白、黒、グレーなどの色を基調に構成されるモノトーンのインテリアを住宅に取り入れるにはどのようなコツがいるのでしょうか。インテリアコーディネーターの経験があり、一般社団法人国際カラープロフェッショナル協会の理事を務める、カラーリストのとおみねきよみさんにお話を伺い、雑貨選びや色の組み合わせ方のコツ、空間づくりにおける注意点などを紹介します。
モノトーンインテリアとは?
はじめに、モノトーンインテリアの特徴やよく使われる素材について解説していきます。
特徴
モノトーンという言葉を聞いたことがある人は多いと思います。モノトーンという言葉は、ラテン語の「monos」(単一の)と「tone」(調子)が語源といわれています。
「日本では、モノトーンといえば白・黒・グレーで構成された色合いのイメージが一般的でしょう。しかし正確には『単一色で構成された色合い』のことなので、海外では茶色系のモノトーンカラーなどもあるようです。モノトーンのインテリアは、配色のバランスや小物の構成によってシンプル系、シック系、スタイリッシュ系、ナチュラル系、モダン系など複数のテイストに分類できます」(とおみねさん、以下同)
モノトーンインテリアは韓国をはじめとする海外でも人気です。配色や家具、インテリア雑貨の組み合わせ方によって幅広いテイストの空間を実現できることが人気の理由のようです。
よく使われる素材
「モノトーンのインテリアでよく使われる素材は、金属やガラス、大理石などです。これらの素材は、空間をよりスタイリッシュに演出してくれます。先述したモノトーンのテイストによって素材の適切な組み合わせ方は異なります。モノトーンの配色で構成された空間の中に、木材や布小物などをアクセントカラーとして使うこともできます」
モノトーンの差し色として彩度の高い赤や黄、緑色などを小さい面積で取り入れる手法も人気です。ビビットな差し色を入れることで、モダンで個性的な印象が強まります。
モノトーンで演出できるインテリアのテイスト一覧
シンプル系
「まとまりがあり、無機質なイメージが強いシンプル系。有彩色を多用せず、色の明るさの差をできるだけ抑えた空間づくりが特徴です。空間に個性を演出するなら、デザイン性の高い家具を取り入れるとよいでしょう。グレーを使う場合、青みのグレーはより無機質でクールに、赤みのグレーは空間に温かみをプラスできます」
シック系
「おしゃれで落ち着いた印象のシック系。白や黒に加え、赤みのグレーや濃紺に近い黒を使用すると上質な空間が出来上がります。このとき、空間全体の色みのイメージを揃えて壁紙や床、インテリアを選ぶのがポイントです」
スタイリッシュ系
「無駄がなく研ぎ澄まされたイメージのスタイリッシュ系。明るいグレーを基調にして、全体的に無彩色の濃淡で空間をつくるのが特徴です。温かみや柔らかさをプラスしたい場合は赤みのグレーや丸みのある家具を取り入れましょう。シャープさをプラスしたい場合は青みのグレーや直線的なデザインの家具を取り入れると引き締まった空間になります」
ナチュラル系
「素材感を活かしたナチュラル系。モノトーンの配色に、暗めの色の木材や観葉植物をアクセントに使います。クッションカバーなど小物やファブリックに紫やピンクといった淡いアクセントカラーを使用することで柔らかい印象になります」
木や布の素材感に、淡い色のアクセントをプラスすると北欧風の空間にもなります。
モダン系
「モダン系は現代風のおしゃれなイメージ。モノトーンを基調とし、ポスターやオブジェなどに赤や青などビビットカラーを取り入れるとギャラリー風の空間になります。このとき、ビビットカラーは取り入れる面積を抑え、色々な場所に多用しないのがポイントです」
モノトーンインテリアのメリット・デメリット
メリット
「モノトーンインテリアを取り入れることで空間がスタイリッシュでおしゃれになるというメリットがあります。白、黒、グレーという無彩色はまとまりがよく、空間が引き締まった印象になります。また、どんな有彩色のアクセントカラーとも組み合わせやすいのが強みです。生活感をあまり出したくないという人にもモノトーンインテリアは人気です」
デメリット
「色の比率を誤ると、空間が重たく狭い印象になってしまうので注意が必要です。色彩心理の分野では、黒は重さや暗さを感じさせる色と考えられています。また、白は人を緊張させやすい色です。こういった色の特性を踏まえた上で使用する色の面積比率を考え、居心地のいい空間をつくることが大切です」
モノトーンインテリアを取り入れる場所は?
リビング
リビングは家族がいちばん長く過ごす場所のため、モノトーンのインテリアを取り入れる場合は暗い印象にならないように注意したいものです。
「黒が多くなりすぎないように注意しましょう。例えば、壁一面をまるごと黒にするなど、大きな面積の部分に黒を使用するとリビング全体が重々しく圧迫感のある雰囲気になってしまいます。大きな面積の部分では白系やグレー系の色を基調とし、窓枠や小物などアクセント程度に黒を取り入れるのがおすすめです」
キッチン
キッチンはデザイン性だけでなく機能性や手入れのしやすさも考慮したほうがよい場所です。
「一般的に、黒を基調にすると汚れが目立ちやすくなります。キッチンは水や油による汚れが付きやすいので、汚れが目立ちにくく清潔感がある白系を基調にするのがおすすめです。リビングやダイニングとつながりのあるキッチンの場合は、インテリアのテイストを揃えることもポイントです」
寝室
寝室は1日の疲れを癒やす場所。モノトーンのインテリアを取り入れることで、ホテルライクでおしゃれな空間になります。
「リビングと同様、心地よく過ごせる空間にするためには黒を大きく使いすぎないことが大切です。照明器具やベッドフレームなど面積の小さい部分に黒を取り入れ、布団やカーテンなどのファブリック類は白やグレーにするとよいでしょう。淡いパープルやグレージュなど柔らかい色をアクセントカラーに使用するのもおすすめです」
トイレ
モノトーンインテリアでトイレをおしゃれな空間に仕上げることもできます。
「一般的にはトイレはそれほど広くない空間です。そのため全面に黒を使用すると威圧感が出るので、ペーパーホルダーや壁に飾るオブジェなどに黒を取り入れ、壁紙や床は白やグレーをベースに構成したほうがよいでしょう。飲食店などでは黒をベースにした非日常感のあるトイレも多いのですが、住まいのトイレは日常的に使う場所なので、なるべくリラックスできる空間にしたいですね」
玄関ホール
玄関ホールは来客が最初に入る場所であり、家の印象の決め手にもなります。重厚感を演出しつつ、重すぎる雰囲気は避けるようにしましょう。
「玄関ホールにモノトーンを取り入れる場合も色のバランスに気をつけることがポイントです。土間部分に黒の大理石を使用すると高級感を演出できます。花瓶やアート作品でアクセントカラーを取り入れると、空間に個性が生まれます」
書斎や趣味部屋
書斎や趣味部屋は、家族共用の部屋に比べると好きなデザインを取り入れやすい空間です。黒をベースにした非日常感あふれるモノトーン空間にしてみたり、ビビットなインテリアをアクセントカラーにしてみたり、大胆な空間づくりを楽しめます。
モノトーンインテリアを部屋に取り入れる際のポイント
70:25:5の配色比率にする
「美しい配色の面積比率は、『ベースカラー70%:アソートカラー(※)25%:アクセントカラー5%』の割合がよいとされています。住まいにモノトーンインテリアを取り入れる際も、この比率を参考にするとバランスがよくおしゃれな空間になります」
※ベースカラーを引き立てる色のこと。メインカラーとも呼ばれる。
黒は高い位置に使わない
「黒は圧迫感を与える色なので、高い位置にはできるだけ使わないほうがよいでしょう。例えば、天井材を黒い色にすると圧迫感が生まれ重々しい雰囲気になってしまいます。黒を使う際はなるべく低い位置に取り入れ、安定感を出すことがポイントです」
白は少し色みのあるオフホワイトやアイボリーを
「白はベースカラーにしやすい色ですが、真っ白なピュアホワイトは無機質で緊張感を与える色といわれています。そのため、ピュアホワイトを広い面積に使うことは避け、オフホワイトやアイボリーなど少し色みのある白を選ぶと居心地のよい空間になります」
調整役のグレーを上手に活用する
「モノトーンカラーの中で、グレーは調整役です。白と黒の中間にあり、組み合わせやすい色ともいえます。白と同様にグレーにもさまざまな種類があります。華やかな雰囲気になるシルバー(メタリックグレー)、温かみのあるウォームグレー、クールなブルーグレーなど、演出したいイメージに合ったグレーを選ぶとよいでしょう」
収納は扉付きにする
「モノトーンインテリアの空間では、収納物が見える本棚やラックは使わないほうがよいでしょう。本の表紙や生活雑貨にはさまざまな色が使われているため、せっかくおしゃれなモノトーンの空間にしても落ち着かない雰囲気になってしまう恐れがあります。収納を設ける場合は扉付きのタイプをおすすめします」
空間のテイストを合わせた家具選び
「家具や小物のデザインや素材感によっても空間の印象は変わります。スタイリッシュな空間にしたい場合は革張りの黒いソファや金属製の脚が付いたローテーブルなどを設けるとよいでしょう。ナチュラルで温かい空間にしたい場合は、グレーの布製のソファや色みのあるファブリック類が適しています。ラグを設置する場合、毛足が長いものは柔らかな雰囲気、毛足の短いものはモダンな雰囲気になるので空間全体のテイストに合わせて選ぶようにしましょう」
観葉植物をアクセントにする
「モノトーンインテリアの空間において、観葉植物はアクセントになります。植物の形や鉢のデザインを吟味し、空間のテイストに合った観葉植物を用意しましょう」
モノトーン調を避けたほうがよい部屋もある
「かっこよくおしゃれな印象になるモノトーンインテリアですが、子ども部屋にはあまり向いていません。特に幼少期はたくさんの色を見ながら成長するのがよいといわれています。家の中で子どもが長く過ごす場所においては、モノトーンインテリアの取り入れ方に注意しましょう」
おしゃれなモノトーンインテリアを実現した先輩たちの事例を紹介!
ここからは、おしゃれなモノトーンインテリアの家を建てた先輩たちの実例を紹介します。ぜひ家づくりの参考にしてください。
【Case1】意匠性の高いタイルや壁紙でモノトーンの空間に個性をプラス
消費税増税前のタイミングで家を建てることにしたHさん一家。白を基調としたモノトーンの家を希望し、建築会社の設計担当者やインテリアコーディネーターにもアイデアをもらいながら家づくりを進めました。白と黒の基本配色の中にヴィンテージ加工したフローリングに個性的な壁紙やタイルを取り入れたのもポイント。理想通りのかっこいい住まいが完成しました。
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【Case2】外観・内観をモノトーンにまとめたスタイリッシュな住まい
結婚生活が落ち着いたタイミングで家づくりを始めたTさん夫妻。外観や内観のデザインにこだわり、スタイリッシュなモノトーンカラーでまとめました。床のフローリングは明るい色を選び、爽やかな空間に仕上げています。LDKにはスケルトン階段を取り入れ、モダンですっきりとした印象の住まいが出来上がりました。
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【Case3】シックなモノトーンカラーでまとめた明るいLDK
子どもが誕生し、3人暮らしには手狭になったアパートを引っ越すことに決めたFさん。道路から奥まった旗竿地を購入し、採光計画を工夫した一軒家を建てました。玄関ホールやLDKはシックなモノトーンカラーでまとめ、おしゃれな雰囲気に。ダイニングのペンダントライトも夫婦が気に入ったデザインのものを選びました。上階の光を通すリビングイン階段も採用し、明るく開放感のある家になりました。
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モノトーンインテリアを使っておしゃれな家にするコツ
最後に、モノトーンインテリアを使っておしゃれな家にするコツについて、とおみねさんに伺いました。
「モノトーンインテリアでおしゃれな空間をつくるためには、色の面積のバランスに注意することや空間のテーマに合った家具や小物、雑貨選びがポイントです。スタイリッシュ系、ナチュラル系など、どんなイメージの空間にしたいのかをまず考えた上でレイアウトを決めていきましょう。色の組み合わせ方やインテリアによってさまざまなテイストを実現できるのがモノトーンの面白さです」
建築会社にインテリアコーディネーターやカラーコーディネーターなどが在籍している場合は、プロの意見を参考に空間づくりをすることも可能です。イメージに合ったおしゃれなモノトーン空間をつくりましょう。
スーモカウンターに相談してみよう
「モノトーンのおしゃれな家を建てるには何から始めたらいい?」「デザインにこだわって家づくりをしたいけど、どの会社に依頼したらいいの?」など、住まいづくりについて疑問や悩みがある人は、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご希望を伺ったうえで、かなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりの段取りや会社選びのポイントなどを学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合わせください。
取材協力/とおみね きよみさん
一般社団法人国際カラープロフェッショナル協会理事
カラーリスト
取材・文/佐藤 愛美(りんかく) イラスト/おおの麻里