音楽や漫画など、圧倒的な熱量を注ぐ「好きなもの」をおもちの方に、こだわりの住まいをご紹介いただく本企画「趣味と家」。第1回目は、オンラインゲームのプレイに特化した、通称「ゲーム御殿」を建てたかぐらさんが登場。家を建てるきっかけから、驚きのこだわりの数々まで、じっくりと解説いただきました。
初めまして、かぐらと申します。42歳の会社員です。
15年ほど前にオンラインゲーム『ファイナルファンタジーXI』【※】に出会って以来、仕事以外のほとんどの時間をゲームに捧げてきたぼくは、31歳のときに地元の三重県にゲームなどの趣味に特化した注文住宅を建てました。
※ 2002年に正式サービスが開始された、ファイナルファンタジーシリーズ初のオンラインゲーム。2016年3月にPlayStation2版とXbox360版のサービスが終了し、現在はWindows版のみサービスが継続している
大量のモニターやゲーム機を収納する特注の棚を備え付けたり、いきなりゲームが消えるのを防ぐためにブレーカーを分けたり、とにかく「快適にゲームをプレイできること」にこだわり、最近では「ゲーム御殿」なんて呼んでいただくこともあります。
今回のコラムでは、ぼくがこの「ゲーム御殿」をつくるに至ったきっかけから、実際に家にどのような細かいこだわりが詰まっているのか、ご紹介させていただきます。
家を建てたのは「快適にゲームができなくなったから」
幼少期にファミコンに夢中になったぼくは、その後小中高と大量のゲームを買い集める生活を送り、「ゲームを楽しむこと」は常にぼくの生活の中心でした。
しかし、社会人になると、ゲームにばかり時間を取れません。
しかも社会人になってからハマった『ファイナルファンタジーXI』は、プレイ時間により他のプレイヤーとのレベル差が如実に表れるオンラインゲーム。会社員として日中働いているぼくは、どうしても時間に余裕のある学生さんに勝つことができませんでした。
そこで思いついたのが、複数のモニターを使って同時に異なるキャラクターでゲームをプレイする方法。これなら効率良くゲームを進めることができます。
ただ、いくつもモニターが必要になるため、部屋はギュウギュウになります。さらに新しいゲーム機やソフトも次々と発売されるので、当時住んでいた実家の部屋は、徐々に新たに物を置く場所がなくなっていきました。
このままでは大好きなゲームを満喫することができない。
そう思い悩んでいるとき、ちょうど妹夫婦が家を建てることを知り、「そうだ、快適にゲームができる家を建てればいいんじゃないか!?」と開眼。幸いにも両親からもらった土地があったので、その場所に家を建てることに決めました。
ゲーム御殿にたどり着くまで
こうした経緯からお分かりの通り、ぼくが家に求めるのは「快適にオンラインゲームができる環境」。
具体的には、大量のモニターやゲーム機を収納できることはもちろん、スムーズに複数のゲームをプレイできること。また、一つの部屋だけでなく、家全体に音響システムやインターネット環境を張り巡らせ、どこにいても好きなものに触れられることにもこだわりたいと思っていました。
上記の要望を踏まえて、まずは妹夫婦の家を建てたハウスメーカーに相談。いただいた提案をもとに、いくつかのハウスメーカーを巡ってみることにしました。
しかし、全部で8社ほどのハウスメーカーを尋ねましたが、要望を100%かなえてくれるところはなかなか見つからず。注文住宅とは言えど、意外にもハウスメーカーごとにある程度建て方のパターンが決まっており、必ずしもこちらの要望を実現してくれないことも多かったのです。
結果、最も柔軟に相談に乗ってくれた妹夫婦と同じハウスメーカーに依頼。
ただ、いくつもハウスメーカーを回ったおかげで知識がつき、当初は想定していなかった新たな提案をおこなうことができたので、その経験は無駄にはなりませんでした。例えば、うちのシャッターは電動で開閉することができるのですが、そのアイデアは他社メーカーをめぐるなかで思いついたものでした。
その後打ち合わせを重ね、最終的な間取りは以下の通り。
(注)本記事のために作成した簡易的な間取図のため、正確性を期すものではございません
特にこだわった、ゲームをやる「プレイルーム」は16畳ほどあり、できる限り大きめに設計してもらいました。今は結婚していますが、独身だったからこそできた間取りだなあとしみじみ思います。
備え付けの特注棚、ゲーム専用配電盤……家中に張り巡らされたこだわり
それではここからは、実際に家中のこだわりを紹介していきましょう。
この家の中心「プレイルーム」
まずは、この家の核とも言えるプレイルームから。家にいるときの大半はここでゲームをして過ごします。
ここには、およそ18台のモニター、67台のゲーム機が置かれており、それらを収納しているのが、特注の棚。
あとから設置するのではなく、備え付けで部屋の柱を軸にしているので非常に安定感があり、重いモニター類にも耐えられる設計になっているのがポイントです。
家を建てた当初は、ブラウン管がまだ現役でしたが、今や液晶モニターが当たり前。オンラインゲームの機材も、プレイステーション2に始まり、パソコンやWii、Switchなど時代ごとに変化していきます。そのため柔軟に高さを調節できるよう、可動式になっており、幅広い機材に対応することが可能です。
こちらはモニターの切り替えスイッチ。このボタン一つでプレイステーション4からSwitchやパソコンへと切り替えることができ、煩雑な配線作業をすることなく、座っている場所から一歩も動くことなく操作できるようになっています。
棚の裏には、開閉可能なシャッターを設置。
通常、新しいゲーム機やPCを設置する際には、元ある機材をどけたりと面倒な作業が発生するのですが、これなら外から作業することが可能。ホコリまみれになりがちな場所も簡単に掃除できます。
こちらは外側から開けることが基本になるため、通常内側にある鍵穴が外側にあります。細かいですが、ここもこだわりました。
家全体に設置された数々の「収納」
いくらプレイルームの棚が大きいからといっても、すべてを収納することは不可能。ほかに収納のための部屋を設けました。
こちらは「周辺機器専用の小部屋」。一畳程度の狭さですが、押入れや物置ではなく、れっきとした部屋扱いです。物置にしてしまうと上段や下段などで仕切られたりして、空間の自由度が下がってしまうので、あえて部屋にしました。
ここには衣装ケースやレターケースを設置し、機種別で目一杯のコントローラーやケーブルなどを収納しています。また、バリアフリー仕様になっており、キャスターで物を運べるようになっているのも便利です。
こちらはあらゆる本の大きさに対応した「書庫」。持っている本をベースに棚の幅と奥行き、柱の太さまで設計士の方と相談し、制作を進めました。もちろん可動式なので、新たに購入した本にも柔軟に対応可能です。
ちなみにこの書庫は2階に設置されています。本は重量があり、床を補強しないと底が抜けてしまう可能性があるとのことで、この部屋は費用をかけて床補強をしっかりしています。
こちらは「屋根裏部屋」。特に用途を決めていませんでしたが、このような空き部屋はいくつか余分につくりました。ゆくゆく結婚する可能性も視野に入れていましたし、物が増えていった場合にも安心です。
ほか、扉やベッドの上などデッドスペースになってしまうところに棚を設置しました。
今はスピーカーやプロジェクターを設置し、映画鑑賞を楽しんでいます。この棚は限られた部屋にしか設置しなかったので、全ての部屋に設置すれば良かったと反省点になっています。
途切れることなく趣味に触れられる「仕組み」
この家には、常にゲームを始めとする趣味に没頭できるよういくつかの工夫があります。その一つが、「ゲーム専用の配電盤」。
皆さんのなかに、ゲームをプレイしているとき、他の部屋で電子レンジなどを利用してブレーカーが落ちた経験をしたことがある人はいませんか? ぼくはゲーム中にブレーカーが落ち、せっかく進めたセーブデータが消えて、とても悲しい思いをしたことがあります。でもこの家は大丈夫。
ブレーカーを各部屋、各コンセントごとに分けており、どこかでブレーカーが落ちてもゲームに影響しないよう配電盤を分けているのです。例えば、同じプレイルームでエアコンや蛍光灯が落ちても、PCやゲームをつなげているコンセントは独立しているので落ちることはありません。これで常にゲームをプレイし続けられる、というわけです。
ただ、いくら電源が安定していても、生活しているとプレイルームだけに閉じこもっているわけにはいきません。ご飯を食べるのにリビングを利用したり、お風呂や歯を磨くのに洗面所を利用したり。そんなときでも、ゲームを中断するのはストレスですよね? この家なら心配いりません。
プレイルームの映像データを他の部屋でも映せるよう、家中に配線を張り巡らせてあるのです。
こちらはリビングのTVモニター。
こちらは洗面所のモニター。
このように、どこにいても同じ画面を観ることができるのです。ご飯を食べるとき、歯を磨くとき、台所で家事をしているとき、いつでもゲームの映像を確認することができます。限りある時間を有効活用するために、この仕組みは必要不可欠です。
それでもどうしても洗濯や掃除などでモニターが観られないときは、音楽があります。同様に、この家にはあらゆる場所にスピーカーの配線が張り巡らされており、ゲームルームのPCやコンポなどから好きな音楽を流すことができます。
好きな音楽を楽しみながら、洗濯や掃除をするのは楽しいですね。
このように隅々までこだわった結果、この家に住んでからぼくの生活の質は飛躍的に向上しました。これまでは、やりたいゲームソフトを探し出すのにも時間がかかり、新しい機種やモニターを導入する際にはいつも配線作業に四苦八苦しておりました。しかし今は一瞬で済むため、そうした時間をプレイに充てることができています。
また、ぼくは自分だけでなく人と趣味を共有するのが好きです。今の家に住んでからは、きちんとゲームや漫画を整理できているので人を招きやすく、友人たちと定期的にゲーム大会を開催するなど、みんなで趣味を楽しめています。
結婚を経て、ゲーム御殿のこれから
こうして好きなものに囲まれた生活を送ること5年、36歳のときに「家」がきっかけで結婚をすることになりました。
会社の忘年会で同僚たちを自宅に招いた際に、「この家に惚れた!」というところから現在の妻と話が盛り上がり、お付き合いがスタート。その後結婚し、1年半ほど前には子どもにも恵まれました。
こうした出会いなので、ぼくの趣味に不満を言ってくることなどはありません。ただ、結婚をきっかけにそれまでフィギュア置き場になっていた部屋などは整理しました。
もちろん捨てたわけではなく、今も別の部屋にこのように置かれています。ゆくゆく子どもが成長した際には、また別のスペースに移動させ、子ども部屋へと模様替えしようと目論んでいます。
今振り返ると、もともと将来の結婚や、増えるであろう物に備えて空き部屋を豊富につくっておいたのは正解だったなと思います。まだスペースには余裕があるので、これからも子育てや家事をおこないつつ、存分に趣味を楽しんでやろうと思っています。
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ご覧のように、ぼくは「家」をきっかけにさまざまな変化を経験しました。何か没頭できる趣味をもっている人は、住まいを見直してみると、さらに充実した生活を送れるかもしれませんね。趣味と生きる生活を応援しています。
写真提供(一部):電ファミニコゲーマー
編集:はてな編集部