二世帯住宅は親世帯と子世帯という組み合わせがほとんどですが、三世帯住宅の場合、さまざまな世帯の組み合わせが考えられます。世帯の組み合わせが多様になれば、それだけニーズも異なるため、間取りの工夫は欠かせません。
そこで今回は、実際の施工事例を交えながら、三世帯住宅のメリット・デメリットや間取りのポイントを詳しく解説します。また、「誰と一緒に暮らすのか」を基準に考えた三世帯住宅プランニングのポイントについて、佐川旭建築研究所代表で一級建築士の佐川旭さんに伺いました。
三世帯住宅とは? 二世帯住宅との違いはどこ?
二世帯住宅は、住宅情報雑誌で特集が組まれたり、ハウスメーカーのプラン例で紹介されたりして、比較的なじみがありますが、三世帯住宅となるとあまりなじみがない方も多いでしょう。
三世帯住宅とは、文字通り三世帯が一緒に暮らす住宅のこと。二世帯住宅のほとんどが、親世帯+子世帯の組み合わせであるのに対し、三世帯住宅にはいろいろな世帯の組み合わせがあることが、二世帯住宅との大きな違いです。
「この三世帯の組み合わせによって、三世帯住宅に対して求めること、プランニングの際に気をつけるべきポイントが変わってきます。ただし、どのような組み合わせでも、親世帯+子世帯の二世帯に、もう一世帯加わることで、血のつながりのない人とも一緒に暮らすことになるため、プライバシーに対する配慮は特に重要です。二世帯住宅の場合、同居タイプや玄関と水まわりを共用するタイプなども考えられますが、特にプライバシーへの配慮が必要な三世帯住宅の場合は、玄関や水まわりなどを世帯ごとに設ける完全分離タイプを基本に検討することになります。そこからスタートし、予算などの制約に応じて、玄関や玄関ホールといった滞在時間の短い場所の共用を検討するのが一般的でしょう」(佐川さん、以下同)
ちなみに「三世代」というと、祖父母、親、子の三世代という意味ですが、三世代で住む家が必ずしも三世帯住宅になるわけではありません。二世帯住宅に、小さな子どもとその両親、祖父母が暮らすケースも多々あります。
よくある三世帯住宅のパターン
それでは、三世帯の組み合わせには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、多様な三世帯の組み合わせの中から、いくつかの組み合わせをピックアップして、プランニングのポイントをご紹介します。
祖父母世帯+親世帯+子世帯の三世帯
親世帯、子世帯の二世帯に、祖父母世帯が加わった三世帯です。子どもが独立して一つの世帯を築く年齢が最低でも20代であることを考えると、祖父母世帯の年齢は70歳以上。ですが、長寿化が進む現代ならば十分あり得る組み合わせです。
「この組み合わせでの三世帯住宅の場合、祖父母世帯が高齢であることから、近い将来、三世帯住宅に暮らす人の構成が変化することを想定しておく必要があります」
また、祖父母の介護をきっかけに三世帯住宅に建て直すというケースもあるでしょう。その場合は、バリアフリーの視点も重要になってきます。
「3階建ての1フロアにつき一世帯が入るような三世帯住宅の場合、高齢の祖父母世帯が1階に居住することが多いでしょうが、日当たりなどを考慮して、上のフロアに居住する場合は、ホームエレベーターの設置も考えたいですね。ホームエレベーターは、スペース的には1坪程度、予算的には150万円程度で設置することができます」
親世帯+子世帯(兄/姉夫婦)+子世帯(弟/妹夫婦)の三世帯
子が二人以上いれば、兄弟(姉妹)それぞれの世帯+親世帯という構成も考えられます。
「兄弟・姉妹のパートナー同士は全くの他人です。そのため、特にプライバシーに配慮したプランニングが求められます。分離タイプにするのはもちろん、水まわりの音などが他の世帯に響きにくい間取りにしたり、上階の足音が下階に響くのを抑えるために、上階の床面と下階の天井面の両方に遮音性・防振性の高い建材や施工を採用したりする必要があります」
夫の親世帯+妻の親世帯+子世帯の三世帯
夫の親世帯と妻の親世帯が一つの三世帯住宅に住むというかたちは、少子化で一人っ子同士の夫婦が増えれば、今後増えてくるかもしれません。また、夫の親世帯と子世帯の二世帯住宅に、後から妻の親が同居するというようなケースも考えられます。
「この組み合わせも、夫の親と妻の親は全くの他人ですので、プライバシーへの配慮は大事です。一方で、親世帯同士が一緒に暮らすことを前向きに捉えて、積極的にコミュニケーションが図れるような三世帯住宅というものも検討したいですね」
親世帯+子世帯+おじ・おば世帯の三世帯
親世帯と子世帯に加えて、おじ・おば世帯が同居する形の三世帯もあります。家族の絆を深めながら、介護や子育てのサポートを充実させられる暮らし方です。親世帯の介護が必要になった場合でも、子世帯とおじ・おば世帯で分担すれば、負担を軽減できるでしょう。
各世帯のプライバシーを確保しながら、必要に応じて支え合える関係性を築くことが重要です。例えば、それぞれの世帯に独立した玄関やキッチン、浴室などの水回りを設けて日常生活の自立性を保ちつつ、親世帯に三世帯が集まれるスペースを設けるのもオススメです。
三世帯住宅のメリット
三世帯住宅には、さまざまなメリットがあります。
育児の分担が可能
育児のサポートという意味では、二世帯住宅に比べて育児にかかわる人が増える分、手厚いサポートが期待できます。例えば、親世帯+兄(姉)世帯+弟(妹)世帯の場合、兄の子どもの面倒を弟夫婦がみることも、その逆も可能です。また、兄弟・姉妹の子ども同士の年が近ければ、一緒に遊ばせることもできます。
介護のしやすさ
その他のメリットとしては、介護をサポートしやすい点が挙げられます。
祖父母世帯+親世帯+子世帯の組み合わせの場合、子世帯も介護をサポートすることで、老々介護を避けることができ、一人ひとりの負担が軽くなります。また、夫の親世帯+妻の親世帯+子世帯の組み合わせの場合、夫の親と妻の親の関係が良好であれば、交流によって心のケアが図れるかも知れません。
建築費用が抑えられる
三世帯住宅には、コスト面のメリットがあります。戸建てを3軒建てるのに比べ、基礎や外壁を共有した三世帯住宅を1軒建てる方が、コストは低く抑えられます。これは、三世帯がどのような組み合わせでも共通のメリットです。
三世帯住宅は、大きく分けると以下のように分類されます。
【三世帯住宅の分類】
● 完全分離型:生活スペースが完全に分離されている
● 部分共有型:生活スぺースの一部を共有する
● 完全同居型:生活空間のすべてを共有する
この場合、コストが最も抑えられるのは完全同居型です。お風呂やキッチンなどを共有するため、水道光熱費などは三世帯で費用分担をすることができます。
相続税を抑えることが可能
二世帯住宅や三世帯住宅などの多世帯住宅に、親子や祖父母などの親族で住む場合は、「小規模宅地の特例」が適用されて、相続税が大幅に減額される可能性があります。ただし、このような優遇措置を受けるためには、登記の方法など、複雑なルールがありますので、建築地の自治体や建築会社の担当者などに、早めに相談するとよいでしょう。
家族のコミュニケーションが取りやすくなる
各世帯が別々に生活するよりも、三世帯が同じ屋根の下で生活をしたほうがコミュニケーションは取りやすくなります。たとえ、生活スタイルや時間帯を完全に分けたとしても、イベントを一緒に楽しんだり、共有することもできます。
また、同じ屋根の下で生活しているという安心感も、メリットの一つといえるでしょう。
三世帯住宅のデメリット
一方で三世帯住宅には、いくつかデメリットもあります。
空き世帯が出る場合がある
どの組み合わせの三世帯住宅も、ずっとその三世帯が住み続けられるとは限りません。高齢の祖父母世帯との組み合わせはもちろん、兄弟・姉妹との三世帯や、夫の親世帯+妻の親世帯との三世帯の場合でも、何らかの理由で、一世帯分が空いてしまうリスクは、二世帯住宅以上に高いでしょう。
売却しにくい間取りになりやすい
「三世帯住宅は、売却しにくいというデメリットもあります。そのため、空いた部屋をそのままにして住み続けるか、賃貸にするかのどちらかが現実的な選択肢となります。将来賃貸にするためには、完全分離タイプにした上で、電気やガス、水道なども世帯ごとに請求されるように、あらかじめ分けておく必要があります」
お互いの世帯へのプライバシーへの配慮が必要
三世帯住宅では、プライバシーの確保が難しい場合があります。特に一部共有型や完全共有型の三世帯住宅では、なかなかプライバシーが確保できません。
二世帯住宅に比べると、さらに家族が増えることになるため、家に誰かがいることも多くなります。家に帰って、ゆっくりしたいと思っても、完全分離型ではない限り、一人の時間は少なくなります。
対策としては、寝室やリビング以外に、一人になれるスペースをつくっておくことです。個室を用意するだけでも、一人で過ごせる時間が格段に変わります。
また、生活する上で使用する頻度が高い以下のような場所を各世帯ごとに分離することでストレスを減らせるでしょう。
【使用頻度が高く、分離したほうがいいスペース】
● トイレ
● 洗面所
● キッチン
完全分離の三世帯住宅はどう分ける?
三世帯住宅を建てる場合は、多くの場合、完全分離型です。玄関、キッチン、お風呂などの水回りを世帯ごとに設置し、プライバシーを保ちます。完全分離の三世帯住宅の分け方には、左右分離、上下分離、平屋の3つのパターンがあります。
左右分離
三世帯住宅の左右分離型は、各世帯が横に並んで住む設計で、プライバシーを確保しながら適度な距離感で暮らせます。上下階の生活音の影響もないため、快適に過ごしやすい形といえるでしょう。
また、庭を共有スペースとして、子どもが自由に行き来したり、家族同士の交流の場としても活用できます。そして、将来的に賃貸物件として活用しやすい点も魅力です。
一方で、敷地が狭い場合は間取りがコンパクトになりがちで、部屋があまり広くできない場合もあります。また、お互いの生活が見えにくくなるため、意識的にコミュニケーションを取らないと、距離が生まれやすいというデメリットもあります。
庭を広めに確保する、親世帯の1階部分に家族が行き来できる扉を設けるなどを工夫するのも方法の1つです。
上下分離
上下分離型の三世帯住宅は、1階と2階で世帯を分ける設計です。縦割りの左右分離型に比べて、敷地面積が限られていても、リビングなどの居住スペースを広めに確保できるでしょう。
一方で、上の階の水回りの音や子どもが走り回る音が、下の世帯に響く可能性があります。特に、生活リズムに大きな違いがある場合は、夜間や早朝の生活音がストレスになることもあるため、注意が必要です。
生活音の問題は、水回りの位置を1階と2階で同じ場所に配置して排水音を軽減する、防音対策を強化するなどの工夫が有効です。
平屋
敷地面積が十分に確保できる場合は、平屋の三世帯住宅という選択肢もあります。全ての居住空間がワンフロアにまとまっているため、バリアフリー設計がしやすく、高齢のご家族や小さな子どもがいる家庭でも安心して暮らせるのがメリットです。
階段がないことは、将来的な介護のしやすさにもつながります。また、L字型、コの字型、Hの字型などの間取りを採用すれば、各世帯のプライバシーを確保しつつ、適度な距離感で生活できるでしょう。
中庭を設けたり、窓の配置を工夫することで、自然光や風通しを確保しながらプライバシーにも配慮できます。
ただし、広い敷地が必要になるため、都市部では難しいケースもあります。郊外や地方なら広い土地が確保しやすいため、開放的な空間で三世帯が快適に暮らせる住まいをつくれるでしょう。
三世帯住宅の間取りの考え方
三世帯住宅は完全分離タイプを基本に検討を進めていくことになりますが、3階建ての1フロアに一世帯ずつ入るような場合、マンションやアパートなどの共同住宅と変わらなくなってしまう可能性があります。
「三世帯住宅を建てる理由は、コスト面も大きいでしょうが、そこに暮らす人同士がサポートし合えるというメリットにも注目したいですね。せっかく三世帯が集まるのなら、楽しく暮らせる住まいになるのが理想です」
そんな三世帯住宅を実現するために重要なカギを握るのが、共用空間です。
共用スペースの配置
「分離タイプでありながら、三世帯がコミュニケーションを取れるような共用空間をどう取り入れるかが大事です。例えば、庭、中庭、デッキ、インナーテラス、屋上、地下室など。これらは、各世帯の部屋とゆるやかにつながりながら、どの世帯の専有というわけではないため、プライバシーを確保しながらコミュニケーションを図れる絶好の場所になります。週末に地下室で映画や音楽の鑑賞会を開いたり、一緒にガーデニングをしたり、家族に共通の趣味があれば、そのような共用空間の活用がさらに広がり、楽しく暮らせる住まいが実現できそうです」
例えば、宮城県仙台市で三世帯住宅に住んでいるKさん。
この実例をもっと詳しく
三世帯が心地よい距離感で好きなことを楽しむ3階建て住宅
同じマンションに住むような感覚で、玄関・階段などの共用スペースは残しつつ、水まわりやキッチンなどの生活スペースは、各世帯ごとに設置されています。さらに、電気メーターもフロアごとに分類されており、電気代は世帯ごとに負担しています。
しかし、各世帯のコミュニケーションがないわけではなく、あくまでも生活が分離しているだけで、季節ごとのイベントを三世帯で楽しむなど、それぞれの家族が良好な関係を保ちながら生活しているそう。
お互いの生活に干渉せず、なおかつコミュニケーションを取れるような住宅づくりが、三世帯住宅では重要です。
具体的にどのように共用空間を配置するのが良いのでしょうか。
■共用空間の配置例
コミュニケーションを促す共用空間は、三世帯どこからでもアクセスしやすいことが成功の秘訣です。例えば、3階建ての屋上を共用空間として活用するのであれば、三世帯どこからでも他の世帯を経由せずに行くことができる動線にすること。気兼ねなく利用できることがポイントになります。
防音対策をする
三世帯住宅では、生活音によるストレスを防ぐために、防音対策を考慮することが重要です。賃貸住宅やマンションと同様に、三世帯住宅でも足音や話し声、水の流れる音などの生活音が問題になることがあるでしょう。
例えば、「帰宅が遅い世帯の夜中のシャワーや足音」「朝早く起きる祖父母の掃除や洗濯の音」「子どもが走り回る音」など、日常的な音の積み重ねがストレスになることもあります。
音のトラブルを避けるためには、水回りの位置を上下階でそろえる、寝室の上にリビングや子ども部屋を配置しない、などの間取りの工夫が有効です。また、納戸やクローゼットなど、収納スペースを間に配置することで、生活音が伝わりにくくすることもできます。
天井材や床材、壁材などは、遮音性の高い建材を採用するのもよいでしょう。コストを抑えるために防音対策を後回しにしがちですが、長く快適に暮らすためには、初めから防音を意識して設計することが大切です。
バリアフリー設備を備えておく
三世帯住宅では祖父母と一緒に暮らすことを考え、バリアフリー設備を取り入れましょう。具体的には、廊下や階段、浴室に手すりを設置し、高齢の方が安全に移動できるようにします。
また、玄関には段差を解消するスロープやステップを設けておくと、つまずいたり転倒するリスクを抑えられます。玄関や廊下、トイレの幅を広めに設計しておけば、車いすが必要になった場合にも、スムーズに出入りできます。
三世帯住宅では、異なる世代が住むケースが多いため、設計の段階から、住む人全てが使いやすい環境を整え、将来的な介護や生活の変化にも対応できる住まいを目指しましょう。
三世帯住宅を建てるときの注意点
三世帯住宅の計画では、各世帯の生活スタイルや価値観を尊重しながら、共同生活でのさまざまなルールを事前に決めておくことをオススメします。住宅のタイプ選びから、費用の分担方法、共有スペースの使い方まで、家族で十分に話し合いながら決めてください。
生活スタイルに合った住宅のタイプを選ぶ
三世帯住宅を建てるときには、完全分離型や部分共有型など、各世帯の生活スタイルに合った住宅のタイプを選びましょう。三世帯全て完全分離型、親世帯と兄/姉夫婦は部分共有型で弟/妹夫婦とは分離型など、つくり方は複数あります。
建築費用の面では完全共有型にメリットがありますが、プライベートな時間を大切にしたい場合には向いていません。逆に、完全分離型なら各世帯の独立性が高まり、生活リズムの違いによるストレスを軽減できます。
しかし、予算や敷地面積の制約で実現が難しいケースもあるため、プライバシーを確保しつつ、コストも抑えられる「部分共有型」を選択するのも方法の1つです。
三世帯住宅は長く住む家だからこそ、安易に妥協せず、家族全員のライフスタイルに合った住宅タイプを慎重に選んでください。
光熱費や生活費の分担を決めておく
三世帯住宅では、費用面にも配慮しなければなりません。負担比率は、家庭によってさまざまです。そのため、住んだ後のトラブルを防止する意味でも、負担比率は世帯間で事前に決めておくとよいでしょう。
完全分離型の世帯では、電気メーターをそれぞれ設置して、水道光熱費まで別にすることもあるようです。また、ローン支払いについても、分担しておく必要があります。
先述の三世帯住宅を建てたKさんは家づくりの予算の目安を、それぞれの家族が支払う住宅ローンを毎月5万円以内に抑えることと設定し、家づくりをしたそうです。
共有部分のエリアを決めておく
三世帯住宅を建てる際には、どのエリアを共有し、どこから分けるのかを事前に決めておきましょう。共有部分の決定が曖昧なままだと、生活スタイルの違いによる問題が生じやすくなります。
完全分離型でも、通路や玄関などの一部を共有するケースがあるため、動線を踏まえてプランを立てる必要があります。共有スペースを決めるときには、プライバシーの確保や生活リズムの違いを考慮することが大切です。
三世帯の家族全員の意見をすり合わせ、自分たちに合ったバランスを見つけましょう。
親世帯がいなくなったときのことも想定しておく
三世帯住宅を建てるときには、将来的に親世帯がいなくなった場合の活用方法も考えておくことが重要です。親世帯のスペースが空いたときに、空間をどのように利用するかを事前に想定しておいてください。
例えば、親世帯の居住スペースを夫妻で活用する、子どもが結婚したときに住んでもらうなど、家族のライフステージに合わせた使い方を考えておくと安心です。
また、完全分離型の設計にしておけば、将来的に賃貸として貸し出しやすくなります。万が一、住み替えが必要になった場合に備えて、売却しやすい設計を取り入れるのも選択肢の1つです。
三世帯住宅は長期間住むことを前提にするため、将来の変化にも対応できる柔軟な間取りや活用方法を検討しましょう。
三世帯住宅の新築で活用できる補助金
三世帯住宅は建築費用も大きくなりますが、補助金や減税制度を活用すれば、経済的な負担を軽減できます。各自治体では、三世代同居や近居を支援する独自の補助金制度を設けている場合があるため、ぜひ確認してみましょう。
例えば、千葉県市原市の「いちはら三世代ファミリー定住応援事業」(市原市ホームページ)では、三世代同居のための住宅取得に最大110万円の補助金を交付しています。市内に住んでいる世帯が対象となり、子育て世帯の子どもの年齢や所得額の制限などの要件が定められています。
また、愛知県東海市では、三世代住宅を新築・購入するときに、最大80万円の補助金を受け取れる「三世代同居等住宅補助制度」(東海市ホームページ)があります。対象となるには、親世帯か子世帯のどちらかが市内に居住していることや、自治会への加入意思など、いくつかの条件を満たす必要があります。
このような自治体独自の支援に加えて、住宅ローン減税や省エネ住宅への補助金など、国の制度も併用できる可能性があるため、計画段階で自治体の窓口に問い合わせるのも方法の1つです。
補助金の申請は、工事着工前の事前相談や手続きが必要となることが多いため、余裕を持って準備してください。
三世帯住宅の施工事例
三世帯の施工事例として、「お風呂・キッチン・お手洗い」を例に紹介させていただきます。
お風呂
三世帯住宅におけるお風呂は、共有スペースとして活用するか、世帯別で用意するかの2パターンがあります。
世帯別で用意する場合は、各フロアに浴室を設置することになります。
生活を完全に分離できるという意味では、プライバシーを確保できるメリットがありますが、浴室やバスタブ設置、水道管工事などの設備費用が高くなるデメリットもあります。
キッチン
三世帯住宅でのキッチンも、お風呂同様に共有スペースとして活用するパターンと、世帯別で用意するパターンがあります。
共有スペースとして利用する場合は、料理と食事を各世帯で楽しむことも多いようです。
完全に分離する際は、世帯別でキッチンを設置する必要があります。
世帯別で用意する場合、世帯別でキッチンのデザインを決められるというメリットがあります。
アイランド型や壁付型などタイプを決めてもよいですし、希望のキッチンのデザインを反映しましょう。
その際は、間取りも自由に決められることから、各世帯を分けた故のメリットといえるでしょう。
一方、設備をその分用意しなければならないので、建築コストがかかるデメリットはあります。
お手洗い
お手洗いは、完全共有型の場合は共有するパターンも多いですが、一緒に暮らす家族が多い分、複数設置されていることが多いです。
ただ、多くの場合各世帯に用意されています。
その際は、各階同じ位置に設置することで、余分に給・排水管を設置することなく、費用を抑えられます。
先輩たちの三世帯住宅から学ぶ! 実例をご紹介
9人がひとつ屋根の下に暮らしながら、それぞれの趣味や好きなことを楽しむ三世帯住宅
親世帯+長男世帯+次女世帯の合計9人が暮らす三世帯住宅を実現したKさん。Kさん宅の三世帯同居は、それぞれの生活スタイルや時間を重視。玄関や階段などの一部のスペースは共用にし、居室や水まわりなど各フロアのほとんどを一世帯で使用する一部共有型の間取りにしました。共有するのは庭と玄関と外物置きのみですが、夏はバーベキュー、冬はイルミネーションの飾り付けをみんなで楽しんでいます。また、将来的に賃貸に出すことも想定して、電気料金がフロアごとの請求になるよう、電気メーターも分けました。住み慣れた場所で息子と娘家族といつでも会える安心の暮らしに、Kさん夫妻は大満足です。
この実例をもっと詳しく→
三世帯が心地よい距離感で好きなことを楽しむ3階建て住宅
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三世帯住宅は、家族が支え合いながら暮らせる魅力的な住まいですが、間取りや生活ルールを工夫しないと、プライバシーや価値観の違いによるストレスが生じることもあります。本記事では、三世帯住宅の施工実事例をもとに、メリット・デメリットを整理し、快適な間取りのポイントを紹介しました。
家族のつながりを大切にしながら、ストレスなく暮らせる三世帯住宅を実現するためには、世帯ごとの生活スタイルを考慮したプランニングが欠かせません。実際の施工事例を参考に、自分たちに合った間取りや暮らし方を具体的にイメージしてみましょう。
スーモカウンターでは、3つの世帯それぞれがどのような暮らしを送りたいか、どの程度プライバシーを守り、どの程度交流したいかなどを聞いた上で、理想の三世帯住宅を実現してくれそうな依頼先を紹介しています。
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取材・執筆/福富大介(りんかく)、SUUMO編集部
イラスト/松元まり子
監修/SUUMO編集部 (建設費用が抑えられる、家族のコミュニケーションが取りやすくなる、お互いの世帯へのプライバシーへの配慮が必要、費用面への配慮、三世帯住宅の施工事例)
佐川旭建築研究所代表。一級建築士、インテリアプランナー。間取り博士とよばれるベテラン建築家で、住宅だけでなく、国内外問わず公共建築や街づくりまで手がける