せっかく家を建てるなら、寒い冬も裸足で過ごせる床暖房を導入したいと考える人も少なくないでしょう。ただ、本当に暖かいのか・費用はどのくらいかかるのか、気になりますよね。今回は床暖房の仕組みや費用について、大建工業に教えてもらいました。
床暖房とは?
床暖房は床から直接伝わる熱(伝道熱)と床から広がる熱(輻射熱)の組み合わせで部屋を暖めます。つまり、足元が暖かいのはもちろん、部屋全体を暖める暖房システムです。
床を加熱し、部屋全体を暖める設備
「熱の伝わり方としては“伝導”、“輻射”、“対流”の3種類がありますが、エアコンの場合は空気を暖め、“対流”を利用して室内を暖めます。暖かい空気は上昇するという性質があるため、室内の上部だけが暖まりやすくなり、また、空気が対流しているため、部屋のホコリなどを巻き上げてしまうということもあります。
一方、床暖房は“伝導”と“輻射”を利用した暖房です。暖房面に直接触れる“伝導”によって、足元は暖かく、室内上部は暖かくなり過ぎることもありません。また、足元が暖められることで、体内の血液が暖まり、その血液が循環することで、比較的低い室内温度でも、暖かさを感じることができます」(大建工業、以下同)
部屋の気密性や断熱性が十分で、部屋の床面積に占めるヒーター面積の割合(敷き込み率)が約60%以上であれば、床暖房だけでも部屋は暖かくすることができるそうですが、部屋の開口部や吹抜けなど、構造の関係上、ほかの暖房機器と併用した方がいいケースもあります。外気温が特に低いときなどは、床暖房を起動するときに、ほかの暖房機器で部屋の温度を18~20度くらいに上げると、快適な室温分布になるそうです。
床暖房の場合とエアコンの場合の室内温度のイメージ
熱源の方式は温水式と電気式の2タイプ
熱源をつくるエネルギーの種類で、床暖房は温水式と電気式に大別されます。
温水式は床暖房パネルに熱源機でつくった温水を循環させて温める方式で、お湯をつくる燃料は電気・ガス・灯油などがありますが、電気式は発熱体に電気を通して暖める方式です。
温水循環式床暖房
温水循環式床暖房は、床下に設置されている床暖房パネルに、温水を循環させることによって温める床暖房です。水を温める際には、おもにガスや灯油、電気を使います。
温水循環式床暖房の特徴
温水循環式床暖房は、以下の特徴があります。
【温水循環式床暖房の特徴】
● ランニングコストが比較的安く長時間使用するケースに向いている
● 温水で温めるため温度ムラがない
● 複数の部屋に設置しても熱源は一つで済む
● 省エネルギー
一方でデメリットもあります。まず、イニシャルコストが高くなる点。導入費や部材費、施工費などが、ほかの床暖房に比べると高くなります。
さらに、床下にある程度空間がないと設置できないため、構造によっては設置できないことがあるのもデメリットです。
温水循環式床暖房の種類
温水循環式床暖房は、熱源の違いによって種類があります。
【温水循環式床暖房の種類】
● ガス式:ボイラーで温水を沸かす方式、床暖房設備以外に熱源機が必要になる
● ヒートポンプ式:外気の熱や電力で湯沸かしをする方式、省エネでランニングコストが安い
● 灯油式:専用の灯油ボイラーで湯沸かしをする方式、床暖房設備以外に灯油ボイラーを設置する必要がある
ガス式と比較した場合、灯油を用いた灯油式もランニングコストは安くなります。
床暖房には前述した、温水式か電気式かという熱源の方式による分類があるのに加え、構成の種別もあります。
「発熱部と床仕上げ材が分離されている“分離型”と呼ばれるものと、発熱部が床仕上げ材に組み込まれている“一体型”に分かれます。
まず分離型については、メリットとして仕上げ材の選択肢が多いことが挙げられます。床暖房用のフローリング以外にも、対応する畳やカーペットから好みの製品を選ぶことが可能です。ただし、分離型は一体型に比べて高さが生じるため、隣り合う部屋が床暖房を設置しない部屋である場合は、その部屋との下地高さの調整などが必要になります。
一方、一体型は分離型と比べると、色柄などの選択肢は限られますが、発熱部から表面までが近くなるので、表面に熱が伝わりやすく、立ち上がりがスピーディーというのが魅力です。また、床暖房パネルと床材をそれぞれ施工する必要がある分離型に対し、一体型は12mm厚の床材の中に熱源が組み込まれているため、施工が一工程で済み、工事期間が短いというのも特長です」
温水式仕上げ材一体型
温水式仕上げ材分離型
電気ヒーター式床暖房
電気ヒーター式床暖房は、床の仕上げ材に電熱線を一体化させ、電気を通して温める方式です。使用する熱源は主に電気であり、電熱線式・蓄熱式・PTCヒーター式に分けられます。
電気ヒーター式床暖房の特徴
電気ヒーター式床暖房は、以下の特徴があります。
【電気ヒーター式床暖房】
● 温水式よりも小面積で設置できる
● イニシャルコストを抑えられる
● スイッチを入れてから温度上昇までのスピードが早い
電気ヒーター式の場合、家の一部を床暖房にすることも可能です。全体に設置する温水式床暖房に比べると、設備費用などのイニシャルコストを抑えられます。
設置費用とランニングコスト
電気ヒーター式床暖房は、電気で稼働することから、温水を沸かす必要はありません。しかし、温水循環式床暖房に比べると、使用中は電気代がかかることから、ランニングコストが高くなることも。家族が集まるリビングなど、一部だけに床暖房を導入したい方におすすめです。
電気ヒーター式床暖房の種類
電気ヒーター式床暖房は、以下の種類に分けられます。
【電気ヒーター式床暖房】
● 電熱線式:床下に電熱線を通して温める
● 蓄熱式:蓄熱材を床下に敷いて熱を貯める方式
● PTCヒーター式:「PTCヒーター」と呼ばれる自身の温度に応じて通電量を抑制するヒーターを使用する方式
床の仕上げ方については、温水循環式床暖房と同様に、一体型と分離型に分けられます。
電気式仕上げ材一体型
電気式仕上げ材分離型
また、蓄熱式床暖房の場合、夜間電力を使用して蓄熱材に電力を貯めます。電力会社によって異なりますが、一般的には日中よりも夜間電力のほうが安い傾向にあります。そのため、蓄熱式の床暖房を使う場合は、夜間に電力をためて日中に使うことが一般的です。
しかし、この場合いくつか確認しておきたいポイントがあります。
【蓄電式床暖房を使用する前に確認しておきたいこと】
● 夜間電力の深夜割引率が下がっていないかどうか
● 燃料高騰時に通常契約のほうが高くなるかどうか
これらは、契約している電力会社によって異なります。確認せずに使うと、夜間電力を利用できずに、通常契約のまま蓄電するということにもなりかねません。各電力会社に但し書きされている場合があるため、事前に確認するようにしましょう。
床暖房の設置で使える可能性がある補助金
床暖房を設置する際、補助金が使える場合があります。
【床暖房の設置で使える可能性がある補助金】
● 次世代省エネ建材の実証支援事業
● 子育てエコホーム支援事業
● 地方自治体独自の補助金・助成金制度
それぞれ詳しくご紹介します。
次世代省エネ建材の実証支援事業
床暖房は、次世代省エネ建材の実証支援事業の補助金の対象です。事業に登録されている製品を使うと、補助金がもらえる仕組みです。以下の条件に該当すると補助金を受けられます。
【床暖房が次世代省エネ建材の実証支援事業の補助金を受けられる条件と金額】
● 潜熱蓄熱建材を使用している(床暖房が該当)
● 住宅区分:戸建住宅・集合住宅
● 補助率:補償対象経費の1/2以内
● 補助金上限額:200万円/戸
● 補助金下限額:20万円/戸
参考:次世代省エネ建材の実証支援事業のご紹介
床暖房は、潜熱蓄熱建材に該当するため、設置すると補助金がもらえます。
子育てエコホーム支援事業
子育てエコホーム支援事業は、子育て世帯又は若者夫婦世帯が受けられる可能性がある補助金制度です。補助対象事業のタイプは、以下のとおりです。
【子育てエコホーム支援事業の補助対象事業】
● 注文住宅の新築
● 新築分譲住宅の購入
● リフォーム
子育てエコホーム支援事業は、省エネ性能要件を満たしており、なおかつ証明書がある場合に適用されます。床暖房を設置した場合でも、補助金の対象になりますが、場合によっては省エネ性能要件を満たしていないことがあります。とくに、電気ヒーター式の床暖房の場合、省エネ性能が温水循環式床暖房に比べると劣るので、注意が必要です。補助金額は、新築の場合で最大100万円です。
地方自治体独自の補助金・助成金制度
各地方自治体では、注文住宅を新築する際に補助金や助成金制度を用意しています。床暖房を設置したからと言ってもらえる補助金はありませんが、子育て世帯や若者夫婦世帯、省エネ目的で断熱工事をした場合に、受けられる可能性があります。
床暖房のメリット
床暖房にすると、さまざまなメリットがあります。
足元から温かくなる
床暖房は、足元から温かくなることがメリットとしてあげられます。冷気は下に滞留するため、冬場は足元が寒くなります。また、温水循環式床暖房の場合、ムラなく床一面を温められることから、室温も上昇します。
エアコンと比べて部屋が乾燥しにくい
冬場になると気になるのが、肌の乾燥です。暖を取ろうとエアコンをつけようにも、温風や空気で肌が乾燥する……という悩みを抱える人も多いです。
床暖房は乾燥しやすいエアコンと部屋を暖める仕組みがやや異なり、床を通じて熱を放出して、身体や部屋全体を温めるため、部屋の湿度が保たれやすく、エアコンと比べると部屋が乾燥しにくくなります。
しかし、床暖房でもまったく乾燥しないというわけではありません。湿度が気になる場合は、加湿器を使うなどして対応しましょう。
石油ヒーター等と比べて空気の汚れがない
床暖房は、石油ヒーターやファンヒーターに比べると、空気が汚れないということもメリットです。床暖房の場合、何かを燃やして室内を温めているわけではないので、空気が汚れることはありません。こまめな換気も必要なく、身体と部屋を温めることができます。
火を使わないため、火災のリスクが低い
床暖房は、温める際に火を使わないので、石油ヒーターなどに比べると火災リスクが低いです。床暖房をつけっぱなしにすると、火災の原因になると思われるかもしれませんが、床暖房設備の多くは、温度を自動で調整できるセンサーが備わっていたり、過度に温度が上昇しないようなセンサーが備わっていたりします。
部屋が広く使え、インテリアの自由度が高まる
床暖房は、インテリアの自由度が高まることもメリットです。床が暖房器具になっているため、他の暖房器具が必要ない場合もあり、その分暖房を設置するはずだったスペースにも他の家具を置くなどしてインテリアを楽しむことができます。
床暖房のデメリット
床暖房には、デメリットもあるので、併せてご紹介します。
運用コストが高くなることがある
床暖房を検討する場合、やはり気になるのは費用面ですが、温水式か電気ヒーター式かで、初期費用もランニングコストも変わります。
通常、温水式は導入するときに熱源機の費用や設置工事費が加わるため、熱源機が不要な電気式よりも初期費用が比較的高くなりますが、ランニングコストについては、温水式の方が電気ヒーター式よりも比較的安くなります。
「一般的に温水式は初期費用が高く、ランニングコストは安い傾向があるため、広い面積や複数の部屋への設置、また、長時間床暖房を使用するという人に向いています。それに対し、電気ヒーター式は初期費用は抑えられますが、ランニングコストは高くなるので、一部屋のみの使用や、例えば朝2時間、夜4時間などの短時間の運転で使用するという人に向いています」
ランニングコストは使用する時間帯、周囲の温度、オンオフの頻度にもよるので、使い方や導入する場所などによって、温水式にするか、電気式にするかをトータルコストで考えるといいでしょう。
床暖房とガスファンヒーターのランニングコスト算出例
<シミュレーション条件>
電気式(算出基準)
関東間8畳 部屋面積13.2㎡ 敷込み率約60% 1日8時間運転 “あたたか12”(電気式仕上げ材一体型暖房床)で試算 コントローラー温度調整ステップ6
温水式(算出基準)
関東間8畳 部屋面積13.2㎡ 敷込み率約60% 1日8時間運転 “はるびより”(温水式仕上げ材一体型暖房床)で試算
1日当たりの運転時間を8時間として算定
*電気料金単価は、27円/kWh(公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会 H26年4月28日「新電力料金目安単価」契約の料金を参考)で計算
*都市ガス料金単価は、110.99円/㎥(東京ガス2018年4月暖らんぷらん東京地区、20㎥をこえ80㎥までを参考)で計算
*LPガス価格は、716.7円/㎥(2018年2月一般小売価格—関東地区—を参考)で計算
長時間の使用は低温やけどのリスクがある
床暖房を長時間使用すると、低温やけどのリスクがあります。低温やけどは、皮膚が40〜50度程度のものに接触し続けることで引き起こされます。ペットを飼っているご家庭や、小さいお子さまがいる家庭はとくに気を付けましょう。
低温やけどを予防するためには、床暖房の上で寝たり、長時間同じ体制で座ることを避け、こまめに体勢を変えるなどの対策を取りましょう。
故障時の修理は大掛かりで高額になる可能性がある
床暖房が万が一故障してしまった場合、修理が大がかりで高額になる可能性があります。
温水循環式床暖房を例に挙げると、不凍液が漏れ出る故障が考えられます。その場合、不凍液が浸透してしまった外壁や床も修理しなければなりません。また、修理の際は一度床を取り外す必要があり、リフォームのような大がかりな作業になります。費用も高額になる可能性があるため、注意が必要です。
床暖房を取り入れた先輩の事例
足もとから暖かく、冬でも快適な室内環境を実現できる床暖房ですが、実際の使い心地も気になりますよね。そこで今回はスーモカウンターを通して、床暖房のあるマイホーム建てた家族の実例を紹介します。
北海道在住のKさんは、子どもの環境を一番に考えて家づくりをスタート。音の気兼ねをせずに、子どもが家の中で自由に遊べるようにと、リビングが広い2階建ての注文住宅を建てました。
1階のLDKには床暖房を導入し、家具をあまり置かないようにして広々と使用。「子どもがジャンプしたり、走ったり、戦いごっこをしたり、裸足で元気に走りまわれるのがいいですね」とKさん。また、雪の多い地域ならではの工夫として、玄関の三和土(たたき)にも床暖房を設けたのもポイント。靴底についた雪で玄関が濡れても、すぐに乾きやすく重宝しているそうです。
ただ、LDK全体に床暖房を設置したため、キッチンの食品庫に収納する食品などが傷みやすくなるのではという不安を感じていたKさん。そんな不安を解消するために、食品庫には冬の冷たい外気を取り入れて食品を低温で保存できるような保冷機能をつけましました。外気を取り入れるといっても、食品庫の扉は断熱性・気密性が高く、部屋の中に外気が入ることもありません。
もともと、断熱性能の高い家を建てたいという希望があったKさんですが、北海道は高気密高断熱の家が得意な会社が多い上、その方法も多種多様。比較検討が難しく、スーモカウンターへ足を運びました。カウンターでの個別相談では、断熱性に力を入れている会社という条件や予算を伝えると、アドバイザーが4社をリストアップ。そのうちの2社との面談を設定してもらったそうですが、数ある会社の中から、予算や好みに合う会社を絞り込んでもらえて、助かったそうです。
もともと重視していた断熱性能へのこだわりに加え、“床暖房”や“効率的な家事動線”など、さまざまな希望があったので、最終的には一緒に楽しく家づくりができそうで、親身に相談に乗ってくれる会社に依頼。間取りを決める所からインテリア選びまですべてが楽しかったと、マイホームづくりを満喫できたようです。
この実例をもっと詳しく→
子どもが元気に裸足で走りまわれる、広くあたたかな家が完成
注文住宅の新築・建て替えをサポートしているスーモカウンターは、家づくりについて学べる無料講座のほかにも、経験豊富なアドバイザーに相談できる個別相談などを行っています。個別相談では、自分の要望にあった建築会社や担当者を紹介してくれるので、床暖房を採用して家づくりをしたいという希望についても気軽に相談することができます。何回でも相談無料のスーモカウンターで、家づくりの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
監修/SUUMO編集部(温水循環式床暖房、床暖房の設置で使える可能性がある補助金、床暖房のメリット、長時間の使用は低温やけどのリスクがある、故障時の修理は大掛かりで高額になる可能性がある)