家の外観の印象を左右する玄関。家族だけでなく来客が最初に目にする場所であるため、おしゃれなデザインに仕上げたいと思う人は多いのではないでしょうか。中村住宅工業の中村芳恵さんにお話を伺い、玄関ホールやアプローチの設計など注文住宅を建てるときにおしゃれな玄関にするためのポイントをまとめました。
玄関とは?
玄関とは建物の主要な出入口にあたる場所のことです。
「玄関は家族が毎日使うなじみの場所であり、お客様をお迎えする最初の場所でもあります。日常的に使うところなので実用性も重視しつつ、家の印象の決め手にもなる部分なので特色のあるデザインにしたいという方が多いです」(中村さん、以下同)
玄関に関連する部分
玄関というとドアそのものをイメージする人が多いかもしれませんが、ホール内の土間や上がり框(かまち)、床、屋外にある庇(ひさし)やポーチ、目隠しなども玄関の一部に含まれます。また、住宅の門から玄関までの通路であるアプローチも玄関に関連する場所と考えてよいでしょう。
「玄関ホールの先にある部屋の扉までの空間も“玄関を構成する部分”であると捉えてレイアウトすることで、おしゃれな玄関に仕上がります」
広さや位置
「一戸建て住宅の玄関に適切な広さは1.25~1.5坪(2.5~3畳)とされています。これくらいの広さがあれば、余裕を持って靴を脱いで住宅に入ることができます。シューズクロークを設置したい、バリアフリー仕様にしたいなどの場合は、もう少し広さが必要となります」
また、玄関の適切な位置は間取りによって変わります。最も日当たりの良い南向きの玄関や、午前中に日光が入る東向きの玄関が人気ですが、日当たりの良い東・南のスペースを居室にするために西向きや北向きの玄関を選ぶ人もいます。西や北向きの玄関であっても窓を設置したりドアにガラスをはめ込んだりすることで採光を確保できます。
玄関をおしゃれに仕上げるポイントは?場所ごとに解説
ドア
ナチュラルな木製ドアや大きなガラスをはめ込んだ採光タイプのドアなど、多彩なデザインがあります。ドアの色や素材は住宅の外観や玄関周辺のエクステリアと調和するものを選ぶとよいでしょう。
「ガラスが付いていると外の光が入って明るい玄関になりますが、最近はガラスのないシンプルモダンなドアも人気です。また、おしゃれだけでなく機能性の面ではスマートキーに対応したドアもニーズがあります」
玄関ホール
玄関ホールに個性を打ち出したいときは、土間の広さや素材にこだわるという選択肢があります。
「土間にデザイン性の高いモザイクタイルを使ってみたり、黒や白などはっきりした色の素材を取り入れることでおしゃれな印象になります。その一方で、土間は靴の泥などで汚れやすいため、こまめな掃除が必要です。汚れの目立ちにくさを重視するのであれば、グレーやベージュの素材が適しています」
玄関アプローチ
家の門から玄関ドアまでの動線である玄関アプローチも建物の印象を左右します。和モダン、北欧風、ウッドナチュラルなど建物のデザインに合わせて使用する素材を選ぶとよいでしょう。
「アプローチ部分に枕木を並べて周りに砂利や植物を配置するとモダンでおしゃれな印象になります。手入れのいらないリアルなフェイクグリーンも人気です」
玄関アプローチについてさらに詳しく
玄関アプローチを計画するときのポイントは? 玄関ポーチのプランニングもあわせて紹介!
床・壁・天井
玄関ホールをおしゃれに仕上げるのであれば、床や壁、天井の素材にもこだわりたいところです。
「木の素材感を楽しめる無垢(むく)材を床に使用してみたり、板張りの天井にしたりするのもおすすめです。玄関ホールの片側の壁にアクセントクロスを張って個性を出す方法もあります」
玄関ポーチ
玄関ポーチは庇(ひさし)型やボックス型が人気です。玄関ポーチのデザインにこだわると家の外観に個性を出すことができます。また、玄関ポーチは雨や風よけとしても有効です。
「玄関ポーチによって建物に立体感が生まれます。一般的に、建物の見た目に凹凸があったほうが見栄えがよくなり、奥行きも生まれます」
外灯
玄関まわりを照らす外灯は防犯面でも役に立ちますが、家をおしゃれに見せる役割も果たしてくれます。家の外観や玄関ドアのテイストに合った照明器具を選ぶことがおしゃれな玄関づくりのポイントです。明るすぎたり光源が直接目に入ると不快感の原因にもなるので、配置や照明の強さに気をつけたほうがよいでしょう。
「少し離れたところから家を見たときに、温かい明かりが見えるとホッとしますよね。玄関まわりに設置するなら、周りが暗くなるとほんのりと明るく光る外灯がおすすめです。また、最近はアイアン調のモダンな照明器具が人気です」
目隠し
玄関アプローチに設ける目隠し。木材やレンガ、タイル、格子などさまざまな素材を使うことができます。また、インターホンや郵便受けを併設した目隠しもあります。
「目隠しの素材選びはデザインを考える上では大切ですが、防犯のことを考えるとサイズも大切なポイントです。家の出入口を目隠しで全て隠してしまうと外部から侵入があっても家の外から見えないため、かえって防犯性が低下するという意見もあります」
目隠しの設置の有無や大きさなどは家族でよく話し合って決めたほうがよいでしょう。
玄関のおしゃれな設備やインテリアは?
土間収納
玄関ホールの面積を広めに確保して土間収納を設けることもできます。自転車やバイク、キャンプ道具などアウトドア用品を収納したり、家具を置いて家族や客人がくつろげる憩いの場として活用することもできます。
引き戸
昔の日本家屋の玄関で採用されていた引き戸。近年はバリアフリー目的で住宅に取り入れる人が増えています。引き戸であれば車椅子やベビーカーも楽に家の中へ入ることができます。見た目がおしゃれなデザインのドアも多く、開き戸にするか引き戸にするかで悩む人は少なくありません。
「開き戸の場合はドアの開閉におよそ1m×1mのスペースが必要になります。開き戸にしたい場合は、ホールのスペースに影響しないようにリビング側に開くように設計することをおすすめします」
手洗い場
「玄関ホールに手洗い場を設置する人も増えています。ペットやお子さんがいる家族に人気です。水栓や洗面ボウルのデザインにこだわると、玄関ホールのアクセントにもなりおしゃれです」
玄関の手洗い場についてさらに詳しく
【実例あり】玄関に洗面台を配置する間取りのポイント
ニッチ
玄関ホールの壁の一部をくぼませてニッチをつくり、アート作品や観葉植物を飾るというプランも人気です。ニッチの中に間接照明を設けると飾ったものをおしゃれに照らすことができます。
「飾り棚として活用できるニッチがある一方、電気のスイッチ等をニッチの中にまとめるプランもニーズがあります。スイッチ類はデザインのノイズになりやすいですが、ニッチの中に収納することで目立たなくさせることができます」
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【実例付き】ニッチはどんなことができる?収納の課題を解決してインテリアをおしゃれにしよう!
シューズクローク
「玄関ホールにシューズクロークがあると、靴だけでなくベビーカーや自転車などもしまうことができて便利です」
また、シューズクロークを設けるスペースはなくても、可動式の棚やハンガーラックを取り付けることで衣類や小物類を収納しておくことができます。
照明器具
「玄関ホールの照明はシンプルなダウンライトが人気ですが、大きめのペンダントライトなどデザイン性の高い照明器具を設置するとオリジナリティのある玄関になります」
植物
玄関に観葉植物を置くと空間のアクセントになります。日が差し込みにくい玄関の場合は、日陰でも育つ植物を選ぶとよいでしょう。サイズの大きな観葉植物を置くと豪華な印象になりますが、コンパクトな鉢植えをニッチや棚の上に置くだけでもおしゃれな玄関になります。
「ウッド調のナチュラルな家が好みであれば、玄関ホールの天井の梁を見えるようにしてグリーンを吊るす手法もあります。また、玄関の外に人工芝を敷いたり、シンボルツリーを植えるのもおすすめです」
ウッドデッキ
「ウッドデッキと玄関をつなげる選択肢もあります。リビングとウッドデッキ、そして玄関が一続きになり、家でアウトドアを楽しみたい人やお子さんやペットがいる家族に人気のつくりです」
おしゃれな玄関にするために建築段階で注意すべきことは?
内観
収納計画を立て、片付けやすい玄関にする
「新築時だけでなく、入居後もおしゃれな玄関を維持するためには整理整頓のしやすさが鍵となります。物があふれてしまっていては、デザインにこだわった玄関もおしゃれに見えなくなってしまい、もったいないですよね。シューズクロークやハンガーラック、可動棚を設けるなどして靴や持ち物をきちんとしまえるように計画することが大切です」
光の取り入れ方を考える
「玄関の採光を考えることも大切です。玄関の壁の一部に小窓を設けるだけでも空間がパッと明るくなります。ガラスのないドアを選んだ場合は、明かり取り窓の設置を検討してもよいかもしれません」
外観
防犯面や機能性も重視する
デザイン性にこだわるあまり、防犯面や機能性のことを忘れてはいけません。
「快適に暮らし、家族の安全を守るためにも、ドアや窓の仕様、アプローチに設置する目隠しの位置や大きさなどをよく検討したほうがよいでしょう」
素材の特徴を理解して選ぶ
「素材にはそれぞれ特徴があります。特に外観に使用する素材は経年劣化や気候によって形状が変化する可能性も。例えば、無垢材は伸縮性があり冬は縮みやすく、コンクリートは年数が経つとヒビやカビが発生しやすいという特徴があります。そういった素材の特徴や経年変化を理解した上で家づくりを進められるとよいですね」
注文住宅を建てた先輩たちのおしゃれな玄関の実例を紹介
ここからは、注文住宅を建てた先輩たちの、おしゃれな玄関を紹介します。ぜひデザインの参考にしてください。
【case1】外装用タイルを壁に張り、玄関ホールのアクセントに
子どもの小学校入学を機に家づくりを始めたSさん。広いLDKや浴室と洗面室の間に設けたウォークスルー型のクローゼットなど、こだわりを詰め込んだ住まいができ上がりました。玄関ホールの壁面には外装用にも使えるタイルを使用。凹凸のある素材感が空間のアクセントになっています。
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【case2】木のナチュラルな素材感がおしゃれな玄関ドア
1LDKのマンションが手狭になり注文住宅の計画を始めたYさん家族。生活動線や家事動線が短い便利な間取りを採用し、家族が心地よく暮らせる住まいが出来上がりました。木の素材感がおしゃれな玄関ドアはYさんのお気に入り。「標準仕様の中から選んでも十分満足できるグレードだった」とのことです。
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【case3】手洗い場と大容量の収納を設けた玄関ホール
ハリネズミと暮らすSさん夫妻。妻の祖父が売却しようとしていた土地を購入して注文住宅を建てることにしました。無垢材など自然素材を使った家づくりにこだわり、家全体がナチュラルな雰囲気に。玄関の土間にはおしゃれな手洗い場や大容量の収納を備え、使いやすく便利な出入口になりました。
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【case4】広々とした玄関には自転車も収納可能
気に入った環境の土地に家を建てたいと考えたKさんファミリー。偶然見つけた近所の土地に海外リゾートをイメージした開放感のある住まいを建てました。シューズクロークを併設した広い玄関には自転車を置くこともできます。土間に手洗いカウンターも設置し、帰宅後すぐに手を洗うことができるようにしました。
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おしゃれな玄関づくりのために考えたいこと
最後に、おしゃれな玄関をつくるときのポイントを中村さんに伺いました。
「建築会社によって得意なデザインは異なります。当社であれば木の素材を活かしたナチュラルなデザインが得意です。海外風、和モダンなど好みのデザインに合わせて得意な建築会社を選ぶことも理想の玄関を完成させる上で大切だと思います」
玄関スペースは家族も来客も使う場所だからこそ、デザインにはこだわりたいものですね。注文住宅を建てる際は、ぜひ家族と相談して使いやすくおしゃれな玄関にしませんか。
スーモカウンターに相談してみよう
おしゃれな玄関のある家を建てたいと検討している人は、ぜひスーモカウンターに相談してみてください。スーモカウンターではアドバイザーがお客様の家づくりを全面サポート。理想に合った建築会社を複数紹介することも可能です。注文住宅を建てたいけど何から始めたらいいの?という方も大歓迎。家づくりのヒントからお金のことまで親身になって相談に乗ります。
取材協力/中村芳恵さん
取材・文/佐藤 愛美(りんかく) イラスト/村林タカノブ