開放的でおしゃれな空間を演出できる「勾配天井」。そこで、明野設計室 一級建築士事務所の明野さんに勾配天井のメリットとデメリット、プランに取り入れる際のポイントについて伺いました。勾配天井を上手に取り入れて素敵な空間を取り入れた実例プランや、照明やシーリングファンの選び方のポイントなどもご紹介します。
勾配天井とは
「勾配天井とは、その名の通り、斜めに傾斜している天井のこと。日本の家屋に多い木造建築は雨仕舞いのため屋根に勾配があるのが通常です。この屋根に囲まれた『小屋裏』と呼ばれる空間を活かし、内部に取り込んだものを勾配天井を呼んでいます」(明野さん)
勾配天井は屋根の形状によることが多く、大きく分けると一方向に勾配する片流れと、いわゆる三角屋根と呼ばれる二方向に傾斜したものがあります。敷地条件やプランによってどのように勾配させるかは変わってきます。
勾配天井のメリットとは?
勾配天井のメリットは、同じ空間で天井高低差があることで、低いところから高いところへの空間の広がりを演出できること。ひとつながりの広い空間でも、勾配天井にすることで天井が低いところは落ち着いた雰囲気に、高いところは開放感を感じられます。吹抜けと組み合わせることも多く、通風や採光を取るためのプランとしても適しています。
また、都市部では北側斜線制限など規制に合わせて勾配天井を取り入れるケースも。北側斜線制限とは、北側の隣人の日当たりを考慮し、南からの日照の確保のために建築物の高さを規制したルールのことで、北側隣地境界線上に一定の高さをとり、そこから一定の勾配で記された線(=北側斜線)の範囲内で建築物を建てる必要があります。勾配天井はこのような規制を上手に活かせるプランとしても有効です。
「北側の天井高が勾配で低くなることで、プライバシーの確保にもつながります」
勾配天井のデメリットとは?
一方、状況によっては勾配天井とすることで容積が大きくなるため通常よりも工事費がかかること、冷暖房の効率が悪くなるためランニングコストがアップしたり、屋根面積が大きくなることで屋根材の補修や塗装のメンテナンスコストもかかるなど、通常よりもコスト面の負担がかかる点がデメリットとして挙げられます。
「また、勾配天井は通常よりも天井高が高くなることが多く、生活音が響きやすくなることもあります」
勾配天井を取り入れる際は、上記のことを念頭に置いておきましょう。
勾配天井を取り入れた注文住宅実例
【実例1】2階リビングで明るい空間に
「リビングの開放感を出す方法として吹抜けがありますが、限られた床面積の中で2階部分の床面積が削られてしまうのがもったいないですよね。その場合に、2階リビングと勾配天井を組み合わせると、明るく広々とした空間にすることができます。都市部など土地が狭い場合や、土地の形状から2階リビングにするケースにもオススメです」
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【実例2】LDKに高低差をつけてメリハリのある空間に
LDKに勾配天井で高低差をつけるとゆるやかにゾーニングすることができ、メリハリのある立体的な空間を演出することができます。
「例えば、天井の高いリビングは明るく開放的に、天井が低いダイニングはおこもり感のあるスペースにするなど、それぞれの空間の雰囲気を変えて楽しめます」
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【実例3】一番低いところを寝室にする
「勾配によって天井高が低くなった部分は、寝室にしてベッドを置くスペースにしたり、デスクを置いてスタディコーナーにするなど、寝転がったり座ったりする場所にすると、立つと圧迫感を感じる場合でも空間を有効に活用することができます」
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【実例4】ロフトやスキップフロアにして空間を有効活用
勾配天井と吹抜けを組み合わせたプランの場合、高さを活かしてロフトやスキップフロアなどを設けると、スペースを有効に使える。
「上下層がゆるやかにつながるのでコミュニケーションもとりやすく、それぞれの空間で過ごしていても気配がわかり安心です」
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【実例5】梁+シーリングファンで空間にアクセントをプラス
「勾配天井でリビングの天井高が高くなる場合は、梁を見せてインテリアのアクセントにすることも。梁とシーリングファンの組み合わせは定番で、梁の濃い色味に合わせてコーディネートすればシャープな印象に、内装の色味に合わせるとスッキリとした印象になりますよ」
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勾配天井を取り入れるときのポイント
効率良く空気を循環させる仕組みをつくる
勾配天井にすると通常よりも天井高が高くなることから、冷暖房の効率が悪くなります。暖気は上に上昇する性質があるため、天井の高い位置に窓を設けて、夏場はそこから暖かい空気を放出できるようにしておくと良いでしょう。
「インテリアのアクセントにもなるシーリングファンを付けて空気を循環させるのも効果的。ただ、シーリングファンは存在感があるので、勾配天井の高さや空間の広さによっては圧迫感が出てしまうことも。開放感を感じられる十分なスペースを確保しましょう」
照明は壁付けや間接照明に
「勾配天井によって生まれた開放感を活かすためには照明計画も重要。大きなペンダントライトは高さによっては掃除もしづらいので、設置位置には注意が必要です。ダウンライトやブラケットなど壁付けの間接照明は、広さを活かしながら空間が立体的に感じられます。低い位置には床置きのライトなどもオススメですよ」
吸音効果のある家具インテリアを選ぶ
「勾配天井にすると音が響きやすくなることがあります。フローリングやブラインドなど硬い素材は反響しやすいため、ソファやカーテン、ラグなどのインテリアアイテムを布製にすると、手軽に吸音効果が得られます。わざわざ吸音壁にしなくても、家具インテリアの選び方を意識するだけでも音の対策は可能です」
まずはスーモカウンターに相談してみよう!
このように、勾配天井の取り入れ方次第で、明るく開放感のある空間を演出することが可能になります。勾配天井を取り入れる際にポイントとなるものをしっかり押さえながらプランニングすることが重要になってきますが、どのような空間ができるのかイメージを膨らませるのはなかなか難しいかもしれません。
注文住宅の新築・建て替えをサポートしているスーモカウンターでは、家づくりの不安を解決できる無料講座や、アドバイザーに悩みを相談できる無料の個別相談などを実施しています。個別相談ではバリアフリー住宅の予算や希望条件の整理、建築会社の紹介など、注文住宅を建てる際のあらゆる不安について、知識と経験のある専任アドバイザーに無料で何度でも相談できます。
新築・建て替え時に開放感のある空間にするプランとして勾配天井を検討したい人は、ぜひスーモカウンターを活用して、家づくりの第一歩を踏み出してはいかがでしょうか?
取材協力/明野設計室 一級建築士事務所 明野美佐子さん
一級建築士、専攻建築士(統括設計)、神奈川県応急危険度判定士、福祉住環境コーディネーター2級、公認ホームインスペクター。小田急線新百合ケ丘駅にある自宅のアトリエで、住宅を中心に手掛けている。