住宅の内装などで「インダストリアルインテリア」という言葉を聞いたことはありませんか? 「インダストリアルスタイル」や「インダストリアルデザイン」などともいいます。一体この「インダストリアル」とはどういう意味で、インダストリアルインテリアとはどのような特徴やブルックリンスタイルとの違いはあるのでしょうか? グラッソ一級建築士事務所の向井裕一さんに話を聞きました。
インダストリアルインテリアとは?
そもそも「インダストリアル」とはどのような意味で、「インダストリアルインテリア」とは、どのようなものなのでしょうか?
「『インダストリアル』は、直訳すると『工業の』や『工業用の』という意味です。
そして、『インダストリアルインテリア』は、機能性や実用性を重視し、工業製品のように無機質な素材感をデザインに取り入れたインテリアのことを指します」(向井さん、以下同)
インダストリアルインテリアの特徴は?
住まいの内装を考える上で、インダストリアルインテリアは、1つのカテゴリーを確立しています。その特徴や人気の秘密について紹介します。
人気の秘密
「レトロ(懐古趣味)といって、古い時代のデザインを好む人たちは少なくありません。特に、海外の工場や工業地帯で使われていた本来的な『インダストリアル』のものには、使い込んだダメージがあり、そういった見た目に個性や格好良さを感じる人から、一定の評価を得ているのだと思います」
よく使われる素材
「工場で使われるような素材、具体的にはアイアン(鉄)やコンクリート(モルタル)、レンガ、タイルなど。木材の場合は、無垢の古材や古材風の暗い色のものがよく使われますね」
ブルックリンスタイルとは?
インダストリアルインテリアは、「インダストリアルテイストのインテリア」や、「インダストリアルデザインのインテリア」などと呼ばれることもありますが、これと同じように使われる言葉に「ブルックリンスタイル」というものがあります。
ブルックリンスタイルとはどのようなもので、インダストリアルテイストまたはインダストリアルデザインとどう違うのでしょうか?
「ブルックリンというのは、アメリカ・ニューヨークの一区域の名前です。このエリアは元々工場や倉庫が多く、その区域の住まいなどで好まれていたヴィンテージ感のある内装や家具などの雰囲気を再現したのが、ブルックリンスタイルといえます。
実は、インダストリアルテイストとブルックリンスタイルに明確な区別はなく、ほとんど重複したイメージなのですが、あえていえばブルックリンスタイルの方が、少しカジュアルな印象があります」
インダストリアルインテリアを住宅へ取り入れる際のポイント
個性的で格好良いと人気のインダストリアルインテリアですが、住宅へ取り入れる際には、どのような点に注意すればいいのでしょうか。ポイントを紹介します。
素材の組み合わせ
「コンクリート調やレンガ調、タイルや古材などのアイテムに、アイアンをアクセントとして組み合わせるのがポイントです。照明のシェードや階段の手すりにアイアンを使うだけで、インダストリアルテイストが強調されます」
色の組み合わせ
「基本的には黒や濃い茶色、グレー、そして白を組み合わせます。アクセントとなるアイアンは、ブラックのものを使うのもポイントです」
家具や建具、小物のチョイス
「家具を選ぶ際には、インダストリアルテイストを意識して商品展開をしているブランドもあるので、そういったブランドの家具を使うと統一感が出るでしょう。
また、照明のシェードや建具のフレームは、ブラックのものを使うと雰囲気が出ます。洗面台は、コンクリート・モルタル調に仕上げたり、ワンポイントで黒いアイアンのタオルかけをつけたり、鏡のフレームに古材風の木を使ったりすれば、インダストリアル感を強調できます」
オススメの建材
「コンクリート・モルタル調に仕上がる左官材の『モールテックス』や、タイル、古材風の木材などを上手に使うといいでしょう。
コストを抑えたければ、レンガ調の壁紙やコンクリート打ち放し風の壁紙などもありますが、使い方を間違えると安っぽく見えてしまうので、広い面には使わないなどの注意が必要です」
インダストリアルテイストなキッチンの選び方
「対面式のキッチンにすると、腰壁の広い面を有効に使えます。この面をモールテックスや古材風の板、タイルなどで仕上げると、LDKの空間がインダストリアルテイストになります。
システムキッチンは、機能的に優れていて使いやすい一方、デザイン的にインダストリアルテイストのものはあまりありません。しかし、このように対面式キッチンの腰壁にひと工夫することで、機能性とインダストリアルデザインを両立させることができます」
手軽にインダストリアルテイストを取り入れる方法
「家具や照明、小物だけでもインダストリアルテイストのものに統一するといいでしょう。また、あまりフェイク感が出ないように注意は必要ですが、グレー系の無機質な色合いの壁紙などをうまく使えば、コストを抑えてインダストリアルテイストを取り入れることも可能です」
失敗しないためのポイント
「コストとの兼ね合いがありますが、ここぞというところで本物の素材を使うといったメリハリが大事です。
また、一つの空間の中で統一が図れていれば、間取りに関してはあまり気にする必要はありませんが、畳との相性はよくありません。リビングと和室がつながっているような場合は、建具で完全に仕切るか、境界のところにヴィンテージ風の家具を置くなどして、和のテイストを緩和してあげるといいでしょう」
インダストリアルインテリアの実例を紹介!
ここでは、実際にグラッソが手掛けたインダストリアルインテリアの実例を紹介します。
【実例1】レンガ調のアクセントウォールでインダストリアルテイストに染まったリビング
レンガ調のアクセントウォールがリビング全体をインダストリアルテイストに染め、照明シェードや階段手すりのブラックがアクセントとして効いています。建具や手前のダイニングテーブルに古材風の木を使っているのもポイントです。
【実例2】コンクリート・モルタル調のキッチンに、インダストリアルな照明がマッチ
キッチンの腰壁をコンクリート・モルタル調に仕上げ、照明もインダストリアルテイストのものを採用しました。建具の無機質なグレーとも非常にマッチしています。
【実例3】ヴィンテージ感のある家具がおしゃれなインダストリアルテイストのリビング
古材風のフローリングとタイル張りのアクセントウォールが印象的なリビング。木製のローボードとソファのヴィンテージ感もおしゃれです。天井にはブラックのシーリングファンが回り、インダストリアルインテリアのアクセントになっています。
【実例4】ブラックのレンガ調が印象的。インダストリアルなキッチン
ブラックのデザインコンクリートを使った造作カウンターが、インダストリアルテイストを強調しています。ガラスフレームの黒や、古材風のカウンターと調和させることで、雰囲気を出しています。
【実例5】室内板張りがヴィンテージ感を醸し出すインダストリアルなダイニング
無垢の古材風フローリングと室内板張りが、ヴィンテージ感を演出。照明や家具のシンプルなデザインと調和して、インダストリアルな雰囲気のダイニングになっています。
インダストリアルインテリアを採用して理想の住まいを建てた先輩たちの事例を紹介!
スーモカウンターで、インダストリアルインテリアを採用して理想の住まいを建てた先輩たちの事例を紹介します。その人たちが、どんな点にこだわり、どんな住まいを実現したのか、実例を参考に学んでいきましょう。
【case1】グレーの壁紙でインダストリアルテイストに演出した住まい
妻の姉が注文住宅を建てたことをきっかけに、家づくりを決意したKさん。インターネットで好みのインテリア写真を集めていると、意外にもインダストリアルテイストのインテリアが好きだということに気づきました。早速スーモカウンターを訪れ、好みのデザインテイストの家を建てられる会社を探し、デザイン面や予算面で納得できる1社と契約。
完成した新居の1階は、グレーを基調にした壁紙を張って、インダストリアルな雰囲気たっぷりのインテリアに。イメージ通りだとKさんも大満足です。
この実例をもっと詳しく→
インダストリアルテイストにこだわり、家族がのびのびと笑顔で過ごせる空間に
【case2】リノベーションしてインダストリアルテイストを取り入れた一戸建て
マンションから戸建てへの引っ越しを考えたUさん夫妻。注文住宅と中古リノベーションで迷い、スーモカウンターへ電話で相談しました。スーモカウンターから紹介された4社のうち2社と打ち合わせ、最終的に中古リノベーションも手掛ける会社へ依頼。
好みのインダストリアルな雰囲気を取り入れるため、フローリングはアンティークな印象になるように塗装しました。キッチンのタイルは「在庫があったから」と建築会社の好意で施工してもらったもの。「センスも素晴らしく、お願いしてよかった」と満足しています。
この実例をもっと詳しく→
お金をかけるところとかけない部分のメリハリをつけて、広い庭付き一戸建てをリノベーション
【case3】シンプルな内装にインダストリアルな照明が映える家
妻の妊娠をきっかけに本格的に家づくりをスタートしたものの、最初に相談していた会社に不信感を抱き、スーモカウンターを訪れたNさん。そこで、新たに条件に合う会社を紹介してもらいました。
完成した新居のインテリアは、少し濃い目の茶色の木材と、白い壁のコントラストが印象的。キッチンのアクセントクロスには濃い紺色を採用し、インダストリアルな雰囲気の照明や建具を施主支給で取り付けてもらいました。「内装がシンプルだからこそ、どんなインテリアにも映える」と、お気に入りの住まいが実現しました。
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増えていく見積もりに対する不信感にサヨウナラ。スーモカウンターで新たな出会い
インダストリアルインテリアを取り込んだ住まいを建てるときのポイントは?
最後にあらためて向井さんに、インダストリアルインテリアを取り込むときのポイントを聞きました。
「家全体をインダストリアルテイストで統一できれば理想的ですが、コスト面なども含めてそれが難しい場合は、リビングだけ、ご主人の書斎だけなど、こだわる場所をしぼって、その一室だけでも統一感を出すといいと思います。
よりおしゃれで魅力的な空間にするポイントは、できるだけ、特に面積が大きいところや目立つところは本物の素材を使うようにすること。逆に照明などはデザインや色の違いで大きくコストが変わることが少ないので、そういったところで予算を抑えて、メリハリをつけるといいでしょう」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「インダストリアルテイストなデザインが上手な建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望を叶えてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
無料の個別相談のほか、「はじめての注文住宅講座」や「ハウスメーカー・工務店 選び方講座」など、家づくりのダンドリや、会社選びのポイントなどが学べる無料の家づくり講座も利用できます。ぜひお問い合わせください。
取材協力/グラッソ一級建築士事務所
取材・文/福富大介(スパルタデザイン)