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源泉掛け流しの温泉と膨大なコレクション。『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家

『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家

人気ゲームシリーズ『桃太郎電鉄(桃鉄)』の生みの親、さくまあきらさんのご自宅を訪ねました。さくまさんは東京、京都のマンションに加えて、15年前から神奈川県湯河原町にもご自宅を構えています。

そこにあるのは8メートルを超える「桃鉄」の立佞武多(たちねぷた)や関連グッズ、仕事の資料、さらには大好きなクラシックカーをはじめとする数々のコレクション。

温泉に浸かりながらそれらを眺める時間が、何よりの楽しみなのだと言います。

仕事と趣味、さくまさんのライフワークが詰まった湯河原の家を紹介します。

※取材は、新型コロナウイルス感染症の予防対策を講じた上で実施しました

『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 間取図さくまあきらさん邸の間取図

高さ8メートルの立佞武多を収納する専用の保管庫

『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 プロフィールさくまあきらさん。人気ゲーム『桃太郎電鉄』の生みの親で、2023年内に発売される最新作『桃太郎電鉄ワールド』を含め、全てのシリーズを手がけている

さくまさんは現在、東京・京都・湯河原に自宅を持ち、それぞれの拠点を行き来する生活を送っています。湯河原の自宅は2009年に新築。滞在の目的は主に温泉療養のためですが、膨大な所有物を保管する場所としても利用されているのだとか。

収められているのは『桃太郎電鉄(以下、桃鉄)』のグッズやノベルティをはじめ、仕事関連の品々。そして、多趣味なさくまさんが数十年にわたり、集めに集めたクラシックカーや『ペコちゃん』『スター・ウォーズ』などのキャラクターグッズ、書籍などのコレクションが置かれており、住まいというより、まるで博物館のよう。

中でも目を引くのは、桃鉄を題材にした「立佞武多(たちねぷた)」。青森県五所川原市の祭り「五所川原立佞武多」で実際に運行した立佞武多が、専用の保管庫の中にすっぽりと収まっています。

『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 立佞武多高さ約8メートルの立佞武多が収まるように設計された専用の保管庫(写真右奥)
『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 立佞武多母家2階からのアングルがベストビュー

そもそも、この湯河原の自宅を建てることになったきっかけも、立佞武多を保管するためだったと言います。

2006年の『五所川原立佞武多』で、五所川原市とハドソンが桃鉄を題材にした立佞武多をつくってくれました。ただ、祭りで運行した後は保管しておく場所がないので、廃棄するしかないと言われて。

これだけのものを捨ててしまうのは、あまりにももったいないからと、譲ってもらうことにしたんです。でも、もらったはいいけど、東京の狭い自宅や、当時所有していた熱海の別荘にはとてもじゃないけど置けない。じゃあ、いっそのこと新しく家を買ってしまおう

もともと小さな旅館があった場所に家を建てた

さっそく、土地選びからスタート。もともと別荘を構えるほど気に入っていた熱海や、その近隣にターゲットを絞って探した結果、この場所に巡り合いました。

ここにはもともと小さな旅館が立っていました。川沿いで環境がよく、目の前には桜並木もあって。とても良い環境だなと。

旅館を廃業するというので、建物ごと購入したんです。当初、建物は基本的にそのままで一部をリフォームしようと考えていましたが、建築基準法の問題などがあって結局は建て替えることにしました。

その間、立佞武多は近くの倉庫に保管しておいて、この家に迎えられたのはお祭りが終わってから3年後でしたね

『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 外観旅館か料亭のような外観。実際、お店と間違えて入ってくる観光客が後を絶たないとか

現在の立佞武多は二代目になります。祭りで運行した後、いったん分解した上で青森から運んで、この場所で再び組み立てました。クレーンで吊りながらの作業でかなり大変でしたけど、ぴったり収まりましたね

ちなみに、立佞武多の材質は紙。

10年前にやってきた「初代」は日焼けによって色が褪せ、触るともろく崩れるようになってしまったそう。そのため、二代目を迎えるにあたって窓ガラスにUV加工を施すなど、劣化対策も抜かりありません

立佞武多の中からライトアップもできます。たまに点灯してお風呂から眺めると、すごく綺麗なんですよ

『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 立佞武多夜間にはライトアップすることも。外の通りからは見えないようになっている

ゆったり足を伸ばして疲れを癒やせる、源泉掛け流しのお風呂

立佞武多の保管のために建てた自宅ですが、湯河原を選んだもう一つの目的が「温泉」でした。

自宅のお風呂には源泉を引っ張っているのですが、そのままお風呂に入れるのだと時間がかかりすぎるため、いったんタンクにためてからお湯を入れるようにしています。ちなみに温泉料は一定量(基本量)までは同じ料金で、それを超えると超過料金がかかるのだそう。広々とした湯船には源泉が注がれ、いつでも湯治ができるようになっています。

『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 源泉掛け流しのお風呂設計士に「とにかく広くしてほしい」と要望したお風呂。「足を伸ばせるのはいいんだけど、お湯をためるのに時間がかかりますね(笑)」(さくまさん)
『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 源泉掛け流しのお風呂滞在時は源泉を掛け流しにしている。クラシックカーを眺めたり、小さいテレビでニュースを見たりしながら、ゆっくり1時間ほど浸かるそう

さくまさんは、脳内出血で倒れるなど1990年代後半から闘病生活を送っており、温泉はリハビリ目的だといいます。

もともと熱海に別荘を買ったのも、病気をした時に整体の先生に温泉療養を勧められたから。なので湯河原でも温泉を引きましたが、ここのお湯は熱海に比べて“穏やか”なんですよ。熱海の別荘の時は1週間くらい続けて温泉に入ると肌が荒れることがあって自分には合いませんでしたけど、ここに来てからは全くないですね。毎日ゆっくり温泉に浸かれるのがうれしいです。長く入浴するぶん基本量を超えてしまうので、温泉の使用代は割高になってしまいますけどね(笑)

「クラシックカー」から「ペコちゃん」まで。膨大なコレクション

中庭を取り囲むように複数の棟がつながるさくま邸。立佞武多の保管庫のほか、それぞれの棟に貴重なコレクションが置かれています

まず、保管庫の隣にあるのは「桃鉄部屋」。壁一面の棚に、桃鉄関係のグッズがずらりと並べられています。

キャラクターのフィギュアやぬいぐるみ、サイコロのグッズ。それから、桃鉄がパチンコやスロットになった時の台なんかもありますね。くれるって言うんでとりあえず受け取りました。正直、もらってもな……と思うけど、そんな感じで集まっていっちゃうんです。ちょっと今は山積みになっている箱で見えにくいのですが。

ちなみに、中に小さな車があるでしょう。あれ、この家ができた後に持ってきたので、入れるのが大変だったんです。表玄関の門が狭くて入らなかったから、いったん外壁を壊して車を入れて、また壁を直しました

『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 桃鉄部屋桃鉄グッズとともに保管された「BMWイセッタ」。壁を壊してでも、どうしても手に入れたかった車

そう、実はさくまさんは大の車好き。桃鉄部屋の隣には2台のクラシックカーを横並びで展示しています。

『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 クラシックカー初代シルビアと初代グロリア

もともと、父親がプリンス自動車工業(のちに日産自動車と合併)という自動車メーカーで働いていたこともあって、子どもの頃から車が好きでした。

本当は電車より好きかもしれません(笑)。

特に、この2台は昔から憧れだった名車。私にとっては、ベンツやロールスロイスよりも、どうしても手に入れたい車だったんですよ

全面ガラス張りにしたのは、母家からもコレクションを眺められるようにするため。中央の中庭越しに、リビングやお風呂からもクラシックカーや立佞武多を観賞することができます。

2階は各部屋ごとにさまざまなコレクションが収納されています。

『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 ペコちゃんルームこちらは「ペコちゃんルーム」。窓の外には立佞武多が見える
『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 ペコちゃんルームフィギュア、ぬいぐるみ、マグカップなど、大量のペコちゃんに囲まれている。「私が子どもの頃はあまり甘いものが食べられなくて。だからなのか、不二家のペコちゃんには思い入れがあるんですよ」(さくまさん)
『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 コレクション別の部屋には「鉄人28号」や「鉄腕アトム」、「スター・ウォーズ」関連のグッズも
『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 コレクションその向かいには映画のDVDがこれまた大量に収納されている

もともと東京の自宅にあった物も、ほとんど湯河原の家に集約しましたね。東京の自宅に残してあるのは、ベイスターズのグッズくらいじゃないかな(※さくまさんは横浜DeNAベイスターズの大ファン)

『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 コレクション
『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 コレクション2階の2部屋にはマンガ、小説をはじめとする大量の書籍。遊びに来て入り浸る友人もいるそう

「仕事命」のさくまあきらが唯一、仕事を離れる時間

現在、東京・京都・湯河原の“三拠点居住生活”を送るさくまさん。東京が中心で、目的に応じて京都と湯河原の自宅を使い分けています。湯河原の家は、ワーケーションのような形で利用することもできそうですが、本人にそうした感覚は一切ないようです。

『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 玄関玄関には祇園祭の名物「ちまき」と一澤信三郎帆布の「郵便受け」が。どちらも京都にゆかりのあるものなのが、京都にも家を構えているさくまさんならでは

お風呂以外の時間は部屋にこもって仕事をしているだけだから、東京にいようが京都にいようが、あまり変わらないんですよ。昔は制作チームのメンバーが泊まり込みでアイデアを出し合う、合宿所みたいな用途でもこの場所を使っていましたが、私が病気をして一人で仕事をすることが多くなってからはなくなりましたね

基本的に「ずっと仕事をしていたい」タイプだというさくまさん。70歳を超えた今も、新作『桃太郎電鉄ワールド』の総監督を務めています。この日もインタビューが終わるとすぐさま自室へ向かい、テストプレイに没頭していました。

ちなみに、妻の真理子さんからはこんな“ぼやき”も。

私が無理やり『海まで散歩に行きましょう』と連れ出しても、20分くらいしたら『帰って仕事したい』と言い出すんです。海をぼーっと眺めてのんびりするっていうことができない人で(笑)。仕事から離れるのは、本当にお風呂に入っているときくらい。大好きな野球中継も、仕事をしながら見ているくらいですからね

『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 リビング母屋のリビング。ここにも資料がたくさん収蔵されている
『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 リビング数十年にわたる過去の仕事の資料も保管。歴代の桃鉄シリーズや「桃太郎伝説」の設定資料、キャラクターのラフ図案など、さくまさんの仕事の歴史がここに詰まっている。「当時のデータを収めたフロッピーディスクなんかもあります。データを焼き直さないと見られないし、いらないっちゃいらないんだけど。なんとなく残していますね」(さくまさん)

仕事に関しては妥協を許さないさくまさんですが、それ以外のことにはかなり無頓着だそう。意外なことに、家に対するこだわりもほとんどなかったのだといいます。

外装も内装も、私から『こうしてください』というのはほとんどなくて、基本的におまかせ。こだわりは特にないですね。

あ、でも愛媛県『伊丹十三記念館』が好きなので、あのイメージを取り入れたいとは言いました。そこにも中庭があって、眺めがとてもいいんです。

あと要望したのはお風呂を広くすることと、ガラス張りにすることくらいじゃないかな。コレクションも一応置いてはいるけど、べつに見せ方に気を配っているわけじゃないしね。手に入ったら、もう満足なんですよ。だから、埃をかぶっていても気にしない

『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 和室真理子さんが希望した2階の和室。窓を開けると清流の音が聞こえる

いかにもこだわりが詰まっていそうな家の主とは思えない、肩の力が抜けたスタンス。とはいえ、大切な仕事場である書斎にはこだわっているのでは……。

いや、そもそも書斎がないですから、この家。寝室が仕事部屋代わりです。今はノートパソコン一つで何でもできますからね。用事がなければ、ほとんどベッドから出ずに仕事をしています

と、最後の最後まで、“らしい”返答。ただ、そんなさくまさんでも、家を建てた湯河原には愛着を持っており、街の環境や雰囲気も含め、夫婦ともども気に入っていると言います。

湯河原は、とにかく静かですね。熱海と違って、湯河原の観光客はみんな旅館でゆっくり過ごすからか、街中を歩く感じではないんですよ。特に、この家の周辺はのんびりした雰囲気です。食べ物屋さんも多くはないけど、『鮨こゝろ』さんや、『ステーキハウス西湘』さんなど、東京にも負けない名店がいくつかありますしね

根っからの仕事人間が仕事を忘れ、唯一こだわったお風呂に入ってゆったりと英気を養う。そんな時間が、名作ゲームのクオリティを支えているのかもしれません。

『桃太郎電鉄』さくまあきらさんが湯河原に建てた家 お風呂さくまさんお気に入りのお風呂からの眺め。左手にクラシックカー、右手に立佞武多が見える

🏠いろんな作家の家🏠
音楽家・mabanuaさん
小説家・角田光代さん
漫画家・新條まゆさん

お話を伺った人:さくまあきらさん

さくまあきらさん

ゲームライター・ゲームクリエイター・作家。月刊OUT誌で『私立さくま学園』、週刊少年ジャンプ誌で『ジャンプ放送局』といった読者投稿コーナーに携わる。1987年にはゲーム『桃太郎伝説』を発表。1988年に発売した『桃太郎電鉄』は大ヒットし、以後20作超をシリーズ化した。2023年には『桃太郎電鉄ワールド』を発売予定。

Twitter:@isetta_23

聞き手・文:榎並紀行(やじろべえ)
写真:関口佳代
編集:はてな編集部

©さくまあきら ©Konami Digital Entertainment
©さくまあきら ©土居孝幸 ©Konami Digital Entertainment