土地探しをしていると、よく目にするのが「旗竿地」というタイプの土地。リーズナブルに入手できますが、日当たりは? プライバシーの問題は? 注意すべきことは? などについて建築家の佐川旭さんに聞きました。実際に旗竿地に家を建てた先輩たちの実例も紹介します。
目次
そもそも「旗竿地」とは?
細い路地を通った先にある奥まった土地のこと
旗竿地(はたざおち)とは、細い路地を通った先にある奥まった土地のこと。旗を竿につけたような形状をしていることから「旗竿地」や「旗竿敷地」と呼ばれます。または「路地状敷地」「敷地延長」などと呼ばれることもあります。
特殊な形状をしていますが、「旗竿地ならではのメリットもあり、一般的にデメリットとされることも、建築の工夫によって解決できたり、むしろ逆転の発想で活かせたりすることがあります」と建築家の佐川旭さん。さっそくメリット・デメリットについて解説していきます。
「旗竿地」のメリットは? 価格が安いってホント?
メリット1 価格が安い
旗竿地の最大のメリットは、価格が安いこと。個別のケースにもよりますが、「場所や広さなどほかの条件がほぼ同じで、旗竿地でない土地と比べると15〜20%ほど安い価格設定になっていることが多いようです」と佐川さん。
土地をリーズナブルに入手できる分、建物に予算を回すことができるのもメリット。さらに、道路から見える部分が少ないため、割り切ってしまえば、外装材や外構のデザインにかけるコストを抑えることもできます。
メリット2 静かに暮らせる
道路から奥まった敷地のため、「車や通行人が家のすぐ前を通ることがなく、静かに暮らせるのも特徴です」。道路を走る車の騒音や排気ガス、通行人の視線などを気にせずに暮らせるというのもメリットとなります。
子育てファミリーであれば、玄関を出てすぐに道路がないというのは、より安心して暮らせるということにもつながります。
メリット3 路地部分を楽しく活用できる
長い路地を逆手にとって「花壇のあるアプローチをつくったり、土間を設けたり、玄関収納を充実させたりと、玄関まわりを楽しく、機能的に演出することができます」
「旗竿地」のデメリットは?どんな点に注意すべき?
デメリット1 日当たり・風通しに工夫が必要
周囲を建物などに囲まれていることが多いため、前面に道路がある敷地に比べ、日当たり・風通しの条件が悪くなりますが、佐川さんいわく設計の工夫によって解決できることもたくさんあるそうです。
「外側の窓からの採光には期待できなくても、中庭に対して大きな窓をつくって光を取り込むことができます」。このプランは、特に隣家との距離が近い場合、プライバシーの確保や防音対策としても有効な手段となるでしょう。
また「より明るい2階にLDKを設けるという手法も。さらに屋根の形を現した勾配天井にすると、LDKを天井の高いダイナミックな空間にすることもできます」
デメリット2 駐車スペースに制限があることも
駐車スペースは、路地の状態と車のサイズ・台数などにより、メリットにもデメリットにも。路地に十分な広さがあれば、路地部分を活かして縦列駐車で2台分の駐車スペースが取れることもあり、この場合は大きなメリットになります。
ところが「路地の入口(公道に接する部分)は最低2m以上と法律で決まっているため、それ以上の幅があるケースは少ないのが実情。スライドドアのコンパクトカーなら、ぎりぎり置けることもありますし、駐輪場としてなら問題なく活用できるでしょう」
デメリット3 建築コストがかかることも
旗竿地は「路地部分が狭い場合、工事の際に大きな重機が入れず、職人の作業が増え、工事費が高くなることもあります。また、電線・水道管の引き込み工事が新たに必要になることも」
とはいえ、土地の購入費が大きく抑えられることを考えると、それを上回るほどの出費にはならないこともあります。「購入前に建築の依頼先に相談してみるといいでしょう」
どんな家が建つの?「旗竿地」を選択した先輩たちの実例紹介
【case1】ずっと住みやすい、住宅性能の高い家を。注文住宅でかなえた思いどおりの住まい
「将来までずっと住みやすい間取りの家を」と希望し、平屋にこだわった千葉県流山市のYさん。そのため土地探しにはじっくり時間をかけ、約75坪と広い旗竿地を見つけました。
「広さも周辺環境も駅からの距離も申し分なく、下水道も通っていて、坪単価的にも好条件。地形的に少し丘になっているので、水害にも強そうだと思って決めました」
間取りは、キッチン・ダイニング・リビング・和室をひと続きにし、和室を寝室にするという以前の生活スタイルを踏襲。旗竿地を選ぶことで広い土地をリーズナブルに入手し、のびのびとした暮らしを送っています。
広い旗竿地でのびのびとした平屋暮らし


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ずっと住みやすい、住宅性能の高い家を。注文住宅でかなえた思いどおりの住まい
【case2】道路まで距離のある旗竿地を活かして、静かな環境に明るく開放的な家を
できるだけコストを抑えながら、高気密・高断熱の快適な家を建てたいと希望していた千葉県松戸市のSさん。案内された旗竿地が気に入り、購入することに。「旗竿地は検討していませんでしたが、近隣の同じくらいの広さの土地と比べると数百万円も安くなるのが魅力でした」
当初は、日当たりが期待できないのではという思いもあったものの、「裏の土地が空いていたことと、家の中に光を取り込めるプランを提案してもらったことで不安は解消。旗竿地でも十分に光と風を取り込めるよう、吹抜けリビングを取り入れました。
隣家がワンクッションとなる旗竿地は、庭が道路に面さず、静かでプライバシーを保ちやすいのもメリット。「周囲を囲まれた旗竿地でも、プランの工夫で開放感を得られました。道路より奥まっていて、さらに窓がトリプルガラスなので、とても静かに暮らせています」
光と風を取り込み、静かに暮らせる家に


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道路まで距離のある旗竿地を活かして、静かな環境に明るく開放的な家を
【case3】周囲を家に囲まれた旗竿地で、最大限に開放感と光を手に入れた家
家賃を払い続けるのはもったいない、同じ学区内で家を持とう!と考えた千葉県松戸市のKさん。学区内で見つかった土地は、古家付きの旗竿地でしたが、希望の広さで予算内だったことが決め手となって即購入しました。
気になるプライバシーは、外構フェンスにひと工夫。半透明のアクリル板を隣家との間にめぐらせて、大きな窓と吹抜けリビングのある家に。
「窓を開けても、外からの視線が気にならずのんびりできるのが何よりうれしい。リビングのソファに座って、ひなたぼっこしている時間が気に入っています」
最大限に開放感と光を手に入れた家


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周囲を家に囲まれた旗竿地で、最大限に開放感と光を手に入れた家
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取材協力/佐川 旭さん
佐川旭建築研究所 代表取締役。住宅だけでなく、公共建築や街づくりまで手がけるベテラン建築家。住宅(これまで180軒以上を設計)、街づくり、公共建築などを中心に講演・雑誌執筆活動をする傍らテレビにも出演。用と美を兼ね備えた作品を得意としている。
取材・文/前川ミチコ