60坪とは、一般的にはどれくらいの広さになるのでしょうか。住宅金融支援機構の資料では、2022年度の注文住宅の住宅面積(坪数)は全国平均で37.2坪なのだそう。60坪の土地はその約1.6倍の広さとなるため、ウッドデッキや庭、ガレージなど、家族のさまざまな希望に応えることができそうです。
それでは、60坪の土地を活用する間取りのアイデアにはどのようなものがあるのでしょうか。 シグマ建設の小野猛さんと伊藤朋実さん、充総合計画一級建築士事務所の杉浦充さんから60坪の土地に建てる家の間取りについて紹介してもらいました。
60坪の土地にはどんな家が建てられる? 土地選びのポイントは?
60坪は㎡数に変換すると約198㎡(1坪約3.3㎡)の広さで、畳数で表すと約122畳(1坪約2.04畳)の広さになります。一般的な学校の教室の広さの基準が63㎡なので、だいたい教室3つ分と考えると、 分かりやすいかもしれません。
土地選びのポイントは?
注意しておかなければならないことは、この広さの土地を購入しても敷地いっぱいに家を建てるわけにはいかないことです。家を建てる土地の多くには「用途地域」という定めがあり、住宅や商業施設、工場などのなかで建てて良い用途が決められています。
また建物の高さや、敷地のなかで建物を建てられる割合なども決まっています。「建ぺい率」や「容積率」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? それらは土地の広さに対して建てられる建物の規模を制約する割合を指します。取得する土地の建ぺい率や容積率を、しっかりと調べておきましょう。
どんな家が建てられる?
60坪の土地に住宅を建てるメリット
60坪の敷地があれば一般的な人数の家族ならゆったりと暮らすことができるでしょう。その広さのある土地に住宅を建てるメリットについて、改めて確認してみましょう。
敷地に余裕があるため平屋や二世帯なども検討しやすい
敷地に余裕があるため、平屋や二世帯住宅を検討したり、家族の希望に合わせさまざまな住まいの形を検討できることが最大のメリットと言っていいでしょう。
これだけの広さを確保するには、郊外型の住宅地などが多くなるため、街全体も住宅に適した整備が行われている場所が多いと考えられます。山や海・川などの自然が多い場所は、のびのびと暮らせるイメージが湧くかもしれません。
十分な収納スペースが確保できる
十分な収納スペースを確保できることも、60坪の土地に住宅を建てるメリットの1つです。家族の人数が増えれば増えるほど、必要な荷物の数も多くなります。
さらに60坪の土地を活用すると、広めのシューズクロークやサイズの大きいパントリーを設置できるといったメリットもあります。これらを利用すれば、より効率良く多くの荷物や食器類を収納できるようになります。
60坪の土地に住宅を建てるデメリット
60坪の土地に住宅を建てることにより、デメリットが発生するケースもあります。メリット面と比較しながら慎重に決めましょう。
交通アクセスが不便になる可能性がある
郊外の立地となる場合には、都心に比べると通勤などの交通アクセスが良くなかったり、車が必要になったりすることがあるでしょう。
建築費用や外構費用がかさむ可能性がある
大きな家が建てられる分、建築費用や外構費用がかさむ可能性があります。家を建ててからも、小さな敷地に比べて固定資産税が多くかかってくることに。土地が200㎡(約60.5坪)を超える部分は小規模住宅用地ではなくなるので、60坪の広さは固定資産税軽減措置が1/6から1/3に減らされる境界線にあります。
また、大きな家であればメンテナンスにも労力や費用がかかることを頭に入れておきましょう。
60坪の土地におしゃれな家をつくるには?
住宅として十分な広さがある60坪の土地。庭やガレージ、客間などさまざまな要素を取り入れられます。どんな間取りが可能なのでしょうか? おしゃれな家を建てるためのノウハウを専門家に聞いてみました。
吹抜けをつくる
「60坪の敷地におしゃれな家を建てるなら吹抜けを取り入れてみるのも1つの方法です。天井を高くできるので、開放感を演出できます。外壁が隣家に接しているような場合は、吹抜け部分に天窓をつくると下の階にも光が注がれて家が明るくなります」(小野さん)
インナーバルコニーをつくる
「インナーバルコニーとは中庭のこと。敷地外の環境に左右されることなく、庭をつくることができますし、中庭を家の中心にすれば、どの部屋にも光が差し込みます。外から視界を遮ってプライバシーを確保しつつ、家に明るさと抜け感を取り入れることができる、オススメの間取りです」(伊藤さん)
「周囲を壁で囲み、プライベートな中庭をもつコートハウスの間取りもオススメです。外壁の意匠にこだわればスタイリッシュな外観になりますし、中庭から各部屋に採光できる間取りで、家の中はカーテンのいらない明るい空間になります」(杉浦さん)
インナーバルコニーについてもっと詳しく→
インナーバルコニーとは?メリット・デメリット、失敗しないプランニングのポイントを解説!
和室を設ける
「60坪ですとLDKや寝室、子ども部屋以外に和室をつくる人も多いですね。以前のような客間としての用途だけではなく、小さな子どもを寝かせたり洗濯物を畳んだりする家事のための部屋にするなど、活用法も広がっています。和室の良いところは、天井や窓を低い位置にできることです。洋室の場合、天井が低いと圧迫感がありますが、和室ならコンパクトな部屋でも、茶室のような“おこもり感”が出てしっくりと馴染みます」(小野さん)
車3台分程度の駐車スペースをつくる
「60坪は十分な広さのある土地だといえます。それだけの広さがあれば複数台の車を駐車できるスペースを確保したり、比較的大きめのガレージを設けることも可能です」(杉浦さん)
60坪の土地にオススメの間取り
これまで見てきたように、プライバシーを確保しつついかに開放感のある家をつくるかが、60坪の敷地におしゃれな家をつくるポイントといえそうです。
旗竿地に立つスタイリッシュなコートハウス
「道路から奥まった敷地にある旗竿地のコートハウスです。夫婦と親御さんの二世帯と愛犬5匹で暮らしています。周囲から視線を遮る壁は斜めに切り立った形状にしてスタイリッシュに仕上げました。中庭は愛犬5匹のドッグヤード。犬たちが遊ぶ様子を、どの部屋からも眺めることができます。階段の周囲には単なる廊下ではなく、広々としたホールをつくり、家族共有の多目的スペースにしました」(杉浦さん)
南側と北側で表情を変えるガレージと庭のある家
「家族3人でゆったりと住める4LDKの家です。南側は地面に近い寛ぐリビングスペースや屋外デッキ庭と繋がるダイニングなど、自然を感じる雰囲気に。一方で北側は愛車をメンテナンス可能なピット付きのビルトインガレージを配し、南北で異なった雰囲気を持っています。また生活スペースから独立した客間としても使えるワークスペースや大量の蔵書や音楽CDを収納する可動式書架を造作するなど、住む人の個性を反映した独創的な家です」(杉浦さん)
趣味のための地下室がある家
「62.24坪の敷地ながら8LDKの部屋数のある家です。南北方向に奥行きがあり、周囲を建物に囲まれた敷地ですが、隣家との位置関係を踏まえてプライバシーと採光を両立する窓を設計することにより、曇りの日でも屋内が明るい家になりました。
住人の趣味のアイテムが多数あり、それらを収納するための空間をたっぷりと用意しているのも特徴です。特に広い地下室には壁一面の造作棚やバーカウンターを設け、夫の趣味が詰まった空間に。居住空間とは別の入口もつくって、事務所使用もできるようにしています。また天井には階段で出入りできる広い小屋裏収納を設けています」(杉浦さん)
60坪にどんな家を建てた?先輩たちの実例紹介
60坪にどのような家を建てたのか、これまでの先輩たちの実例を紹介しましょう。ここに挙げた2つのケースを参考にしながら、自分の家はどういった住まいにしたいのかをイメージしてみてください。
【case1】子どもの成長を見守りながら家事ができる、平屋の家
結婚後は妻の実家である平屋で、妻の両親と同居していたHさん夫妻。妻の両親と同居していた実家は母屋と離れがある平屋で、キッチンとリビングが別の場所にあり、家事動線の悪さが不満に。室内には段差も多く、季節によって寒暖差が大きいなど、1歳をすぎた娘を育てるなかで毎日の暮らしがストレスになっていたそうです。
家事がしやすく、子どもにも目が行き届くよう「平屋を建てたい」と考え、スーモカウンターに相談しました。60坪の広い敷地を存分に活用した住まいは収納スペースも豊富。リビングを中心に放射線状に個室を設けた間取りは動線もコンパクトで快適な住まいとなりました。
この実例をもっと詳しく→
計画変更を経て、1年越しでスーモカウンターを訪ねて建てた平屋
【case2】見晴らしの良い高台につくったウッドデッキのある2階建ての家
Sさんは長女の幼稚園入園前に入居できるよう、大阪市のニュータウンに家を建てました。土地を購入する際のポイントは豊かな自然に恵まれた環境と抜群の見晴らし。現在の敷地は一目で即、購入を決めたといいます。
「料理をしながら子どもの様子が見られるカウンターキッチン」「ウッドデッキ」「子どものプレイルーム」などの希望を全て間取りに落とし込んだ、こだわりの詰まった家となりました。
この実例をもっと詳しく→
限られた予算で念願のニュータウンに新居完成
60坪の土地に家を建てる場合の費用相場
60坪の土地に家を建てる場合の費用相場を解説します。概算を出すときに使われる計算式が「延床面積×坪単価(1坪あたりの建築費)」です。住宅金融支援機構が公表している「2022年度 【フラット35】利用者調査」を参考に算出してみましょう。
例えば注文住宅の場合は、2022年度の住宅面積の全国平均が122.8㎡とされています。「1坪=3.3㎡」と仮定すると、37.2坪と書き換えられます。なお2022年度における建築費の全国平均は3,715万2000円であるため、坪単価は99万9000円です。仮に建築面積を60坪にすると、費用相場は最大で5994万円となります。
とはいえ上記の費用相場は、あくまで平均値から導き出したものです。また実際には建築基準法や都市計画で定めている容積率により、延床面積には一定の制限があります。どの地域で家を建てたいかによっても金額は大きく変わるので、土地の購入も含めた家づくりの予算を決めてから動き出すことをおすすめします。
土地と家の費用バランスに注意しよう
家を建てる際には、土地と建物の費用バランスに注意しなければなりません。特に60坪の土地に家を建てるとなれば、相対的に土地の価格が高くなるでしょう。土地にばかりお金をかけてしまうと、建物への予算が少なくなります。理想の住まいを手に入れるのが難しくなるので、それぞれのバランスを入念に比較してください。
先程と同じく「2022年度 【フラット35】利用者調査」を参考に、土地と建物の双方を購入するときの費用相場を解説しましょう。例えば、土地付注文住宅融資利用者の首都圏における「1坪あたりの土地取得費(2022年度)」は50万4000円/坪です。つまり60坪は、土地だけで購入に3024万円かかる計算となります。
一方で首都圏・近畿圏・東海圏を除くその他の地域は、「1坪あたりの土地取得費」が12万5000円/坪です。60坪を購入する場合、費用は750万円と計算されます。このように地方が変わるだけで、4倍以上も金額が異なる場合もあります。
ほかの地域についても、同様の計算で坪単価平均と60坪あたりの費用相場を算出しました。あくまで目安ではあるものの、土地の購入を検討する際の参考にしてください。
地域 | 1坪あたりの土地取得費 | 60坪換算 |
---|---|---|
全国平均 | 24万5000円/坪 | 1470万円 |
近畿圏 | 37万8000円/坪 | 2268万円 |
東海圏 | 20万円/坪 | 1200万円 |
また実際の土地には公示価格や基準地価などとさまざまな基準が採用されており、地域によって細かく金額が異なります。同じ都市圏に住居を置いたとしても、市区町村が異なれば費用相場も大きく変わることを押さえておきましょう。土地と建物の双方を購入し、なおかつより良い住まいを手に入れたい場合は、エリアをよく調べることが大切です。
ひとまずは土地および建物全体で、どのくらいの予算を用意できるかを調べてみましょう。そのうえで、どのような建物を建てたいかを一度イメージしてみるのをおすすめします。
スーモカウンターに相談してみよう
これまで見てきたように、60坪の土地は一世帯で住むなら十分な広さがあるだけに選択肢も増え、家族にとってどのような間取りが最適なのか、迷う人も多いでしょう 。
注文住宅の新築・建て替えをサポートしているスーモカウンターでは、家づくりの不安を解決できる無料講座や、アドバイザーに悩みを相談できる無料の個別相談などを実施しています。個別相談では予算や希望条件の整理、建築会社の紹介など、注文住宅を建てる際のあらゆる不安について、知識と経験のある専任アドバイザーに無料で何度でも相談できます。
60坪の土地にどんな家を建てるか迷っている人は、スーモカウンターを活用して、家づくりの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
監修/SUUMO編集部(十分な収納スペースが確保できる/60坪の土地に家を建てる場合の費用相場)
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