部屋の壁の一部に色や柄の異なるアクセントクロスを張ると、おしゃれで個性的な空間に仕上がります。輸入壁紙専門店WALPAの岡本美岐さんの話をもとに、専門家の視点でアクセントクロスの選び方や人気の色と柄、導入の成功例などを紹介します。
アクセントクロスとは?
アクセントクロスの意味や特徴
アクセントクロスとは、壁の一部にだけ違う色や柄のクロスを取り入れて空間のアクセントにするものを言います。
「基本的には4面ある壁面のうち、1面だけ色や柄が異なるクロスを取り入れて空間を印象的に仕上げます。壁のほかにも天井や飾り棚(ニッチ)、キッチンカウンターなどにアクセントクロスを張るのも人気です」(岡本さん、以下同)
アクセントクロスの施工費用相場
アクセントクロスの施工費用は施工業者やハウスメーカーごとに幅があります。建築費用に含まれている場合もあれば、別途費用がかかる場合も。いずれにせよ、注文住宅の計画段階で、見積もり依頼の前に施主持込材料の受付可不可をあわせて確認したほうが良いでしょう。
一方で、DIYで6畳の一面の壁にアクセントクロスを張ると、クロス本体とクロスを張るのに必要な材料費を合わせて1万5000円から2万円ほどで実現可能です。
アクセントクロスを使うメリット
テーマ性を演出できる
ラグジュアリー、和モダン、プロバンス風など、アクセントクロスによって空間にテーマ性を演出することができます。
「テーマに合わせてアクセントクロスやインテリア、家具を揃えると、統一感のあるおしゃれな空間になります」
空間にメリハリが生まれる
壁面の一部だけ色や柄が違うと単調だった壁にメリハリが生まれ、空間を広く見せることができます。
例えば、
・奥行きを出したい場合は寒色系のクロス
・天井を高く見せたい場合は縦のラインが入ったクロス
・部屋を幅広く見せたい場合はボーダー柄のクロス
といったように、どんな色や柄を使うかによって空間の見え方が変わってきます。
壁の汚れや傷の対策になる
傷や汚れに強い素材の壁紙をアクセントクロスにして汚れや傷から守る方法もあります。
「ペットによる引っかき傷や小さなお子さんによる汚れ防止などの観点から、部屋の一部に傷や汚れに耐性のあるアクセントクロスを取り入れることもできます。その場合、ただおしゃれな空間になるだけでなく、機能面でも役に立ちます」
アクセントクロスを使うデメリット
テーマ性を統一しないと落ち着かない空間になる
「アクセントクロスを使いすぎたり壁紙だけ主張してしまうと統一感のない空間になります。また、家具やインテリアとアクセントクロスのデザインが掛け離れてしまうとセンスのない印象になりがちです」
アクセントクロスを取り入れたことを後悔しないためにも、事前に計画して壁紙とインテリアのテーマを統一することが大切です。
建築前に壁紙のイメージを持つことが難しい
「家を建てる前に壁紙のイメージを正確に持つことは難しく、アクセントクロス選びに難儀するかもしれません。図面を見て間取りや広さをイメージすることはできても、壁のサイズ感や空間の雰囲気まで把握するのは容易ではありません。もし可能であれば建築段階で施工会社にお願いし展開図で家のつくりを確認するのがベストです」
特にアクセントクロスは空間全体の調和を意識して選ぶことが大切。不安な人は、家が完成した後に空間全体の雰囲気を見ながらアクセントクロスを選び、DIYで施工することもできます。
アクセントクロスの選び方のポイントは?
空間のテーマを1つに絞る
「どんな部屋にしたいのか、テーマを1つ決めてからアクセントクロスを選びます。服選びは全身のテーマに沿ってアクセサリーやヘアスタイルを決めますよね。アクセントクロスも服選びと同じで、空間のテーマを1つに絞った上で色や柄を選び、さらに調度品を合わせていくと良いと思います」
部屋の中で最も目立つ壁に張る
どの壁にアクセントクロスを使うのかもポイントです。
「扉を開けたときに一番最初に目に入る壁にアクセントクロスを張りましょう。その空間の中で最も目立つ壁に張ることで、壁紙が部屋のアクセントとして機能します」
色のバランスを考える
「カラーのバランスは、ベースとなるクロスのカラー:アクセントクロスのカラー:ポイントカラー=7:2:1が黄金比です。アクセントクロスが空間のアクセントとなるように、私たちは空間全体のバランスを見ながらお客さまにアドバイスをしています。注文住宅でアクセントクロスを取り入れる場合、ハウスメーカーのデザイナーやカラーコーディネーターなど専門知識を持つ人と相談しながらバランスを決めていくことをおすすめします」
面積は空間の10〜20%にする
アクセントクロスの面積が広いとクロスが与えるインパクトが薄くなってしまいます。そうならないように理想の面積比率も知っておきましょう。
「アクセントクロスを張るのに理想的な面積は、床や天井、壁を含めた空間全体の面積の10〜20%です。空間を印象付けるための壁紙なので、面積が小さすぎても大きすぎてもその効果は弱まってしまいます」
柄物はテーマ性を出しやすい
「柄物は使い方が難しそうと敬遠する人もいますが、テーマ性を出しやすく部屋のアクセントとして使いやすい壁紙です。一枚絵の壁紙を、絵画を飾るようにアクセントクロスとして使う手法はとてもおしゃれです」
シミュレーションができるアプリ等を利用する
「空間の写真のデータを使って、パソコンやスマホの画面上でクロスの試し張りができるアプリを使うのもおすすめです。サンプルのチップを確認するよりも空間のイメージがしやすくなり、失敗を防ぐことができます」
アクセントクロスの導入例。人気の色&柄も紹介!
リビング×木目調
リビングに木目調のアクセントクロスを導入した例。目に優しい木目調のクロスは観葉植物との相性も良く、くつろげる雰囲気を演出してくれます。
テレビ背面×ライムイエロー
テレビの背面にライムイエローのアクセントクロスを張って明るく元気な雰囲気の空間に。ホワイトの建具とも調和し、海外風のリビングになっています。
寝室×グレージュ
グレージュのアクセントクロスを張ったホテルライクな寝室。1日の疲れを癒やす場所だからこそ、グレージュやベージュ、ネイビーなど目に優しい落ち着いた色の壁紙が人気です。
子ども部屋×ブルーグレー
子ども部屋にブルーグレーのアクセントクロスを導入した実例。ブルー系の色は心を落ち着かせて集中力を高めると言われているため、子ども部屋やワークスペースにぴったりです。
トイレ×北欧モダン
淡いベージュに鳥が飛ぶ北欧デザインのアクセントクロスをトイレに使用しました。おしゃれで可愛らしいトイレに仕上がっています。
玄関×一枚絵
玄関のウェルカムウォールに一枚絵のアクセントクロスを使用しました。まるで絵画を飾ったような印象に仕上がっています。
キッチン背面×石目調
キッチンの背面に石目調のアクセントクロスを使用してスタイリッシュな雰囲気に仕上げた実例。
「石目や木目、レンガ、モルタルなど素材模様のクロスは最近のトレンドです」
キッチンカウンター×タイル柄
キッチンカウンターにタイル柄のクロスを張ってオリエンタルな雰囲気を演出。キッチンの背面には落ち着いたダークグレーのアクセントクロスを使用しています。異なる2種類のアクセントクロスが調和し、格好良いキッチンになりました。
天井×ネイビー
折り上げ天井にネイビーパープルのアクセントクロスを張った実例。天井にコントラストが生まれたことで、広がりを感じられる空間になりました。
アクセントクロスを使ったマイホームの成功例を紹介
ここからはアクセントクロスを導入した実例を見ていきましょう。家のどの部分にどんなアクセントクロスを張るのかなど、先輩の成功例を家づくりのヒントにしてみるのはいかがでしょうか。
【case1】 長女が自分で選んだ淡い紫のアクセントクロス
長女が中学校に入学するタイミングで妻の実家を二世帯住宅に建て替えたFさんファミリー。6人家族のこだわりが詰まった快適な新居が完成しました。長女の部屋には薄紫色のアクセントクロスを使い、空間全体にパステルカラーで統一感を出しています。こちらの壁紙はショールームで長女が自分で選んだお気に入りです。年齢を重ねても飽きが来ない、シンプルながらも可愛らしい子ども部屋になりました。
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お互いの生活音を気にせず、6人が快適に暮らす二世帯住宅
【case2】 星空のクロスを使った遊び心のある寝室
子どもが生まれ、自由に遊べる家を建てたいと考えたKさんは冬でもあたたかく広々としたマイホームをつくりました。間取りや壁紙、インテリアの検討などすべてを楽しく決めていったというKさん。2階の主寝室の壁にはブルーのストライプ柄のクロス、天井には照明を消すと星空のように光るクロスを採用しました。照明器具の明かりを点けると月面の模様が浮かび上がります。就寝時間が待ち遠しくなりそうな、遊び心のある寝室です。
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子どもが元気に裸足で走りまわれる、広くあたたかな家が完成
【case3】お気に入りの壁紙を各所のアクセントに
第二子の妊娠と増税を機にマイホームの新築を思い立ったIさん。建築会社のプランナーさんのアドバイスもあり、各所に気に入った壁紙を使用しました。スキップフロアやスタディースペースにはポップな柄のアクセントクロスを使用して明るい雰囲気にしました。買い置きの食材を入れておくパントリーの壁には淡いストライプ柄のアクセントクロスを使い、爽やかなイメージに。キッチンカウンターのガラスボトル型の照明と雰囲気がマッチしています。
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空間をうまく区切った、アイデアたっぷりの楽しい家
アクセントクロスを取り入れるときのポイント
アクセントクロスを使うことで空間がおしゃれな雰囲気になり、テーマ性が生まれます。しかし気をつけなければいけないのはテーマの混在。洋服を選ぶときと同様に、空間のテーマを1つに統一することで全体のデザイン性が高まります。
また、アクセントクロスが占める面積比率や空間全体のカラーバランスも大切なポイント。施工会社とよく話し合い、アクセントクロスセンスを上手に使ったセンスの良い空間をつくっていきましょう。
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取材協力/輸入壁紙専門店 WALPA
インテリアコーディネーター 岡本美岐さん
取材・文/佐藤 愛美(りんかく) イラスト/青山京子