埋め込み収納とは、壁の中に埋め込んでつくる収納のこと。限られた空間を有効活用でき、さらに空間のアクセントとしても効果的です。埋め込み収納の特徴や設置する際のポイントについて、インテリアコーディネーターの石井礼さん(僕らの家)に話を聞きました。
埋め込み収納とは?
埋め込み収納の特徴
埋め込み収納とは、壁の中に埋め込む形で設計された収納のことをいいます。限られた空間を有効に使って収納スペースを増やすことができ、コンパクトな住宅にもぴったりです。また、見た目もおしゃれで空間のアクセントとして活かすこともできます。
「埋め込み収納はいわゆる『見せる収納』タイプのデザインが多く、おしゃれな家具を置く感覚で住宅に取り入れられています。上段は飾り棚、下段は収納量を重視した扉付きの収納といったように、異なるタイプの収納を組み合わせることも可能です」(石井さん、以下同)
埋め込み収納の種類
一口に埋め込み収納といっても、大きさや奥行きはさまざま。床から天井までを使った大規模なものから、花瓶などを飾るためのコンパクトなタイプまであります。
その中でも特にポピュラーな埋め込み収納が「ニッチ」です。ニッチとは、壁の一部を浅くくぼませてつくる空間のことです。玄関やリビングなどで飾り棚として使用されることが多く、小物やアート作品の置き場所に適しています。
埋め込み収納を設置するメリット・デメリット
メリット
「空間を有効活用できて、収納量をアップできるところが埋め込み収納の魅力です。壁の中に埋め込まれた収納であるため邪魔になりにくく、キャビネットやサイドボードなどの家具を置くよりも空間を広く使えます。また、好みの家具と組み合わせて室内をおしゃれに見せることもできます」
例えばリビングに埋め込み収納があることで、子どものおもちゃや本、趣味のアイテムなどを気軽に出し入れすることができます。
デメリット
機能性やデザイン性の面で魅力が多い埋め込み収納ですが、デメリットも知っておきましょう。
「壁を彫り込んで設置するため、つくり方によっては断熱性や遮音性が少々低くなるという弱点があります。しかし小さな飾り棚程度であれば生活に支障は出にくく、そこまで気にする必要はありません。また、遮音性に関しては収納しているものが吸音してくれる場合もあります」
断熱性や遮音性は埋め込み収納の規模によって変わります。大きな収納を設置したい場合は、念のため施工会社に確認してみるとよいでしょう。なお、耐火性に関しては法律の基準を守って建築されているので心配はありません。
そして、場所によっては埋め込み収納を設置できない場合もあるため注意が必要です。
「木造住宅では、建物の強度を保つため筋交いや構造用合板を使用している部分があり、その部分には埋め込み収納を設置することができません」
埋め込み収納を設置する場所を決める際は、構造に関してプロの視点が必要です。場所決めの際にもよく打ち合わせをしたほうがよいでしょう。
埋め込み収納の設置におすすめの場所は?
次に、埋め込み収納を設置するのにおすすめの場所について解説します。
リビング
「リビングは家族の生活の中心であり、来客が過ごす場所でもあります。その場にいる人の目を楽しませるために、本や趣味の小物をおしゃれに飾るための埋め込み収納が人気です」
玄関ホール
「玄関ホールに飾り棚の埋め込み収納を設置すると、花瓶やアート作品などを飾ることができます。さらに間接照明と組み合わせることで、より印象的になります」
トイレ・洗面所
「トイレや洗面所では、トイレットペーパーや洗面小物を収納したり、インテリアを飾ったりする埋め込み収納が人気です。水まわりはデザイン性だけでなく実用性も求められる場所です」
トイレや洗面所などの限られた面積の中に、できるだけ収納を増やしたいというニーズにもマッチしています。
キッチン
「キッチンの壁に埋め込み収納を設置すると、スパイスラックとして使用したり調理器具を収納したりすることができます」
調味料やキッチンアイテムをおしゃれに見せたい人や、料理が趣味の人に人気の設置場所です。
寝室
「寝室に埋め込み収納をつくり、間接照明や絵画、時計などを置きたいという方もいます。収納量よりもデザイン性を重視して設置されることが多い場所です」
書斎
「書斎(ワークスペース)に埋め込み収納を設置して、本や資料を置くのも便利です。収納するものが多い場合は、床から天井までいっぱいに使った収納にするという選択肢もあります。この場合は圧迫感がないように空間全体のバランスを見ながら設計したほうがよいですね」
階段
「こちらは階段の横に壁一面の埋め込み収納を設けた実例です。本やスピーカー、コレクションアイテムなどを豊富に収納できて見た目のインパクトもあります」
埋め込み収納のあるおしゃれで便利な家づくり。設置のポイントは?
設計の段階で早めに相談をする
「構造的に埋め込み収納をつくることができない場所もあるため、設計の図面を作成する前に相談することをおすすめします。特に、奥行きの深いものや床から天井まで使った大規模なものの場合、家全体の間取りにも関わってくるので注意しましょう」
「また、埋め込み収納の中に何をしまいたいのかをあらかじめ明確にしておくことも重要です。何をどれくらいしまいたいのかによって、設置に適した位置や大きさが変わってくるためです」
せっかくつくった埋め込み収納を使いこなせず後悔した……という失敗談もあります。建築の段階から収納計画を丁寧に行うことで、実用度の高い収納スペースになるはずです。
施工会社と余裕をもって打ち合わせを行うことで、より理想に近い家づくりを実現できます。
棚板やブラケット、アクセントクロスにこだわる
「デザイン性にこだわりたい方は、棚板や棚板を支えるブラケットの素材や色を好みのものにしてみたり、棚の内側にアクセントクロスを張ったりする方法があります。好きなテイストを取り入れてオリジナリティーを出せる部分です」
棚の支えとなるブラケットにも、アイアンや真鍮(しんちゅう)などさまざまなデザインがあります。また、ブラケットをなくすことによってシンプルでモダンな見た目に仕上がります。
使いこなせる数と大きさを考える
「埋め込み収納をたくさんつくっても、何を収納したらよいかわからずデッドスペースになってしまうケースがあります。また、ホテルライクな大きめの飾り棚をつくってみたものの、レイアウトを維持する手間がかかり使いこなせなかったという失敗談も。埋め込み収納を計画する際は、使いこなせる数と大きさを前もってよく検討したほうがよいですね」
埋め込み収納は大きなものをたくさんつくれば便利というわけでもありません。家族のライフスタイルに合った使いやすい収納になるように計画していきましょう。
間接照明を埋め込む
「飾り棚など、見せるタイプの収納では間接照明を一緒に設置するのもおすすめです。間接照明の光が飾ったものを照らし、おしゃれな印象にしてくれます」
埋め込み収納の中に間接照明を設置する場合は、その空間の照明スイッチとオンオフを連動させることで、ライトのつけ忘れや消し忘れを防ぐことができます。
おしゃれな埋め込み収納がある注文住宅の実例を紹介
ここからは埋め込み収納の実例を紹介します。おしゃれな埋め込み収納をつくった先輩たちのマイホームを見て、ぜひ家づくりのヒントにしてください。
【case1】トイレの壁面に埋め込み収納を設置してスッキリとした空間に
子どもの小学校入学を前に家づくりをスタートしたSさん家族。妻の両親と一緒に住める二世帯住宅を完成させました。トイレや洗面所など水まわりの空間もおしゃれに仕上げ、居心地の良い空間になるように工夫しました。トイレの壁には収納を埋め込んで空間を有効活用。トイレットペーパーや掃除用品をしまっておくことができる便利なスペースができました。
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【case2】モダンなグレーの壁に施した飾り棚
子どもを自由に遊ばせることができる広々とした一戸建てが欲しいという理想をもって家づくりを始めたYさん家族。生活動線と家事動線にこだわった住みやすい間取りの家になりました。シューズクロークを設けた便利な玄関の壁にはニッチ棚を設け、ちょっとした小物を飾ることができるように施工。モダンなグレーの壁に、おしゃれなアクセントが生まれました。
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【case3】階段下の埋め込み収納は家族の使いやすさ重視で設計
将来的に両親との同居も視野に入れて新築の注文住宅を検討したというTさん。シンプルな切妻屋根の外観にこだわった、家族が暮らしやすい家が完成しました。リビングには、階段下の空間を有効活用して埋め込み収納を設置しています。オープンな収納の中に棚を一段設け、子どものアイテムを保管する場所として活用。当初の予定では奥行きが90cmでしたが、深すぎて子どもが頭をぶつけたり、ものを出し入れしにくいという問題点が工事段階で発覚。予定を変更して奥行きを浅く変更しました。子どもがお絵描きをする際のデスク代わりにもなっているそうです。
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埋め込み収納を注文住宅に取り入れるときのポイント
最後に、注文住宅に埋め込み収納を設置するときのポイントをまとめました。
・埋め込み収納を設置できない場所もあるため、相談と計画は早めに行う
・おしゃれな棚板や間接照明と組み合わせることで収納のデザイン性が高まる
・数や大きさをよく検討し、暮らしの中で長く使用できるようにする
「おしゃれで便利な埋め込み収納ですが、せっかくコストをかけてつくるからには、長く使えるものにしたほうがよいでしょう。そのためにも、建築段階から収納計画をしっかりと立てることは重要です。ライフスタイルや好みに合った埋め込み収納を設計し、家づくりを楽しんでくださいね」
スーモカウンターに相談してみよう
埋め込み収納を注文住宅に取り入れたいと検討している人は、ぜひスーモカウンターに相談してみてください。アドバイザーがお客様の家づくりを全面サポートします。注文住宅を建てたいけど何から始めたらいいの?という方も大歓迎。家づくりのヒントからお金のことまで親身になって相談に乗ります。
インテリアコーディネーター・設計担当