壁の一部を凹ませてインテリアや収納スペースにもなる「ニッチ」を取り入れると、おしゃれな空間をつくることができます。そこで、実例で上手にニッチを取り入れたアイデアや、ニッチをつくるときのポイントをKEIJI 一級建築士事務所に聞きました。
住宅における「ニッチ」とは何か?元々の意味は「隙間」
ニッチとは、元々「隙間」という意味を持ちますが、使う分野によって意味が異なります。住宅でいう「ニッチ」とは、壁の一部に凹みをつくり、そこに空間をつくることでできる、壁に内蔵された固定棚のようなものを指します。
構造上の強度に影響がないよう柱と柱の間の部分につくられるため、奥行きは100mm前後になり、凹んだ部分に物を収納することで、動線を邪魔することがなくスッキリさせることができます。
ニッチはインテリアのアクセントにもなる
ニッチは、鍵や携帯、リモコンなどごちゃつくものや失くしやすいものをまとめて収納するスペースとして活用できます。また、お気に入りの雑貨をディスプレーする飾り棚にすると単調な壁面のアクセントにもなり、インテリアに個性を出したいときにもオススメ。また、既製品の収納アイテムを購入するよりは低コストでできるため、気軽に取り入れやすいのもメリットといえます。
設計にニッチを取り入れるときの注意点
使い方によっては便利なニッチですが、「なんとなくおしゃれだから」と用途を考えずにつくってしまうと失敗する恐れがあるため注意しましょう。注意点も把握した上で、住まいに取り入れるか慎重に検討してください。
音漏れに注意する
ニッチは、壁を凹ませてつくる構造のため、壁が薄くなります。壁が薄くなると音漏れする可能性があるため注意しましょう。
たとえば、トイレに面した壁にニッチをつくった場合は、水を流す音などが外に聞こえる可能性があります。また、寝室とリビングが面した壁につくった場合は、テレビの音が寝室に聞こえるなども考えられます。
家族間であっても、意外と音は気になり、ストレスになることも。ニッチを取り入れる場合は、設置位置に気をつける必要があるでしょう。
ホコリがたまりやすく掃除の手間がかかることを理解しておく
ニッチにはホコリがたまりやすいというデメリットがあります。ホコリがたまったニッチは、かえってみすぼらしい印象を与えてしまうことも。さらに、ニッチにリモコンやそのほか電子機器を置く場合は、ホコリが故障の原因になることも考えられます。ニッチに限らず、扉のない収納棚は、はたきやハンディモップで定期的に掃除する必要があるでしょう。
また、花瓶や観葉植物、割れ物を置く場合は、ニッチを掃除をする際に安全な場所に移動する手間がかかる場合もあります。
ニッチをつくるのに適した場所は?
ニッチをつくるのに適した場所は以下になります。
● 廊下・玄関
● トイレ・浴室・ランドリー
● 寝室・書斎・子ども部屋
● リビング・ダイニング・キッチン
それぞれどのような使い道があるのかも解説しますので、ぜひ参考にしてください。
廊下・玄関
廊下や玄関であれば、ディフューザー(香りを拡散させるもの)や花瓶、絵画などを置くことに適しています。
シューズボックスにこれらの置き場がない場合や廊下に置けない場合でも、来客時に好印象を与えることができるでしょう。
クリスマスやお正月などのイベント時に合わせて小物を飾ることも1つの方法です。また、玄関にニッチがあれば、家や車の鍵が置けるため実用的といえます。
トイレ・浴室・ランドリー
トイレはもともと空間が狭いため、ニッチをつくることのメリットは大きいです。トイレットペーパーや掃除用のスプレーなどを置けば実用的になります。
浴室へニッチを設置するなら、お風呂用のイスに座った時にちょうどいい高さであれば、シャンプーやボディーソープなどが使いやすくなるでしょう。
ランドリーも洗剤や柔軟剤、ハンガーや洗濯クリップなどを収納すると便利です。
寝室・書斎・子ども部屋
寝室もニッチの設置場所として適しています。ベッドに棚がついていない場合は、ベッドの高さにニッチをつくることによって、携帯電話やメガネなどを置くスペースとして活用できるでしょう。サイドテーブルを置く必要がなくなることもメリットです。
書斎ではちょっとした本棚代わりに使ったり、間接照明を置いてもおしゃれです。
また、子ども部屋では、好きなアイドルやアニメキャラクターのグッズを置くなど、推し活にも使えます。
リビング・ダイニング・キッチン
キッチンカウンターのダイニング側の袖壁はニッチの設置場所として人気が高いです。カトラリー(箸やスプーンなど)置き場として需要が高く、ティッシュもダイニングテーブルに置かずに済み、テーブルを広く使えることがメリットだといえます。
また、リビングのソファ背面にニッチを設置し、照明をプラスすることにより、おしゃれに演出することができます。気に入った小物や花瓶をゆとりをもって飾ることでセンスのいい空間になるでしょう。
ニッチを取り入れた実例を紹介!使い方の参考に
ここからは、ニッチを取り入れた実例を紹介します。ニッチをつくることに適した場所を紹介しましたが、実際にはどのように使われているのでしょうか。注文住宅で間取りを考えるときにぜひ参考にしてください。
【実例1】インターホンやスイッチなど出っ張る部分をまとめる
インターホンや、スイッチ、太陽光発電モニター、防犯カメラモニターなど、壁面につける機器類は意外とたくさんあるもの。そこで、それらをまとめてニッチに収めることでスッキリとした空間に。通路になっている場所などの場合は、出っ張りがなくなることでぶつかったりすることもなくなるため動線もスムーズになります。コンセントをつければ携帯電話の充電をするスペースにも。
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【実例2&3】お気に入りのものをディスプレーする飾り棚に
ニッチを飾り棚として活用するケースも多く、お気に入りの雑貨や写真などをディスプレーすれば、カフェのような雰囲気が楽しめます。ニッチの形状は正方形や長方形だけでなく、上部を三角にして家の形にしたりと、デザインやレイアウト次第で雰囲気も変わるので、ディスプレーするものやインテリアの雰囲気に合わせてデザインを選びましょう。階段の壁面などにニッチをつくると、ギャラリーのようなスペースにも。
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【実例4&5】アクセントクロスで空間をおしゃれに演出
ニッチの中をカラフルなクロスにしたり、素材の異なるタイルを張ると、空間とのメリハリが出てさらにアクセントとして映えます。一面に取り入れるにはちょっと派手なカラーやデザインなども、ニッチなら気軽に取り入れられるのでオススメです。
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【実例6】キッチンカウンターを収納スペースに
キッチンカウンターの立ち上がり部分や壁面の一部にニッチをつくれば、スパイスラックや収納スペースとして活用することも。アイテムが多くごちゃごちゃしやすいキッチンまわりをスッキリとさせることが可能になります。
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【実例7】壁の一部を本棚にしてスッキリ収納
壁の一部をくり抜いて本棚にするアイデアも。可動棚にすれば本の高さに合わせてフレキシブルに使えて便利です。出っ張りがないので、スッキリと収納することができ、空間を有効に使うことができます。
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【実例8】タオル収納用のニッチで利便性アップ
ランドリールーム兼脱衣室にニッチをつくればスッキリしたタオル収納に。洗濯やアイロンなどのランドリースペースを邪魔することなくタオルが収納できます。扉もないため、お風呂あがりにも、扉を濡らすことなくタオルが取り出しやすく便利です。
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【実例9】ダイニングテーブルの近くにコンセントつきのニッチを設置し 家族でたこ焼きを楽しむ
キッチンの袖壁にニッチをつくり、コンセントを設置することで、たこ焼き器など調理家電を使った食事がしやすくなります。通常設置されるコンセントの位置は低いため、挿し入れにかがむ必要がありますが、この場所であればイスに座ったまま使えます。調理家電を使わない時はコンセントも隠れ、ティッシュも収納できて便利です。
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ニッチを取り入れるときのポイント
ニッチを取り入れるときのポイントを解説します。実用的なニッチにするためにも、ぜひ参考にしてください。
用途を決めてつくる
どの部屋で何を置くのか、用途を決めてつくるようにしましょう。たとえば、本を収納する、掲示物を貼る、インターホンなどのモニターやスイッチをまとめて置くなど目的を明確にイメージしておくと良いです。
また、ニッチは壁を凹ませてつくるため、壁の厚みを考慮する必要があります。壁の厚み以上のものは置けないため注意が必要です。高さや配置についても、なんとなく決めてしまうと実際には使いにくくなることも考えられるため、どのように活用するかをしっかり考えておきましょう。
定位置にしたいものの動線を確認する
スイッチやモニターなどの場所をひとまとめにする場合は、生活動線を考慮して場所を決めるようにしましょう。動線が違うものをまとめてしまうと、逆に使いづらくなってしまうため、たとえば鍵は玄関、スイッチとモニターはダイニングキッチンの通路部分というように、2カ所に分けるなど工夫を。また、コンセントをつける場合は、正面につけてしまうと配線にスペースが取られて奥行きが浅くなってしまうので、側面につけるようにしましょう。
ニッチがつくれる場所を確認しておく
ニッチは柱に囲まれたスペースにつくるため、構造上の耐力壁がある場合には採用することができないケースも。また、外周面の壁面も断熱材を入れるため、ニッチをつくるスペースが確保できないので注意が必要です。あらかじめニッチがつくれる場所を確認しながら進めましょう。
あくまでインテリアのワンポイントに
ニッチは単調になった壁面のアクセントとして有効ですが、あまりつくり過ぎてしまうと落ち着きがなく、かえってまとまりのない空間になってしまいます。ニッチのアクセントとしての効果が薄れてしまうため、あくまでインテリアのワンポイントとして取り入れるようにしましょう。
造作の費用を確認してから検討する
ニッチを造作するには手間がかかり、費用もアップします。また、大きさや設置する場所、形状や使用する材料によっても費用が異なる点も注意が必要です。機能性のあるクロスやタイルなどを使用する場合や、照明や扉をつける場合はさらに費用は高くなります。
小さな造作も箇所が増えたり、使用する素材にこだわりすぎると「意外と高かった」ということも。
後悔しないために、市販の飾り棚と費用を比較し必要性を考えたり、壁紙のグレードを下げる、オープンスペースにして必要以上の造作はしないなどプランの見直しをすることも考えてみましょう。
スーモカウンターで実現しよう!
このように、壁のスペースを利用するニッチを上手に取り入れることで、収納力がアップしてスッキリしまえたり、インテリアをおしゃれに演出することができます。しかし、ニッチなど自分たちの思い通りのプランを実現してくれる建築会社が見つけられていない人も多いはず。
注文住宅の新築・建て替えをサポートしているスーモカウンターでは、家づくりの不安を解決できる無料講座や、アドバイザーに悩みを相談できる無料の個別相談などを実施しています。個別相談では住宅建築の予算や希望条件の整理、建築会社の紹介など、注文住宅を建てる際のあらゆる不安について、知識と経験のある専任アドバイザーに無料で何度でも相談できます。
ちょっとしたスペースにニッチをつくって空間にアクセントをつけながら素敵な家づくりを実現するために、スーモカウンターを活用して、家づくりの第一歩を踏み出してはいかがでしょうか?
取材協力/KEIJI 一級建築士事務所
文/金井さとこ 監修/SUUMO編集部(注意点、適した場所、ポイント)