家づくりを検討していると、パティオという言葉をよく耳にしますが、パティオとは一体どんなものでしょうか?そこで、パティオのメリットやデメリット、プランニングの際注意するポイントなどについて設計事務所アーキプレイス代表・石井正博さんが解説。光や風よりを身近に感じられる外部空間の工夫をして、おうち時間を充実させましょう。
目次
パティオとは?スペインの住宅に取り入れられた中庭のこと
パティオとは、スペインの住宅の中庭のことを指します。多彩なタイルばりの床や噴水、壁泉などでしつらえ、植木を植え、家具を置くなど、暑い気候のなかで涼を得るオープンスペースとして取り入れられてきました。土足文化のなかで庭というよりも屋外にあるもう一つの部屋という位置付けで、食事を楽しんだり、自然を愛でたりと、「過ごす場」として利用されています。
「日本では、都市部の住宅は隣家との距離が近いため、庭を設けてもプライバシーを守りづらく、安心できる落ち着いた外空間をつくりにくい。中庭は通風や採光面の課題解決や、坪庭のように自然を身近に感じるという「眺める」目的で取り入れるケースが多いのですが、外空間で「過ごす」ことを目的としたパティオ的な要望も都市部を中心に増えてきています」
パティオのメリット・デメリットとは?
パティオのメリット
「土地が狭く隣家との距離が近い南側に庭を設けても、道路から丸見えで落ち着かないといった都市部に多く見られる敷地条件でも、プライバシーを守りつつ、屋外の環境を楽しむことができる点はメリットであり、日本の住宅のプランニングの可能性を広げてくれるものです。また、在宅時間が増えて住まいの快適性がより求められてきましたが、外からの視線を気にすることなく安心して空を眺めたり、光や風を感じることができる外部空間の心地よさが見直されています」
中庭を介することで室内からの空間の広がりも感じられるなど、中庭がもたらす室内空間への影響も大きい。
また、パティオなどの中庭は部屋や塀に囲まれているので、子どもやペットが遊ばせていても、道路に飛び出たりする危険がないのも安心だ。
パティオのデメリット
一方で、パティオをつくる場合、パティオ自体にかかる外構費だけでなく、建物の形状がコの字やロの字になることで外壁の表面積が増えるため、建築費用全体も上がる。
また、中庭をぐるりと回遊するプランになると、上階部分の面積が小さくなるため、その分室内空間は狭くなる。生活動線が長くなり過ぎたり、風通しが悪くなる場合もあるので、プランニングの際には注意が必要だ。
「掃除などメンテナンスに手間がかかるのもデメリットの一つ。また、床を木製デッキにする場合は、隙間から水が流れていくため、室内とフラットな高さにできますが、コンクリートやタイルにする場合は水の侵入を防ぐために段差をつけなければならないので、内外を行き来する上での心理的ハードルが生まれやすくもなります」
パティオを取り入れたプランアイデア
オープンな空間で食事を楽しむ緑豊かなパティオ
パティオらしいタイルの床やレンガと塗り壁の組み合わせで、緑豊かな南欧風にしつらえた庭空間。アウトドアで食事が楽しめるよう、シェードを設けて日差し対策も。
プライバシーに配慮したシンプルモダンなパティオ
南欧風ではなく現代的なシンプルモダンテイストのパティオ。パティオを中心にほぼ平屋のコートハウスとすることで、将来にわたって周辺環境の変化に左右されない、バリアフリーの安心安全な暮らしを実現しています。猫や犬などペットをパティオで遊ばせるにも安心です。
パティオをつくるときに注意するポイント
パティオでの過ごし方を明確にしてからプランニングする
ランチやお茶を楽しみたい、ガーデニングを楽しみたいなど、まずはパティオで何をして過ごすのかを明確にしましょう。大きさや形、位置、部屋との関係を考慮して、光や風の入り方をイメージしながら全体プランのなかで最適なものを見つけていくと、過ごしやすい空間に。
「日当たりが良く活動的なイメージのパティオは南向きにつくられることが多いですが、敢えて北側に設けて落ち着いた雰囲気のパティオにすることも。夏場は太陽に照らされるとタイルに熱が溜まり、表面温度が上昇してまわりがとても暑くなります。輻射熱は夜まで続き、室内環境に悪影響を与えてしまう場合もあるので注意が必要です。パティオでランチやお茶を楽しみたい場合は、木陰をつくったり、オーニングやパラソルなど日陰をつくる工夫をしましょう」
採光面を考慮した建物の高さにする
パティオをつくる際、太陽の光が差し込みやすいように建物の南側の高さを低めにしたり、採光面を考慮した建物の高さと広さのバランスをとることが重要です。
「日当たりや風通し、気温、湿度など、地域や風土に合った植栽計画にしないと、植物が育たず気持ちの良い空間をつくることができません。プランターで植物を育てる場合は、冬は室内に入れることができるので、室内にそのスペースを確保しておきましょう」
メンテナンスのための設備・収納を設ける
パティオの床の素材はコンクリート、タイル、レンガタイルなどを用いることが多いですが、掃除のために水栓の設置や掃除用具置き場を設けておきましょう。また、外履きを出しっぱなしにすると汚れてしまうので、小さくても靴箱があると便利です。
「台風などの大雨に備えた排水計画をしておくことも大切。テーブルや椅子などもしまっておける場所もあると便利です」
庭空間を楽しむ演出をする
プライベート空間をつくるには、目の高さを超える1.6m以上の目隠しの塀で囲います。
「植栽計画と合わせて噴水や池など水を取り入れた演出もオススメ。水面に反射した光が壁や天井に映し出す揺らめきなどを見ていると時が経つのを忘れて、暮らしが豊かなものになりますよ。また、夜に照明でライトアップすると、昼間とは違った雰囲気を楽しめます。カーテンを開けて室内の明かりを落としても、パティオはプライバシーが守られているので安心です」
スーモカウンターでかなえよう!
このように、パティオを取り入れることで、自然と直接触れ合える、空に開かれたもう一つの部屋が生まれ、プライバシーを守りながら外空間を身近に感じることができたり、食事を楽しむなどのアクティビティが広がります。しかし、自分たちの希望の暮らしに合ったプランを実現してくれる建築会社はすぐには見つけられません。
そこで頼れるのがスーモカウンター。注文住宅の新築・建て替えをサポートしているスーモカウンターでは、家づくりの不安を解決できる無料講座や、アドバイザーに悩みを相談できる無料の個別相談などを実施しています。個別相談では住宅建築の予算や希望条件の整理、建築会社の紹介など、注文住宅を建てる際のあらゆる不安について、知識と経験のある専任アドバイザーに無料で何度でも相談できます。
スーモカウンターを利用して、パティオで外空間を満喫できる家づくりをかなえましょう!
取材協力/設計事務所アーキプレイス 石井正博さん
取材・文/金井さとこ