天窓は、自然光をたっぷり取り入れたり、室内の風通しを改善したりするなど、さまざまなメリットがあります。一方で、雨漏りや結露、夏場の室温上昇といった心配をする人もいるかもしれません。実際のところ、天窓にはどのようなメリットや注意点があるのでしょうか?
今回は、日本ベルックスの柴田隆行さんと筒井一郎さんに、天窓のメリットやデメリットについて伺いました。また、高窓(ハイサイドライト)との違いについても比較していますので、ぜひ参考にしてみてください。
天窓(トップライト)の魅力って?
高い窓からの光が、広い吹抜けを通してリビングに明るい穏やかな光が差すーそんなイメージにあこがれる人も少なくないのではないでしょうか。天窓は北欧などヨーロッパで多く導入されてきたこともあり、どこかエレガントな風情があります。
それでも、欧米に比べて近年まで日本ではなじみが薄かったため、天窓についてよく知らないこともあるかもしれません。もしかするとイメージ先行で誤解していることも? 例えば、「天窓って雨漏りの危険はないの?」といった疑問です。
日本ベルックスの柴田さんは、99%の天窓は雨漏れしていないと話します。
「天窓には誤解が多いんです。屋根に穴をあけるので確かにリスクはあります。きちんとした施工さえしていればまず心配ありません」(柴田さん)
それでは天窓のメリット・デメリットを高窓と比較しながら詳しく聞いてみましょう。
天窓(トップライト)と高窓(ハイサイドライト)のメリット・デメリットを比較!
天窓の特性を、同じく高い位置に設置される窓である高窓と比較して教えてもらいました。
「どちらも高い位置にあって採光・通風に優れています。ただし、その効果がより大きいのが天窓と言えます」(柴田さん)
高窓と天窓のメリット・デメリット比較
天窓のメリットを詳しく解説
それでは、天窓が特に優れている点はどんなことでしょうか?ここでは、天窓の設置を検討されている方にとって魅力的と思われるメリットを詳しく解説していきます。
天窓の採光性の高さ
壁一面に大きな窓があると眺望も良く、非常に明るく感じられます。しかし、実は部屋の中に差し込む光の量はそれほど大きくありません。一方、高い位置に窓があると、多くの光が取り込めます。「天窓は同じ高い位置にある高窓と比べても、その採光性は優れている」と筒井さんは言います。
住宅を照らす太陽光(自然光、昼光)は、大きく分けて3種類に分類されます。
- 直射光:直接入ってくる光。明るいが、太陽との角度によって光が移動する
- 反射光:太陽光が地面などに反射して入ってくる光
- 天空光:大気中の水蒸気や塵、雲に拡散・反射されて入ってくる光。曇り空でも差し込む
採光の種類
この中で、天窓は「天空率」(=どれだけ空に開いているかの割合)が壁面の窓と比べても格段に高いため、長い時間、天空光が取り込めます。高窓も、他のサッシと比べると天空率が高い特徴があります。
「天窓の採光性が高いということは、逆に言えば、同じ量の光を得るために、ほかの窓と比べて小さい面積で設置できる、ということでもあります。実際、建築基準法では天窓は高窓の3分の1の開口部があれば同じだけの採光が確保できる、とされています」(筒井さん)
天窓の風通しの良さ
開閉型の天窓は高窓と同様に風通しがいいのもメリットです。住宅密集地のように直接風が吹き込まない場所でも、高低差のある2つの窓を開けると自然に風が流れます。これは、建物の高い位置と低い位置の温度差で上昇気流が生じ、温かい空気が高い窓から抜けていき、風の流れが室内に生じるためです(煙突効果)。
「通風がいいと、特に夏の暑い時期には節電につながります。天窓は側面の壁に比べて約4倍の通風効果があるとされます。壁面の壁では風通しのために必要な窓の広さ(換気面積)は部屋面積の1/10必要です。一方、天窓の場合は1/35の面積で済みます」(柴田さん)
天窓の風通しの良さ
近隣の目が気にならない(プライバシー性)
天窓は同じ高い位置の高窓と比べてもプライバシー性に優れています。この効果は特に住宅密接地などで有効です。高窓も高い位置にあるため、壁面の低い位置にある窓に比べると視界を遮ることができるのです。
「天窓は高窓に比べて空に向け開けているため、よほど高い位置からでないと中を覗きこむことができません。また、採光性が高いことから窓を小さくできるので、覗き込める範囲も狭くなります」(筒井さん)
壁を有効利用できる
壁面に窓があると収納を設けたり家具や家電を置いたりしづらいものですが、天井に窓を設ける天窓なら壁面を有効利用できます。また、設計の自由度も増えます。壁からの反射光で全体の明るさを保つことができ、部屋の中に光の濃淡が生まれてきれいに見えるので、その効果を活かしたデザインが考えられるためです。
「天窓のほかに壁側にも窓を設置すれば、より明るく暖かな空間になります。壁窓は外からの直射光や反射光を取り込んで、主に窓側(手前側)を明るくします。一方、天窓からの光は部屋の奥を照らしてくれるので、複数の光で相乗効果を生むことができます」(筒井さん)
防犯面でも優れている
侵入者に屋根に上られたらそこから侵入できそうな天窓の防犯性は低いのではないか、と思われますが、柴田さんは「それも誤解です」と否定します。
「一般的に天窓に利用されている合わせガラスや網入りガラスは貫通させにくいため、割って中に入るのは困難です。穴を広げるのに時間がかかり、大きな音がしますから周囲に気づかれやすいのです。また、屋内では壁に面していないので足場がなく、天井から垂直に落ちてしまうため、まず侵入経路として天窓を使用する泥棒はいないでしょう」(柴田さん)
部屋が寒くなりづらい
部屋が寒くなるのは、壁の間に隙間や薄い場所があって外気の影響が室内に及ぶためです。窓はガラス製のため、どうしても外気の影響を受けやすく、窓の面積が大きいほど部屋は寒くなります。天窓の場合、より小さい面積で部屋を照らすことができるので、相対的に部屋が寒くなりづらいといえます。
「最近の天窓には、高性能ガラスを採用し断熱性の優れたものがあります。多く見られる吹抜け共有部などは特に過度の心配は不要です。むしろ開口の大きさを減らせることが有利に働きます」(筒井さん)
これまでの通り、天窓には多くのメリットがある一方、デメリットや注意が必要なポイントもあります。ただし、適切な対策によってそれらをメリットに転じることもできます。
天窓のデメリットを詳しく解説
天窓を設置する際には、メリットだけでなく、デメリットや注意点も理解しておくことが大切です。事前に把握しておけば、予期せぬトラブルを防ぎ、適切な対策を取ることができます。ここでは、天窓のデメリットについて説明します。
音が気になる
天窓は屋根にあるため、雨が降ったときの雨音からは逃れることができないと筒井さんは言います。特に、寝室に天窓がある場合、人によっては気になって眠れない人もいるかもしれません。
「天窓は位置が高く面積も小さいので、屋外の話し声や歌声などの大きな音は気にならないことが多いのですが、雨や嵐の場合はどうしても高窓などよりも大きい音がします。垂直な窓なら雨は窓に斜めに当たりますが、天窓は垂直に近い形で直接当たるためです。自然の出す音として雨音も楽しめる人には向いています」(筒井さん)
暑さが気になる
天窓は天空光が一日中入ってくるので明るい半面、「室内が暑くなってしまうのでは?」と思う人もいるでしょう。暑さ対策としては、ブラインドを活用し、光をふんだんに取り入れたり、またはシャットダウンしたり、差し込む熱をメリハリ付けて調整できます。
「天窓も高窓も、ブラインドの使用が暑さ対策には効果的です。床に直射光を落とさないことがポイントになります。ブラインドで熱を抑えながら天井付近の熱気を抜くのが理想的です。また、特に最近はガラスの性能がいいため、『天窓から光が入る=夏場は暑い』は当てはまらなくなっています」(柴田さん)
慎重な施工が求められる
柴田さんによれば、日本ベルックスは窓の防水には細心の注意を払っていて、長年、雨風にさらされたり大粒のひょうが打ち付けたりしても大丈夫なようにつくられており、長期保証も行っているそうです。
「それでも、設置の際に天井に穴をあけて取り付ける分、雨漏りを防ぐために慎重な施工が必要です。屋根の工事業者は、天窓施工の手順に沿って流れ込む雨を確実に排水するよう、天窓と屋根の取り合いを仕上げていきます」(柴田さん)
メンテナンスの必要がある
高い位置にある窓で大変なのは掃除や修理などのメンテナンスです。高窓も天窓も、窓の内面ははしごや脚立を使い、柄が長いグラスワイパーで掃除をしますが、外面の掃除をするのは大変です。通常は専門の業者に依頼するしか方法はありません。特に屋根に上がらなければならない天窓は高窓よりも掃除や修理が面倒です。
「高窓は垂直面に縦に設置されているので、雨風にさらされる度合いが低く、その分長持ちします。天窓は長持ちしないわけではありませんが、高窓に比べるとメンテナンス面で不利だといえます」(筒井さん)
天窓(トップライト)の種類は? 気を付けるべき点は?
天窓の種類としては、窓の開閉によりフィックス、手動、電動の3タイプに分かれます。
天窓の種類 |
特徴 |
費用相場 |
フィックス(固定)タイプ |
固定されており開閉ができない。そのため、通気性はない |
約45万5千円~ |
手動タイプ |
開閉用の棒やハンドルを利用して、手動で開閉する |
約108万円~ |
電動タイプ |
リモコンなどで窓の開閉ができる。雨を感知して自動で天窓を閉めるセンサー機能もある |
約175万円~ |
※費用相場は小売価格参照(2024年9月 SUUMO編集部調べ)
※上記価格はブラインドオプションなしの場合の最安価格。天窓サイズに応じても変動
天窓では特にガラスの性能が重要です。天窓はその特性から、遮熱性能の高いガラスを利用します。一方で、冬の寒さには耐えられる断熱性も伴っています。
「例えば南面のサッシ窓は、冬にポカポカと暖かい日差しを得るため遮熱ガラスを使いません。天窓はむしろ日射熱を抑え、跳ね返すガラスを採用しています。昔、天窓は暑いと言われたことがありますが、そのころのガラスの反射率は2割ぐらいでした。今は70%以上の日射熱を跳ね返します」(柴田さん)
このように、ガラスにもいくつかの種類があります。
ガラスの種類
- 強化ガラス:フロートガラスの3~5倍の強度を持つガラス
- 網入りガラス:鉄網が格子状に入った飛散防止ガラス
- 合わせガラス:2枚のガラスの間にラミネートが入った飛散防止ガラス
- 複層ガラス:2枚のガラスの間に空気層を設けており、断熱性が高い
- トリプルガラス:3枚のガラスの間に空気層を設けており、断熱性が非常に高い
トリプルガラスは北欧の激寒地で利用されており、日本ではほとんどの天窓で複層ガラスが使用されています。
「よく、海外の基準は高くてトリプルガラスも多いのに、日本は複層ガラスが主流で大丈夫? と聞かれますが、Low-Eトリプルコーティング複層ガラスという、ガラスに特殊なコーティングを施し、アルゴンガスを空気層に注入したガラスなどは、断熱性も高く、非常に性能がいいです」(柴田さん)
【編集部監修】天窓(トップライト)のおすすめの設置場所は?
天窓を設置する場合、どの場所がおすすめでしょうか。隣接する建物の状況や間取り、設置の目的など細かい条件はあるものの、一般的には北側に設置するのがおすすめです。家の北側は一般的に、日当たりが悪く、日中でも暗くなりがちです。しかし、天窓を設けることで、北側の空間が明るくなります。
また、天窓が北側にあると直射日光が入りにくく、夏でも部屋が暑くなりすぎる心配がありません。一年中やわらかな光を取り込めるのも魅力です。
【編集部監修】天窓(トップライト)を設置したことによって後悔した事例
天窓の設置には多くのメリットがあることがわかりました。しかし、天窓を設置して後悔したという声を耳にすることも少なくありません。天窓の設置によって後悔したという事例をいくつか紹介します。
日焼けしてしまう
天窓の設置でよく聞かれる後悔の一つは、直射日光による家具や床の日焼けです。これは、天窓を北側に設置することで直射日光を避けることができ、日焼けのリスクを抑えられるでしょう。
建物の構造や隣接する建物の関係で南側に設置する場合は紫外線を大幅にカットする機能が備わっている窓ガラスもあるため、それらのガラスを使って天窓を設置することで、家具や床の日焼けのリスクを減らすことができます。さらに、直射日光が気になる場合は、カーテンやブラインドを取り付けるなどの対策もできるので、ぜひ検討してみてください。
結露し、水滴が上から落ちてきた
冬場、冷えた窓ガラスに部屋の暖かい空気が触れると、温度差によって空気中の水蒸気が凝結し、窓に結露が発生します。特に天井近くは暖かい空気が溜まりやすいため、天窓は結露が起きやすい場所です。そのため、天窓が結露し、水滴が垂れてくることがあり、雨漏りと勘違いしてしまうケースも見られます。
また、天窓の位置や形状のために結露を拭き取りにくく、天窓を設置しなければ良かったと感じる原因にもなるようです。
対策としては、断熱性の高いサッシを選び、換気を十分に行って空気を循環させることが効果的です。また、結露防止用のフィルムや結露吸収パッドを使用するのもよいでしょう。さらに、天窓の周りに防湿シートを貼ることで、結露の影響を軽減できます。
ソーラーパネルの設置面積が減る
災害時の停電対策や光熱費の節約のために、ソーラーパネルを設置する家庭が増えています。一戸建住宅では屋根にソーラーパネルを設置することが多いですが、設置面積によって発電量が変わるため、なるべく広い面積に設置したいと考える方も多いでしょう。しかし、天窓がある場合、その上にソーラーパネルを設置することはできません。さらに、ソーラーパネルのサイズはメーカーによって異なり、配置によっては予想よりも設置面積が狭くなることもあります。
対策としては、ソーラーパネルは日当たりの良い南側に設置するのが一般的ですので、天窓を北側に配置すればこの問題を回避できるでしょう。
天窓(トップライト)の設置・交換やメンテナンスはどうしたらいいの?
最後に家に天窓を導入する際に気を付けるべき点についても、日本ベルックスの皆さんに聞いてみました。
「高い位置に設置する窓には、どうしてもデメリットとして外側の掃除やメンテナンスのしづらさがあります。天窓のメンテナンスは、専門の業者に任せる必要があります。屋根に上るには安全基準があり、足場を組んでの作業が必要なためです」(柴田さん)
「そうなるとコストの心配をする人もいるでしょう。確かに、例えば天窓のガラス掃除は大変なのですが、恒常的に雨にさらされて表面の汚れが流されてしまうため、実はさほど汚れないのです。むしろ、ほこりや雨の跡が残ったままになる高窓よりも、天窓は汚れにくいといえます」(筒井さん)
「天窓は掃除がしにくい分、雨で汚れが流れやすいガラスを使っています。また、製品のデザイン面でも工夫されています。例えば、室内側の窓の広さよりも大きいガラスを使用していることで、下の方に溜まりやすい汚れが室内から見えにくくなっているのです」(柴田さん)
「天窓」を設置したスーモカウンターでの家づくりの先輩の実例紹介
それでは実際にスーモカウンターを利用して「天窓」を設置した家を建てた先輩の実例を見てみましょう。
【実例】ランドリーコーナーにある天窓で曇りの日でも快適に部屋干し
横浜市のSさんご家族が建てた新居にはランドリーコーナーが供えられ、天井の明るく開放的なトップライトからは明るい光が注いでいます。もともと地下室に決まりかけていた浴室の配置を家事動線を考えて2階にもっていったことで、洗濯機から物干しまでの動線がスムーズになりました。トップライトから降り注ぐ明るい光のもとで洗濯をするのは気持ちが良さそうです。
この実例をもっと詳しく→
居住スペースを広げるために地下室を活用、広々リビングを手に入れた
スーモカウンターでできること
天窓のある家は、天空光を取り入れて通気性もあり、かつプライバシーを守れる明るく快適な生活が期待できます。天窓を設置したいと思ったら、天窓の特性を理解し、将来のメンテナンスなども相談できる、プロがいる窓口に相談するのが良いでしょう。
注文住宅の新築・建て替えをサポートしているスーモカウンターでは、家づくりの不安を解決できる無料講座や、アドバイザーに悩みを相談できる無料の個別相談などを実施しています。個別相談では天窓の設置も含めた予算や希望条件の整理、建築会社の紹介など、注文住宅を建てる際のあらゆる不安について、知識と経験のある専任アドバイザーに無料で何度でも相談できます。
天窓を設置したいけれど、音やメンテナンスなどに不安を感じている人は、スーモカウンターを活用して、家づくりの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
イラスト/松元まり子
取材・執筆/櫻井とおる(りんかく)、SUUMO編集部(【編集部監修】天窓(トップライト)のおすすめの設置場所は?/【編集部監修】天窓(トップライト)を設置したことによって後悔した事例)