められ、家を長期的な資産として売買できるようにするためには、長い間、安心して住み続けられる丈夫な構造やしっかりした建築が必要ですし、安心を保ち続けるためのメンテナンスは欠かせないと言えると思います」

こうして国の法制度としてもさまざまな整備が進められてきました。住宅メンテナンスの重要性に注目が集まることには、こうした背景もあるようです。例えば「住宅品質確保促進法」(以下:品確法)の施行により、住み始めて10年間に生じる雨漏りや主要な骨組みなどから起こる不具合については、工事業者が負担義務(保証)が定められました。また、一戸建てをつくった事業者が倒産した場合などにほかの業者に引き継げるように、住宅瑕疵担保保険に入ることが義務付けられています。一定の基準をクリアした住宅には住宅ローン控除や不動産取得税の控除などの税制上のメリットが得られる「長期優良住宅認定制度」もあります。

スーモカウンターに相談してみよう

このように、人生100年時代を迎え、私たちには以前よりも増して長く安全に暮らせる住まいが必要になっています。また家の資産価値を確保していくためにも、家づくりの前段階から住宅のメンテナンスを見越した計画を立てておくことが重要でしょう。

注文住宅の新築・建て替えをサポートしているスーモカウンターでは、家づくりの不安を解決できる無料講座や、アドバイザーに悩みを何度でも相談できる無料の個別相談などを実施しています。家を建てる前に住宅のメンテナンスについても個別相談で知識と経験のある専任アドバイザーに相談しておくと良いでしょう。そのほかに、土地選びや予算、希望条件の整理、建築会社の紹介などについても相談できます。

自分の建てたい家に必要な住宅メンテナンスの方法や費用などについて知りたいと考えている人は、スーモカウンターを活用して、家づくりの第一歩を踏み出してはみてはいかがでしょうか。

取材協力/加藤純さん

1974年生まれ。建築ジャーナリスト/ライター・エディター。東京理科大学工学部第一部建築科卒業、同工学研究科建築学専攻修士課程修了。月刊『建築知識』編集部を経て現在に至る。著書に『住んでいるのに全然知らない!? 「住まい」の秘密 一戸建て編』(実業之日本社)ほか多数。

取材・文/櫻井とおる(スパルタデザイン)