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六角形の家の中に「小さな六角形」。建築家が設計した犬も人間も幸せになれる空間【ペットと家】

🎦注文住宅で実現したこだわりの空間を動画でもご紹介

東京都町田市に犬(ゴールデン・レトリバー)と暮らすための戸建てを建てた建築家・平真知子さん。

夫が会社員からドッグトレーナーへ転身したことを機に、土地探しや間取り、建材などにこだわった「犬と人間が快適に過ごせる家」を自ら設計したそうです。

大切な家族の一員であるペットが快適に、そしてのびのびと過ごせる家づくりに取り組んだ人に登場いただく「ペットと家」第3回です。

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建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家

建築家の平真知子と申します。

2015年に東京都町田市の郊外に建てた戸建てで、私、夫、ゴールデン・レトリバーのピーク(7歳)と暮らしています。

もともとマンション住まいで家を建てるつもりはなかったのですが、2013年に夫が会社を辞めてドッグトレーナーに転身したことで、犬を預かる空間が必要に。

他に場所を借りるコストを考えれば、自宅兼仕事場として「犬と人間が快適に過ごせる家」を建ててしまったほうがいいと思い、この家を設計しました。

今回は私たち夫婦がピークと一緒に暮らすために考えた工夫を紹介します。

平邸の間取図

平邸の間取図

【目次】

「六角形の家」には用途別の「小さな六角形」がたくさん

間取図を見てわかるように、建物は六角形になっています。そもそも平らな土地が少なくて、南から日差しを取り入れたい、車2台を置ける駐車場がほしい……と、敷地の条件を考えると六角形になりました。

角の形状を活かし、内部にさらに小さな六角形をつくることで空間ごとに用途を分けています。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 玄関側から見た1階部分。左の犬コーナーにいるのは、撮影時に預かっていたトレーニング中の子

玄関を入ってすぐ家の中央にあるのが、食事をするスペースであり、家族の憩いの場、そして私の仕事場としても活用しているダイニング。

ダイニングを取り囲むように、「キッチン」、犬の待機場所にもなる「犬コーナー」、「リビング」、外を一望できる「眺めコーナー」、私の仕事道具や夫婦の趣味のものが置いてある「書斎」と、さまざまな役割をもつ空間を配置しています。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 キッチン キッチン

キッチンは建物の形状を活かした扇型で、シンク、コンロ、作業スペースを広く取っています。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 犬コーナー 犬コーナーの柱には、ゲートを設置できるよう、金具を取り付け

犬コーナーは食事やトイレに使用するので、衛生的に保てるようにタイル張りにしています。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 リビング 日当たりの良いリビング

それぞれのスペースに大きな窓があり、日中は常に明るく、どの場所にいても外の景観を楽しめます。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 眺めコーナー 四季を楽しめる「眺めコーナー」

ピークのお気に入りは、家の裏にある公園の雑木林を見下ろす「眺めコーナー」。床はタイル敷きで、ひんやりしているため、夏は特にここで過ごすことが多いです。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 書斎

書斎コーナーには、2階へと続く階段と、壁付けの本棚。建築書など仕事関係の資料や小説、私たち夫婦の趣味である鉄道や旅行関連の本が並んでいます。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 寝室スペース 2階の寝室スペース

2階の眺めが良い西側にベッドを縦に並べて、寝室スペースにしています。

写真の右に立っているのは、アーティストの友人から譲っていただいたハシビロコウのオブジェ。毎日、ピークを温かく(?)見守ってくれています。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 洗面所 洗面所

吹抜けを挟んだ反対側にはお風呂、トイレ、洗面所、洗濯機置場など水まわりを集中させています。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 天井 大工さんいわく、天井をつくるのは大変だったそう

天井は最も価格が安かったスギを使用してコストダウン。壁は化学物質が苦手な夫のために珪藻土(けいそうど)の塗り壁を採用。

予算内で少しでも快適な空間にするため、コストをかける部分、抑える部分のメリハリをつけました。

犬が室内を自由に動き回れるよう、仕切りをなくした

写真を見ておわかりかもしれませんが、私たちの家にはトイレ・浴室を除いてドアが一つもありません

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 1階 2階から見た1階部分の間取り

あえてドアをなくしたのは、ピークが室内を自由に動き回れるようにしたかったから。ピークがぶつからないよう、家具も最低限のものしか置いていません。

結果的に空間に開放感が生まれ、私たち人間も快適に過ごせています。

ちなみに、夫がドッグトレーニングでお客さんのワンちゃんをお預かりしているときは、ピークを含めた3匹くらいが家中を駆け回っています。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 書斎 2階も自由に上り下り

私が1階で仕事をしていると、「遊んでよ」と引っ張ってきたりして(笑)。最初は戸惑いましたが、それもいつしか日常になり、慣れてしまいました。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 ロールスクリーン ロールスクリーンを下ろすと各空間を仕切れる

ちなみに、各スペースにドアはありませんが、一応ロールスクリーンで仕切れるようになっています。もともと飼っていたインコとピークが干渉しないように設置したのですが、私も夫も個人のスペースがなくとも気にならないタイプなので、現在はほとんど使っていません。

たまにピークが「眺めコーナー」でひとりになりたそうにしているときに、そっと閉めてあげるくらいですね。

雑木林に面した傾斜地。“不人気”な土地をあえて選んだ

「犬と人間が快適に過ごせる家」をつくるためには、土地選びも大事なポイントです。

私たちが特に重視したのは「犬の散歩をしやすい環境」でした。犬の散歩スポットの定番といえば公園ですが、一見、良い散歩ルートになりそうな公園が近くにあっても、犬の入園が禁止されている場合もあります。そういった情報は、現地に足を運んでみないとなかなかわからないもの。

私たち夫婦は長年、東京都町田市に住んでおり「家を建てるならやっぱり町田に」と考えていたため、まずは希望エリア近辺をGoogle Earthでチェックし、良さそうな緑が広がっている場所を見つけたら、実際にそこを訪れて散歩ルートを確認しました。

そうしたフィールドワークを重ねた結果、見つけたのがこの場所です。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 土地 宅地の目の前は傾斜地で、雑木林が広がっている

裏手に散歩に適した大きな公園があり、私たちの希望をしっかり満たしていました。

一方で、いくつか“難”がある土地でもありました。総面積は350㎡と広いのですが、敷地内の一部は傾斜地のため工事が難しく、実際に家を建てられるのは土地全体の3分の1程度。

「使い勝手の悪い余計なスペースが、おまけでくっついている」「土地の入口が狭い私道である」など、住宅を建てる土地としては敬遠されがちなポイントが多かったのです。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 外観 私道の脇に立っている

しかし、そのため町田市内の相場より土地価格が安く、できれば町田市内で建てたいと考えていた私たちにとっては大きな魅力でした。

また、複数のネガティブポイントも、犬と暮らす上ではプラスに働くのではないかと考えました。

家を建てられるスペースが少ないということは、そのぶん庭が広く取れるということですし、傾斜している部分も保護用の柵を立てればドッグランとして利用できます。

それに、狭い道の奥にあることで車通りが少なく静かな環境であることも、犬と安全に暮らすのに適しているのではないかと思ったのです。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 犬のカウンセリングルーム 地下にある犬のカウンセリングルーム。目の前には豊かな自然が広がる

土地の形状を活かして、夫の仕事場でもある「犬のカウンセリングルーム」は、あえて地下につくりました。カウンセリングルームから直接、傾斜している庭(ドッグラン)に出られます。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 庭(ドッグラン)

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 庭(ドッグラン) 庭に出したとたん、大喜びで駆け回る犬たち

制約を設け過ぎない。犬も人間も自由に過ごせる家がいい

実は私自身はそれまでペットを飼った経験がなかったため、夫に「犬が快適に過ごせるためのポイント」を聞きながらこの家のプランを練りました。

こだわったのは「床」です。ショールームでさまざまな床材をチェックし、犬の足にやさしいものを探しました

一般的には、犬の転倒を防止するためや足腰に負担をかけないために「滑りにくい床」がいいとされますが、滑りが悪過ぎると足の裏が擦り切れてしまうこともあるようです。

そこで、そのあんばいがちょうどよく、やわらかなカラマツの無垢材を床材としてチョイスしました。

また、夏は犬がひんやりと涼めるよう、玄関や「眺めコーナー」などの一部はタイル敷きにしています。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 玄関 走り回ってペタン。玄関はタイル、部屋はフローリング

ちなみに、カラマツの床には当初オイルを塗っていましたが、今はほとんど手入れをしていません。ピークも預かった犬たちも水を飲んだあとにポタポタと水滴を垂らしながら歩くため、すぐにオイルが飛んでしまうんです。拭いても拭いてもキリがなくなり、諦めました。

また、以前はピークを散歩に出すたび、足の裏を念入りに拭いてから家に上げていましたが、今はほどほどにしています。ですから、わりと1階は泥汚れの跡がたくさんついています。

おまけに身体をブルブルさせるので、壁の下のほうも予想以上に汚れていますが、これはもう仕方ないのかなと。大型犬のブルブルの威力は半端じゃないですよ(笑)。

もちろんお客さんが来るときには掃除をしますが、基本的にはスリッパを履いていただくか、汚れてもいい靴下で来ていただくようにお願いしています。

人間が犬に合わせるというか、ある程度の寛容性をもつほうがお互いにストレスなく過ごせるのではと思っています。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 くつろぐコーナー 人懐こいピークですが、時折ひとりになりたそうなときも

今のところはピークも私たち夫婦も快適に過ごせていますが、犬も人間も年を取ります。特にピークは7歳で、すでにシニアの域。そこで、最近はお互いの老後に向けたリフォームも検討中で、例えば犬コーナーから外へ出入りできるようにスロープを設けることなどを計画しています。

ただ、犬のためのリフォームといえばそれくらいかもしれません。もともと設計段階からなるべく段差をなくすなど、老犬にとっても負担の少ない家づくりを意識していました。

犬と一緒に暮らすことを前提に家を建てる場合は、犬の体が不自由になったときのことも見据えて設計するか、あえて最初から細かく決めるのではなくアレンジしやすい家づくりを心がけると良さそうです。

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犬と暮らす家づくりにはさまざまなポイントがありますが、最も重要なのは犬と人間が「楽しく暮らせること」ではないかと思います。

そのためには、あまり神経質に考え過ぎないほうがいいのかもしれません。例えば、犬の飛び出しを防止するため、家中の至る所に仕切りや柵を設けるケースがあると思います。

もちろんペットの安全を守ることは大事ですが、あまりに制約を設け過ぎると犬にとっても人間にとっても窮屈な暮らしになってしまいます。

建築家がつくった、犬も人間も幸せになれる家 ひだまり ベッドサイドにできる日だまりもピークのお気に入り

犬を守るための最低限のポイントは抑えつつ、ほどほどの自由を与えてあげる。そのバランスを意識してプランニングすれば、お互いに幸せになれる家が実現するはずです。

リビング、眺めコーナー、ベッドサイド、庭……。その日の気分で、好きな場所で、自由に過ごしているピークを見て、私たちも幸せな気持ちになっています。

※記事内のピークくんの年齢は取材時点(2022年12月末)のものです

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お話を伺った方:平真知子さん

みん

1966年神奈川県生まれ。一級建築士。『心地よい家』『わくわくする家』をコンセプトに暮らしに合わせた設計を提案。趣味は、犬とキャンプ・山歩き・旅行など。
HP:平真知子 一級建築事務所

聞き手・文:榎並紀行(やじろべえ)
写真:関口佳代
編集:はてな編集部