家を建てる人のほとんどが考える、愛車のための駐車スペース。どこにどのように駐車するかは、敷地と道路の関係などによって制約を受ける部分も多いようです。後回しにされがちだけれど、実は重要な駐車スペースの設け方について、建築家の佐川旭さんに伺いました。
目次
駐車スペースに必要な寸法は?車の種類によって違いはある?
基本的な寸法は車体の長さ+800mm〜、幅+900mm〜
設計の自由度が高い注文住宅でも、駐車スペースはさまざまな制限を受けやすい部分。「どこにどのように駐車スペースを設けるかは、敷地と道路との関係などによって決まってしまう部分が多いです」と佐川さん。具体的な必要スペースは、もちろんプロが計算してくれるのですが、「特に敷地や前面道路が広くない場合など、駐車スペースにも意外と面積が取られるということを知っておいて損はないでしょう」
最低限必要なスペースは「車のサイズ + 周辺のゆとり。車のサイズは車種によって違い、周辺のゆとりは、使い方によって違います」。運転手側には必ず乗り降りするスペースが必要ですが、「助手席側にも同等のスペースを設けるかどうかは、敷地の広さや家族のライフスタイルなどによって決まります。また、車がスライドドアの場合はやや省スペースになります」
LIXILによると、車の周辺に必要な基本の寸法は一般的に下図のとおり。運転席側には乗り降りするためのスペースとして700〜1100mmほど必要となります。助手席側は乗り降りしなくても200〜300mm、さらに後ろに300mm、前に500mmほど必要となります。
周辺に必要なスペースの基本寸法(単位mm)
車のサイズの目安(単位mm)
車が出入りするためのスペースも考えよう
駐車スペースは駐車や乗り降りするスペースのほかに、「車が出入りする動きを考えたスペースが必要」と佐川さん。つまり、車の回転半径を考えて、間口にゆとりをもたせることが重要となります。
下の図と表のように、例えば前面道路の幅が5mで、中型車を後退で直角駐車する場合、2.6mの間口が必要ですが、+0.5m程度の余裕をもたせて間口に設定するとより安心です。
駐車スペースに必要な間口(中型車の例)
駐車スペースと前面道路との位置関係
駐車スペースの豊富なバリエーション|工夫次第でおしゃれなスペースに
駐車スペースとひと口に言ってもさまざまなタイプがあります。道路との関係、家族のライフスタイル、そして「建物とのデザインの調和も大切です。特に建物の外に設置する駐車スペースは外構工事となり、建物とは別の会社に発注するケースもありますが、デザインがちぐはぐにならないように考えましょう」(佐川さん)
さらに「地面のコンクリートの面積が大きいと、車が出払っているとき、間が抜けた印象になってしまいがち。目地をつくって部分的に芝生を植えたり、タイルを張ったりするとデザイン性が高まるだけでなく、コンクリートのひび割れ防止にもなって一石二鳥です」
▼ガレージタイプ
▼オープンタイプ
▼ガーデンタイプ
カーポートのデザイン
▼片側支持タイプ
▼両側支持タイプ
カーゲートの主なタイプ
▼門扉4枚折戸
▼伸縮門扉
▼はね上げ門扉
▼引戸
▼シャッター/折戸
▼スペースガード
駐車スペースの地面はコンクリートにすべき?
駐車スペースの地面をコンクリートにすべきかを悩んでいる人も少なくはないでしょう。コンクリートにはさまざまなメリットがある一方で、いくつかデメリットも存在します。砂利やタイル・レンガの場合と比較しつつ、コンクリートのメリットおよびデメリットを見比べてみましょう。
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メリット |
デメリット |
コンクリート |
・耐久性が高い ・手入れが少なく維持費を抑えやすい |
・工事にかかる費用は高くなりやすい ・工事が完了するまで時間がかかる |
砂利 |
・施工にかかる費用を抑えやすい ・砂利を踏むと音が出るので防犯対策につながる |
・雑草の処理に手間がかかる ・車が汚れたり傷ついたりしやすい |
タイル・レンガ |
・コンクリートよりは費用を抑えやすい ・デザイン性に富んでいる |
・コンクリートよりは耐久性がない ・完成まで時間がかかる |
機能性やデザイン性を考慮しつつ、自宅に合った素材を選ぶことが大切です。
土地が狭い場合の駐車スペース作りで理解しておくべきこと
土地が狭い場合、駐車スペースをつくる際にはいくつかの注意点が出てくることもあらかじめ理解してください。
まず注意しなければならないポイントは、想像以上に駐車が難しくなる可能性がある点です。慣れていないと、車を傷つけてしまうかもしれません。そのため、車の買い替え時に駐車スペースとのバランスも考慮するようにしましょう。
また狭い土地に駐車スペースを設けた場合、エクステリア(建物全体の外観)においても制約を受けてしまうこともあります。デザインにこだわる人であれば、自由にフェンスや塀、花壇などを設置したいと思うかもしれませんが、土地の面積によっては駐車スペースを設けることで、これらを設置する余裕がなくなるケースもあります。
加えて、植木やプランターが視界を遮るなど、ガーデニングが原因で駐車が難しくなることもあるので注意しましょう。
駐車スペースを上手く取り入れた住まいを建てた先輩たちの事例を紹介!
スーモカウンターで、駐車スペースを上手く取り入れた住まいを建てた先輩たちの事例を紹介します。これらを参考に、どのような駐車スペースを作りたいかイメージを膨らませてみてください。
【case1】こだわりの外構!家族とゲスト用で4〜5台は止められる駐車スペース
結婚を機に、相続で家を譲り受けることも考慮した上で実家を二世帯住宅に建て替えたTさん。変形地(長方形や正方形ではなく、変則的な形をした土地)を上手く活かし、最大で4〜5台の車を止められる駐車スペースを確保しました。
また駐車スペースだけではなく、バーベキューができる広さの庭も確保。休日には友人を招いてバーベキューを楽しむことができます。
一軒ずつモデルハウスをめぐって話を聞き、見積もりを取っていると、すごく時間がかかると実感。効率化のためにスーモカウンターを利用しました。夫は性能、妻はかわいいデザインの家を希望していましたが、理想の家を建てることができました。
この実例をもっと詳しく→
実家の建て替えでかなえた性能もデザインも大満足の二世帯住宅
【case2】駐車しやすいよう間口が広いスペースを設置
夏は熱く冬は寒く、結露の影響でカビが発生する賃貸住宅に暮していたTさん。快適な住まいを求めて注文住宅を建てました。断熱性が高く、コストパフォーマンスの良い家づくりをする会社を希望し、スーモカウンターに相談しました。紹介された断熱性能の高い会社から土地探しのアドバイスを受けて、短期間で東南角地を購入することに成功。
LDKや玄関の前に2台分の駐車スペースを配置し、自転車を置くスペースも確保しました。Tさんは間口が広く、駐車しやすい点が気に入っているそうです。
完成したTさんの家は、断熱性にこだわった結果、エアコンの効きが良いのはもちろん、室内の音漏れも気にならないそう。生活しやすい動線や収納も充実した家族が満足する家となりました。
この実例をもっと詳しく→
快適な暮らしを叶える性能と立地を重視。動線にもこだわった自由設計の家
【case3】車やバイクいじりが趣味の夫のための屋内駐車スペース
車を2台、オートバイも2台所有するHさん。夫は広いガレージが欲しく、家の建築を決意したそう。しかし、家を建てるに当たり、情報量の多さに混乱し、スーモカウンターに公平な意見を求めて相談しました。
夫婦の希望は、広いガレージを造るための土地を探してくれる、断熱性の高い家、共働きのため家事がラクになる設備を導入できる会社。スーモカウンターで3社を紹介され、基本プランに断熱工事が含まれている会社に決めました。
念願のガレージは、開口も広めに設計し、専門的な工具類も余裕で収納できるスペースも備え、雨の日でも愛車の修理や点検ができて大満足だと言います。妻はインテリアにこだわりましたが、手間と時間をかけコストダウンに成功。センス良く、節約できる自慢の家ができました。
この実例をもっと詳しく→
夫は念願のガレージを手に入れ、妻も全館空調や浴室乾燥機に大満足の家
スーモカウンターでできること
希望する駐車スペースがつくれるか相談を
駐車スペースのつくり方には実に多くのバリエーションがあります。前面道路と敷地の関係、敷地の広さ、車のサイズと台数など、考慮すべきことがたくさんありますが、具体的なプランニングは設計のプロにお任せすれば大丈夫。
そして、これから土地を購入する場合や、すでにある土地に車がうまく収まるか不安な場合、さらに駐車スペースにこだわって建てたい場合などは、SUUMOカウンターに相談を。それぞれの悩みや希望に合った会社を紹介することができます。
監修/SUUMO編集部(地面はコンクリートにすべき?、土地が狭い場合の駐車スペース作り)
佐川旭建築研究所代表。一級建築士、インテリアプランナー。間取り博士とよばれるベテラン建築家で、住宅だけでなく、国内外問わず公共建築や街づくりまで手がける