階段には上下の階を安全につなぐという機能面以外にも、インテリアとして住まいを彩る役割もあります。そこで、無垢スタイル建築設計株式会社で設計を担当している佐藤和重さんに、実例とともに、階段をおしゃれに取り入れるポイントについて聞きました。
目次
住まいの階段に求められるものとは?
階段には上下階をつなぐという基本的な役割がありますが、それ以外にも求められる役割があります。
機能性
上り下りのしやすさや、ケガをしないといった安全性は大前提ですが、それ以外にはどのような機能があるのでしょうか?
「設置場所によっては、吹き抜けと同じような機能が期待できます。上下階が空間的につながっているスペースなので、空気が流れ、上階から下階へ光を落とすこともできます。また、音が伝わりやすいので、フロア間のコミュニケーションも可能です」(佐藤さん、以下同)
インテリア性
佐藤さんによると、階段にはインテリア性も重要だといいます。
「最近はリビングに階段を設けるケースが多く、暮らしの中で階段を目にする機会が増えました。そのため、階段をインテリアの一つとして捉え、デザイン性が求められるようになっています」
階段の基本的な構造や種類は?
階段の「おしゃれ」について考える前に、基本的な階段の構造や種類について整理しておきましょう。
階段の構造
階段の構造は以下のような構成になっています。
・踏み面(ふみづら):足を乗せる段板の上面、あるいは有効な奥行のこと
・段板(だんいた):踏み面の部材。踏み板ともいう
・蹴上げ(けあげ):階段の一段の高さのこと
・蹴込み板(けこみいた):段板と段板の間を垂直につなぐ部材のこと
・段鼻(だんばな):踏み面の先端部分
・蹴込み(けこみ):段鼻から下の蹴込み板までの寸法のこと
・手すり笠木(てすりかさぎ):手すりの上端の部材のこと
・手すり柱:手すりを支える柱
・横桟(よこざん):手すりの横方向に渡した骨組み
「踏み面や蹴上げの寸法は、上り下りのしやすさと密接に関係しています。当社の規定では、踏み面は23cm程度、蹴上げは20cm程度を基準として、利用者の年齢などを考慮してさらにゆるい傾斜を提案することもあります」
階段の種類
階段は、形によっていくつかの種類に分けられます。形で分けた主な階段の種類は次の通りです。
直階段(ちょくかいだん):上階と下階を直線でつなぐ階段
かね折れ階段:途中で直角に曲がっている階段
回り階段:途中で180度向きを変える階段で、踊り場のないもの
折り返し階段:途中で180度向きを変える階段で、踊り場のあるもの
らせん階段:1本の柱を軸に、らせん状になっている階段
「上記のほかに、途中までらせん状になっていて、途中から直線になるような特殊な形の階段もあります」
デザイン性の高い階段、最近のトレンドは?
インテリアの一部にもなるデザイン性の高い階段は、最近ではどのようなものが人気となっているのでしょうか。
吹き抜けのリビング+スケルトン階段
「蹴込み板がなく、向こうが見通せるスケルトン階段は人気です。特に、吹き抜けのリビングに設けるリビング階段をスケルトン階段にすれば、視界を遮るものが少なく、より開放感が得られます」
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スケルトン階段のメリットとデメリットは?ポイントを押さえて、おしゃれな空間をつくろう
階段の踊り場を広げて、見た目に変化を付ける
「最近はテレワークやリモート学習が増えており、そのためのスペースが欲しいという声をよく聞きます。これらのニーズに対して、階段の踊り場を広げてワークスペースやスタディースペースを設ければ、見た目にも変化が生まれ、面白い空間になります」
階段と階段下をトータルで見せる
「階段下はデッドスペースになりがちですが、カウンターを設けて座って作業するスペースにすれば、有効活用できます。その際に、階段とカウンターに統一感をもたせて、トータルで見せることを意識すれば、インテリア性も高まります」
直線の多い空間にアクセントとしてらせん階段を採用
「住宅の中は、柱や建具などほとんど直線で構成されています。直線の多い空間に曲線が特徴のらせん階段を配置すればアクセントとなり、空間全体をおしゃれに演出することができます」
階段の壁に変化を付ける
「階段の壁にアクセントクロスを張ったり、階段の壁材だけをほかの壁と異なる素材にしたりして変化を付けることで、おしゃれな雰囲気を演出することができます。また、階段の途中にショーケースを設置して、見せる収納にするという方法もあります」
階段をおしゃれにするポイントと注意点は?
階段をおしゃれにするためには、どのような点に気を付ければいいのでしょうか?
「まず、階段だけで考えるのではなく、家全体の間取りや、テイストの中でおしゃれにするのを意識することです。その上で、構造や素材を検討するといいでしょう」
設置場所によるポイント
「家の中のどこに階段を置くかによって、階段の形が変わります。例えば、上下階を直線的につなぐ直階段を設けたいと思っても、直線距離が取れず、難しい間取りもあるでしょう。階段にこだわるのであれば、間取りと一緒に考える必要があります。
目に見えない位置の階段をおしゃれにしてもあまり意味がないので、リビング階段や玄関前の階段など、目にすることの多い階段のデザイン性を意識するといいでしょう」
構造のポイント
「階段自体はシンプルなものにするのが一つの方法です。スケルトン階段などが代表例ですが、部材もなるべく細くすることで、シンプルでスタイリッシュな印象になります。一方で、らせん階段にして曲線を取り入れることで、やわらかい印象にするという方法もあります」
素材のポイント
「階段の骨組みには、細くても強度のある鉄骨を採用すると、シンプルでモダンなイメージが強調されます。その際、段板に無垢(むく)材を使い、木の素材感を取り入れれば、冷た過ぎる印象になりません。
RC造の住宅などで、コンクリートの階段を見ることがありますが、家全体のテイストに合っていればそれも選択肢の一つです。ただし、その場合は素足で歩くと冷たい、ぶつけたときにケガをしやすいなど、見た目以外のデメリットも考慮しておく必要があります」
階段の手すりをおしゃれにするポイント
「シンプルモダンな住まいの場合、鉄骨の細い手すりにすると、スタイリッシュでかっこいい印象になります。リビング階段の場合は、階段自体に存在感が出やすいので、手すりを細く、色も壁紙の色に合わせて溶け込ませることで、室内を広く見せる効果が狙えます。
一方で、ナチュラルテイストの住まいの場合には、木製の縦格子の手すりを採用するなど、木の素材感を強調することで、デザイン性を高める方法もあります」
落下防止をおしゃれにするポイント
「小さい子どもがいる家庭の場合、スタイリッシュな印象にするために手すりを細い鉄骨にすると、すき間から子どもが落下する危険があります。その場合は、手すりの柱や横桟の数を増やすなどして、落下防止を図ります。ただし、デザイン性を考えてどうしても横桟の数を増やしたくない場合には、子どもが小さい期間だけ、落下防止用のネットを張るという方法があります」
玄関アプローチの階段をおしゃれにするには?
これまでは主に室内階段について見てきましたが、玄関アプローチの階段をおしゃれにするには、どのような点に気を付ければいいのでしょうか。
玄関アプローチの階段の考え方
「基本的に玄関アプローチの階段の場合、傾斜をゆるくすることで、アプローチから玄関へのスムーズな誘導を図ります。踏み面は30cm以上、蹴上げは15cm以下にすることが多いですね。
傾斜がゆるくなるため、見た目的には、上から見たときの印象が重要になります」
玄関アプローチの階段をおしゃれにするポイント
「玄関アプローチの階段には、玄関の土間タイルと同じ素材を使用することが多いですね。より、こだわりたい場合には、素材感のある天然石を使用してもいいでしょう。
タイルを使う場合には、小ぶりなタイルではなく、大きめのタイルを使うと見栄えが良くなります」
オシャレな階段で理想の住まいを実現した先輩たちの事例を紹介!
スーモカウンターで、おしゃれな階段を取り入れた住まいを建てた先輩たちの事例を紹介します。その人たちが、どんな点にこだわり、どんな住まいを実現したのか、実例を参考に学んでいきましょう。
【case1】白い空間に鉄骨の黒が映えるスタイリッシュなスケルトン階段
マイホームを検討していたKさん夫妻は、CMで見かけたスーモカウンターに相談に行きました。そこで提案された依頼先候補の中から、営業担当の印象が良く、提案された土地も気に入った会社に依頼を決定。
建物のプランで特にこだわったのは、開放感です。モデルハウスを見て、吹き抜けとスケルトン階段が気に入ったので新居に採用。白を基調にしたインテリアに、スケルトン階段の黒がアクセントになっています。階段下部分をデスクにして、スペースも有効活用。実際よりも狭く感じないプランに大満足です。
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限られたスペースを最大活用し、駐車スペースも2台確保!のんびりくつろげる居心地のいい家
【case2】安全性と見た目のスッキリ感を両立させた開放的なリビングイン階段
「自然豊かな静かな場所に、2階建てで35坪程度の広さの住まいを予算内で建てたい」という漠然とした思いを抱いていたTさん夫妻。真っ先にスーモカウンターを訪れて相談し、依頼先候補として4社紹介されました。
最終的には土地が気に入り、一番対応が早くて、感じが良かった会社に依頼を決定。
Tさん夫妻が特にこだわったのは、開放的なリビングに空間を広く感じさせるリビングインのスケルトン階段。蹴込み部分に透明アクリル板を設置して、安全性と見た目のスッキリ感を両立させています。
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緑豊かな閑静な住宅街。住み心地の良い大好きな街でマイホームの夢を実現
【case3】階段室の壁をガラスにして、光を取り込み、コミュニケーションを促進!
新たに土地を購入し、二世帯住宅を建てることにしたTさん家族。しかし、建物に関しては、ピンとくる建築会社と出会えなかったため、スーモカウンターを訪れました。そこで、予算と好みを伝えたところ、紹介されたのは4社。最終的にはモデルハウスがカッコよかった1社に依頼することに。
完成した新居には、明るさと開放感を満喫するための工夫が満載。2階・子世帯のLDKと階段室の間の壁をガラスにすることで、LDKに開放感がプラスされるとともに、家族の行動がわかりやすく、コミュニケーションに一役買っています。
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【case4】1階LDKの南側に設けた吹き抜けのリビング階段から家中に光が注ぐ家
都内での家づくりを考えたHさんは、旗竿地でも閉塞感がない土地を見つけ、さっそく購入しました。
建築はWebで見つけたスーモカウンターに相談に行くことに。そこで、好みのテイストと、希望の予算を伝え、紹介された建築会社は4社。最終的に間取りの提案力で絞り込み、依頼先を決定しました。
特にこだわったのは「日当たりのいい明るい家」。1階LDKの南側に吹き抜けのリビング階段を設け、2階の大きな窓からの光が家中に行き渡るプランです。吹き抜けのリビング階段は、明るさだけでなく、夫婦のコミュニケーションにも一役買っています。
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都心の旗竿地でも吹抜けの階段で明るく。空間ごとに壁紙を変えた個性的な住まいに
【case5】吹き抜けとスケルトン階段が開放的な玄関を実現
結婚を機に二世帯住宅を建てることを決めたIさん夫妻。建築会社探しで難航したため、スーモカウンターを訪問。その際、要望をもとに窓口の担当者から紹介されたのは4社の建築会社でした。その中から、担当者との信頼関係が決め手となって最終的に依頼する1社を決定。
完成したのは、各世帯のプライバシーは守りつつもお互いに生活のしやすさを大切にした二世帯住宅です。玄関は吹き抜けにして、さらに蹴込み板のないスケルトンタイプの階段を採用しました。おかげで開放感は抜群です。
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信頼できる担当者とつくる、デザインも資金計画も満足の二世帯住宅
おしゃれな階段を取り入れるポイントは?
最後にあらためて佐藤さんに、おしゃれな階段を取り入れるときのポイントを聞きました。
「階段にこだわりたいのなら、家の設計段階で要望を出すことが大事です。見えない位置の階段をおしゃれにしても、あまり意味がありません。家の間取りやテイストと合わせて、階段をどこに置くか、形はどうしたいか、どう見せたいかを建築士や施工会社に相談しましょう」
スーモカウンターに相談してみよう
「どうやって進めたらいいのかわからない」「おしゃれな階段が得意な建築会社はどうやって選べばいいの?」住まいづくりにあたって、このような思いを抱いているなら、ぜひスーモカウンターに相談を。スーモカウンターでは、お客さまのご要望をお聞きして、そのご要望をかなえてくれそうな依頼先を提案、紹介します。
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イラスト/村林タカノブ