住まいの外壁を高級感のあるデザインにしたいと考えたとき、候補に挙がるのが「タイル張り」ではないでしょうか。一般的な外壁に比べて、タイル張りは高級感を演出できるのが特徴的です。
しかし、高級感があるデザインだからこそ、どれくらいの費用がかかるのか気になる方もいるでしょう。また、タイル張りにすることでどのようなメリット・デメリットがあるのかも気になるところです。
そこで今回は、Danto Tile総合企画室の板谷政和さんにお話を伺い、外壁をタイル張りにするメリット・デメリットをご紹介します。後悔につながりやすいポイントや外壁タイルのメンテナンス方法、さらに住宅の実例までご紹介するので、外壁をタイル張りにしようか検討されている方はぜひチェックしてみてください。
目次
外壁材としてのタイルの特徴
外壁材に使用されるタイルは、どのような特徴があるのでしょうか?まずは外壁材として使われているタイルの特徴をご紹介します。
タイルとは?
住宅やビル、公共施設などの外壁材として目にすることの多いタイルですが、そもそもタイルとはどのようなものを指すのでしょうか?
「広義では、『板状の小片』という意味ですが、建材としてのタイルは、土や石などの原料を高温で焼いた板状の陶磁器を指すのが一般的です」(板谷さん、以下同)
外壁用タイルの種類・形状
それでは、外壁用のタイルには、どのような種類があるのでしょうか。さまざまな分類方法が考えられますが、ここでは材質や形による違いを紹介します。
外壁用タイルの材質
「外壁用タイルは、材質によって磁器質、せっ器質に分けられますが、一番の違いは吸水率です。磁器質は水を吸いにくく、せっ器質はそれよりやや水を吸いやすいという特徴があります。タイルが水を吸うと、その水が凍って膨張したり、溶けて収縮したりして、表面にひびが入る『凍害』を引き起こすことがあります。ですが、外壁用の場合は、常に水と触れるわけではないため、せっ器質でも基本的には凍害の心配はいりません。
また、タイルの材質にはせっ器質よりもさらに吸水率の高い陶器質がありますが、これは主に内装用に使われており、外壁用には使われません」
磁器質 | 水を吸いにくい |
---|---|
せっ器質 | 磁器質よりは、やや水を吸いやすい |
陶器質 | せっ器質よりも水を吸いやすく、凍害の可能性が高いため、外壁用には使われない |
外壁用タイルの形状
「代表的なタイルの形状としては、二丁掛(にちょうがけ、227×60mm)と小口(こぐち、108×60mm)があります。これらは、積レンガの長手面と小口面を基にしています。この2つは基本のサイズとして業界内で統一されていますが、これ以外にも各メーカー独自のさまざまなサイズのタイルがあります」
タイルの外壁にはどんなメリットがある?
外壁にタイルを使用した場合、一般的な外壁と比べて以下のメリットが挙げられます。
- デザイン性(意匠性)の高さ
- 耐久性の高さ
- メンテナンス性の高さ
それぞれのメリットを解説していきます。
デザイン性(意匠性)の高さ
住宅の外壁は、外から見たときに家全体の印象を決める重要な部分です。特にタイルの外壁は、高級なイメージを持たれることが多いようですが、それはタイルの持つデザイン性(意匠性)の高さに起因します。
「例えば施釉タイルは、さまざまな原料の釉薬が高温で焼成しガラス化することで、独特の色合いが生まれます。色に、形状、面状を合わせた3つの要素の組み合わせで意匠性を高めているのです。
それぞれの要素にさまざまな種類があるため、組み合わせのバリエーションは豊富です。最近は、この3つの要素に『厚み』のバリエーションを加えて、3次元の動きを表現できるようになりました」
耐久性の高さ
住宅の外壁は、常に雨風や日射に晒されています。そのため、耐久性の高さも外壁に求められる重要な要素です。
「タイルは耐久性が高いこともメリットの1つです。タイルはその製造工程において約1300度という高温で焼き上げられるため、最低でも約1300度の熱に耐えることができます。これほどの耐火・耐熱性に優れた外壁材は他にないでしょう。また、非常に硬い性質で、砂などが風で吹き付けてもほとんど傷がつきません。さらに、磁器質でもせっ器質でも吸水率は低く、耐水性が高いのも特徴です」
メンテナンス性の高さ
「一口にメンテナンス性と言っても、日々のメンテナンスと、長期的なメンテナンスがありますが、タイルはどちらのメンテナンス性も高いのがメリットです。タイルは他の外壁材に比べて吸水率が低いため汚れが中まで染み込まず、表面を水拭きすれば綺麗になります。また、耐久性が高く経年劣化しにくいという特徴があるため、長期にわたって大がかりなメンテナンスも必要ありません」
外壁タイルの後悔事例としてよくあるデメリットとは?
一般的な外壁材と比べてデザイン性や耐久性、メンテナンス性に優れているタイルですが、実はデメリットに感じてしまう部分もあります。後悔事例としてよくあるデメリットは以下のとおりです。
- イニシャルコストが高い
- 剥離の不安がある
- 仕上がりが想定していたイメージと異なった
- 固定資産税が高くなってしまった
- エアコン設置に追加料金が必要になった
それぞれのデメリットについて解説します。
イニシャルコストが高い
「タイルのデメリットとしては、他の外壁材と比較してイニシャルコストが高くなってしまう点です。最もポピュラーな外壁材である窯業系のサイディングと比べると、約2倍のコストがかかります。ただし、メンテナンス性が高いため、ランニングコストは低く抑えられます」
外壁タイルと窯業系サイディングのコスト比較
イニシャルコスト | ランニングコスト | |
---|---|---|
外壁タイル | 7000円~1万1000円/m2 | 低い |
窯業系サイディング | 3500円~5000円/m2 | 高い |
剥離の不安がある
「まれにマンションの外壁タイルが落下したというニュースが流れることがあるため、外壁タイルの剥離を不安に思っている人もいるかもしれません。しかし、古いタイル張りの物件でも剥離・落下していない物件がほとんどです。最近では下地処理の方法やタイル専用の接着剤の性能も進化しており、適切な施工を行っていれば剥離することはほぼありません」
仕上がりが想定していたイメージと異なった
タイルを選ぶ際にサンプルを参考にしつつ色・質感・デザインなどを決めていきます。しかし、サンプルは10枚程度のタイルを敷き詰めたものになるため、実際に外壁に使用した場合と比べて見え方が変わってくる場合もあります。また、太陽光の当たり方によっては色や質感が違って見えてしまうこともあるでしょう。
このように、サンプルと実際の外壁で見え方が異なってくることから、仕上がりが想定していたイメージと違っていて後悔に至るケースも少なくありません。サンプルとの見え方の違いで失敗しないためにも、実際に選んだタイルを使っている住宅現場があれば見学させてもらえないか相談するのも1つの方法です。難しいようであれば外壁シミュレーターが活用できないか建築会社に相談してみましょう。
固定資産税が高くなってしまった
外壁にタイルを採用したことで固定資産税が高くなってしまう可能性もあります。課税標準額は総務省が定めた「固定資産評価基準」をもとに算出されますが、その評価項目の1つに建物に使用されている建材の種類やグレードなどがあります。外壁材の中でもタイルの標準評点数は高く、一般的な外壁材として知られるサイディングよりも1.5倍以上高額に設定されています。
タイルの標準評点数が高い理由は、耐久性の高さなどから資産価値が高いと判断されているためです。特に初年度は外壁タイルの影響で思っていた以上に固定資産税がかかってしまうことも考えられます。
ちなみに、固定資産税は課税標準額×標準税率(1.4%)で求めることが可能です。
エアコン設置に追加料金が必要になった
石や砂などを高温で焼き固めたタイルは、硬く耐久性が高いのが特徴的です。しかし、その特性により建築後にエアコン設置の際に配管用の穴を開ける際には作業の難易度が高まるため、追加の施工費用が発生する可能性があります。
間取りや家の広さなどにもよりますが、エアコンを何台も設置するケースだと、その分追加費用が発生して高額になってしまうでしょう。タイル自体のイニシャルコストや固定資産税が高いのに、エアコン設置でも通常より費用がかかってしまうため、後悔につながりやすいです。
新築で外壁をタイルにする場合、事前に建築会社に相談し、エアコンの設置箇所、台数、エアコン配管用の穴の開け方について確認しておきましょう。
外壁タイルのメンテナンス方法は?
外壁タイルはメンテナンス性が高いものの、一切メンテナンスをしなくてもよいわけではありません。どのようにメンテナンスを行えばよいのか、ここではその方法について解説します。
基本的には水洗いでOK
外壁タイルのメンテナンス方法は、基本的に表面の水洗いだけで問題ありません。タイルはそもそも汚れに強い外壁材となるため、高圧洗浄機などを使って水洗いをするだけで十分綺麗になります。また、水洗いの頻度も1年に1回程度で済みます。
もし目立つ汚れを発見したら、柔らかいスポンジやブラシなどを使って汚れを落としていきましょう。タイル外壁全体を高圧洗浄機で綺麗にしていくのが難しい場合には、会社に相談するのもオススメです。
長期的には適宜メンテナンスが必要な場合も
防汚性だけでなく耐久性にも優れているタイルは、頻繁にメンテナンスを行わなくても問題ありません。しかし、長期的に見る場合は適宜メンテナンスが必要になってくるケースもあります。
タイルの浮き補修
タイルは下地のモルタルや接着剤の経年劣化、または施工不良の影響で徐々に接着力が弱まり、タイルの浮きが発生してしまうこともあります。浮きの補修頻度は一般的に5~8年程度が目安と言われています。
タイルの浮きを補修するには、タイルの継ぎ目になる目地にシーリング材を充填し、浮きで生じてしまった空間をシーリング材で埋めてからタイルを押さえつけて固定させます。もしくはエポキシ樹脂を充填して固定させたり、モルタルを使ってタイルを張り直したりするなどの補修方法もあります。
シーリングの充填
タイル材の間にある目地は、シーリング材と呼ばれるものが使われており、緩衝材の役割を果たしています。そんなシーリング材は経年劣化や紫外線・雨風などの影響で、ひび割れを起こす可能性もあります。
目地のひび割れから雨水が浸透し、外壁の劣化につながる恐れもあることから、目地の補修・メンテナンスは定期的に行うことが大切です。補修する際には既存のシーリング材を取り除き、新たにシーリング材を充填していきます。メンテナンスの頻度は5~8年を目安に行うとよいでしょう。
タイルの交換工事
新しいタイルに交換する工事は、目地に劣化症状が出てきやすい10年を目安に行われることが多いです。交換は基本的にひび割れや剥がれなどがみられるタイルのみであり、すべてのタイルを交換するわけではありません。
モルタルを使った圧着張りでタイルが接着されている場合、ヘラなどを使ってタイルを剥がし、専用の接着剤をつけて新しいタイルを張っていきます。価格はタイルの種類や交換するタイルの数によっても異なるので、詳しい値段を知りたい場合は見積もりを立ててもらいましょう。
タイルの外壁を採用した住宅の実例を紹介
タイルには、色、形、面状の組み合わせでさまざまなバリエーションがありますが、実際に住宅の外壁として使用したときに、どのような外観になるのか、いくつか実例写真を紹介します。
光の加減で表情を変えるボーダータイプのタイル
和モダンな住まいの個性を引き出す立体的なタイル
アースカラーの自然な風合いが特徴的なタイル
古いレンガ調のタイル
外壁タイルの住まいを選んだ先輩たちの実例を紹介!
スーモカウンターで外壁タイルの住まいを建てた先輩たちが、どんな点にこだわり、どんな住まいを実現したのか、実例を参考に学んでいきましょう。
【case1】信頼できる建築会社とつくった外壁全面タイルの家
家づくりを思い立ち、住宅展示場回りをしたNさん夫妻ですが、二世帯住宅というこだわりしかなかったため、迷走してしまいます。そんなとき、スーモカウンターに興味を持ち、早速訪問することに。
アドバイザーと話すうちに、自分たちの要望が明確になっていったNさん。最初に紹介された5社から絞り込み、最終的には木造建築を得意とする自由設計の会社に依頼することに決定しました。
完成した二世帯住宅の外壁はシックなグレー。外壁材には磁器タイルを採用しました。どっしりとした外観からは、風格すら感じられます。Nさんは、信頼できる建築会社と出合い、理想の住まいを手に入れることができたと、とても満足しています。
この実例をもっと詳しく→
実家の建て替えか新しい土地で注文住宅かを迷い、理想の建築会社で新居を完成
【case2】長い保証期間とメンテナンス費用が低く抑えられるタイルの外壁が決め手
親子3人で賃貸アパートに暮らしていたUさんは、やがて手狭になることを見越して、注文住宅を建てることを計画しました。
訪れたスーモカウンターで依頼先候補を2社紹介されましたが、最終的にはやりとりのスピード感とほしい情報を的確にくれた1社に決定。30年間の長期保証があったことも理由の1つです。価格は高くなると聞いたものの、外壁がタイルのため、メンテナンス費用を安く抑えられるところが決め手になりました。
完成した新居は、1階にはLDKと和洋室。2階には主寝室と洋室が2つの広々とした6LDK+S。1階と2階を切り替えたツートーンカラーの外観は、モダンでおしゃれな印象です。
この実例をもっと詳しく→
子どもの成長を見越して、リビングには宿題用机も
【case3】将来のメンテナンスを考慮して磁器タイルを採用した3階建ての家
賃貸マンションに住んでいたHさんファミリー。育ち盛りの子どももいるため、賃貸マンションでは手狭に感じ、広さや開放感を求めて家づくりを計画。そんな中、買い物途中にふらっと立ち寄ったスーモカウンターで、契約した土地や予算、家族構成、そして希望やこだわりをアドバイザーに伝えました。すると、家づくりに関する法律・制度なども教えてくれて、さらに大手建築会社2社と地元の建築会社2社の計4社を提案。最終的にスーモカウンターで紹介してもらった建築会社に決定しました。
完成した3階建ての家は、3階から1階まで光が差し込むように2方向に窓を設置。風通しもよくなり、快適に過ごせる家が完成しました。さらに将来のメンテナンスも考慮して外壁には磁器タイルを採用。耐久性・耐水性に優れており、台風や梅雨の雨風も防いでくれます。
この実例をもっと詳しく→
単身赴任から戻った夫の、念願の3階建てマイホーム
タイルの外壁を採用するにあたってのポイント
最後にあらためて板谷さんに、タイルの外壁を採用するにあたってのポイントを聞きました。
「タイルの一番の機能的なメリットは、経年劣化しにくいところです。建物に愛着を持って、自分好みの外観を長く楽しみたいという方には、オススメの外壁材だと思います。イニシャルコストは少し高くなるかもしれませんが、日々のメンテナンスの負担も軽く、長期にわたるメンテナンス費用も抑えられます」
スーモカウンターに相談してみよう
外観にタイルを採用した家を建てたいときに「どうやって進めたらいいのかわからない」「建築会社はどうやって選べばいいの?」と思ったら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望をかなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりのダンドリや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合せください。
イラスト/高村あゆみ