音楽やマンガなど、圧倒的な熱量を注ぐ「好きなもの」をおもちの方に、こだわりの住まいをご紹介いただく本企画「趣味と家」。第7回目は、長野県・野尻湖の湖畔にサウナと露天風呂付きの一軒家を建てた吉原ゴウさんに寄稿いただきました。コストが抑えられる“田舎”だからこそ実現した、大好きなサウナのある家の魅力を紹介します。
こんにちは。LIGという会社を経営している吉原ゴウと申します。
東京メインの生活から心機一転、40歳を手前にして地元である長野県・野尻湖に念願のUターンを決め、2020年10月に家を建てました。同棲相手のなめこ(ビーグル犬)とふたりで暮らしています。
今回は私の家と、魅力あふれる田舎暮らしについて書きたいと思います。
【目次】
- 好きなときに好きなだけサウナに入れる家
- サウナに目覚めたきっかけは「フィンランド」だった
- なぜ、田舎に家を建てたのか
- 難航した土地探し
- どこからでも野尻湖が見えるように設計
- 建ててみて感じた、田舎暮らしの魅力
- 東京だと、絶対建てられなかった
- 空間は育てるもの
好きなときに好きなだけサウナに入れる家
私の家は、こんな場所に建っています。
写真では伝わりにくいですが、めちゃくちゃ崖です。家を建てる前は本当にただの急斜面でした。
そしてここが、わが家自慢のサウナルームです。
サウナから見た野尻湖。高台の傾斜地に家を建てるとこういう景色が手に入ります。
外気浴スペースはこんな感じ。湯船に水をためればサウナ用の水風呂に、お湯をためれば露天風呂になります。
毎日、こんな感じでダイナミックな自然を眺めていると、天気や季節の変化に気がつけるのがいいなと思っています。あと、細かい悩みも気にしなくなります。体調も良くなった気がします。心なしかイケメンになってきた気もします。自然っていいですね。
サウナに目覚めたきっかけは「フィンランド」だった
私が家にプライベートサウナをつくるほどサウナが好きになったきっかけは、サウナの本場・フィンランドを訪れたことでした。
野尻湖にはもともと、弊社が運営するゲストハウスLAMPという施設があり、2018年にある社員から「LAMPでサウナを始めたいから、一緒にフィンランドに行きましょう」と誘われたのです。
もともと、サウナには「熱くて喉がヒリヒリする」みたいなイメージしかなくて、正直なところ、あまり好きではありませんでした。
しかし、その社員のあまりの熱意に「まあ行ってみるか」と試しにフィンランドを訪れたところ、そこには、それまで私が抱いていたサウナのイメージとは何もかも違う世界が広がっていました。
ヘルシンキ郊外、Kuusijärviのサウナ。
ログハウスのようなサウナ小屋は、煙で黒く煤けていて、それがスモーキーな香りを放っていました。薪でゆっくりと温めたサウナの熱は、どこまでも柔らかく体を包みます。
サウナの後は、みんな目の前の湖に飛び込んでクールダウン。
ここで大自然と一体となるようなアウトドアサウナの魅力に目覚めた私は、野尻湖が同じような環境であると感じ、サウナ事業を始めることを決意しました。
ヘルシンキの港にDIYで建てられたSompasauna。
ここも衝撃でした。こういう手づくりスタイルのサウナには、強烈なインパクトと魅力があります。
そしてこれが、弊社が運営するThe Sauna。
サウナづくりのノウハウがないなか、フィンランドでの経験を元に試行錯誤しながら手づくりしました。
こういった経緯から大のサウナ好きになった私は、事業としてだけではなく、自宅にもプライベートサウナをつくりたい!と思うようになりました。
なぜ、田舎に家を建てたのか
私は17歳の時に上京してからずっと東京で暮らしてきたのですが、30代に入ってから徐々に田舎の良さを感じるようになりました。
というのも、東京で知り合った友人たちを地元に連れて行き、湖で遊んだり、焚き火をしたり、釣りをしたり、スノーボードをしたりするとみんなすごく喜んでくれるんです。
そういう機会が増えるにつれて、地元にいるころはわからなかったけれど、自分の生まれ育った環境って実はものすごく恵まれているのでは...…と思うようになりました。
最初は地元に遊びに来た友人たちにはLAMPに泊まってもらっていたのですが、ありがたい事に宿もThe Saunaもなかなか予約が取れない状況が続いていて、それならばいっそ自分の家も野尻湖に建てようと考えたのが「田舎」で家づくりをしようと思ったきっかけでした。
そうすれば、もっと多くの友人が野尻湖に来てくれるだろう、と。
難航した土地探し
せっかく地元に家を建てるのであれば、湖畔がいい。
土地探しで絶対に譲りたくなかったポイントが「湖畔」であることでした。
ただ、野尻湖の湖畔に面した土地はなかなか売りに出ておらず、ようやく見つかったこの土地は住むのを躊躇してしまうような、なかなかの傾斜地でした。
そして、野尻湖で家を建てるには、越えなければいけないハードルがいくつかあります。
まず、野尻湖は妙高戸隠連山国立公園という、環境省が指定する国立公園に含まれており、さまざなきつい制限が設けられています。
建ぺい率は10〜20%しか取れません。他にも河川法やら景観条例やらいろいろあり、湖畔の境界線からは18m、周辺の道路からは20mも離さなければいけません。つまり、小さい土地だとほぼ何も建てられないという事です。
そんな中で見つけた、この傾斜地。
1400坪あり、広さは十分。これなら湖畔からも道路からも距離が取れる。ただ、とにかく斜度がきつい。そして周辺にまったく人が住んでいない。夜は真っ暗。
土地を見つけてから1年くらい悩みました。そしてその間、ここに通い詰めて「本当に、ここで暮らせるのだろうか」と自問自答していました。
そんなある時、この土地に友人を連れてきて意見を求めたところ、
「ここ以外無いだろ。すぐ買おうぜ。お前がこの景色を守れ」
と即答されました。
俺が、この景色を、守る。確かに。
家を建てる際に、家の内側、外側はある程度調整ができますが、眺望だけはどうにもなりません。そういう意味では、ここからの眺望は抜群です。よし買おう。すぐ買おう。買って守ろう。というわけで買いました。
もちろんそこに至るまでに、建築士(地元の先輩)がめちゃくちゃ調査してくれて、安全面や法律面で問題なく家を建てられるかの確認を取ってくれました。すごく大変な作業だったと思いますが、粘り強く調査してくれて感謝です。
どこからでも野尻湖が見えるように設計
どういう家にするかについても自分なりにめちゃくちゃ考えました。
まず、まっさきに思いついたのは「リビング、キッチン、寝室、風呂、サウナ。その全てから野尻湖がばっちり見える家」です。どこにいても野尻湖を見たい。そんな設計にしたいなと考えました。
これが部屋の全貌。大きなワンルームのようなつくりで、ロフト部分が寝室になっています。
こだわったポイントはたくさんあるんですが、まず、ここに暮らす人間は私ひとりだけなのでなるべく空間をつなげ、死角がないようにしました。だって死角があると怖いじゃないですか夜とか。
なので、寝室はロフトにしました。あと、料理が好きなのでキッチンは大きくとっています。キッチンカウンターの足元は掘りごたつ式にして、ダイニングテーブルと兼用に。こうするとダイニングテーブルや椅子を置く必要がないので、空間が圧迫されません。
寝室はこんな感じ。
あえてゲストルームをつくらず、雑魚寝スタイルです。雑魚寝が嫌だ! っていう友人は泊まりに来ないはずなので、これでいいかなと。
テレビは77インチのでかいやつをどーんと入れました。スピーカーはJBLの4344。でかいは正義。
この家のいいところは、周りに民家がまったくないので、深夜だろうがなんだろうが爆音を出せることです。
遊びに来たLAMPのスタッフたち。好きなアーティストの曲を爆音でかけながら踊り狂っていました。東京だとすぐ通報されると思います。
建ててみて感じた、田舎暮らしの魅力
ここには都会に求めるような利便性は無いですが、逆に都会暮らしだと週末に数時間かけて遊びに行くようなフィールドが車で15分圏内にいくつもあります。私もそうですが、そういうアウトドアな遊びが好きな人には、めちゃくちゃいい環境だと思います。
ちなみに、Amazonも楽天も余裕で届きます。スーパーマーケットもホームセンターも車で5分なので、正直全然不便さを感じません。電車の駅も車で5分。まさかの駅近物件です。東京から電車で2時間という距離感も最高です。
最近は野尻湖やその周辺に移住してくる人が徐々に増えてきました。
そういう人たちとのつながりが、居心地の良いコミュニティをつくっているので、住んでいて非常に楽しいです。
あとは、東京にいるよりいろんな人に会える機会が増えました。特に「会う理由」があんまりなくて、しばらく連絡をとっていなかった友人たちと「田舎暮らし」をきっかけに再びコミュニケーションを取るようになったのがとてもうれしいんですよね。
サウナ。野尻湖。スノーボード。釣り。ゴルフ。
遊びに来る理由がたくさん用意できる場所なので、きっかけもつくりやすい。最高ですね。
今はコロナ禍で会えていない人もたくさんいますが、家は逃げません。落ち着いたらぜひ、もっとたくさんの人とこの場所で会いたいですね。
東京だと、絶対建てられなかった
わが家のスペックは土地1400坪、延床面積100㎡。土地が広いのと、サウナや露天風呂など普通の家にはない設備もあるので「値段」もよく聞かれます。
ただ土地・建物全部合わせても、(エリアにもよりますが)都内でファミリータイプ70㎡くらいのマンションを買うのと同じくらいの金額です。
正直、東京でサウナや露天風呂を設置して、人を招けるような空間に仕上げて、感動するような眺望の家を建てようと思ったら数億円はくだらないでしょう。土地代が安く抑えられる「田舎」ならではの価格です。
そう考えたら安い! めちゃくちゃお買い得! そう自分に言い聞かせて、ローンの書類にハンコを押しました。
空間は育てるもの
家は建てた後、住みながら育てていくものだと思っています。
この家も、まだまだここから。これから時間をかけて、家の中、そして庭などいろいろなところを自分好みに育てていこうと思っています。そのプロセスがまたきっと、楽しいはず。
自分の趣味を詰め込んだ家づくり。
みなさんの参考になれば幸いです。
ちなみに、野尻湖は豪雪地帯なので、冬はこうなります。サウナでほてった体も、一瞬でクールダウンできます。
自然って、恐ろしいですね。
著者:吉原ゴウ
株式会社LIG代表。
IT系の会社を経営しつつ、田舎暮らしへとシフト。野尻湖や、田舎暮らしの良さを友人たちに伝えて移住を促し、いずれシリコンバレー、ビットバレーに続く、レイクバレーを創りあげようと画策中。
Twitter:@gosan/株式会社LIG
編集:はてな編集部
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● 「家を建てるならシアタールームが欲しい」を貫いて
● 土地探しから「SASUKEありき」でした。日置将士さん&真弓さんの家づくり