15坪の土地に家を建てるときに、どのような間取りが適しているでしょうか? 住宅金融支援機構の資料(【フラット35】利用者調査)によると、 2019年度における注文住宅の住宅面積(坪数)は全国平均で38.1坪となっています。15坪は平均よりも半分程度の狭い敷地になり、狭小住宅の部類に入ります。
都心では見かけることのある15坪の狭小地を有効に活用し、思い通りの家を建てるために、実例やプロの建築士さんのアドバイスから、理想の間取りを考えてみましょう。今回はシグマ建設の小野猛さんと伊藤朋実さん、充総合計画一級建築士事務所の杉浦充さんから15坪の土地に建てる家の間取りのアイデアを聞きました。
15坪の土地にはどんな家が建てられる? 狭小の土地選びのポイントは?
坪数の表示に慣れていないと、15坪といってもイメージが湧かないかもしれません。
1坪は約3.31㎡の広さなので、15坪は、㎡数に変換すると49.58㎡の広さになります。また、1坪は畳の広さで換算すると約2.04畳にあたるため、15坪は、畳数で表すと約30畳の広さになります。
既存の敷地と比較すると、スーパーなどの標準的な駐車スペースが幅2.5m×長さ5.0mの12.5㎡の広さなのでそのスペースがほぼ4つ分と考えると、イメージが湧くかもしれませんね。
この広さの敷地に家を建てるわけですが、建物を敷地面積いっぱいに建てられるわけではありません。建てる地域や場所によって「建ぺい率」や「容積率」が定められており、土地の広さに対して建てられる建物の規模が制約されます。取得する土地の建ぺい率や容積率はしっかりと頭に入れておきましょう。
土地選びのポイントは?
どんな家が建てられる?
15坪の敷地を最大限活用して建物を建てると想定すると、だいたい2〜3LDKの3階建ての家がスタンダードなモデルケースとなります。一般的には3人家族までがフィットする間取りですが、子ども部屋をシェアしたり、リビングに学習スペースを設け、子ども部屋をコンパクトにした分、共有スペースを増やしたりしてスペースを工夫すれば、4人家族で住まうことも可能です。
15坪の土地に狭小住宅を建てるメリット・デメリット
15坪の家は建物が建てられる面積をめいっぱい活用したとしても、1フロアが9畳ほどの広さになります。ワンルームほどなので、階数を増やすごとに部屋数を増やしていく感覚です。ただし階数を増やすと階段の移動が日常的になるので、子どもや高齢者が住む場合の部屋の使い方は、十分に考えておく必要があります。
メリット
狭小住宅は狭いというデメリットに注目されがちですが、土地代が低く抑えられる分、駅近や都市圏など、人気の高い土地を取得しやすいというメリットがあります。また土地代や敷地面積に比例して税金を低く抑えることができるでしょう。
また、部屋数が少なく、部屋間の距離が短いことで、エアコンが1フロア1台で済む場合などもあり、光熱費も節約できます。トップライト(天窓)などをうまく取り入れれば、室内を明るく、暖かく保つことができるので、日中の電気代の節約に。家全体がコンパクトなため、広さによって大まかな工事費が決まる将来的な修繕費用(外壁、屋根の塗装、壁や床の張り替えなど)も抑えることができそうです。
デメリット
生活空間のスペースが限られることに加え、敷地いっぱいに建てることが前提だけに、隣の家との距離が近いという点が挙げられます。設計段階で、天窓の設置や壁材を検討するなど、採光や防音面の工夫をすることで、デメリットを軽減することができます。
15坪の土地におしゃれな家をつくるには?
それでは15坪の土地におしゃれな家を建てるための工夫をプロに聞いてみましょう。「空間を大きく使い、限定されたスペースを多目的に活用することが大切」だというのが、専門家からのアドバイスです。
壁を減らす
「15坪程度の狭小地に家を建てるなら、空間の節約のために壁を少なくしたいですね。思い切ってワンフロア、ワンルームにするのも狭い空間でおしゃれな家をつくる方法のひとつです。例えば、お父さんの書斎やお子さんの勉強部屋は独立した部屋にせずに、リビングの一角に仕切りを設けて活用します。またお子さんの部屋も兄弟で分けずに一つの部屋をシェアする方法もありますね。最低限のプライベートスペースを仕切って、あとは共有するというのが最近、人気の傾向です」(小野さん)
「いかにスペースを有効活用するかという点においては、廊下にスペースを割かないこともポイントです。そのために私は家の中心部に階段を持ってくることが多いですね。そうすれば廊下をつくる必要がなく、空間の節約になります。また建て込んでいることが多い狭小住宅では採光も大切。吹抜けや天窓を使うと明るい家になります」(杉浦さん)
収納は家族で共有
「狭いスペースでの収納場所を確保する方法として、ファミリークロゼットをご提案することもあります。家族でひとつの大きなクロゼットをつくることによって、スペースをフレキシブルに使えますし、収納場所がひとつになることで家事動線もよくなります」(伊藤さん)
空間を縦にも有効活用
「敷地が狭い場合は、縦に空間を使うことを考えましょう。吹抜けをつくることも一つの方法です。狭い部屋でも天井を高くすることで空間に抜けができて、広々とした印象になります。規制によって建物の高さが出せない土地は、1階を半地下に下げて天井高を確保する方法もあります」(杉浦さん)
15坪の土地にオススメの間取りは?
スキップフロアを利用し、部屋を仕切らず用途を分けた間取り
「約13.5坪の敷地に計画した、3階建て4LDKの住宅。夫婦と子どもひとり、そしてその親御さんの、4人住まいです。スキップフロアにして、高低差で部屋を区切るのが、狭小住宅を目一杯使いながらもスペースを多目的に有効活用できるポイント。各部屋の収納は小さめですが、その分1階に共用できるウォークインクロゼットを設けています。また周囲を3階建ての建物に囲まれており、採光に工夫が必要ですが、2階から3階までの吹抜けをつくったり、階段をスケルトンにして光を通したりといった工夫で、明るい家にしています」(杉浦さん)
家の中心に吹抜けをつくった間取り
「17.6坪の敷地に4人家族と親御さん1人の、2世帯が住む5LDKの家です。この間取りで特徴的なのは家の中心部に設けられた天窓。天窓から光が入る部分の床をグレーチング(格子状のスケルトンの床)にして、天窓の明かりが2階のリビングまで届くようにしました。内部はコンクリート打ち放しの空間ですが、外断熱仕様によって2020年基準以上の高断熱環境を満たしています」(杉浦さん)
狭小でも完全分離2世帯を実現した家
「都市部の約9.6坪の敷地にある、スキップフロアをもつ2世帯住宅です。4LDKにご夫婦と親御さん1人の3人が住んでいます。建て込んだ場所の狭小住宅でも、完全分離型の二世帯住宅を実現した好例です。ポイントは敷地を目一杯使うために、廊下や壁などの要素を徹底的に排したことと、壁をつくらずにスキップフロアで部屋を区切ったり、建物と道路や隣家との境界線までの距離を利用したポーチをつくり、玄関部分の廊下を省いたりと、省スペースの工夫が満載です」(杉浦さん)
15坪にどんな家を建てた? 先輩たちの実例紹介
【case1】娘と自分が本当に欲しい機能をギュッと詰め込んだ、夢をかなえる家
長女と2人暮らしのBさんは、以前はアパートに住んでいました。きっかけは「上階の足音が気になって。これからのことを考えて、そろそろ住まいを資産にしていこうと考えました」とのこと。
マイホームを建てるにあたって「音楽室を持つこと」と「猫を飼うこと」という夢を実現したかったといいます。Bさんは金管楽器、長女は弦楽器を演奏するため、防音性の高い部屋は必須でした。また、小さいころからずっと猫を飼いたかったBさんにとって、マイホーム購入は夢をかなえる絶好のチャンスだったのです。
とはいえ資金的には不安があり、「首都圏で注文住宅を建てるなんてまず無理。不動産会社に行ってもきっと相手にしてもらえないだろう。結局のところ、中古&リフォームしかないかな、と思っていました」とBさん。しかし実際は娘さんの学区を変えずに通える場所に13坪の家を新築で建てることができました。
この実例をもっと詳しく→
音楽、猫、本、色……好きなものを13坪にぎゅっと詰めこんだ家
【case2】床下収納と広い土間を設けた趣味のための家
15坪の土地に家を建てた石橋さんは夫婦2人暮らし。多趣味な石橋さんは、趣味の時間を捻出するために、職場に近い場所に住むことを条件にしていました。同じ予算でマンションを購入するよりも、自分好みにカスタムした注文住宅に魅力を感じた石橋さん。特にこだわったのは、趣味のアイテムを置くスペースがあること。そこで広い土間と床下収納のある家を建てました。
この実例をもっと詳しく→
趣味が捗るでっかい土間の家【趣味と家】
スーモカウンターに相談してみよう
これまで見てきたように、15坪の土地に家を建てる際には、家族にとって必要な機能を優先させ、採光や階段の位置などを検討することが間取りの工夫のポイントになりそうです。
注文住宅の新築・建て替えをサポートしているスーモカウンターでは、家づくりの不安を解決できる無料講座や、アドバイザーに悩みを相談できる無料の個別相談などを実施しています。個別相談では予算や希望条件の整理、建築会社の紹介など、注文住宅を建てる際のあらゆる不安について、知識と経験のある専任アドバイザーに無料で何度でも相談できます。
15坪の土地にどんな家を建てるか迷っている人は、スーモカウンターを活用して、家づくりの第一歩を踏み出してはみてはいかがでしょうか。
取材協力
・シグマ建設
・充総合計画一級建築士事務所 杉浦充さん
取材・文/蜂谷智子(スパルタデザイン)
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