開放的でおしゃれな空間を演出できる「勾配天井」。そこで、明野設計室 一級建築士事務所の明野さんに勾配天井のメリットとデメリット、プランに取り入れる際のポイントについて伺いました。勾配天井を上手に取り入れて素敵な空間を取り入れた実例プランや、照明やシーリングファンの選び方のポイントなどもご紹介します。
勾配天井とは|読み方は「こうばいてんじょう」
「勾配天井とは、その名の通り、斜めに傾斜している天井のこと。日本の家屋に多い木造建築は雨仕舞いのため屋根に勾配があるのが通常です。この屋根に囲まれた『小屋裏』と呼ばれる空間を活かし、内部に取り込んだものを勾配天井を呼んでいます」(明野さん)
勾配天井は屋根の形状によることが多く、大きく分けると一方向に勾配する片流れと、いわゆる三角屋根と呼ばれる二方向に傾斜したものがあります。敷地条件やプランによってどのように勾配させるかは変わってきます。
勾配天井のメリットとは?
勾配天井を取り入れることで、実生活においてどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは主なメリットを5点紹介します。
角度によっては高さが出るため開放感のある空間になる
勾配天井のメリットの1つ目として挙げられるのが、角度によって開放感のある空間をつくり出せること。たとえ部屋の広さが同じでも、天井に角度がつくことで高さが生まれ、広々とした空間を楽しむことができます。
そのため、勾配天井は家族全員が集まるリビングなどによく用いられます。角度を上手く利用すれば背の高い家具も置きやすくなるなど、インテリアにおいても利便性が高いといえます。
自然光を取り入れやすい
勾配天井は、自然光を取り入れやすいこともメリットです。採光面で、特に効果を発揮しやすいのが天窓や高窓です。太陽は夏と冬で位置と角度が異なります。そのため周辺環境や家の形によっては、光が入りづらい季節も生まれてしまいます。
勾配天井を活用するとより高い位置に窓を設置できるため、季節に関係なく安定して光を取り入れやすくなります。日の差している時間帯では、電気を使わずとも部屋を明るくすることが可能です。
通風が良い
採光のみならず、通風が良くなる点も勾配天井のメリットのひとつ。通常、空気は暖かいと上に行き、冷たいと下に流れていく性質を持ちます。この性質を利用して、高い位置と低い位置にそれぞれ窓を設置するのが望ましいでしょう。
高窓は暖かい空気の出口として活用し、腰窓からは新鮮な空気を取り入れます。こうすれば、効率の良い空気の入れ替えが可能です。風向きや双方の窓の配置を考慮する必要があるので、設計士からアドバイスを受けることをおすすめします。
プライバシーを確保できる
勾配天井を利用して高い位置に窓を設置することで、プライバシーの確保にもつながります。誰かの視線を気にする必要もないため、ゆったりと部屋の中でくつろげるでしょう。
高さ規制に対応しやすい
都市部では北側斜線制限など規制に合わせて勾配天井を取り入れるケースも。北側斜線制限とは、北側の隣人の日当たりを考慮し、南からの日照の確保のために建築物の高さを規制したルールのことで、北側隣地境界線上に一定の高さをとり、そこから一定の勾配で記された線(=北側斜線)の範囲内で建築物を建てる必要があります。勾配天井はこのような規制を上手に活かせるプランとしても有効です。
勾配天井のデメリットとは?
勾配天井には、デメリットも少なからず存在します。メリットと比較しつつ、取り入れるか否かを決めることが大切です。
メンテナンスに手間がかかる
勾配天井のデメリットとして、メンテナンスに手間がかかる点が挙げられます。
例えば天井に照明などを取り付ける場合、一般的には脚立を用いて作業します。しかし勾配天井で高さが出てしまうと、脚立を使っても届かなくなるでしょう。簡単な照明の交換でも業者に依頼する必要が出てしまいます。
メンテナンスが完了するまで、数日程度を要することも考えなければなりません。
建築費用やランニングコストが高くなりやすい
勾配天井は通常の天井よりも傾斜があったり、天井に高さが出たりする分、天井や壁の施工する面積が大きくなります。材料費だけでなく、足場の費用や工事日数が多くかかることから、建築費用は高くなってしまいます。
また、長い期間暮らしていれば、何かしらのメンテナンスが必要となります。修繕費用についても、建築費用と同じく高額になりやすい点を押さえておきましょう。
生活音が響きやすくなる
勾配天井の場合、雨の音なども響きやすくなる点に注意しなければなりません。
また、勾配天井は通常よりも天井高が高くなるため、生活音が響きやすくなることもあります。音が気になりやすい方は、設計時には反響を抑えるべく、遮音性を高めるなどといった工夫も考えましょう。
勾配天井を取り入れた注文住宅実例
勾配天井を取り入れた注文住宅の実例を紹介します。マイホームに勾配天井を取り入れるか迷っている方や、どんな種類があるのか知りたい方はぜひ参考にしてください。
【実例1】2階リビングで明るい空間に
「リビングの開放感を出す方法として吹抜けがありますが、限られた床面積の中で2階部分の床面積が削られてしまうのがもったいないですよね。その場合に、2階リビングと勾配天井を組み合わせると、明るく広々とした空間にすることができます。都市部など土地が狭い場合や、土地の形状から2階リビングにするケースにもオススメです」
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【実例2】LDKに高低差をつけてメリハリのある空間に
LDKに勾配天井で高低差をつけるとゆるやかにゾーニングすることができ、メリハリのある立体的な空間を演出することができます。
「例えば、天井の高いリビングは明るく開放的に、天井が低いダイニングはおこもり感のあるスペースにするなど、それぞれの空間の雰囲気を変えて楽しめます」
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【実例3】一番低いところを寝室に! 外観もおしゃれな自慢のマイホーム
「勾配によって天井高が低くなった部分は、寝室にしてベッドを置くスペースにしたり、デスクを置いてスタディコーナーにするなど、寝転がったり座ったりする場所にすると、立つと圧迫感を感じる場合でも空間を有効に活用することができます」
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【実例4】ロフトやスキップフロアにして空間を有効活用
勾配天井と吹抜けを組み合わせたプランの場合、高さを活かしてロフトやスキップフロアなどを設けると、スペースを有効に使える。
「上下層がゆるやかにつながるのでコミュニケーションもとりやすく、それぞれの空間で過ごしていても気配がわかり安心です」
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【実例5】梁+シーリングファンで空間にアクセントをプラス
「勾配天井でリビングの天井高が高くなる場合は、梁を見せてインテリアのアクセントにすることも。梁とシーリングファンの組み合わせは定番で、梁の濃い色味に合わせてコーディネートすればシャープな印象に、内装の色味に合わせるとスッキリとした印象になりますよ」
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【実例6】木の梁が見えるデザインで空間に温かみを演出
勾配天井に木の梁を設置することで、温かみのある空間をつくり出せます。この事例では、白色の天井に焦げ茶色の梁を設置しています。色のコントラストによって、木材の質感がはっきりと分かるデザインになっています。
天井を見上げると木の温かみも感じられ、リラックス感のある雰囲気に。天井を見ながらのんびりくつろぐのがなによりの癒しだそうです。
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【実例7】勾配天井と空が見える窓で開放感たっぷりに
勾配天井にしてその分高くなった外壁面や天井部分に窓を設置することで、開放感あふれる空間をつくった実例です。部屋に太陽光が差し込みやすく、室内が明るくなる点も特徴です。冬の時期でも、暖房を控えながら暖かい部屋をつくり出せます。
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後悔しないために|勾配天井を取り入れるときのポイント
最後に勾配天井を取り入れるときのポイントを紹介します。マイホームを建てた後に後悔しないためにも、しっかり押さえておきましょう。
効率良く空気を循環させる仕組みをつくる
勾配天井にすると通常よりも天井高が高くなることから、冷暖房の効率が悪くなります。暖気は上に上昇する性質があるため、天井の高い位置に窓を設けて、夏場はそこから暖かい空気を放出できるようにしておくと良いでしょう。
「インテリアのアクセントにもなるシーリングファンを付けて空気を循環させるのも効果的。ただ、シーリングファンは存在感があるので、勾配天井の高さや空間の広さによっては圧迫感が出てしまうことも。開放感を感じられる十分なスペースを確保しましょう」
照明は壁付けや間接照明に
「勾配天井によって生まれた開放感を活かすためには照明計画も重要。大きなペンダントライトは高さによっては掃除もしづらいので、設置位置には注意が必要です。ダウンライトやブラケットなど壁付けの間接照明は、広さを活かしながら空間が立体的に感じられます。低い位置には床置きのライトなどもオススメですよ」
吸音効果のある家具インテリアを選ぶ
「勾配天井にすると音が響きやすくなることがあります。フローリングやブラインドなど硬い素材は反響しやすいため、ソファやカーテン、ラグなどのインテリアアイテムを布製にすると、手軽に吸音効果が得られます。わざわざ吸音壁にしなくても、家具インテリアの選び方を意識するだけでも音の対策は可能です」
まずはスーモカウンターに相談してみよう!
このように、勾配天井の取り入れ方次第で、明るく開放感のある空間を演出することが可能になります。勾配天井を取り入れる際にポイントとなるものをしっかり押さえながらプランニングすることが重要になってきますが、どのような空間ができるのかイメージを膨らませるのはなかなか難しいかもしれません。
注文住宅の新築・建て替えをサポートしているスーモカウンターでは、家づくりの不安を解決できる無料講座や、アドバイザーに悩みを相談できる無料の個別相談などを実施しています。個別相談ではバリアフリー住宅の予算や希望条件の整理、建築会社の紹介など、注文住宅を建てる際のあらゆる不安について、知識と経験のある専任アドバイザーに無料で何度でも相談できます。
新築・建て替え時に開放感のある空間にするプランとして勾配天井を検討したい人は、ぜひスーモカウンターを活用して、家づくりの第一歩を踏み出してはいかがでしょうか?
監修/SUUMO編集部
※勾配天井のメリットとは?
勾配天井のデメリットとは?
一級建築士、専攻建築士(統括設計)、神奈川県応急危険度判定士、福祉住環境コーディネーター2級、公認ホームインスペクター。小田急線新百合ヶ丘駅にある自宅のアトリエで、住宅を中心に手掛けている