住宅のデザインとして一つのジャンルを確立している「和モダン」ですが、日本に古くからある「和室」をモダンに演出するポイントは、どのようなところにあるのでしょうか? リソーケンセツの髙橋秀和さんに伺いました。
モダンな和室とは?
住宅の外観や内観で人気の高いテイストに「和モダン」があります。「和モダン」は一般的には、和の伝統と欧米のモダンスタイルが融合したイメージですが、和室に注目したとき、「モダンな和室」とはどのような和室なのでしょうか?
純和風の和室とモダンな和室の違い
「純和風の和室というのは、日本に昔からある伝統的な和室です。伝統的な和室のつくりには、床の間があって、銘木の床柱があって、というような決まり事がありますが、モダンな和室はあまりそういった型にとらわれないのが特徴です。例えば、床の間を設けない、または設ける場合でも、床の間の下がり壁をアーチ状にするなど、現代的に崩すことが多いですね」(高橋さん、以下同)
モダンな和室にするためのポイント
それでは、モダンな和室にするためのポイントとしては、どのようなものが挙げられるのでしょうか?
「型にとらわれないという意味ではいろいろなアプローチがあると思います。例えば、当社の場合は、あまりゴテゴテしないよう廻り縁(まわりぶち)を細くするなど、全体的にすっきりと見せる工夫をすることが多いですね」
和室を「モダン」に演出する要素とは?
和室は畳や建具、壁、天井など、さまざまな要素で構成されていますが、要素ごとに和室をモダンに演出するポイントを紹介します。
畳(床)
「琉球畳のように縁のない畳の方が、和風過ぎず、すっきり見せられるのでモダンな雰囲気が演出できます。少し色の違う縁なし半畳サイズの畳を市松模様に並べたりすると、さらにモダンになるでしょう」
建具
「和室の代表的な建具と言えば障子ですが、障子の組子(くみこ)の形状を変更してデザインすることで、モダンな雰囲気にすることができます」
「また、桟(さん)が見えないよう、障子紙を建具全体にくるむように張る『太鼓張り(たいこばり)』(または『両面張り』とも言う)にして、光を優しく見せるようなデザインをすることもあります。障子紙を片面だけに張る『片面張り』に比べて、太鼓張りにすると、空気層ができるため、断熱性が高まるという効果もあります」
壁
「和室の壁のつくりには大きく分けて、真壁(しんかべ)と大壁(おおかべ)があります。構造の柱を見せるのが真壁、見せないのが大壁ですが、モダンな雰囲気にしたい場合は、あえて和室らしい柱を見せずに大壁にすることが多いですね。
また、さらにモダンな和室にするために、壁に珪藻土を塗ったり、アクセントクロスとして越前和紙を貼って色や紙の風合いを出したりする方法もあります」
窓
「大壁の和室の窓にプリーツスクリーンや、自然素材系のシェードやブラインドなどを使うとモダンな雰囲気になります。また、和室のサッシは引き違い窓を使うことが多いのですが、あえて縦スリット窓や横スリット窓などを使ってもモダンな雰囲気になります」
天井
「天井は木目を出さずに、和紙などで仕上げて色を付けるとモダンになります。また、あえて梁を見せたり、天井を高くしたりすることで、モダンな雰囲気を演出することもあります」
照明
「天井にシーリングライトやダウンライト、間接照明などを使うと、和風過ぎず、モダンな雰囲気になります。また、高くした天井からぶら下げる提灯のような照明を使っても、和紙の素材感でモダンに演出することができます」
他の部屋とのバランスは?
和室をモダンにする際は、他の部屋とのバランスにも気を付けた方がいいと高橋さんは言います。どのような点に気を付ければいいのでしょうか?
間取りや、浮いた印象にならないための工夫
「和室を設ける場合、リビングの続き間にすることが多いので、なるべくリビングと一体となるように工夫します。具体的には、リビングの方にも和の要素を取り入れたり、床材や柱の色味を合わせたりすること。そうした上で開口を広く設ければ、一体感が生まれ、全体として和モダンな雰囲気になるので、和室だけが浮いた印象にならないでしょう」
モダンな和室の実例を紹介!
ここでは、リソーケンセツが手掛けたモダンな和室の実例を紹介します。
【実例1】細く使い込んだ色の柱と、畳や照明がモダンな雰囲気を演出
壁は柱を見せる真壁ですが、柱をあえて使い込んだ風合いが出るように塗装してアクセントとして使い、空間全体をデザインしています。縁なし半畳の畳と提灯のような照明が、モダンな雰囲気を際立たせています。
【実例2】柱と梁をデザインしてモダンな空間に
壁の柱が天井の梁まで直線的につながるようデザインすることで、モダンな雰囲気を演出しています。天井には落ち着いた色合いの越前和紙、床には縁なし畳を用いている点もポイント。照明もモダンなデザインのものをチョイスしました。
【実例3】勾配天井に、あえて太い梁を見せることでモダンな雰囲気に
勾配天井にがっしりとした梁が特徴的な和室です。あえて太い梁を見せることで、高い天井と調和してモダンな雰囲気を出しています。梁から吊り下げられた提灯のような照明も、モダンな和室の演出に一役買っています。
モダンな和室を実現した先輩たちの事例を紹介!
スーモカウンターで、モダンな和室のある家を実現した先輩たちの事例を紹介します。先輩たちが、どんな点にこだわり、どんな住まいを実現したのか、実例を参考に学んでいきましょう。
【case1】平屋に設けた土間とつづくモダンな和室
土間や縁側がある日本家屋が理想だったというTさん夫妻。大人二人の暮らしなので、1フロアで生活したいとも考えていました。注文住宅への夢が膨らみ、一度詳しい人から話を聞いてみようと訪ねたのがスーモカウンターです。そこで予算と条件を伝え、依頼先候補として2社提案されました。その中の1社は、希望の平屋が建てられる土地探しも手伝ってくれたため、その会社に依頼することに。
和風建築の家は、値段が上がってしまうため、等身大の和モダンの家を希望。土間とつながる和室には琉球畳を敷いて、モダンな雰囲気を強調しています。
この実例をもっと詳しく→
「わが家に帰ってきたな」とホッとする、土間のある平屋
【case2】シンプルで和モダンな家になじむ気持ちのいい和室
賃貸のアパート暮らしをしていた会社員夫婦は、家を建てようと決意。土地は夫の祖母が住んでいた土地を譲り受け、建物はスーモカウンターへ相談することにしました。そこでは依頼先候補として3社紹介され、その中から予算に収まる見積もりを出してきた地元密着型の施工会社を選択。
二人の希望は、木のぬくもりを感じられるシンプルな和モダン。縁なし半畳の畳を市松模様に並べた和室は、まさに和モダンな雰囲気。2階に寝室があるにもかかわらず、初日に和室で寝たら、楽すぎてそのまま和室で寝ているそうです。
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理想だった「木のぬくもりと和モダン」を備えた家が狭山緑地と同化する暮らし
【case3】個性を出しつつ他の空間とも調和するモダンな和室
結婚を機に、妻の実家の隣の土地に注文住宅建築を検討し始めたSさん夫妻。よく利用する商業施設のスーモカウンターに行ってみることにしました。そこで、要望に合いそうな建築会社を6社紹介してもらい、その内の3社と面談を進めることに。最終的には、デザインテイストや担当者の人柄が気に入った会社に依頼を決定しました。
個性を出したかったので、外観、内装のデザインがシックで落ち着いた雰囲気の家にしたかったと言います。完成した新居の2階の和室は、和モダンなデザイン。個性的でありながら他の空間とも調和するようなデザインにしています。
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洗練されたホテルライクな空間で、ゆったりくつろげる至福の空間
【case4】リビングと和室の間を和モダンなデザインの格子扉で仕切った家
間取りを考えたり、インテリアを見たりするのが大好きというAさん。家づくりを始めるにあたり、まずスーモカウンターを訪問しました。スーモカウンターからは4社を紹介してもらいましたが、最終的に依頼を決めた会社は、自分たちの思い通りにできるところが気に入ったと言います。
希望したのは、断熱性、耐震性に優れていて自然素材を使った和モダンなデザインの住まい。
完成した新居の和室は、リビングの続き間ですが、和モダンデザインの格子扉で仕切れるようになっており、妻の大のお気に入りです。
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暮らしやすいアイデアが満載!家事ラクがテーマの和モダン住宅
【case5】和モダンデザインの住まいの和室は、すっきりシンプル
長男の小学校入学を機に空き家になっていた祖母の家を建て替えることにしたIさんご家族。最初の2~3カ月は展示場巡りをしたものの価格が折り合わず、スーモカウンターを訪問しました。しかし、そこで紹介された2社とも予算に合わず、再度自分たちで調べた上で、スーモカウンターを再訪問。一回目とは別の店舗で新たに2社紹介してもらい、その内の1社がIさんの希望にぴったりだったため、依頼することに。
完成した新居は、ゆったりとした間取りの和モダン住宅。和室は伝統的な様式にこだわらないシンプルなつくりになっています。
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庭の紅葉を眺めながらゆったりくつろげる和モダンリビングのある住まい
モダンな和室を実現するためのポイントとは?
最後にあらためて高橋さんに、モダンな和室を実現するためのポイントを聞きました。
「モダンな印象にするためには、型にとらわれず、和室のいいところは取り入れつつも、あまり和に寄り過ぎないことが大事です。和室と隣り合うリビングなども含めて、全体の統一感を意識するといいと思います」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「和モダンが得意な建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望を叶えてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりのダンドリや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合せください。
取材協力/リソーケンセツ
取材・文/福富大介(スパルタデザイン) イラスト/村林タカノブ