内壁は居住空間の雰囲気の決め手にもなります。おしゃれで暮らしやすい空間にするためには、どんな素材を使ったら良いのでしょうか。おうちソムリエ一級建築士事務所代表の松元幸樹さんに、オススメの内壁素材やおしゃれな部屋にするためのポイントについて聞いてみました。
内壁とはどこの壁?
「内壁」とは部屋の内側と外側を仕切る壁のうち、室内に面しているほうの壁面のことを言います。雨風や日射を直接受けない部分と考えるとわかりやすいのではないでしょうか。さらに内壁の構造を分類すると「大壁(おおかべ)」と「真壁(しんかべ)」の二種類に分けることができます。
「木造住宅を大きく分類すると、柱が直接見える真壁造りとボードなどで柱が隠れている大壁造りの二種類があります。真壁というと和室のイメージが根強いかもしれませんが、今どきは“柱で魅せる”オシャレな真壁造りの住宅もあるんですよ。ただし、柱を見せるバランスには注意してください。見せすぎると古風なイメージになってしまうので、やり過ぎず『可愛い・かっこいい』と感じる範疇で止めることが大切です」(松元さん、以下同)
伝統にとらわれず設計することによって、柱を見せる真壁造りであってもモダンな空間を演出することができるのですね。
プロが勧める内壁素材とおしゃれな使い方
自分好みのおしゃれな空間を作るためには、内壁の素材選びにもこだわりたいところ。クロスや塗装仕上げ、レンガなど、内壁に使用できる素材は数多く存在します。そのためどの素材を使えば良いか迷ってしまう人も多いのではないでしょうか。理想の家づくりに欠かせない、松元さんオススメの内壁素材を紹介します。
輸入塗料
「私のイチオシは輸入塗料です。日本の建築業界では日本塗料工業会のサンプル帳から塗料を選ぶのが一般的です。しかし、日本の塗料を輸入塗料と比較すると『いかにもペンキ』という印象が強いのです。輸入塗料には、日本のサンプルにはない多種多様なおしゃれな色が存在するので選ぶ時間も楽しみの一つではないでしょうか。施主さんが自分の手で部分的に塗装をしてみるのもいいと思います。また、塗料の艶の度合いを選択することができるので、空間ごとに適した艶にすることも重要です。輸入塗料を使うことは、おしゃれな空間への近道とも言えます」
漆喰
「機能性で選ぶなら漆喰がオススメです。漆喰は強アルカリ性のため、抗菌・抗ウイルス作用があるとされています。ただしそれは壁に付着したウイルスにのみ有効のため、過度な期待はしないようにしましょう。漆喰にはカビを抑制し調湿と脱臭の効果もあるので、北側の部屋や寝室に使用する人も多いです。
時間の経過とともに黒ずんでくることもありますが、それも漆喰ならではの風合い。気になる場合はサンドペーパーや砂消しで表面を削って綺麗にすることができます」
輸入壁紙
「輸入壁紙はデザイン性の高いものが多く、オリジナリティあふれる空間を演出できるのが特徴です。輸入塗料との相性も良く、1カ所に貼るだけで空間に色気を持たせることができます。壁だけでなく、ドアや引き戸などの建具、キッチン本体にも貼ることができます」
セメントタイル
「セメントタイルはフランスで生まれベトナムで広まった焼いていないタイルです。1枚1枚が手づくりで、独特のマットな質感と可愛らしいデザインが特徴です。飾り棚に使用するのもオススメの手法。タイルにも個性を出したいと思う方に提案しています」
セメント系ボード
「セメント系ボードとは、芯材に軽量骨材を使ったセメントでできた板のことです。この素材を内壁に使えば、スタイリッシュな風合い演出できます。左官工事によるモルタル仕上げよりも手軽に取り入れることができる良さがあります」
レンガ
「内壁にレンガを使用する場合は、そのまま積むと重量が大きくなりすぎてしまうため薄くスライスしたものを使います。アンティークのレンガを取り入れると洋風でおしゃれな空間ができあがります」
コントラクト向けクロス
「初期費用を安く抑えたいという人に人気なのは国産クロスです。よりデザイン性の高い内壁にしたい場合は、ホテルや商業施設で使用されているコントラクト向けのクロスを選んでください。通常の家庭用クロスと同じ価格帯の製品もたくさんあります」
塗装そっくりクロス
「塗装壁にそっくりなクロスです。写真を撮っても塗装した壁と見分けがつかないほど似ています。ベースとアクセントで二色使いすれば、家具の映える空間ができあがります。塗装壁に憧れるけど予算が厳しいという方にオススメしています」
内壁の素材選びのポイントは?
数多くの内壁素材を見ていると、家をつくる際にどれを使ったら良いか迷ってしまうかもしれませんね。予算や好みに合わせて内壁の素材を選ぶとき、大切にすべきポイントはどんなことでしょうか。
「大切なことは、その家で暮らす人がときめく空間をつくることだと思います。設計段階で会社に任せきりにしてしまうと、内壁は無難なものやリーズナブルなものに落ち着きがちです。その家でどんな暮らしをしたいのかをよく考え、内壁の素材についてある程度リサーチをしてから打ち合わせに臨むことをオススメします」
家が完成してから内壁を変更することは難しいため、打ち合わせの時点で複数の素材を比較検討していくことが理想です。輸入塗料や輸入クロスのサンプルを用意していない会社も多いため、前もってリクエストしておくとスムーズです。
「できるだけリーズナブルな素材を使いたいからという理由で、理想の空間を諦める必要はありません。デザイン性が高くリーズナブルなクロスもたくさんあるので、予算に合わせて理想の素材を探していくことが可能なのです。前の章でお伝えしたように、素材ごとに特徴が異なるので『どんな空間にしたいか』をぜひ一度よく考えてみてください」
デザイン性と利便性を兼ね備えた内壁実例集
ここで、素材の個性を活かしたおしゃれな住まいを紹介します。スーモカウンターで建てた住宅の中から、特に素敵な実例をピックアップしました。
【case1】空気が澄んだ漆喰の壁の家
子育てしやすい二世帯住宅を建てたIさん。高気密・高断熱な漆喰素材を内壁に使うことを希望し、居室や階段を漆喰の壁にしました。冬でも乾燥することが少なく、暖かく快適な空間で過ごすことができているそうです。壁が呼吸をしているような空気が澄んだ家で、家族全員が気持ちよく暮らしています。
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カーテンを開けると「レイクビュー」。家族も猫も大満足、漆喰壁にこだわった家づくり
【case2】自然素材の塗り壁をDIYで仕上げたい
壁を自然由来の塗料で塗ることにこだわったAさん。ワークショップで塗り方を習い、自分の手でブルーグレーの内壁を仕上げました。子どもが描いた絵を貼ると、家の中にちょっとしたギャラリー空間が生まれます。
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デザインのセンスが光る会社と出会って何度もプランを練り直したこだわりのわが家
【case3】外壁タイルをLDKに取り入れておしゃれな空間に
家族で過ごすことができる広いLDKを取り入れたいと希望したSさん。広さだけでなくデザインにもこだわり、テレビの背面には外装用のタイルを貼って空間にメリハリを演出しました。タイルの素材感が落ち着いた色合いのフローリングと調和しています。
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広くて天井が高く開放的なLDKと 便利な水まわり動線をかなえた家
【case4】空間ごとに表情が変わる漆喰の内壁
リビングや玄関、洗面所、トイレの内壁に漆喰を取り入れたSさん夫婦の住まい。部屋によって色や塗り方を変えているので、空間を目で見て楽しむことができます。吸湿や消臭の効果もあるので季節を問わず快適に生活することができます。
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むく床と漆喰仕上げの、自然素材が心地いい家
内壁の素材を選ぶときに大切にしたいこと
さまざまな内壁素材と、素材の良さを活かす使い方があることがわかりました。最後に、松元さんに内壁の素材を選ぶときに大切にしたいことについて聞きました。
「内壁の素材選びでいちばん大切なことは、その空間で過ごしていて楽しいか、ワクワクするかだと思います。多種多様な素材があるので、計画の段階から住む人と一緒にワクワクをつくってくれる会社を選びましょう。これまでは『壁は無難に』という考えが世の中の主流でしたが、ステイホームを楽しむためにも無難な壁を卒業してみませんか。内壁が変わるだけで普段の生活がずっと楽しくなります」
海外風のスタイリッシュなリビング、カフェのようなおしゃれで可愛らしいキッチンなど、選ぶ内壁素材によって自分好みの空間をつくることができます。その空間で暮らす自分をイメージしながら、内壁にどんな素材を使おうかと考えるだけで気持ちが高まりますね。ぜひ素材選びの段階から家づくりを楽しんでください。
スーモカウンターに相談しよう
家の雰囲気の決め手となる内壁の素材選び。毎日過ごす場所だからこそ、自分や家族の好みに合った素敵な素材をチョイスしたいですね。
内壁の素材選びからこだわりたいという人は、ぜひスーモカウンターにご相談ください。スーモカウンターではアドバイザーがお客様の家づくりを全面サポートします。注文住宅の新築・建て替えに関するさまざまな疑問や不安に寄り添ってアドバイスを行っていますので「まずは何から始めたらいい?」と思っている人はぜひご利用ください。
ワクワクする空間を一緒につくってくれる会社を探していきましょう。
取材協力/おうちソムリエ一級建築士事務所
代表 松元幸樹さん
一級建築士、宅建士。住む人がワクワクする可愛い空間をテーマに、家づくりを提案。小さな子どものいるファミリーや女性にも好評
取材・文/佐藤 愛美(スパルタデザイン)