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新潟県三条市で見つけた680坪の広大な土地。アウトドア好きが建てた「自然と距離が近い家」【趣味と家】

「自然と距離が近い家」を建てた

音楽やマンガなど、圧倒的な熱量を注ぐ「好きなもの」をおもちの方に、こだわりの住まいをご紹介いただく本企画「趣味と家」。第15回目はアウトドアが趣味で新潟に移住、680坪という広大な土地に「自然と距離が近い家」を建てた小林 悠さんに寄稿いただきました。

庭とリビングをつなぐウッドデッキ、居住空間に溶け込むように配置しているキャンプ道具など、アウトドア好きならではのこだわりが随所に。広い庭ではキャンプをしたり、ヤギを飼育したり、果樹を植えたり……。自然の中での子育ての面白さを実感しているそうです。

初めまして。新潟県三条市在住の小林 悠(こばやし ゆう)と申します。

2015年、田舎過ぎない程よい地方都市である三条市に、680坪という1家族が住むには少し広すぎる土地を購入。私と妻、3人の子ども、ヤギたちと共に暮らしています。

「自然と距離が近い家」を建てた

簡単に私の家族を紹介します。

長女は小学5年生。三条市に来た頃は毎日泥だらけで外を駆け回るおてんばな女の子でしたが、今ではすっかり大人びたバスケ少女です。

長男は小学1年生。今回紹介する家を建てるタイミングで生まれ、1歳になった頃からヤギとの生活がはじまり、ヤギと共に成長してきた“野生児”です。

次女は1歳になったばかり。姉と兄にかわいがられ、たくましく育つわが家のアイドルです。

このにぎやかで騒がしい子どもたちを見事なほどにまとめあげてくれる、ありがたき妻。

そして、広すぎる庭の除草に大活躍のヤギたち。いつもメェーとすり寄ってきて私を癒やしてくれる、かわいい大切な家族です。

「自然と距離が近い家」を建てた ヤギたちも私たちの大切な家族

私はというと、アウトドア好きが高じてアウトドアメーカーのスノーピークに勤める会社員。商品開発を経て、今は新規事業やサービス開発などの企画部門にいます。

出身は三条市の隣の新潟市。窓から海が見えるほど自然に近い実家では、小さい頃から庭や浜でバーベキューをしたり、キャンプへ連れて行ってもらったり。日頃から自然に親しむ機会が多く、気付いたときにはアウトドアが大好きになっていました。

今回は、いったんは東京で就職した私が、再び新潟に移住し建てた「外を楽しむための家」とキャンプも楽しめてしまう広大な庭を紹介したいと思います。

「自然と距離が近い家」を建てた 小林さん邸の間取図

【目次】

アウトドアが好きで転職&理想の子育てをするために移住

私は大学卒業後、カメラメーカーのキヤノンでデザイナーとして勤めながら7年ほど東京で暮らしていました。

週末の楽しみはキャンプやサイクリング、カヤック、車中泊しながらの旅行など。

もともと夫婦共に自然が好きということもあり、東京で暮らしながらも「いつかはもっと自然の多いところに住みたいね」と日頃からよく話をしていました。

そんな中、趣味のキャンプで愛用していた焚火台やチェアなどのアウトドアギアをつくっているスノーピークと出合います。興味が湧いてからは居ても立ってもいられず、すぐに会社見学へ。自然志向の会社理念とモノづくりの精神に感銘を受け、転職する決意をしたのでした。

当時はちょうど長女が生まれたばかりの頃。「東京での子育て」のイメージが湧いていなかった妻とも意見が一致し、あっという間にスノーピーク本社がある三条市への移住を決めました。

同時に、「自然あふれる場所で子育てをしたい」という理想の暮らしをかなえるために、注文住宅の検討も始めました。

「自然と距離が近い家」を建てた 住宅の検討の際に妻と一緒につくった「これからの暮らしのコンセプトマップ

自然との近さ&暮らしやすさを求めて。見つけたのは680坪の広大な土地だった

私たちが家づくりで一番こだわったのは「土地」と「景観」です。

東京にいた頃から憧れていたのは、軽井沢や那須のような別荘地にある「森の中の家」。一方で、そんな森の中にある「ポツンと一軒家」は、子どもたちの通学や生活のしやすさを考えると現実的ではありません。

自然との距離と、コミュニティーを育む人との距離。重視したのはそんな「バランスの良い場所」でした。

理想の場所を求めた結果、土地探しには約1年かかりました。ようやく出合えたのは、40年間買い手がつかなかった680坪という広大な土地。坪単価が1万円以下という田舎ならではの破格の値段です。

当初望んでいた“森の中”ではなかったのですが、山の裾にある住宅地の端っこで、視界には人工物が入りません。小学校にはぎりぎり歩いて通える距離で、少し車を走らせればスーパーなどもあり利便性が高く生活しやすい環境でした。

「さすがに広すぎる……」と躊躇(ちゅうちょ)する気持ちもありましたが、背丈ほど伸びた一面の草地(正しく言うと荒れた雑草地!)を眺めながら、少しずつ自分たちで開墾し、木を植え、森にしていくのも面白いかもしれない……と妄想を広げ、680坪丸ごと購入することに決めたのでした。

「自然と距離が近い家」を建てた 雑草が生い茂る何にもない土地。それが決め手でした

コンセプトは「外を楽しむための家」。主役は外と内をつなぐウッドデッキ

広大な土地に建てることになった家のコンセプトは「外を楽しむための家」です。1階にはLDKと寝室、水回りなど家のほとんどの機能を集約。2階には子ども部屋と収納スペースのみを設けた半平屋にしました。延床面積は107㎡(約32坪)と、必要最小限のこぢんまりとしたつくりです。

家族が集まる空間をつくりたかったので、家の中心にリビングを配置。また、居室スペース含め扉や仕切りはほとんどつくらず「巨大なワンルーム」のような空間に仕上げました

「自然と距離が近い家」を建てた 開放感のあるリビング

この家の主役は何といっても、リビングの引き込み窓に設置した「庭を一望できる広いウッドデッキ」。「外」と「内」をつなぐ「半外空間」です。ひと続きのリビング・ウッドデッキ・庭が、わが家の自慢です。

「自然と距離が近い家」を建てた
「自然と距離が近い家」を建てた リビングと庭をつなぐウッドデッキ
「自然と距離が近い家」を建てた ウッドデッキからの景色は格別
「自然と距離が近い家」を建てた 庭から見たウッドデッキ&リビング

家族みんな、キャンプやピクニックなど「外でごはんを食べること」が大好きなので、家にいながら気軽に“外ごはん”を楽しめる場所は一番希望度が高い空間でした。

過ごしやすい季節は、週末だけでなく、朝食や夕食の時間をこのウッドデッキで過ごすことが日常になっています。家族で使うのはもちろん、来客があるときも食事の場所として重宝しています。

「自然と距離が近い家」を建てた
「自然と距離が近い家」を建てた 朝食も夕食も“外ごはん”
「自然と距離が近い家」を建てた 庭で収穫した野菜でちょっとぜいたくなバーベキュー

ちなみに山小屋風の外観も相まって、ワイルドな暮らしをしているように思うかもしれませんが、実はオール電化の高性能住宅なんです。

新潟の厳しい冬の寒さでも快適に過ごせるよう、高気密・高断熱を標準仕様にしている建築会社を選び、全館空調を導入しました。

そのためエアコン1台で全館暖房。家中が快適なので、冬でも晴れていると「今日は暖かいのかな?」と勘違いをして薄着で外に出てしまうくらいです。

三条市は豪雪地帯(一部地域は特別豪雪地帯)ということもあり、どうしても冬の電気代が少々高くなってしまいますが、そこは快適性と引き換え……くらいで考えています。

「自然と距離が近い家」を建てた 辺り一面の雪景色でも室内は暖か
「自然と距離が近い家」を建てた 冬でも家の中でははだしで過ごします

リビングにもキッチンにも! 暮らしに溶け込むキャンプ道具

仕事柄、たくさんのキャンプ道具を所有しています。

大量のテントやタープなどは広めにつくった玄関土間に収納していますが、大半のキャンプ道具は、居住空間に溶け込むように部屋のあちこちに配置し、日常的に使っています。

「自然と距離が近い家」を建てた 土間にはキャンプ道具がぎっしり

リビングには、テーブルや来客用の予備のチェア。

「自然と距離が近い家」を建てた 予備の椅子として重宝する折り畳み式のアウトドアチェア

キッチンには、食器や調理器具などが並びます。

「自然と距離が近い家」を建てた 外で使う調理器具もキッチンに収納

わが家はオール電化なので、ガスを使いたいときには、キャンプ用のコンロがはまるように、あらかじめ天板に穴を開けるなどちょっとした仕掛けも。

「自然と距離が近い家」を建てた アウトドア用のコンロをはめ込んで使える

来客を含めみんなで食事をつくることも多いので、誰でも使いやすいよう棚などもすべてオープンな設計に。シンクと一体型のダイニングテーブルも、キッチンに立つ人と食べる人が一緒に過ごせる工夫の一つです。

「自然と距離が近い家」を建てた 写真右奥にあるシンクと一体化したダイニングテーブル
「自然と距離が近い家」を建てた

広いワンルームのようなわが家で、子どもたちはどう過ごしているかというと……。勉強や宿題をするときは、家族みんなが共同で使える1階のスタディコーナーを使います。

「自然と距離が近い家」を建てた リビングの隅に設けたスタディコーナー(写真左手側)

絵を描きたいときや工作したいときは、ロフトのような2階スペースで。いつでも自由に使えるように一角は作業部屋に。さながら図工室です。

「自然と距離が近い家」を建てた 画材や文具が並ぶ、図工室と化した作業スペース

ただ、最近は長女も思春期になり一人の空間が欲しいとのことで、DIYで間仕切りを設け部屋をつくりました。家の中にある小屋のようなデザインは、ちょっとした遊び心です。

「自然と距離が近い家」を建てた 冬休みをかけて制作した子ども部屋の間仕切り

キャンプをする、生き物を育てる……庭の楽しみ方には終わりがない

忘れてはならない、わが家のもう一つの主役は「庭」です。

「自然と距離が近い家」を建てた 牧場のように広い庭

身の丈にあった小さな家を建てた代わりに、庭では広大な土地を楽しみながら、少しずつ自分たちのペースで開拓。「自然とつながる豊かな暮らしの実験」をしています

畑を耕して野菜をつくったり、数種類の果樹を植えたり。ハーブガーデンもつくりました。

「自然と距離が近い家」を建てた

庭の一角には芝生を敷き、焚火ができるファイヤーピットを設けて、キャンプサイトのようにしています。

「自然と距離が近い家」を建てた
「自然と距離が近い家」を建てた

間取図を見てわかるように、わが家には個室や客間はありません。来客があるときは、広い庭にテントを張って、ゲストにはちょっと変わった寝室として泊まってもらっています(もちろん自分たちもしょっちゅう子どもたちと庭でキャンプをしています!)。 

こんな体験ができるからでしょうか。東京時代の友人で毎年、家族で遊びに来てくれる人が何組もいます。

「自然と距離が近い家」を建てた 庭でキャンプ

まだまだ広くて活用しきれていない庭は、雑草がどんどん生い茂ってくるので、除草対策としてヤギを飼っています

草を食べてくれるだけでなく、カランコロンと首輪の鈴を鳴らし、優しい声でメェーメェー鳴く姿はまさに癒やし。私たち家族にたくさんの感動をもたらしてくれる大切な存在です。

「自然と距離が近い家」を建てた
「自然と距離が近い家」を建てた かわいい双子の子ヤギ。これまで何度もヤギの出産に立ち会えました

DIY用の電動工具に耕運機や草刈機、庭づくりに必要な道具も年々増え、今年は収納小屋を建てることになりそうです。

「産みたての卵を朝食で食べたい!」という動機から、ニワトリを飼う計画も着々と進めています。

そのほかにも、養蜂にビオトープづくり……やりたいことはまだまだあります。私たちの庭づくりに終わりはありません

「自然と距離が近い家」を建てた 家を建てる前から今に至るまで、何度も何度も描き直している「庭計画図」

自然の中の子育ては楽しい! 大人も子どもも感性や情緒が育つ

三条市は自然が豊かなだけでなく、金属加工の一大産地でもあります。包丁や工具など金物工業が盛んで、近年は移住希望者が増加。大小多くの企業や工場があるため若い人も多く、子育てが非常にしやすいです。

私と妻も「自然の中の子育て」の楽しさを実感中。小さい頃から自然が当たり前にある生活をしている子どもたちは、身近な植物や虫などのあらゆる生き物が変化や多様性に富んでいることを身をもって体験しています。

「自然と距離が近い家」を建てた
「自然と距離が近い家」を建てた

そして、肌で感じる四季折々の美しくも厳しい自然環境。

「自然と距離が近い家」を建てた
「自然と距離が近い家」を建てた

子どもだけでなく、私たち大人でさえも感性や情緒が日々育っていることを実感しています

かつて東京での子育てに不安を抱いていた妻は、今は「こういう暮らしがしたかった!」と、とても満足をしているようです。

そんな妻にもここで暮らし始めて大きな変化が。もともとデザイナーとして勤めていたのですが、「自然の中の子育て」に面白さを感じたことから、ついには野外保育を取り入れた幼稚園に転職をしてしまいました。

家族ともども、移住によってガラッと人生が変わりました。家を建ててから7年。この土地に出合い、思い切って広大な土地を購入して本当に良かったと思います。

移りゆく四季を肌で感じ、その時々の自然の恵みを享受する。「外とつながる家」があることで、非日常のレジャーだった自然体験は、いまや日常の営みとなりました

子どもの成長や、世の中の変化に伴って、今後やりたいことや暮らし方も変わり続けることでしょう。この先どんな変化が起こっていくのか、私自身も楽しみでなりません

🏠 いろんな「趣味と家」🏠
念願の「釣り部屋」ゲットで快適に
家に「サウナ」をつくって気軽にサ活
家を建てたら「植物」にハマった

著者:小林 悠

小林 悠

アウトドア好きが高じて、キヤノンから新潟県三条市に本社があるキャンプ用品メーカー・スノーピークに転職。同市に家族で移住する。山裾に680坪の土地を購入し、自然と一体化した注文住宅を建築。ウッドデッキでの食事、庭でのキャンプ、ヤギ飼育など、自然の中の子育てと開放感あるアウトドアライフを楽しんでいる。


Instagram:@kb_u

編集:はてな編集部