日本家屋は、伝統的な技術や自然素材を駆使した美しい建築物であり、その魅力は今もなお多くの人々を惹きつけています。日本家屋に憧れを抱き、いつか自分だけの理想の家を建てたいと考える方も少なくありません。
そこで今回は、日本家屋の特徴や魅力を詳しく解説するとともに、建築のメリット・デメリット、そして暮らしやすい家を実現するためのポイントについて、井戸川建築の井戸川直央さんのお話を交えてご紹介します。
日本家屋の魅力とは?
「日本家屋の魅力は、四季を感じ、四季とともに生活できること。そのための知恵が詰まっていること」だと井戸川さん。具体的にどのような内容なのかを伺いました。
「木」や「塗り壁」「畳」が快適な湿度を保つ
日本の気候は、四季がはっきりしていることが特徴です。冬になると気温が下がり空気が乾燥する一方、夏になると気温の上昇と共に湿度も高くなります。日本家屋では湿気を吸排出する木や塗り壁、畳が多用され、湿度を調整しながら快適に暮らせるよう工夫されています。
「日本の気候風土にあった家を建てるには、日本の森で育った木を使うことが望ましいと考えています。例えば弊社では、地元茨城県の県産材である『八溝(やみぞ)材』を柱や梁(はり)に使用しています。八溝材は地元の気候にあっているのはもちろん、曲げに強く狂いが生じにくいことが特徴です。
壁については多孔質で調湿機能に優れた漆喰(しっくい)で仕上げることが多いです。漆喰は快適な湿度を保つだけでなく、コテの押さえ方を変えることで、壁にさまざまな表情をつくり出せるのも魅力です」(井戸川さん/以下同)
建築物として耐久性が高い
木造の日本家屋は、耐久性が高いことでも知られています。世界最古の木造建築である法隆寺は、建立から1300年以上の歴史を誇るほどです。
「日本家屋の耐久性が高い理由は、無垢(むく)材や塗り壁などを用い、日本の高温多湿の環境でも適切に湿度を調整できるつくりがなされているからだと考えます。適度に窓を開け空気を入れ換える、きちんとメンテナンスするなど建物と寄り添ってもらえれば、100年以上暮らし続けることも可能です」
光と音をコントロールできる
日本家屋は住空間に入ってくる光と音をコントロールし、心地よく暮らせることも魅力の一つです。
「例えば軒は、部屋に入る日差しの量をコントロールする役割を果たしています。さらに障子に使われる和紙は強い日差しを和らげ、襖(ふすま)は開く幅によって入ってくる光や音の量を調整できます。
また日本家屋に使われる木材や塗材には室内外の音を吸音する効果があり、屋根瓦は雨音を吸音するため室内に響かせません。心地よいと感じられる光や音の量に包まれて暮らせるのは、日本家屋のよさだと思います」
日本家屋の「外観」の特徴は?
伝統的な日本家屋の外観には、独特な特徴があります。具体的にどういった特徴があるのか、なぜそのような外観となっているのかを井戸川さんに伺いました。
「軒の出」が長い
日本家屋は「軒の出」が長いことが特徴です。軒の出とは、屋根のうち外壁から出っ張った部分である「軒」の長さを指します。
「軒を長く出すと、夏の強い日差しが直接部屋に入り込むのを防げるようになります。それでは冬に寒いのでは、と思ってしまいますが、冬は日が傾くため軒の出が長くても日差しは部屋の奥まで届くので問題はありません」
「弊社では軒を長く出すために、耐風や断熱性、通気性も考慮して、屋根には入母屋屋根(いりもや屋根)※を採用することが多いです」
※入母屋屋根:寄棟屋根の上に切妻屋根を乗せたような形状の屋根
「瓦屋根」が重厚感を演出する
日本家屋は、屋根材として粘土を焼き固めた「瓦」が用いられることも特徴です。瓦は近年主流の薄くて軽いスレート材とは違い、厚みがあって重いため、建物にも重厚感を与えます。
「瓦は重厚感があるだけではなく、熱に強く環境の変化に左右されにくいため耐久性が高いことも特徴です。また熱伝導性が低い土が原料であるので断熱性も高く、暑さ対策にも優れています。さらに吸音率が高く防音性にも優れ、雨音などを気にせず暮らせることも瓦屋根のメリットです。
なお瓦屋根の耐震性を気にする方もおられますが、家を建てるときには瓦の重さを考慮して耐震設計をおこなうので、瓦屋根だからといって心配する必要はありません。瓦はかみ合わせ構造になっているのに加え、近年は1枚1枚釘で留めることが義務化されているため、地震や台風でずれたり落ちたりすることもなくなっています」
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「開口部」が広く数も多い
日本家屋は庭に向かって全面に大きな掃き出し窓が設けられているなど、開口部が広く数が多いことも特徴です。
「近代住宅は気密性や断熱性を優先するために、開口部はできるだけ小さく・少なくする傾向があります。日本家屋ではどのサイズの開口部を、どの場所に配置するかを計算し、季節の移り変わりを楽しめるようになっています」
「縁側」で内と外を緩やかにつなぐ
日本家屋の多くには、庭に向けて縁側が設けられています。縁側を設けると、家の中と外との境界があいまいになり緩やかにつながります。
「縁側はほかにも、玄関からの正式な訪問ではなく、カジュアルに訪問したい来客がベンチ代わりに腰掛けて気軽に話す場所としても重宝します。
また掃き出し窓と和室の間に縁側をはさむことで、畳に直射日光が当たりにくくなり日焼けを防いだり、空気の層ができて室温の上昇を抑えたりする役割も果たします」
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日本家屋の「内装」や「間取り」の特徴は?
日本家屋の内装や間取りにも、近代の住宅では見られなくなりつつある特徴があります。具体的な内容を、井戸川さんに伺いました。
「畳の間」でくつろぐ
近代住宅はフローリングの部屋がほとんどですが、日本家屋は畳の間を中心に構成されていることが特徴です。
「い草を主原料とする畳表が張られた畳は、自然素材独特の風合いがあり、リラックス効果も得られます。フローリングと違い程よいクッション性があるため踏み心地もよく、冬に寝転んでも冷やっとすることがありません。
さらにい草は調湿性や吸音性などの機能性も高いので、快適にくつろげるのも畳の間のメリットです」
「床の間」で来客をもてなす
日本家屋の多くには、「床の間」が設けられていることも特徴です。
「床の間とは、和室に設けられた、畳よりも1段高くなったスペースです。床の間は来客をもてなすための部屋に設けられ、掛け軸や季節を感じられる花などが飾られます。弊社では、日本家屋を建てられる方の9割程度が、床の間をご希望なさいます」
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「書院」で和のインテリアを演出する
床の間の脇に「付け書院」と呼ばれる出窓風の座敷飾りを設置することもあります。もともとは書物を読むためのスペースとして使われていましたが、現代では掛け軸や置物など、和のインテリアを飾り活用している場合もあります。
床の間と同様に、書院を設けることで和室全体に趣を持たせることができますが、さらに格式高い印象も加わります。また、格式よりも和モダンな雰囲気を演出したい場合には、出窓のように突き出さず、明かり窓だけを設けた「平書院」という造りもおすすめです。
「真壁づくり」で木の風合いと温もりを出す
近代住宅では柱をすべて隠すように壁板を張る「大壁づくり」が主流ですが、日本家屋では柱を見せる「真壁づくり」とすることが特徴です。真壁づくりにすると柱とする木が露出するため、木の風合いと温もりを感じられるようになります。
「大壁づくりで柱を壁の内側に隠してしまうと、木の調湿効果を十分活用できません。真壁づくりで木を露出させることは、調湿効果を高めるための日本家屋の工夫の一つでもあります。
また真壁づくりの部屋は壁が凹むぶん空間を広く取れることや、日本家屋独特の風格や趣が出ることもメリットです」
「ふすま」や「障子」で部屋を仕切る
日本家屋では、壁ではなくふすまや障子で部屋を仕切ることも特徴です。ふすまや障子を取り払えば部屋をつないで広く使えるため、空間活用の自由度が高くなります。
「ふすまや障子で部屋を仕切ると、夏や冬には部屋を細かく区切って冷暖房効率を上げる、快適な季節には開け放して風を通しやすくするなど、温度調整しやすくなるのもメリットです。
また障子は部屋を均一の明るさにするのにも役立ちます。例えば広縁と和室の間を障子で仕切ると、障子を介して部屋全体にやさしく光が広がります」
「地窓」で庭の景観を楽しむ
「地窓」とは、床に近い位置に設置される窓のことで、もともとは掃除の際にゴミや埃を外に掃き出すためにつくられたものです。しかし、近年では採光や換気を効率的に行う目的や、足元から庭の景観を取り入れることで、より自然を身近に感じられるために利用されています。
地窓からは、花や植木と同じ目線で庭を眺めることができ、普段とは異なる角度から自然の美しさを味わうことができます。また、外からの視線を気にせずに光や風を取り入れることができる点も地窓のメリットです。
特に和室は地窓との相性が良く、床から数十センチ上に設置された吊り押し入れと組み合わせることで、美しい景観を楽しみながら限られた空間を有効に活用できます。地窓は和室だけでなく、玄関や廊下、リビングなど、さまざまな場所に設置することが可能です。
「縁側」でゆとりのある時間を過ごす
縁側は、日本家屋に欠かせない、和室と庭をつなぐ板張りの通路です。家族でくつろいだり、来客をもてなしたりと、ゆったりとした時間を過ごすための理想的な場所といえます。西洋建築のウッドデッキやテラスと縁側は似た役割があります。
縁側には「広縁」と「濡縁」の2種類があります。広縁は、網戸やガラス戸の内側に設けられた縁側で、室内と一体化した空間です。これに対し、濡縁はガラス戸の外側に設置されており、庭により近い開放感がありますが、屋外にあるため手入れが少し手間になります。
広縁のメリットは、屋内にあるため汚れにくく、夏は直射日光を遮り、冬は日差しを取り入れることで冷暖房の省エネ効果が期待できる点です。一方で、濡縁は庭との一体感があり、自然をより身近に感じながら過ごせます。
縁側については以下の記事でも解説していますので、参考にしてみてください。
「引き戸」で省スペースを実現する
日本家屋では手前、もしくは奥に開く「開き戸」ではなく、左右のどちらかにスライドさせる「引き戸」が採用されることも特徴です。
「引き戸にすると、室内や廊下に扉が開くスペースを考える必要がなくなります。閉じ幅も調整しやすいので、空気を循環させたいときや、室温を調節したいときも便利です」
「土間」で作業性を高める
日本家屋には、屋内にありながら土足で過ごせる「土間」が設けられています。家の中では靴を脱ぐ日本においては、近代住宅でも玄関に土間が設けられていますが、日本家屋では玄関はもちろん、作業スペースとして土間空間が確保されているケースも多く見られます。
「広い土間があると、例えば自転車を持ち込みメンテナンスする、趣味のアウトドアグッズを保管・手入れするなど、汚れを気にせず作業できるようになるのがメリットです。
土間は部屋よりも1段下がり、コンクリートなどで仕上げられるため夏には涼しく過ごせます。部屋と庭との間に土間を設けると、庭との連続性が出て一体感も得られます」
日本家屋で使用される代表的な素材
日本家屋の特徴を理解したところで、日本家屋に使用される代表的な素材についても確認しておきましょう。ここでは、「漆喰・珪藻土」「木材」「和紙」の3つに焦点を当てて解説していきます。
漆喰・珪藻土
漆喰と珪藻土は、日本の伝統的な家屋で塗り壁として古くから使われている素材です。漆喰は主に石灰石からつくられ、珪藻土は化石化した植物性プランクトンが原料となっています。どちらも天然素材ならではの独特な風合いと趣を持ち、塗り方によって多彩な表情を見せます。
これらの素材は、断熱性、調湿性、保湿性、そして抗菌性に優れており、気候の変化が大きい日本でも、年間を通じて室内環境を快適に保つ役割を果たします。
漆喰は基本的に白色ですが、塗り方や乾燥の過程で色ムラが生じることがあります。そのため、美しい仕上がりを求める場合には、経験豊富な職人に依頼するようにしましょう。一方、珪藻土は豊富なカラーバリエーションがあり、和室だけでなくさまざまな部屋での利用がしやすい素材です。
塗り壁について以下の記事でも解説していますので、参考にしてみてください。
木材
木材は、日本家屋の柱や梁、床、壁など、建物の骨組みや主要部分に広く使われる重要な素材です。木材には調湿効果があり、抗菌力や消臭力にも優れているといわれています。また、柔らかい天然木のフローリングを使用すれば、衝撃を吸収してくれるので、足に優しく小さな子どもやお年寄りがいる家庭でも安心して使用できます。
さらに、傷や汚れが気になったときは、専用の道具で表面を磨き、オイルやワックスを塗り修復できるという利点もあります。
日本家屋で使用される木材には、スギ、ヒノキ、ケヤキ、ヒバなどさまざまな種類があり、それぞれの木材には独特の色味や木目、特徴があります。これらの特徴を理解し、自分の好みに合った木材を選ぶことで、快適で理想的な空間を作り上げることができるでしょう。
和紙
和紙は日本の伝統的な素材で、ふすまや障子、壁紙、天井などに幅広く使われています。和紙の主な原料は、コウゾ、ミツマタ、ガンピといった植物で、これらは繊維が長く丈夫なため、薄くても強度が高いという特徴があります。また、和紙にはビニール製のクロスにはない独特の光沢があり、壁紙として使用すると部屋全体の雰囲気が柔らかくなります。障子に使えば、和紙を通して光が拡散され、日差しがやさしくなりながらも部屋全体が明るくなるでしょう。
和紙は日本各地で生産されていますが、特に福井県の「越前和紙」、岐阜県の「美濃和紙」、高知県の「土佐和紙」は「三大和紙」として知られ、品質の高さで有名です。このほかにも、新潟県の「小国和紙」や富山県の「越中和紙」など、各地に個性豊かなブランド和紙があり、さまざまな種類から好みの和紙を選ぶ楽しさもあります。
日本家屋を建築するメリット
日本家屋を建築する主なメリットは、以下の3点です。
- ふすまの開閉によって部屋の広さが変わる
- 通気性や調湿性が高い
- 障子で外からの光を調光できる
それぞれ解説します。
ふすまの開閉によって部屋の広さが変わる
日本家屋の大きなメリットの一つは、ふすまを開け閉めすることで部屋の広さを自由に変えられる点です。現代の住宅では、部屋と部屋が壁や扉で区切られているため、用途に応じて部屋の広さや間取りを変更するのは難しいです。
一方、日本家屋では、通常は6畳の部屋が2つある場合でも、大勢の人が集まるときにはふすまを開けて12畳の大広間として使うことができます。来客時だけでなく、日中の活動時にはふすまを開けて広々と使い、夜の就寝時にはふすまを閉めてプライベートな空間を確保するなど、生活シーンに合わせて部屋の広さを調整することが可能です。
通気性や調湿性能が高い
日本家屋には、通気性と調湿性が優れているという大きなメリットもあります。漆喰や珪藻土、木材、和紙といった自然素材が使われているため、外気がスムーズに出入りし、夏の湿気や冬の乾燥を和らげる効果があります。そのため、日本家屋は一年を通して快適な住環境を維持しやすいのです。
障子で外からの光を調節できる
障子を使って外からの光を調節できることも、日本家屋の大きなメリットの一つです。
障子は直射日光をやわらげつつも部屋全体にやさしい光を広げてくれるため、天気が悪くない限り、日中は基本的に照明が必要ありません。障子だけで調光できる日本家屋なら、直射日光を防ぎながら適度な明るさを保つことができます。
日本家屋を建築するデメリット
上記でご紹介したとおり、日本家屋を建築することでさまざまなメリットを得られます。一方で、以下のようなデメリットも存在するため、あらかじめ頭に入れておきましょう。
広い敷地面積が必要で建築費用も高くなりがち
日本家屋を建築する際のデメリットの一つは、広い敷地面積が必要で建築費用が高くなりやすいことです。
敷地面積が広くなると、土地代も当然高くなります。また、昔ながらの日本家屋を建てるには高度な技術が求められるため、建築費用も高くなりがちです。
予算や敷地面積を抑えたい場合は、本格的な日本家屋ではなく、現代住宅に日本家屋の要素を取り入れた和風住宅という選択肢も検討してみてください。
インテリアを和風に統一しないと違和感が生じる可能性も
日本家屋を建てた場合、インテリアも和風のテイストで統一しないと違和感が生じる可能性があります。既存の家具や家電をそのまま使いたいと考えていても、日本家屋の雰囲気に合わなければ内装に馴染まず、買い替えや和風のカッティングシートを使ったリメイクが必要になることもあります。
せっかく日本家屋を建てたのに、インテリアの不一致で全体のバランスが崩れてしまうのは非常にもったいないことです。したがって、新しいインテリアを選ぶ際は、慎重に検討する必要があります。失敗を避けたい場合は、建築時に専任のインテリアコーディネーターに依頼し、日本家屋に合った和テイストの家具選びをサポートしてもらうと良いでしょう。
維持費が高くなる可能性がある
日本家屋は維持費がかかりやすい点がデメリットの1つです。例えば、多くの日本家屋は木材を多用しているため、5年ごとに白アリの防虫処理を行うことが推奨されています。
また、日本家屋の特徴であるふすまや障子の引き戸は、時間が経つとレールが縮んで開閉しにくくなることがあります。その際は、職人に依頼して敷居を修理してもらう必要があります。
さらに、和室の畳にも寿命があります。裏返しをしながら使ったとしても、10年程度で交換が必要です。費用を抑えようとメンテナンスや修繕を怠ると見た目が悪くなるだけでなく、耐久性も低下し、安心して住めなくなる恐れがあります。そのため、定期的に建築会社による点検を受けることが重要です。
快適な日本家屋にする工夫は? 太陽光発電にも対応できるの?
日本家屋の特徴を活かしつつ、さらに快適に暮らすための工夫にはどのようなものがあるのでしょうか?
断熱性の高い素材を使い保温性を高める
日本家屋は広い開口部が多く、壁の厚みが薄い真壁づくりであるため、断熱性の高い素材を使って保温性を高める工夫をすると快適な室温を保ちやすくなります。
「真壁づくりは大壁づくりと比較して、壁の厚さが薄くなるのは事実です。しかし塗り壁自体が断熱性の高い素材ですし、近年は薄くても断熱性が高い断熱材が開発されています。そのような素材をちゃんと選べば、真壁づくりであっても断熱性について心配する必要はありません。
また窓についても断熱性の高い複層ガラスやサッシを選ぶようにすれば、室内の保温性を高めることは十分に可能です」
畳の間の段差はなくす
「従来の日本家屋では、畳と床板とでは厚みが違うため、畳の間は敷居の高さぶんだけ高くなっているのが一般的でした。しかし近年は、日本家屋であってもバリアフリーを考慮し、段差を設けないことが増えています」
屋内では靴を脱いで過ごす日本では、玄関や土間に段差があるのには「部屋に土や砂を持ち込まない」という合理的理由があります。しかし室内では、段差は極力ないほうが、高齢者はもちろんけが人や小さなこどもも暮らしやすくなります。日本家屋を建てるときにも、畳の間の段差はなくすように設計してもらうとよいでしょう。
太陽光発電にも対応できる
「瓦屋根だと太陽光パネルを取り付けられないと考えている方もいるようですが、瓦屋根であっても太陽光発電設備の設置は可能です」
瓦屋根に太陽光パネルを取り付けるには、屋根の骨組みである垂木(たるき)に固定する方法と、パネルを取り付けられる専用の瓦を使用する方法があります。いずれの方法も太陽光パネルを載せると屋根がそれだけ重くなるので、日本家屋を建てるときに太陽光発電もあわせて検討したい場合は、設計段階から相談することが大切です。
日本家屋のメンテナンス方法は?
耐久性の高い日本家屋ですが、長く快適に暮らせる状態を保つためには適切なメンテナンスが欠かせません。ここでは日本家屋のメンテナンス方法を紹介します。
「瓦屋根」のメンテナンス方法
「瓦自体は長寿命で、劣化しにくいことが特徴です。一方瓦をとめる漆喰は耐用年数が短く、気候条件などにもよりますが、10〜30年で朽ちたり剥がれたりするのが一般的です。そのまま放置すると雨漏りにつながってしまうため、状態を見て詰め直したり、場合によってはやり直したりする必要があります」
「塗り壁」のメンテナンス方法
「塗り壁については、経年により汚れや割れ、柱との境目に隙間などが生じます。汚れについては消しゴムや漂白剤を使って落とせる場合もありますが、基本的には上から塗り直すのが一般的です。素材や状況にもよりますが、10年程度が目安になると思います」
「畳」のメンテナンス方法
「畳については、時期を見て裏返しや表替えをおこない、畳の寿命といわれる10年程度で新調します」
「裏返し」とは畳表を裏返すこと、「表替え」とは畳表を張り替えることを指します。裏返しは新調してから2〜3年程度、表替えは裏返してからさらに3〜5年程度過ぎた時点でおこなうのが一般的です。
なお畳の寿命はあくまで目安であるため、メンテナンスのタイミングは使用年数だけではなく、実際の見た目や触感などで判断しましょう。
日本家屋を建てるときにもっとも大切なポイントは?
最後にあらためて井戸川さんに、日本家屋を建てるときのポイントを伺いました。
「日本家屋は、自然との調和を感じられるような工夫が随所に施されていることが特徴です。しかし技術や知識を要する日本家屋は、今では建てるのが難しくなっています。日本家屋を希望するなら、普段から日本家屋を建てている経験値の高い会社を選ぶことが大切です。
ライフプランにあった提案をしてくれる会社を見つけ、理想の日本家屋をぜひ実現してください」
スーモカウンターに相談してみよう
「快適に暮らせる日本家屋を建てたい」「日本家屋の建築実績が豊富な工務店を知りたい」など、住まいづくりについて疑問や悩みがある人は、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご希望を伺ったうえで、かなえてくれそうな依頼先を提案、紹介いたします。
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監修/SUUMO編集部(「書院」で和のインテリアを演出する、「地窓」で庭の景観を楽しむ、「縁側」でゆとりのある時間を過ごす、日本家屋で使用される代表的な素材、日本家屋を建築するメリット、日本家屋を建築するデメリット)